イベントレポート

ペン型デバイスに注力するVAIO。Windows 10 Anniversary Updateに期待

~日本マイクロソフト & VAIO共同記者説明会

 日本マイクロソフト株式会社とVAIO株式会社は、COMPUTEX TAIPEI 2016の会場近くで共同の記者説明会を開催し、両社のWindows 10への取り組みなどについて説明を行なった。

 日本マイクロソフト側からは、執行役 コンシューマー&パートナーグループ OEM統括本部長の金古毅氏と、業務執行役員 Windows&デバイス本部長の三上智子氏が、VAIO株式会社は執行役員副社長 赤羽良介氏が登場した。

 記者説明会の冒頭では、日本マイクロソフトの金古氏からVAIOの赤羽氏に質問を行なう型式で行なわれ、その後、赤羽氏が記者からの質問に答える形で展開された。

ペンには思い入れを持って取り組んでいる。今後はペンの標準化などの動向に期待

金古氏 Windows 10が発売されてから、クラムシェル型PC、コンバーチブル、VAIO Phone Bizなどさまざまなデバイスをリリースしているが、Windows 10についてどう評価しているか?

日本マイクロソフト株式会社 執行役 コンシューマー&パートナーグループ OEM統括本部長の金古毅氏

赤羽氏 Windows 10には実に多くの新しい機能が実装されている。Windows 10はサクサク動くし、セキュリティ面での堅牢性が上がっている。そしてWindows 7とのUIの親和性も高く、乗り換えのハードルは低い。その辺りをMicrosoftがもっとアピールしてもいいのではないかと思っているぐらいだ。

 また、現時点ではあまり使われていない便利な機能もあり、今は価値はないかもしれないが、近い将来にそこがユーザー様の価値になると考えている。

金古氏 Windows 10 Anniversary Updateでは、ペン入力の拡張が重要なアップデートの1つになっている。VAIOはかなり早くからペンに取り組んでいるが?

赤羽氏 VAIOはペンには強い思い入れを持って取り組んでいて、ソニー時代にVAIO Duo 11という製品を出してからずっとペンをサポートしている。その当時はこれから紙のない新しい世界が作れると思って取り組んだ。全てがPCなどのデジタルデバイスの中に入り、PCが出入り口になって一律に管理でき、そこから先は色々な形の再利用が可能になると考えた。それがお客様の価値になるだろうと。

 そうした夢をもって取り組んでいたが、その実現には課題があった。レイテンシや書き味もまだまだ改善の余地があるし、ペンとタッチを同時利用する場合のパームリジェクション、文字認識もまだレベルを上げる余地があるなど、紙とペンの代わりとして使うにはまだまだチャレンジすべきところが残っている。

 しかし、自動車の自動運転なんてまだまだ先だと思っていたことが、現実になりつつある時代。そういう夢物語も、現実になるかもしれないと考えている。確実な一歩ということで、誰もが手軽に使えるWindows 10 Anniversary Updateというのはその第一歩だと考えている。

 今後、よりペンを手軽に使うには、現在の紙とペンと同じように、誰もが同じペンを持っていて誰もが使えるという世界にならなければならず、それに向けての取り組みをやっていかないといけない。

 非公式にではあるが、既にSurfaceのペンがVAIOでも使えるし、その逆にVAIOのペンもSurfaceに使えるようになっているなど、今のマウスのように互換性がもたらされている。そういうことをMicrosoftと着々と取り組んでいると聞いているので、ペンには期待したい。

VAIO株式会社 執行役員副社長の赤羽良介氏

VAIO Phone Bizは合格点、Continuumの開発をMicrosoftとともに尽力

記者 真のVAIO Phoneと言える、VAIO Phone Bizをリリースしたが、その後のお客様の反応などを教えて欲しい。

赤羽氏 お陰様で、一言で表現すれば好評を博している。今回は合格点かな、と(会場ともに笑)。

 VAIOとしての質感にこだわり、VAIOならではという努力した部分があり、さらにビジネス向けにフォーカスしている。企業ユーザー様からの問い合わせを多数いただいている。その最大の理由はセキュリティであり、端末の管理性。日本では社内のITシステムとの相性もあって、iOSやAndroidだと100%管理するのが難しいという課題がある。

 しかし、それがWindows 10 Mobileであれば、既にWindowsで構築している管理システムでの管理能力が広がっていく。ただ、そうしたご興味を実売に繋げていくのはこれからの課題。

 VAIOとして努力したところは、NTTドコモのIOT(相互接続性試験)を取得し、キャリアアグリゲーションにも対応したこと。そして何よりも一番大きいのはContinuum。開発段階では我々が利用しているSoCではContinuumには正式には対応していなかった。しかし、そこには大きな可能性があると考えて、Microsoftと一緒に取り組んできた。ここはまだまだ進化させていかないといけない。

 現在PC市場では2in1、2in1と声高に言われているが、私としてはContinuumは“1 for 2”だと考えている。あくまでPCを置き換えるものではないが、Officeが使えればいいような端末程度のことであれば、十分と考えており、大きな可能性があると思う。開発は本当に大変だったが、何とかなるものだなぁ、というのが私の感想だ。

※日本マイクロソフト技術担当からの補足: 実はMicrosoft本社でもContinuumの開発をVAIO提供の端末で進めていた経緯がある。

2月に発表され4月から販売開始されたVAIO Phone Biz

記者 VAIO Phone Bizの価値というのはどこにあるのか?

赤羽氏 Windowsの魅力は生産性を上げる環境を提供できるということ。それと同じユーザー体験をシームレスに提供できる。まさにMicrosoftが提供するモバイルファースト、クラウドファーストというのはそういうことであって、いつでもどこでも作業できる、最適な体験を提供できる。その結果として生産性を上げられることに価値がある。そうした理由からVAIO Phone Bizではビジネスにフォーカスしている。

記者 MicrosoftはWindows Holographicをパートナーにも開放するというアナウンスをした。その点についてどのように考えているか?

赤羽氏 一言で言えばワクワクしている。私もVRを体験してきたが、座ったままでなく、動き回れるVRの体験は新鮮でワクワクするものだ。そこにARも加わり、MRとなるとどうなるのか、考えるだけでワクワクする。ただ、それが弊社のビジネスにどのように繋がっていくのか、そこはまだ分かっていない部分も多いので、Microsoftともよくお話をさせていただきたいと考えている。

パーソナルコンピューティング、EMSに次ぐ第3の柱となるビジネスを現在模索中

記者 来月にVAIOの会社設立から2年目を迎える。この2年できたことと、課題について教えて欲しい。

赤羽氏 この2年間でできたことは、当初予定していた商品を出すことができ、ビジネスを軌道に乗せることができ、経営的にちゃんと成り立つように一歩ずつ進んでいる。課題というと?

記者 例えば当初掲げていた35万台という数字の達成はできていないが……。

赤羽氏 数字という意味では、おっしゃる通りだが、PCビジネスを巡る環境が大きく変わっているので、調整の範囲内でやってこれた。社内のディシジョンメイキングも以前よりも早くなっている。

記者 昨年(2015年)新規ビジネスにチャレンジすることを発表したが、その進捗状況は?

赤羽氏 着々と進めている、新規ビジネスというのはEMS(Electronics Manufacturing Service)のビジネスになるのだが、我々のブランドでやるわけではなく、仕事をいただいてやっていく。既にいくつか発表している案件(富士ソフトのPalmiなど)といった成功例も出てきている。

記者 VAIOが今後興味をもってやっていくところはどこになるのか?

赤羽氏 さまざまな変化に対応しながら経営を成り立たせていく。PCビジネスも、EMSビジネスも着々と立ち上がってきて、経営に貢献するようになっている。現在は経営の基盤を固めて、規模は追わずに、いわばニッチ戦略としてやっていく。その上で新しいことにトライしていきたいが、現時点ではそれが何であるかは何も決まっていない。さまざま可能性があると考えている。

 いずれにせよ、経営を安定させていくためには柱が3本ぐらい必要だ。現在1つ目がパーソナルコンピューティングであり、2つ目がEMS。それに次ぐ第3の柱を探していきたいと考えている。現状でもっとも強い柱はパーソナルコンピューティングであることは間違いない。

記者 ペンへの取り組み、スマートフォン事業などの話題がでたか、今後も継続して製品を出していくのか?

赤羽氏 現時点では両方ともイエスだ。

記者 海外のビジネス展開について教えて欲しい。

赤羽氏 大きくやり方は2つある。1つは我々が米国でやっているように自前のビジネスであり、もう1つはブラジルで展開しているようなパートナーと組むやり方。引き続き多くのパートナーと話をしており、将来的には現在展開していないような国に進出する可能性はある。

 Windowsスマートフォンビジネスに関しては、Microsoftを前にしてはなかなか言いにくいのだが、海外展開の方が今のところは難しいのではと考えている。Windowsスマートフォンに関しては、日本が一番期待できる市場なので、まずは日本に集中してやっていく。それがうまくいけば、海外でも展開するという可能性が出てくると考えている。その場合でもあっても、自前か、パートナービジネスかというのは慎重に検討する必要がある。

記者 法人向けのPCビジネスへの取り組みを教えて欲しい。また、法人向けの需要という意味では、Windows 7のPCを未だに欲しいという顧客が多いと聞いているが……

赤羽氏 ソニー時代に比較すれば拡大に法人向けが増えており、弊社のビジネスの安定化に貢献している。具体的な数字に関しては差し控えさせていただきたい。Windows 7に関しては、正直日本ではWindows 7の需要はまだまだ大きいと考えている。そこはMicrosoftさんにもご考慮いただきたい。

日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 Windows&デバイス本部長 三上智子氏

三上氏 弊社からは、現在約8割近い法人のお客様がWindows 10の採用を検討されているという数字を出しているが、大規模展開まで至っているかと言えばそうではない。しかし、セキュリティの脅威を考えると、Windows 10のセキュリティはWindows 7とは大きな違いがある。

 また、法人のお客様は、Windows XPの置き換えタイミングでWindows 7へ乗り換えいるが、Windows 7からWindows 10へのマイグレーションも同じぐらい大変だと考えているお客様が多い。しかし、実際にはWindows 7からWindows 10への乗り換えに関しては格段にハードルが低くなっており、そこを弊社としてもアピールしていきたいと考えている。