【Macworld 2011レポート】展示ホールレポート Mac OS X編

会期:1月26日~29日(現地時間)
会場:San Francisco The Moscone Center (モスコーニセンター)



 展示ホールレポートは、iOS編に続いてMac OS X編としてMac関連の周辺機器やソフトウェアを中心に紹介する。

●2010年モデルのMacBook Air用SSDがついに発売される?
「Mercury Aura Pro Express」。2010年に発売されたMacBook Air用のフラッシュストレージと交換して利用する大容量SSDである。コントローラにSandForceを採用している

 古くからMac関連の周辺機器を取り扱うOther World Computing(以下、OWC)は、今回のMacworldにおいて、SSD活用によるMac製品のチューンナップを強くアピールしている。注目すべきは、2010年に発売されたMacBook Airに対応するSSDの発売をアナウンスしたことだ。ご存じのとおり、2010年モデルのAirは、Appleがフラッシュストレージと呼称する記憶装置が搭載されている(※ドライブの形状でないことなどを理由に、AppleではSSDという呼び方をしていない)。このシリコンディスクを使った記憶装置への高速なアクセスは、MacBook Airを快適な製品へと仕立てている要となる部分だ。

 Airの発売直後、Photofastが同等のSSDの販売をアナウンスしたものの(しかも取り外した元々のSSDをUSBメモリに転用するアダプタ付き)、結局発売は見送られることになった。発売見送りまでの経緯は真偽は定かではないものの、SSDのコントローラ部分の仕様に問題があったとも言われている。今回、OWCが採用しているのはSandForce製コントローラ。同社によればSandForceを採用することでPhotofast製品で問題とされた部分をクリアし、製品化にこぎ着けたという。また、SandForce製コントローラの採用は純正モデルに比べて最大で22%の高速化も実現するとしている。

 製品名は「Mercury Aura Pro Express」。容量別に180GB/240GB/360GBの3製品が準備されており、それぞれ499.99ドル/579.99ドル/1179.99ドルで順次出荷見込みとのこと。Airの11.6型、13.3型とで区別をしていないようなので、すべての容量が両対応になるものと思われる。

 実はApple純正フラッシュストレージの場合、13.3型のみに提供される256GBタイプを11.6型に流用するのは他のパーツとのクリアランスでやや厳しい面がある。そうした部分に言及してないところをみると、大容量モデルでも11.6型に収められる目処がOWCではついているのかもしれない。ただし360GBモデルの出荷時期は他の2製品に比べてやや遅くなる見込みとのこと。

 もちろんMercury Aura Pro Expressの取り付けはMacBook Airの裏蓋を開けて、本体内部へとアクセスして部品を交換する作業となる。Appleによる本体メーカー保証は切れることになるので、交換は自己責任で行なう。Airの裏蓋はペンタローブという特殊な形状のネジで留めてあるのだが、OWCはAirに対応するペンタローブドライバーを同梱する形で製品を出荷するという。交換後はAppleによるMacBook Airの保証はなくなるが、Mercury Aura Pro Expressに対してはOWCから3年間のメーカー保証が付く。

 OWCは他にもSSDによる従来Mac製品のチューンナップを各種提案しており、2008/2009年発売のMacBook Airに対応するSSD「Mercury Aura Pro MBA」もあわせて発表した。こちらは、1.8インチのいわゆるドライブ形状を保ったSSDだが、接続ケーブルと一緒に提供される。容量は60GB/120GB/240GB/480GBで、順に199.99ドル/299.99ドル/579.99ドル。480GBのみ価格未定となっている。これも前出同様にSandForceコントローラを採用し、HDDモデルはもちろんのこと、純正SSDモデル以上の高速化を謳い文句にしている。

 さらにIDE/ATAといったレガシーインターフェイスに対応する3.5インチ型のSSD「Mercury EXTREME Pro Legacy Edition」(40GB~480GB)や、2.5インチのIDE/ATAに対応する「Mercury Legacy Pro」(40GB~240GB)など、新旧モデルを含めた幅広いApple製品に対して、SSDの利用を訴求していく試みだ。ほかにも光学式ドライブを排して、SSDを追加するマウンタなども用意していてなかなか興味深い出展が多い。

2008/2009年発売のMacBook Airに対応するSSD「Mercury Aura Pro MBA」を搭載した旧MacBook Airを、純正SSD搭載の同一モデルと比較。コールドスタートから数種のアプリケーションを起動、さらに各種マクロを実行にして完了するまでの時間を比較し、その速度差を見せていたプライマリのHDDをSSDに交換してポータブルタイプのMacを高速化。元々入っていたHDDは、光学式ドライブのユニット部分に収めるマウンタ(69.99ドル)を使ってデータストレージに再利用するという提案。使われているSSDはOWCより発売済みのSATA接続対応品「Mercury Extreme Pro SSD」NewerTechブランドから発売され、OWCが販売するeSATA→ USB 3.0のアダプター。eSATA対応の外付けHDDを、このアダプタを介してPC側のUSB 3.0インターフェイスに接続するというかなりニッチなニーズに応える製品

●最大規模のブースを出展するHyperMac

 CESでiPad用の外付けHDD「HyperDrive iPad Hard Drive」を発表、展示したHyperMacだが、Macworldにはもう1つ新たな「HyperDrive Hard Drive for iPad」を持ち込んでいた。

 よく読むと名称が微妙に異なっており、別の製品であることがわかる。いずれもApple純正の「Apple iPad Camera Connection Kit」を経由してUSBインターフェイスによりマスストレージ扱いで接続する。基本的にCamera Connection Kitはバスパワーによるカードリーダ、あるいはカメラのUSB接続を目的に作られているのだが、製品内部にバッテリを持つなどして対応しているとのことだ。

 本体下部には給電及び充電のための5V入力と、mini USBインターフェイスが見える。PC/MacとiPadとで同一形状のUSBインターフェイスが分けられているのは、前者は容量に制限がないのに対し、後者は対応するマスストレージの容量に制限がかけられているためのものと考えられる。つまり大容量ドライブを積んでCamera Connection Kit経由でiPadに接続するため、こちらのポートでは内部で仮想的な容量のドライブをいくつか設定し、それを自動的に切り替えながらiPad側からアクセスすることで、iPad側からもすべての容量を参照できるという仕組みのようだ。2月下旬から3月上旬には出荷準備が整うという。

CESで発表。出荷の始まっている「HyperDrive iPad Hard Drive」(写真上)。ケースのみの場合は249.99ドル。写真手前が今回発表された「HyperDrive Hard Drive for iPad」「HyperDrive Hard Drive for iPad」の下部にあるインターフェイス部分。5Vの給電のほか、PC/Macに接続するためのUSBインターフェイスと、iPadに接続するためのインターフェイスが各1個ある。後者はApple純正の「Apple iPad Camera Connection Kit」を経由してiPadに接続するHyperMacのブース。展示ホール正面の一等地にあり、単独ブースとしてはMacworld 2011の中でも最大のブースとなっている。なおニュースリリースによると3月にはMacとHyperJuice Batteryをつなぐ数種のアダプターソリューションを提供するとのことだが、今回のブースには出展されていなかった

●クラウドへのTimeMachineバックアップなど、会場でみかけたあれこれ

 1月26日付けでβサービスを開始したという「Dolly Drive」。Mac OS XのTimeMachineをクラウド上で実現するサービスだ。もちろん、Dolly(ドリー)は世界初のクローン羊の名称に由来する。

 事故は出張時など都合の悪いときに限って起こるのがマーフィーの法則。筆者も万一の事態に備えて、TimeMachine用のHDDを毎回持参して出張に臨んでいる。それがどんなスタイルでも、クラウドで実現するのであれば興味をそそられる。

 出張先で試すのも、やはり事故につながるため、まだ実際に使っていないので、クラウド上でのTimeMachineバックアップにおける細かい設定やリカバリ方法、そしてなによりバックアップ&リストアを行なう際の転送速度など、チェックしないといけない部分は多いものの、かなり気になる存在だ。プライスプランとしては、250GB容量で1カ月あたり10ドルが標準プランとなっている。

クラウドにTimeMachineバックアップを置けるという「Dolly Drive」。1月26日付けでβサービスを開始したとのこと。標準のプライスプランは250GB容量で1カ月あたり10ドル
「splashtop」。iPadの画面をPCやMacの拡張デスクトップにするiOS app。PC/Mac側にもソフトウェアを導入する必要がある。似たソフトはすでにAirDisplay、DisplayPadなどがあってsplashtopも含め、いずれもWi-Fiで接続する。既存のソフトがせいぜい1秒あたり数フレームという画面書き換えであるのに対し「splashtop」は、ムービーを音飛びすることなく再生できる程度のフレームレートを実現していた。おそらく全画面書き換えの出力ではなく、適度に情報を間引いたストリームによる画面描写を行なっているものと想像される。App Storeで1.99ドルということなので、気軽に試せる「Boom」。ソフトウェアでiTunesによる音楽再生や、QuickTimeによる映像再生、YouTube試聴などすべての音量を増幅させることができるとのこと。デモでは確かにオン/オフの切り替えでボリュームが明らかに大きくなっていた。増幅時のイコライズや、再生ファイルを特定しての増幅適用も可能であるとのこと
Macworldではお馴染みのシェアウェアバンドルセットの販売。今年はZeoBITがMacKeeperバンドルとして、16アプリケーション/総額510ドル以上のセットを、39ドルでバンドル販売していた。なお会場限定のプロモーションコードを使うと、さらに半額の19ドルほどになる専用紙に印刷されたマイクロドットを使うデジタルペンの認識技術「Anoto」を利用した教員/教育機関向けのソリューション。デジタルペンとUSBアダプタを一対にすることでUSBアダプタを差したPC/Macを簡単に電子黒板にできる。外部に大型ディスプレイをつないでPC/Macの画面をミラーリングしておくと便利。ペン、USBアダプタ、専用紙がセットになったスターターセットが269ドルから。Cansonが発売ようやくアダプタ形式ではない1本のmini DisplayPort→HDMI変換ケーブルがKANEXから販売される。アダプタではないが、変換用のチップは入っているので価格は44.95ドル。なお、現在米国でキャンペーン中で、このケーブルをAppleStoreで購入してKANEXに製品登録した場合は、HDMI 1.4aに対応した両端がHDMIのケーブルがプレゼントされるという。2月末まで
以前よりあるフルキーの入力が片手で可能なキーボード。ざっくり言うと親指シフトと同じ要領で、キーボードの組み合わせで異なる文字が出せるため、慣れると片手でもかなり速いらしい。従来はUSB接続だったが、Buletoothに対応。iPad向けのソフトウェアキーボードも用意するなどして、新世代へと突入した。右手用、左手用、利き腕にあわせてレイアウトが選べる(写真右)SMK-LINKのBuletooth対応、電卓機能付きテンキーボード。49.99ドルで販売されるという
博物館や美術館などでのオーディオ&ビジュアルガイダンス用に実用化されている「PARASYNC」。iOSデバイスの集合型充電&同期ユニットで、トレイあたり20台、5トレイで最大100台のiOSデバイスを自動的に同期して充電することができる。何らかのソフトウェアをインストールする必要は一切なく、iTunesの機能だけで同期設定を行なうことができるカメラ関係のショーではお馴染みのメーカー「LENSPEN」。元々はレンズについた皮脂や汚れをとるクリーニングツールを作っている。iOSをはじめタッチ対応のデバイスが増えたことでIT系のイベントにも登場した。SideKickは、iOSデバイス程度の大きさの製品をターゲットに、付いた皮脂汚れを取り、また付きにくくする製品iPhone用ケースでは有名メーカーの1つ「Mophie」のブースで販売されていたクリーナー液。その名称が「apple juce screen cleaner」。オレンジの皮から取れるオレンジオイルにクリーニング効果があるのは知られているが、リンゴもそうとは知らなかった……わけではなく、あくまで製品の名称。リンゴ由来の成分は含まれていない

●2012年の開催日程を修正?! 出展社の獲得が展示会存続のカギに
今回のMacworldをスポンサードする企業。ブース出展こそしていないが、MicrosoftもOffice for Mac 2011の名称でスポンサーに名を連ねている。

 昨年まではMacworld出展を継続していたMicrosoftだが、昨年末のホリデーシーズンにあわせてOffice Suiteの最新バージョンとなる「Office for Mac 2011」を発表した。そこで一段落したという理由もあってか、Macworld 2011へはブースとしての出展は行なっていない。

 一方でショー自体のスポンサーには名を連ねていて、入場バッジに付属するカードはOffice 2011の50ドル割引クーポン(兼、抽選で無料のライセンス提供)になっている。また、既報のとおり、Office for Mac 2011の30日間無償トライアルのスタートも、Macworldの開催時期とタイミングをあわせて開始されたものと受け取って間違いないだろう。トライアルは米国はもちろん、日本でもすでにスタートしている。

 また、やはり同タイミングに米国ではiOS App「Microsoft OneNote for iOS」がApp Storeから無償でダウンロードできるようになった。これはPC向けOffice 2010などに含まれるOneNoteのiOS対応クライアントソフトで、WindowsLive IDを使って、ノートの同期がPCとiOSデバイス間でできるようになる。こちらの制作はOfficeチームを中心としたもので、Office for Macを担当するMac BUが直接関わっているというわけではないということだが、開発チーム間での連携はとられているということだった。

 サンプルのスクリーンショットのように、iOSデバイス上で日本語の入力、表示も行なうことができるが、残念ながら現時点では米国のApp Storeからしか入手することができない。Microsoftの検索エンジンであるBingを使う検索App「Bing」も米国内での入手に限定されていることから、これはビジネス戦略上の都合だろう。内部的な日本語対応は行なわれているので、いずれは日本国内でiOS向けのMicrosoft製Appが利用できる日が来るかも知れない。

米国のApp Storeから無償でダウンロードが可能になった「Microsoft OneNote for iOS」。WindowsLive IDを使って、PC向けOffice 2010のOneNoteとのノートや写真の同期が可能になる。内部的には日本語にも対応しているが、日本のApp Storeからは残念ながらダウンロードすることはできない

訂正された2012年の開催日程。2012年は1月26日(木)~28日(土)の会期での開催となる。ホール内の垂れ幕も、事前レポートの掲載時から修正されていた。このカットは修正後の写真である

 Macworld 2011の展示ホールは、オープンしていた3日間を通して来場者が多く、盛況ぶりが窺えた。展示スペースが昨年までに比べると縮小しているのは残念だが、この規模で継続されるのであれば、また2012年もこの場所に訪れたいとは思う。事前レポートでも触れたように、プラットフォームはiOS、Mac OS Xともに拡大しているので、サンフランシスコで開催する限りそれなりの来場者を集めることはできそうだ。課題となるのはどれだけの出展社を集めることができるかだろう。

 そして理由は定かではないが、事前レポートでお伝えした2012年の開催日程が早くも修正されていた。事前レポートでは2011年とは曜日の並びが変わって土曜~月曜のスケジュールと記載していたが、修正後は今年とほぼ同じ木曜~土曜のスケジュールに戻っている。あらためて、2012年の開催日程は、1月26日(木)から28日(土)と訂正する。やはり、順風満帆で来年また会いましょうとは言いにくそうだ。

(2011年 1月 31日)

[Reported by 矢作 晃]