【build Windowsレポート】
Windows 8の詳細が明らかに

いつにも増して元気いっぱいのWindows & Windows Live 担当プレジデント Steven Sinofsky氏

会場:Anaheim Convention Center
会期:9月13日~16日(現地時間)



 アメリカ カリフォルニア州 アナハイムにおいて Microsoftが開催する開発者向けイベント「build Windows」が9月13日(現地時間)に開幕した。初日の基調講演は午前9時にスタートし、同社Windows & Windows Live 担当プレジデント Steven Sinofsky氏が登壇、次世代OSとして同社が開発中のWindows 8 Developer Preview版を披露、全世界から集まったハードウェア、ソフトウェア開発者に向けて「(開発の)スタート」を促す熱いメッセージを送った。

●Windows 8にようこそ

 ステージに登壇したSteven Sinofsky氏は「Windows 8にようこそ」と、いつもよりも、さらに興奮した面持ちで話を始めた。進行としては、前日に行なわれたプレス向けの紹介イベントと内容はほぼ変わらなかった。まず、現行のWindows OSであるWindows 7の実績として、4億5,000万本が売れ、Windows Liveのクラウドサービスには、5億4,200万人がサインインしていることをアピール、このプラットフォームが膨大な数の人々に受け入れられていることに言及した。

 ひとしきりWindows 7について述べたあと、同氏のスピーチは本題に入る。まずは、タッチのインターフェイスについて話を始めた。タッチはコンパクトなデバイスのためのインターフェイスではないと強調、多くのユーザーは、自分のPCのスクリーンを、ついタッチしてしまった経験を持つこと、そして、タッチをサポートしていようがいまいが、ほとんどすべてのディスプレイには指紋の跡がついていることを指摘した。それほど、タッチは身近なものになっているということだ。

 さらにモビリティの世界が大きな変化を経験していることにふれ、それを加速しているのがネットワークとのコネクションであり、人々はもうスタンドアローンのアプリケーションを使おうとは思わないとし、そのことが、Windows 8に向けてスタートを切る上ではきわめて重要な事実であるという。

 同氏はソフトウェアであれペリフェラルであれ、Windows 7で動くものは、すべてWindows 8でも動くとした上で、ARM版のWindowsについても触れ、それがパーソナルコンピュータの使われ方のレンジを大きく拡張、新たなシナリオを生み出すとした。そして、そのスイッチをオンにするのがWindows 8なのだという。

 3年前のPCとして最初の世代のレノボのネットブックを手にとった同氏は、この1GBのメモリを積んだAtomベースのPCが、実にクールなマシンだったとし、母艦PCとして2年間使いこんだという。そして、今はもう使わなくなってしまったこのマシンで、Windows 8がちゃんと動くとアピールした。

 タスクマネージャでほぼ同一のスペックを持つマシンにおける、Windows 7 SP1の消費メモリは404MBで、32個のプロセスが走っていることを見せた。そして、Windows 8では、これが281MBまで減り、プロセスも3個減ったという。加えて、最初のWindows 7 RTMでは消費メモリは540MBに達していたことを白状し、ここに集まった開発者のソフトウェアのためにこの劇的なダイエットを成し遂げたのだとした。

愛用していたレノボのネットブックを手にするSteven Sinofsky氏メモリ消費量が劇的に下がったWindows 8Windows 8のロックスクリーン。すべてがここから始まる

●分散した各種の情報を集約して統合するMetroスタイルのスタートスクリーン

 ステージには、Julie Larson-Green(Corporate Vice President, Windows Experience)氏が呼び込まれ、彼女がWindows 8のデモンストレーションを始める。

 新しいスタートメニューともいえるスタートスクリーンを横にフリックすると、カラフルなタイルが流れるようにパンされる。Sinofsky氏は、Windows 8のスタートスクリーンは、今まで分散していた各種の情報をユニファイド(一元化)するものだと解説を加える。

 デモは続く。タイルをドラッグして入れ替えたり、ピンチの操作でスクリーンをズームし、その状態でスクリーンの順序を入れ替える。これがMetroのGUIだ。

 ぬいぐるみを撮影してロックスクリーンを変更したり、ゲームをいくつか紹介してエンタテイメント性もアピールされた。アプリの起動中は、スクリーン左端を外側から内側にスワイプすることでタスクを切り替えることができる。また、ボトムを外側からスワイプすることでメニューが表示される。

 Twitterなど、お馴染みのSNS連携や、ビデオ再生についてもデモが行なわれた。アプリは通常、フルスクリーンで実行されるが、片方をスクリーン左側にスナップさせて、2つのアプリを同時に表示することができることも披露された。また、メッセージ入力中に、スペルチェックされるなど、パワフルなプロセッサの処理能力が活かされている。このあたり、さすがにWindowsだといえるだろう。

MetroスタイルGUIをデモンストレーションするJulie Larson-Green(Corporate Vice President, Windows Experience)氏カーネルの上に新たに実装されるMetroの基盤と、その上で動くMetroアプリのイメージ

 Sinofsky氏は、マルチタスクを活かせるWindowsの強みをアピール、さらにInternet Explorer 10のハードウェアアクセラレーションによる別次元ともいえるスピードを強調した。ブラウザでは、ボトムのスワイプでアドレスバーや履歴の表示、さらにタブの切替などができる。途中、操作が固まるような場面もあったが、まだ、プレビュー版であるから仕方がない。それでも、素早く予備のマシンに入れ替え、デモが滞ることはなかった。このあたりに、デモンストレーションのための周到な準備をしていたことがうかがわれる。

 スタートスクリーンは、従来のWindowsにおけるスタートメニューに代替するものだ。従来のデスクトップにもスタートボタンは存在するが、タップしても今までのようなプログラムの一覧は表示されず、スタートスクリーンに戻るだけだ。インストールされたプログラムは、スクリーンの右側をスワイプしてサーチして見つける。

 デモが一段落したところで、Sinofsky氏はスピーチを続ける。Windows 8で新たに導入されたMetroスタイルのGUIは、流動感あふれる速さと、没入できるフルスクリーン表示、タッチを前提にしてはいるものの、キーボードやマウスでも操作ができ、ウェブアプリの統合により、新たなPC体験をもたらすものだという。
 
●ソフトウェアとハードウェアのビジネスチャンスを拡げるWindows 8

 続いてAntoine Leblond氏(Corporate Vice President, Windows Web Services)が登場、開発環境を披露した。Visual Studio 11とExpressionの新バージョンが紹介され、HTML5で開発されたアプリケーションを両環境を往復させるなど、環境のバリエーションに富んでいることが解説された。ポートレート、ランドスケープ、2アプリ表示のスナップなど、さまざまな解像度、そしてアスペクト比のスクリーンに対応しなければならないMetroスタイルのアプリについて語った。

 さらに、アクセシビリティへの手厚い対応や、IEが通常表示するアプリが、ほんの少しの手間でMetroスタイルになること、そして、Windows Phoneもまた、同じであることを強調、新しいAPIとツールでMetroスタイルではスピーディでスケーラブルな開発ができ、言語についても自由だとアピールした。加えてストアへの登録や、Microsoftによる審査、ユーザーが購入する前のトライバージョンの存在など、ウィンドウズストアのオープンに向けた実装を紹介した。

Ultrabookの薄さをアピールするMichael Angiulo氏(Corporate Vice President, Windows Planning, Hardware & PC Ecosystem)

 ハードウェアのデモについては、Michael Angiulo氏(Corporate Vice President, Windows Planning, Hardware & PC Ecosystem)が行なった。

 GPUを3基積んだ超がつくようなモンスターマシンから軽量薄型ノートPC、そしてスレートにいたるまで、あらゆるPCで小気味よく稼働し、それでいてバッテリは長持ちし、グラフィカルなディスプレイとタッチインターフェイス、そして各種センサーを実装するのがWindows 8に最適化されたハードウェアだ。

 Angiulo氏は、さまざまなフォームファクタのPCを紹介しながら、今、UEFIがいかに重要であるかを強調した。また、薄型のUltrabookが紹介されたときのSinofsky氏は、「Intelはグレートだ」と、賞賛フォローアップの言葉を忘れないのはさすがだ。特に東芝のUltrabookが紹介されたときには、LANポートやミニD-Sub15ピンより薄いPCを作った東芝に驚きを隠せない様子だった。また、SamsungのスレートPCの分解モデルを見せ、ほとんどがバッテリの容積であり、バッテリをはずしてしまうとその中身は薄っぺらで小さなマザーボードだけだということが披露された。

 さらにNFC対応のデモもあった。こちらは、ノートPC同士を近づけることでウェブサイトのアドレスが渡される。また、3Gモジュールの内蔵によりAT&Tのネットワークに接続、その他のネットワークとシームレスに接続を使い分けることができることもアピールされた。

 そしてここで、その日の夕方には、SamusngのスレートPCが、カンファレンス参加者全員に、Windows Developer Preview PCとして配布され、しかも、それにはAT&Tの2GB/月データ通信1年分が含まれることをSinofsky氏がアナウンスすると、会場は大きな歓声に包まれた。

 同PCのスペックや特徴がひとしきり説明されたあと、プロフェッショナルにとってのWindows 8がどのようなものであるか、Sinofsky氏自らがデモンストレーションしてみせた。

配布されるDeveloper PCのスペック

 ここでは、いくつかMetroスタイルアプリを実行したあと、20年前のタスクマネージャはもう飽きたと笑いながら、新しいタスクマネージャを確認すると、Metroアプリがサスペンドされ、CPU負荷がゼロになっていることがわかる。アプリのサスペンドというステータスは、Windows 8で新しく導入されたものだ。また、タスクマネージャではスタートアップアプリを簡単に無効にできることを紹介すると、会場は沸きに沸いた。みんな、困っていることは同じであるようだ。

 さらに、Metroスタイルのリモートデスクトップ、そして、Hyper-Vによる仮想マシン、VHDやISOイメージのマウント、Windows Explorerがリボンを採用し、「上へ」のツールボタンが新設されたこと、そして、マルチディスプレイでのWindows 8デスクトップでは、タスクバーがすべてのディスプレイに表示され、個々のディスプレイ上に開いているウィンドウがボタン表示されることや、スタートスクリーンは1ディスプレイだけに表示されるが、任意のディスプレイに切り替えることができるなど、鮮やかな手つきでWindows 8を操作する様子が印象的だった。

●ダウンロード公開され、日々更新されるWindows 8 Developer Preview

 このあと、12日の事前紹介イベント同様に、クラウド関連のサービスがデモンストレーションされたあと、最後にSinofsky氏は、今後のロードマップについてふれ、次のマイルストーンはベータ版であること、次にRCと進んでいくことを告げ、変わり映えのしないこの行程がWindows 7のときとまったく同じであるとした。スケジュールを優先するのではなく、クオリティを最優先で開発を進めるが、アプリの開発はすぐ始めて、それに専念してほしいと訴えると会場はまた笑いに包まれた。

RTMまでの道のり。Windows 7のときと同様だが、Updates along the wayとあるダウンロード公開されることが発表された。9月13日20時(太平洋時間)とあり、すでにダウンロード可能な状態になっている

 とはいうものの、アップデートの新しいメカニズムのテストのためにも、行程の間に自動的にアップデートされながらWindows 8は出荷に向けて進化していくという。今回のPreviewがダウンロード公開されることも発表され、13日の20時(太平洋時間、日本時間では14日正午)に公開されると同氏。ただのサンプルであり、アクティベーション不要、サポートなしだと念を押す。

 そして最後にもう一度「Windows 8にようこそ」として、2時間半にもわたるスピーチを終えた。

(2011年 9月 15日)

[Reported by 山田 祥平]