イベントレポート
第8回教育ITソリューションEXPOレポート
~未来の学びがココにある! 学びNEXTスペースが倍増
2017年5月29日 13:58
2017年5月16日~18日、東京ビッグサイトで「第8回教育ITソリューションEXPO」(略称EDIX)が開催された。EDIXは、学校/教育関係者を対象とした教育分野日本最大の専門展示会である。
近年は、STEM教育などと呼ばれる、科学や技術、工学、数学を重視した教育に注目が集まっており、前回からプログラミング教材やロボット教材などの未来の学びを集めた「学びNEXT」と呼ばれるゾーンが設けられるようになった。
今回は、その学びNEXTのスペースが前回の2倍以上に広がっており、出展者数もさらに増加していた。そこで、学びNEXTのブースの中から、筆者が特に興味を持ったものを中心に紹介していきたい。
MakeblockがSTEM教育用ロボットキットやモジュール式ドローンを展示
中国のMakeblockは、STEM教育用ロボットキット「mBot」やそのオプション機器、プログラムで制御できるドローンを展示していた。mBotは、昨年(2016年)のEDIXでも展示されていたが、日本でも正式販売が開始され、解説本も2冊刊行されるなど人気を集めている。
mBotは、マイコンボードとしてArduinoを採用したロボットキットで、ドライバー1本で簡単に組み立てることができる。距離センサーや赤外線センサー、照度センサー、ライントレースセンサーなどのセンサーを搭載しており、ScratchとArudino言語によるプログラミングが可能だ。オプションの機能拡張パックを利用することで、4足歩行ロボットやカエルロボットなどへの組み替えもできる。
また、新製品としてモジュール式のプログラミング可能なドローン「Airblock」が展示されていた。Airblockは、プロペラ部分がモジュール式になっており、磁石の力で固定される仕組みになっているため、簡単に着脱できる、いわゆるマルチコプタータイプのドローンモードと、水上や陸上を走行できるホバークラフトモードの2種類の形態に組み替えられることが特徴だ。Airblockも、プログラミングで制御可能であり、プログラミング教材としても面白そうだ。発売は2017年夏の予定で、価格は2万円台とのことだ。
mBotや超小型データロガー、プログラミング可能なドローンをデモしていたケニス
教育用理化学機器の開発・販売を手がけるケニスは、MakeBlockのmBotや超小型データロガー、教育用プログラミングドローンなどのデモを行なっていた。mBotは、Makeblockが開発した製品だが、ケニス扱いの製品は日本語のワークブックが付属することが特徴だ。また、機能拡張パックが付属するモデルもある。
各種のセンサーを搭載した超小型データロガー「ポケットラボ」も興味深かった。ポケットラボは、38×36×15mm(幅×奥行き×高さ)、重さ14gという超小型サイズながら、10種類ものセンサー(物理モデルの場合。廉価版の環境モデルは6種類)を搭載し、32,000のデータを記録できるほか、Bluetooth 4.0経由で、リアルタイムにスマートフォンやタブレットなどに転送できる。
構造物やジェットコースターの模型の台車にデータロガーを装着して動かすデモを行なっていたが、振動の様子などが一目でわかるので、物理実験や自由研究はもちろん、さまざまな用途に活用できるだろう。物理モデルの税込価格は30,240円、環境モデルは18,144円とやや高価だが、サンプリングレートも高く、Scratchとの連動も可能とのことであり、中学や高校用の教材として優れた製品である。
また、プログラミングで制御できる教育用プログラミングドローン「CoDrone Lite」のデモも行なわれていた。CoDrone Liteは、133×133×30mm(同)、重さ37gの超小型ドローンで、Bluetooth 4.0経由でPCやスマートフォンから操縦できるだけでなく、プログラミングによる自動運転にも対応していることが特徴だ。Scratchのようなビジュアルプログラミング環境が用意されているので、小学生でも簡単にプログラミングが可能だ。ブースでは、離陸後、対角線上のゴールまで飛行、その後着陸させるプログラムを作成する体験デモが行なわれていた。
教育向けマイコンボード「chibi:bit」をアピールしていたスイッチエデュケーション
スイッチサイエンスは、電子工作用の電子部品の開発・製造・販売を行なっている会社であり、最近は委託販売なども行なっている。そのスイッチサイエンスの子会社が、スイッチエデュケーションであり、スイッチサイエンスが扱う電子部品のなかでも、とくに教育に向いた製品の販売や教材作成を行なうために、2017年5月に設立されたばかりの会社だ。
そのスイッチエデュケーションのブースでは、教育向けマイコンボード「chibi:bit」に関する展示を行なっていた。
chibi:bitは、イギリスのBBCが11歳から12歳の子供全員に無償で配布しているマイコンボード「micro:bit」の互換ボードであり、25個のLED(光センサーとしても使える)と2個のボタンスイッチ、3つのタッチセンサー、加速度センサー、電子コンパス、温度センサーを備えている。
micro:bitはBLEモジュールを搭載しており、BLE経由でスマートフォンやほかのmicro:bitと通信が行なえることが特徴だが、micro:bitのBLEモジュールは技適を取得しておらず、日本国内では利用できない。
そこで、スイッチサイエンスが、技適取得済みのBLEモジュールを搭載した互換ボード「chibi:bit」の開発・販売を行なうことになったのだ。chibi:bitは、Scratchに似たビジュアルプログラミング環境でプログラミングが可能で、開発環境に実機のエミュレータも用意されているので、手軽にプログラムを作成できることが魅力だ。
また、拡張性も高く、オプションモジュールによって機能を拡張できる。スイッチエデュケーションのブースでは、同社が開発中のオプションモジュールがいくつか展示されていた。
サーボモジュールは、小型のラジコンサーボモーターを制御するためのモジュールで、製作例として二足歩行ロボットのデモが行なわれていた。また、サウンドの再生を可能にするスピーカーモジュールや、DCモーターを制御するモーターモジュールも展示されていた。
教育事業やエンターテインメント事業を手がけているワオ・コーポレーションのブースには、同社の教室で利用しているSTEM教育用の教材が展示されていたが、その中にはchibi:bitを活用した学習用ロボットもあった。
このロボットは、PCを使わずに、3つのボタンによって前進や旋回といった動作をプログラミングすることができるので、キーボードやマウス操作に不慣れな未就学児でも楽しめるという。この学習用ロボットはあくまでも試作品とのことだが、chibi:bitを採用しているため、低価格で実現できるそうだ。
IchigoJamによるプログラミング学習体験会を行なっていたナチュラルスタイル
ナチュラルスタイルのブースでは、こどもパソコン「IchigoJam」を利用したプログラミング学習の体験会や、近日発売予定の「IchigoIgai」と「IchigoDake」、さくらの通信モジュール用IchigoJamシールド「IchigoSoda」などの展示が行なわれていた。
IchigoIgaiはIchigoJamのインターフェイス部分、IchigoDakeはIchigoJamの本体部分を抜き出したようなものであり、両者を組み合わせることで、IchigoJamとして利用できる。
また、タミヤとナチュラルスタイルが共同開発した「タミヤロボットスクール」についての展示も行なわれていた。
このスクールは、メカニックコースとプログラミングコースの2コースがあり、プログラミングコースでは、タミヤの新製品「カムプログラムロボット工作セット」をカスタマイズして、IchigoJamを載せたものを教材として利用する。
新コースに使われるロボット教材を展示していたヒューマンアカデミー
子供向けロボット教室の最大手であるヒューマンアカデミーは、2017年9月から開講される新たなコースに関する展示を行なっていた。そのコースとは、アドバンスプログラミングコースと呼ばれるもので、従来のアドバンスコースの代わりとなる。
従来は、プライマリー、ベーシック、ミドルの順に進み、次はアドバンスとなっていたのだが、プログラミングを学ぶコースを作って欲しいという要望が多かったため、アドバンスプログラミングコースにリニューアルされることになったという。
アドバンスプログラミングコースでは、マイコンやセンサー、モーターなどを組み合わせてロボットを製作し、タブレットで動作する「アドプログラマー」というアプリを使って、ビジュアルプログラミングを行なう。タブレットも教材に含まれており、PCを別途用意する必要はない。また、キーボードからプログラムを入力する必要もないので、キーボードに慣れていない子供でも手軽にプログラミングに挑戦できる。
そのほか、ミドルコースやロボティクスプロフェッサーコースのロボット教材の作例なども展示されていた。
ブロックとロボットでプログラミングを学べる「ソビーゴ」
ワイズインテグレーションのブースでは、プログラミング教材「ソビーゴ」の展示やデモを行なっていた。
ソビーゴには、3歳から学べる「こどもブロック・プログラミング」と小中学生向けの「こどもロボット・プログラミング」の2種類の教材があり、前者は実物のブロックとタブレットを使ってプログラミングを学習し、後者はロボットとこどもパソコン「IchigoJam」を利用してプログラミングを学習することが特徴だ。
また、オプションの赤外線センサーを搭載したロボットも展示されていた。
ブロックによるロボット教材を展示していたアーテック
学校教材や教育玩具の大手であるアーテックのブースでは、同社のアーテックブロックを使ったロボット教材を中心に展示やデモを行なっていた。
アーテックブロックは、ソニーの「KOOV」のもととなったブロックであり、中学校の技術科や高校などでも採用されている。アーテックブロックと組み合わせるマイコンボードとして、Arduino互換のスタディーノを採用しており、対象年齢や理解度に応じてアイコンプログラミング環境、ブロックプログラミング環境、Arudino言語によるプログラミング環境を使い分けられることが特徴だ。
XYZプリンティングジャパンが未発表の製品を含む多数のパーソナル3Dプリンタを展示
パーソナル3Dプリンタ市場で、世界No.1シェアを誇るXYZプリンティングジャパンのブースでは、未発表の小型パーソナル3Dプリンタ「ダヴィンチ Nano」や同社の新製品が多数展示されていた。
ダヴィンチ Nanoは、FDM方式のダヴィンチシリーズのなかでもっともコンパクトなモデルであり、本体サイズは280×280×303mm(同)、重量は5kgである。最大造形サイズは120×120×120mm(同)で、最小積層ピッチは0.1mmと、小さくてもスペックは十分だ。
ダヴィンチ Miniは造形エリアにカバーがないため、造形中に子供が高温のヘッドに触れてしまう恐れがあったが、ダヴィンチ Nanoは造形エリアにカバーがあるのでそうした心配はない。ダヴィンチ Nanoの販売時期は2017年夏頃で、価格は3万円台半ばを予定しているとのこと。
また、光造形方式の3Dプリンタの新製品「ノーベル 1.0A」や2色のフィラメントを混ぜて出力できる「ダヴィンチ Jr. 2.0 Mix」なども展示されていたほか、教育機関への導入事例も紹介されていた。
ボンサイラボが税別3万円を切る超低価格パーソナル3Dプリンタを展示
3Dプリンタの製造販売を行なっているボンサイラボでは、新製品の小型パーソナル3Dプリンタ「BS CUBE」の展示を行なっていた。
BS CUBEは、初心者向けの3Dプリンタで、コンパクトかつ軽いことが特徴だ。本体サイズは210×195×275mm(同)で、重量も約2.4kgなので、移動も簡単だ。最大造形サイズは110×110×125mm(同)と、本体のサイズの割には大きい。
また、上部に液晶パネルとSDカードスロットを備えており、PCを接続しなくても出力が可能だ。発売は2017年夏の予定で、価格は税別29,800円とリーズナブルだ。
また、学校向けの3Dペン「BS 3D PEN EDU1」のデモも行なっていた。BS 3D PEN EDU1の税別価格は6,000円で、こちらも導入しやすい価格だ。
そのほか、発売時期や価格は未定だが、パーソナル3Dプリンタの新製品「BS HANDI」も展示されていた。こちらは、その名の通り、上部にハンドルがついており、片手で持ち運べることが特徴だ。
IoT乾電池「Mabeee」や人工知能ロボット「Musio」など、さまざまな製品が展示
そのほか、学びNEXTエリアの展示の中から、筆者が面白そうだと思った製品をまとめて紹介する。
ノバルスのブースでは、スマートフォンで出力を制御できる乾電池「Mabeee」の展示やデモが行なわれていた。
Mabeeeの形状は単3乾電池と同じで、中に単4乾電池を入れて利用する。単3乾電池で動く機器にMabeeeを装着することで、スマートフォンの専用アプリからその機器の操作が可能になるというものだ。
マイコン制御のオモチャなどには使えないが、モーターと乾電池で動くシンプルなプラレールやミニ四駆などを遠隔操作できるようになる。Mabeeeの活用アイデアコンテストを開催するということで、Mabeeeを使った作例も展示されていた。
アドウィンのブースでは、電子回路や制御を学ぶための教材が各種展示されていた。教材は、電子回路の基礎を学ぶためのものから、ARMプロセッサやFPGAの学習用までさまざまなものが用意されている。
また、AKA LLCのブースでは、人工知能ロボット「Musio」を利用した英語学習のデモが行なわれていた。Musioの音声は合成音声だが、かなり自然に英会話が行なえていた。
ソニーMESHプロジェクトのブースでは、「MESH」のデモを行なっていた。MESHは、MESHタグと呼ばれる小さなブロックを使って、IoT機器などのプロトタイピングを実現するためのツールであり、実際に線でブロックを繋がずに、タブレットのアプリケーション上でブロックとブロックの接続関係を示すだけで、実際のブロックに反映されることが特徴だ。
GPIOタグを使えば、センサーやモーターなどの制御も可能であり、ハッカソンなど限られた時間の中で、プロトタイプを作成しなければならないと用途に適している。
また、Ascent Information Technology Tradingブースでは、USB経由で接続して利用する「HUE HD Proカメラ」と「HUE HDカメラ」が展示されていた。
これらは、いわゆる写画カメラとして授業で活用できるほか、コマ撮りアニメーション作成ソフトがセットになったモデルもあり、クレイアニメなどのコマ撮りアニメーションを作成することもできる。
2010年から社内での英語公用語化を進めてきた楽天のブースでは、そのノウハウを活かし英語を楽しく学習できる「まなみ~」と大人向けの「LINGVIST」のデモを行なっていた。
まなみ~は、小学校から高校までに必要な英単語6,000語以上を学習できるアプリで、スマートフォンやタブレット、PCで動作する。
中学校技術・家庭科の教材メーカーのトップマンは、プログラミング学習教材「コロックル」のデモを行なっていた。コロックルは、アラーム機能やタイマー機能を備えた時計として使うだけでなく、温度計としても利用でき、専用ソフトで発光色とメロディを自由にデザインできることが特徴だ。