イベントレポート
COMPUTEX TAIPEIで2年目を迎えたスタートアップが集う「InnoVEX」
2017年6月5日 06:00
5月30日~6月3日(現地時間)の5日間にわたって台湾・台北で開催されたCOMPUTEX TAIPEIでは、Intel、AMDやMicrosoftといったPC業界のプラットフォーム企業、DellやASUSなどの大手PCメーカーから多くの新しい発表が行なわれた。
そうした一方でCOMPUTEX TAIPEIの主催者であるTAITRA(Taiwan Trade Center、台湾貿易センター)は、近年はPC一本足打法から脱却するための手を着々と打っており、昨年(2016年)からCOMPUTEX TAIPEI併催のイベントして“InnoVEX”という新しい形の展示会を行なっている。
今年(2017年)は、会期最初の3日間となる5月30日~6月1日の4日間、TWTC台北貿易センター展示ホール3でInnoVEXを開催。言ってみれば“スタートアップのためのCOMPUTEX”でも表現すべき展示会で、台湾や台湾国外のスタートアップ企業が参加する展示会となっている。
TAITRAの新しい取り組みとなるスタートアップ企業向けのInnoVEX
ここ近年、台湾政府、およびその外郭団体であるTAITRAは、新しい産業の創出に力を入れている。その中心にすえられているのが、IoT(Internet of Things)関連の産業振興、それと同時にIoT関連のベンチャービジネスを行なうスタートアップ企業の後押しだ。そうした中で、デジタル関係のイベントとしては台湾はもちろんアジアでも最大規模の1つであるCOMPUTEXには、世界中からデジタル業界の関係者が多数参加するイベントとして、台湾政府やTAITRAにとってはそうした台湾の新しい産業をアピールするチャンスと言える。
そこで、昨年から始まったのがInnoVEXで、COMPUTEX TAIPEIの併催イベントとして、今年は5月30日~6月1日(現地時間)というCOMPUTEX TAIPEI会期(5月30日~6月3日)のうち最初の3日間に開催されている。会場はCOMPUTEX TAIPEIのメイン会場となる台北南港国際展示場ではなく、以前メインの会場だったTWTC台北貿易センター展示ホール1に隣接する、TWTC台北貿易センター展示ホール3となる(余談だが、TWTC台北貿易センターの展示ホールはホール1とホール3しかない。ホール2は以前はあったのだが、現在は取り壊されて別の建物を建設中)。
TWTC台北貿易センター展示ホール3に足を踏み入れると、台北南港国際展示場やTWTC台北貿易センター展示ホール1とは大分違う印象を受けるだろう。COMPUTEX TAIPEIのそれらの会場では、ASUSやAcerといった台湾でも世界的な企業や、Microsoftのグローバルに巨大な企業が大きめのブースを構えており、同時に中小ブースがひしめき合う、そうしたたブース配置になっている。
それに対して、InnoVEXでは多くが日本の展示会のブース単位で言うところの1小間よりもさらに小さい、机だけというブースになっている。スタートアップ企業にとっては、ブースにコストはかけていられない、少しでも多くの人の目に触れればそれでいい、そういうニーズを満たすためにこのような形になっているのだとろう。
また、InnoVEXには参加しているスタートアップ企業などが講演を行なうためのステージが大小2つ用意されているのも印象的だった。スタートアップ企業というのは、ある程度創業者が資金を用意して始めるわけだが、有望な投資先を探している投資家からの投資が喉から手が出るほど欲しい企業がほとんどだ。自分のビジョンなりをプレゼンテーションして、投資家なら投資してもらい、メディアには記事を書いてもらい、それが投資家の目に触れる……そういうことを期待している。
多くのスタートアップ企業がAIやマシンラーニングを取り入れている
そうしたスタートアップの展示だが、多くはほかの展示会で見たことがある、どっかで見たことがあるなという展示が多かった。
例えば、ambilabsのIoTリモコンは、部屋に置いておくと温度や湿度などを測りクラウドへ送り、その情報に応じてクラウドのAIが人間の快適度などを判断し、赤外線リモコンを利用してエアコンを自動で操作する仕組みになっている。今回展示していたのは、第2世代の製品ということで、すでに第1世代の製品は既にクラウドファンディングで出荷済みとのこと。それ以外にも、スマートロック、スマートシューズなど、オリジナリティある製品は少なかった。
PC向けの製品という意味では、ICE Computerというスタートアップ企業が、カード型PCが出展していた。Windowsが動作するカード型PCで、ドックに挿してデスクトップPCのように使ったり、タブレットドックに挿してタブレットとして使えるなどとアピールしていた(ただし現状ではモックアップで動作していなかった)。
展示そのものは、どこかで見たソリューションだが、多くが“AI”なり“マシンラーニング”をキーワードにしているものが目立った。
IoTは基本的にそれが単体で動いているわけでなく、ほとんどの場合はクラウド側にあるGoogleやMicrosoft Azureなどのクラウドサービスと連動して製品を展開していることが多い。したがって、AIやマシンラーニングの機能を実装することは容易で、どんどん積極的に取り入れていることが増えているのだと感じた。AIやマシンラーニングを使った製品やサービスは、すでに明日の話しではなく、今日の話題なのだ、改めてそういうことを実感させられる展示会だった。