【COMPUTEX 2011レポート】
【Mac/iOS関連製品編】Intel、Thunderboltテクノロジーを紹介

会期:5月31日~6月4日(現地時間)
会場: Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
   Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/2/3
   Taipei International Convention Center



●IntelブースなどでThunderboltテクノロジーが披露される

 南港展示場に設けられたIntelブースの一角では、Thunderboltテクノロジーのデモンストレーションが行なわれていた。ThunderboltはIntelが開発した高速データ転送技術で、今年2月に発表されたMacBook Proと同5月に発表されたiMacのApple製品2つに採用されている。現時点ではMac本体への搭載が先行しており、Thunderbolt対応の周辺機器は製品発表のみが行なわれている状態で、出荷はもう少し先になる見通しだ。発表以来、本誌でも何度か紹介しているとおり、Thunderboltのインターフェイス形状と映像信号出力はMini DisplayPortと互換性があり、DisplayPort入力に対応したディスプレイであれば、現時点でも外部ディスプレイとして利用可能である。

 Intelブースでのデモンストレーション自体は2月のMacBook Pro発表時とほぼ同一の内容で、Appleのプロ向け映像編集ソフト「Final Cut Pro」を使って高解像度のビデオストリーミングをMacBook Pro本体とストレージ間で転送して表示している。1本あたり約150MB/secの映像データを、2本、3本、4本、5本と増やしていき、それに応じてスピードメーターの針が上昇していくというデモンストレーションだ。これは、MacBook ProとPromise TechnologyのRAIDアレイ「Pegasus R4」を用いて行なわれていた。映像はThunderboltの特徴であるMini DisplayPortとの互換性とデイジーチェーンにより、Pegasus R4を経由して接続されたApple LED Cinema Displayに出力されている。

MacBook ProとPromise TechnologyのRAIDアレイ「Pegasus R4」を使ったストリーミングのデモ6本のストリーミングを流した状態。転送速度を示すスピードメーターが800MB/secに近づいているのがわかる「Pegasus R4」の背面。Thunderbolt対応のインターフェイスが2つ搭載されており、1本はMacBook Proに、1本はLED Cinema Displayに接続されている

 IntelによるThunderboltのデモンストレーションはMacBook Pro発表時のほかに、米ラスベガスで開催された映像と放送機器の国際展示会であるNABでも行なわれているが、今回のCOMPUTEXでは、仏LaCieが製品発表している小型のストレージ製品「LaCie Little Big Disk」が稼働状態で出展された。MacBook Proの発表時やNABでも非稼働での展示が行なわれていたが、稼働状態での一般向けデモンストレーションはおそらく初めてのことと思われる。

 「LaCie Little Big Disk」は2.5インチのSSD 2台をハードウェア方式のRAID 0で運用する小型のストレージ製品。製品情報によるとラインナップには240GB(120GB×2)、500GB(250GB×2)、1TB(500GB×2)が用意されているが、1TBモデルはSSDではなくHDD×2の構成となる。こうした周辺機器の製品スペックからも分かるように、現状ではノンリニア編集を目的にしたプロあるいはハイアマチュア向けのデータ転送ソリューションという印象が強い。

 稼働状態で展示されたLaCie Little Big Diskは、4台がデイジーチェーンで接続されていた。Thunderboltの仕様上は最大6台の周辺機器が接続できるため、あと2台あるいは1台のThunderbolt対応機器と外部ディスプレイといった運用も可能になるはずである。なお周辺機器と同様に、Thunderboltに対応する接続ケーブルも現時点では未出荷のまま。Intelブースで使用され、単独でも展示されていた接続ケーブルはApple純正品とのことで、サードパーティからもケーブルが発売されるかどうかは未定。これは主にThunderboltのライセンスに関わる理由とのことだ。確かに、OEM/ODMを目的に中国や台湾などのメーカーからありとあらゆる接続ケーブルやコネクタ等が出展されているここCOMPUTEXにおいても、Thunderbolt対応のケーブルは目にする機会がなかった。

仏LaCieの「LaCie Little Big Disk」。2台のSSDをハードウェア方式のRAID 0で内蔵する小型の高速ストレージIntelブースのデモンストレーションでは、計4台のLaCie Little Big Diskが、MacBook Proにデイジーチェーン接続されていたLaCie Little Big Diskの背面。それぞれ2つのThunderboltインターフェイスを搭載。終端となる1台はインターフェイスに空きがある

Promise Technologyのブース一角に設けられたThunderboltのデモコーナー

 Promise Technologyは自社ブースを出展していて、こちらにもThunderboltに関連する展示があった。ここでは6台搭載モデルの「Pegasus R6」を使ったデモンストレーションが行なわれていた。また、Xsanとファイバーチャネルで接続するThunderbolt対応のブリッジ「SANLink」も展示されており、既存のXsan環境へのスムーズな導入が行なえるとしている。Promise TechnologyによるとPegasusシリーズは7月中、SANLinkは今夏の出荷を目指す。ちなみにLaCieはCOMPUTEXへは出展しておらず、LaCie Little Big Diskの出荷時期は未定となっている。LaCieの国内販売代理店であるエレコムからも、現時点では特に日本での販売に関するアナウンスはなされていない。

発表されている製品は「Pegasus R4」と「Pegasus R6」の2モデル。前者は1TBあるいは2TBのSATA HDDを4台、後者は1TBあるいは2TBのSATA HDDを6台内蔵した製品Xsanとファイバーチャネルで接続するブリッジ「XSANLink」同社ラインナップにおけるMac関連製品の位置づけ。Thnderboltを搭載する製品は主にプロ向け用途とされているのが分かる

●PhotofastがiOSデバイスに対応する各種の周辺機器を出展

 台湾Photofastは、Apple製品をターゲットにしたブースを出展しており、各種のドックを始めとしてiOSデバイス向けにいくつかの周辺機器が展示されていた。

Photofastのブースの様子。Apple製品の関連アクセサリを中心に出展を行なった

 「i-FlashDrive」はUSB 2.0のコネクタとiOSデバイスに対応する30ピンコネクタを両端に持つユニークな形状のフラッシュメモリ。MacやPCからは通常のUSBフラッシュメモリと同様に各種ファイルの読み書きが行なえる。

 一方、iPhone、iPod、iPadなどの30ピンコネクタを持つiOSデバイスでは、同名の専用アプリケーションを使ってファイルのマネージメントが行なえる仕組み。アプリケーションはiTunes Storeから無償でダウンロードできる。通常、iOSデバイスでは母艦となるMacやPCとの各種ファイルのやりとりをiTunesによる同期をもとに行なっている。また、ある程度の上級者であればDropBoxのようなクラウド型のサービスと専用アプリケーションを利用しているかもしれない。「i-FlashDrive」は、こうしたデバイス間のファイルコピーをより直接的に、言うなればPCライクに行なうことができるようにするアクセサリだ。

 前述したとおりMacあるいはPC側からみれば通常のフラッシュメモリとして扱われるので、ドラッグアンドドロップやショートカットを使ったファイルの管理ができる。iOSデバイスに接続した場合は、自動的に専用アプリケーションが起動してファイルの管理画面になる。フラッシュメモリ側からコピーしたいファイルを選択すると、ファイルの種類に応じて、本来は可視化されていないiOSデバイス内の適切な場所(フォルダ)へとコピーを行なう仕組み。フラッシュメモリからiOSデバイスへだけでなく、iOSデバイス内のファイルをフラッシュメモリ側へとコピーすることも可能。専用アプリケーションにはコンタクトリスト等、iOSデバイス内のファイルバックアップ機能も含まれている。最大容量モデルとしては32GBの製品も用意されているので、母艦との同期がとれない状態が続くとき、撮影した画像や動画ファイルの一時保管場所としての利用もできそうだ。

「i-FlashDrive」。一端がUSB、一端がiOSデバイスに対応する30ピンコネクタになっている実際にiPad 2にi-FlashDriveを接続して、フラッシュメモリ内に記録されているPDFファイルをiPadへコピーしている様子「Photofast UltraDock」。iPadを1台と、iPhone、iPodなど2台、あわせて3台の充電と同期を同時に行うことができるドック製品

 利用にはiOS 4.3以降が必要となり、具体的にはiPhoneなら3GS以降、iPod touchは第4世代以降、iPadは全モデルに対応する。製品は容量別に8GB、16GB、32GBの3モデル。いずれも価格未定ながら、近日中には出荷される見込みとのこと。専用アプリケーションがiTunes Storeで提供されていることからもわかるように、Made for iPhone、iPod、iPadのライセンスを取得している。

 ドックとしての新製品は「Photofast UltraDock」。iPadを1台と、iPhone、iPodなど2台、あわせて3台の充電と同期を同時に行なうことができるドック製品だ。電源は付属のACアダプタを接続して供給。内部はUSBハブになっているので、同期先のMacやPCとはUSBケーブル1本で接続する。BumperやSmartCoverといったApple純正のアクセサリを付けたままでも利用できるのがセールスポイントだという。またiPhone、iPod向けに、Dockに1,500mAhのポータブルバッテリ機能を内蔵した「GDock Power」も発表されている。さらに、展示ブース内にはまだ製品が用意されていなかったものの、2つのドックを搭載するスピーカー付きドック「MD2」も発表。こちらは音楽再生のほか、ハンズフリーでFaceTimeを利用したりすることができる製品とのこと。出荷時期や価格はいずれも未定。

●ワイヤレス充電の標準化は発展途上

 先日、NTTドコモが「おくだけ充電」として「qi(チー)」に準拠したワイヤレス充電に対応するスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」を発表した。ワイヤレス充電器はSH-13とセットで提供されるほか、別途ドコモからワイヤレス充電器と、ワイヤレス充電に対応したUSB出力のポータブルバッテリが販売される。「おくだけ充電」は全日本空輸、TOHOシネマズ、プロントコーポレーションの3社と提携して公共の場所での体験機会を増やし、NTTドコモとしても今後の新製品で対応機種を拡大させる意向だ。

 また、qiに準拠した製品はiPhone 4対応のジャケットと充電器を日立マクセルがすでに出荷しているほか、6月中にはパナソニックからも充電器とポータブルバッテリが販売される予定。

 さて、そこでワイヤレス充電の動きがここCOMPUTEXでもあるかと考えたが、残念ながらそれは空振りに終わった。iPhone 4やiPhone 3GSなどを対象にしたパワージャケット+ワイヤレス充電の製品は散見されるものの、いずれも既存の製品で独自規格のものがほとんど。外見が少しずつ異なるものの、中身は一緒と思われるものも少なくなかった。すべてとは言えないが会場内を歩いてみた限りでは、qi準拠を掲げるものは1製品のみだった。

 電磁誘導によるワイヤレス充電自体はそれなりに枯れた技術で、すでに家庭内のコードレス電話などを中心に採用しているメーカーはある。ただコードレス電話のように利用場所と機器が限定されるならいいが、充電器と充電対象が1対1の関係では充電場所が限られ、手軽ではあるものの場所に縛られる状況を抜け出せない。米Powermatの製品やqiが注目されているのは、その汎用性、互換性を重視し、家庭、職場、移動中の車の中、そして前述したとおり公共の場所でも充電が可能になるからだ。

 そうした期待には残念ながらまだ沿うことができなかったCOMPUTEXにおけるワイヤレス充電製品のなかで、特にユニークと言えるのが台湾Winstream Technologyの製品。OEM/ODMを目的とした出展のために、内容としてはテクノロジーデモに近いが、一見の価値はあった。基本はiPhone 4などを対象としたパワージャケットと充電器のセットなのだが、充電器の設置場所に工夫を凝らしている。一般的なパッド状の充電台はもちろんのこと、ノートPC用の空冷台や、ACアダプダなどにコイルを埋め込んで充電器にしている。

ノートPC用のACアダプタにコイルを埋め込んで、ワイヤレス充電台とする例双方向のバッテリ融通が可能になるパワージャケット。iPad向けのワイヤレス充電ジャケットも企画中とのこと実際にジャケット間で電力を融通している様子。写真では裏側にあたるiPhone 4から正面のiPhone 4に給電を行っている。充電状態の画面が表示される

 極めつけは、同じパワージャケット間で電力の融通ができること。手順としては、電力の供給側にあたるジャケットの方の電源スイッチを押す。あとは充電したい方のパワージャケットを天地を逆にして背中合わせに重ねるだけ。写真ではわかりやすいように両方を手にしているが、実際の運用では供給側を下に置くべきだろう。パワージャケットがそのまま充電台になるという仕掛けだ。もちろん供給元も容量1,500mAh程度のパワージャケットであることや効率を考えれば突っ込みどころは多いのだが、非常時ならばあり得る手段で、なかなか興味深いアイディアと言えるだろう。

●そのほか、Mac、iPhone関連製品のあれこれ

 iPhone、iPadの外装を飾るアクセサリ、パワージャケットそしてケース付きBluetoothキーボードの類はOEM/ODMを目的に数多く出展されているが、さほど目をひく製品は多くない。これらはバイヤーを対象に展示されているために、メディア向けには製品の説明こそしてくれるものの、写真撮影は不許可という製品も少なくなかった。自社ブランドで出展しているなかでは、MacworldやCESへの出展実績があるBone Collectionブランドの台湾FURUIT Internationalや、XFXと同一資本で新たにApple製品関連アクセサリに参入するというAViiQの製品がデザイン面などで優位性を感じられた。

Bone Collectionブランドの台湾FURUIT International。ヘッドフォン用のケーブルを束ねたままiPhone 4向けのケースに収納できる製品や、ホーン式で再生音量を上げるiPad 2用のホーンスタンドなどを展示している
AViiQ社の製品。iPhoneやiPodなどモバイル機器のケースと同期/充電用のハブ、給電用のACアダプタを1つにまとめたケース。そして、折りたたみ可能なノートPC用のスタンド。スタンドは素材と表面加工の違いで59~79ドル程度。近日中にはAppleのRetail Storeなどで販売する意向とのことだ

 台湾Magic Control Technologyの「USB Magic Switch」は、PCではよく見かけるキーボードとマウスの共有ケーブルだが、異なるプラットフォーム間でも実現している。全部で4モデルがあって 「PC to PC」の標準的な製品に加えて「PC to PC / PC to Mac / Mac to Mac」対応のモデルでは、キーボートとマウスの共有、クリップボードの内容の共有、機器間でのデータ移動がPCとMac間でも行なえる。デモンストレーションでは、マウスポインタがPCとMacの画面間を自在に行き来して、ドラッグ&ドロップによるファイルのコピーなども行なわれていた。ハードウェアスイッチではなく、マウスポインタがある画面が操作対象となる。利用にはソフトウェアのインストールが必要で、Mac OS Xは10.5以降の対応。他に「PC to Android」と「PC to iPad」の2製品があるが、前者はファイルのコピーと疑似マウス操作にのみ対応、後者はiPadでの文字入力に接続したPCのキーボードが使えるだけという、やや微妙な仕様となっている。

iPad向けの製品。Apple純正のCamera Connection KitのUSBタイプを介して接続する。実際にシェアできるのはPCのキーボード入力だけということで、あまり利用途が現実的とは言えない一方こちらは「PC to PC / PC to Mac / Mac to Mac」の対応製品。マウス操作でポインタがPCとMac間を自在に行き来してファイルのドラッグ&コピーもできるなど実用性は高い

 ノルウェーのCUPP Computingの「PUNK This」。2.5インチのベイに収まる大きさのボードにARMプロセッサとMini PCIeスロット、microSDスロットなどが搭載される。既存のポータブルPCに内蔵されている2.5インチHDDと置き換えてバッテリ、キーボード、ディスプレイ出力を接続することで、ARMベースのデバイスができあがるという。Mini PCIスロットにはSSDを搭載して、こちらをPCのCドライブ(起動ドライブ)にあてることで、同一のハードウェアでデュアルブートが可能となる仕組み。ボード自体の価格は200ドル以下を見込んでいる。

 搭載されているARMはTI製 OMAP DM3730。1GHz動作で512MBのメモリが実装されている。同社によれば、軽い動作はARM、プロセッサパワーが必要な動作はx86と使い分けることで、より効率的な作業が行えるという思想とのこと。標準的なネットブックでARM側を動作させた場合、20時間の連続動作が可能になるとのこと。

 とはいえ、実際に動くようにするにはハードウェア面の改造とドライバのインストールなど、実にさまざまなハードルがある。同社では当面のターゲット機としてASUS製の1015PNを設定。簡単に置き換えができるようにするキットを7月中に提供したいとしている。

 ハードウェアの改造ができるなら、2.5インチのベイを持つノートブックで対応機種は選ばない。写真のように、MacBook ProでAndroidを動作させることも可能となっている。ただし、タッチ入力のない液晶パネルでAndroidが動作することでなんらかの実用的な作業ができるわけではないので、あくまでこれはテクノロジーデモと見た方がいいだろう。同社ブースでのデモンストレーションでは、盗難防止用ロックの部分にハードウェアスイッチを仕込んで、ボタン1つでMac OS XとAndroidを切り替えていた。ちなみにMacBook Proの大容量バッテリを活用してAndroidを動作させるのであれば40時間の連続動作が可能になるとのこと。

MacBook Proの画面にAndroidが表示されているのはなかなかみることができない光景。実用的とは言わないが、こうした実験用のモジュールが好きなユーザーには興味深いアイテム
以前は秋葉原などにも出回ったPCでMac OS Xを利用するためのEFIユニット。この手の製品はOSのマイナーバージョンアップですら使えなくなることも多いが、その都度対応を行なっていると言うことで、現時点では最新のMac OS X 10.6.7がGIGABYTEマザーボードで動作していた。ただし、Apple製の以外のハードウェアでMac OS Xを動作させるのはOSの利用ライセンス違反となる可能性が高い

iPnone 4をデュアルSIM化できるというパワージャケット。フレキシブル基板を使って本体内から信号線を引き出して背面に2枚取り付ける製品(というより部品)は、以前から出ていたが、こちらはパワージャケット方式とのこと。ただし利用にはJailbreakが必須とのことなので、アジア地域の展示会ならではの怪しい製品を目にする機会があったとだけ紹介するにとどめる

(2011年 6月 6日)

[Reported by 矢作 晃]