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日本AMD、最新のサーバー戦略とロードマップを解説

林淳二氏
6月19日 実施

 日本AMD株式会社は19日、米国時間の18日にサーバー向けプロセッサの戦略とロードマップが発表されたことを受け、その説明会を国内で開催した。基本的な内容は、米国での発表と同じだが、一部プロセッサのブロックダイヤグラムなどが公開された。

 同社エンタープライズ事業部長の林淳二氏は、まず、サーバーを取り巻く環境の変化について説明した。改めて説明するまでもなく、現在、スマートフォンやタブレットなど、通信可能なモバイルコンピューティング端末の成長は著しい。米国のタブレットユーザーの割合は2010年から2年余りで10倍に増えた。また、スマートフォンは、2011年第4四半期に約10億人が利用しているが、従来型携帯電話のユーザー数は約60億人で、これはスマートフォンにとって、あと50億台の市場が残されていることを意味しており、今後も堅調な成長が見込まれる。また、車載端末、Google Glassなどの眼鏡型や、腕時計型など新しい種類の端末も今後登場する。

 だが、そういったスマートフォンやタブレットの能力を下支えしているのはクラウドである。そして林氏は、爆発的に増えるデータ、要求処理、アプリなどに対応するには、クラウドも根本的な変革が求められるとする。

米国のタブレットユーザー数は10倍に
スマートフォンにはまだ世界で50億の市場がある
AMDのサーバー戦略

 そこでAMDが掲げる具体的なサーバー戦略が、1) x86系プロセッサビジネスの強化、2) ARM系サーバープロセッサの投入、3) 高効率サーバー「SeaMicro」の開発、4) ハードウェアも含む新しいオープンビジネスモデルの4つとなる。

 1)については、これまで通り2P/4P対応のOpteronの開発/投入を続け、省電力性と効率を高める。また、先だって発表された「Kyoto」のように、APU SoCタイプのプロセッサもx86サーバー向けに展開していく。

 2)については、64bit ARMコアを搭載したサーバー向けSoCを投入する。これについては詳細を後述する。

SM15000-OP

 3)については、2月に買収したSeaMicroの高密度サーバー技術を活用し、従来の半分の電力、3倍の密度、10倍の帯域、3倍のストレージ容量を持つというファブリックコンピュートシステム「SM15000」を訴求していく。同製品は国内でも、独立行政法人情報通信研究機構や、オンライン証券会社、大手ISPなどにも導入済みという。

 4)については、サーバーのオープンソースハードウェアとなる「AMD Open 3.0」をTyanや、QuantaといったOEMパートナー、そしてAvnet、Cray、Hyve、PenguinといったSIパートナーとともに立ち上げていく。

 続けて林氏は、2014年のサーバー向けプロセッサについて説明した。2013年現在の同社のサーバープロセッサは、2P/4P対応でクラウドやHPC向けをOpteron 6300/4300が、Web/エンタープライズサービス、クラスターなどをOpteron 3300/Opteron Xシリーズが受け持っている。

 2014年になると、2P/4P向けには、コードネーム「Warsaw」(ワルシャワ)を投入する。Warsawは、Opteron 6300と同じCPUソケット/TDP枠で、プラットフォームの互換性を保ちながら、価格を引き下げTCOを削減する。現在の予定は、Piledriverコアを12基ないしは16基搭載したSKUのみだが、4コア、8コアも検討中という。出荷開始は2014年第1四半期。

 Web/エンタープライズサービス、クラスター向けには、x86の「Berlin」(ベルリン)CPU/APUと、新たにARMコアの「Seattle」(シアトル)CPUを投入する。

 Berlinは、第4世代のx86 Steamrollerコアと、512基のGCN GPUコアを内蔵し、Kyotoに比べ、2倍の性能を実現し、2倍のDRAM容量に対応。Opteron 6386SEと比較すると、ワット性能は7.8倍に及ぶという。また、同製品は、x86サーバー向けとして、初のHSA(ヘテロジニアス・システム・アーキテクチャ)対応のAPUとなる。これは「hUMA」に対応し、CPUとGPUがメモリ空間を共有でき、GPGPUのプログラムが容易になる。なお、サウスブリッジ相当の機能はCPUとは別チップとなる。出荷は2014年上半期の予定。

 Seattleについてはまだ、公開されていない情報が多いが、8基および16基の64bit ARM Cortex-A57コアを内蔵したSoCで、クロックは2GHz以上、メモリは128GBまで対応。10Gigabit Ethernetや、Freedomファブリックを内蔵する。サンプル出荷は2014年第1四半期。

【お詫びと訂正】初出時にSeattleの対応メモリ容量を64GBとしておりましたが、128GBの誤りです。掲載のスライドにも64GBと記載されておりますが、128GBとお読み替えください。

 林氏は、ARMについてAMDは経験が少ないが、ARMライセンスを所有する企業では、サーバーに関して最も多くの技術と経験を持ち、高密度サーバーに求められる、ファブリックネットワークのノウハウを活かすことで、競合に対する優位性を発揮できるとした。

2014年のサーバーロードマップ
Warsawの概要
Berlinの概要
Berlinのブロックダイヤグラム
Seattleの概要
ARMサーバーにおけるAMDの優位点

(若杉 紀彦)