クリエイティブのUSBオーディオ「Recon3D」を試す

Recon3D

発売中
価格:オープンプライス



 クリエイティブメディア株式会社から、クアッドコアのサウンドプロセッサ「Sound Core3D」を搭載したUSBオーディオデバイス「Recon3D」が発売された。実売価格は12,800円前後だ。今回、実機をお借りすることができたので、PCでの使用をメインにレポートしたい。

●ゲーミングデバイスらしい外観

 まずはパッケージから見ていこう。パッケージはこれまでのSound Blasterシリーズとは一線を画している感じで、「XBOX・PS3・mac・PC」と書かれマルチユースを意識していること、また、「THX TruStudio PRO」への対応を謳っているが特徴的だ。

 本体も、「USBオーディオ機器」というよりも、むしろゲーミングマウスを彷彿とさせるような楕円形の上下をカットしたようなフォルムで、オーディオデバイスとしてはかなり斬新的なデザインだ。大きさ的にはちょうど手のひらに乗るぐらいだ。

 本体に備えられたインターフェイスは、PCと接続するためのMicro USBに加えて(Xbox 360で使用するときは電源供給ライン、PlayStation 3で使用するときは電源供給/ボイス兼用となる)、ヘッドフォン出力、マイク入力(いずれも3.5mmステレオミニジャック)、そして光/ラインイン入力(円形、兼用)、そして無線ヘッドセット「Sound Blaster Tactic3D Omega Wireless」と接続するためのオプション無線ユニットスロットと、至ってシンプル。マルチチャンネルオーディオが当たり前な今からしてみれば寂しいが、これは後述するバーチャルサラウンドを2chで実現できるためだ。

 本体には上面にはボタンも備え付けられており、THXの有効/無効化ボタン、ボリューム+/-ボタン、ミュートボタン、「SCOUT MODE」ボタン、そしてSound Blaster Tactic3D Omega Wirelessと接続するための「CONNECT」ボタンを装備。一方、左側面にはPC/Xbox 360/PlayStation 3で使うためのモード切替スイッチ、右側面にはマイク信号を3段階で増幅できるスイッチを備える。このことからわかるように、本機はPCを使わずスタンドアロンでサウンド処理するユーセージも想定している。

Recon3Dのパッケージパッケージの付属品Recon3D本体。操作用のボタンを上面に装備する
上部。光学/ラインイン用のジャックと、Micro USBコネクタを装備上部に備え付けられた「Sound Blaster Tactic3D Omega Wireless」専用無線カードスロット左側面の切り替えスイッチ
右側面のマイク音量調節スイッチ底面はマイクインとヘッドフォン/ライン出力のみXbox 360用コントローラと接続するためのユニット
ユニットのアップ通電中は青いラインが光る

●PCでの使用

 PCで使用するためには、まず左側面のモードスイッチをPCに設定しておく必要がある。なお、PCモードでない場合はユーティリティ起動時に「サポートしていないモードです」とエラーメッセージが出る。続いて、付属のCD-ROMからドライバとユーティリティのインストールを行なう。インストールは従来のSound Blasterシリーズとは異なり、フルスクリーンのウィザードではなくなったため、ほかの作業しながらインストールできるようになった。

THX Trustudio Pro機能の設定

 設定画面だが、従来のX-Fi Titaniumなどのシリーズとは大きく異なり、NVIDIAやAMDのビデオカードのコントロールパネル/コントロールセンターのように、左ペインで設定したいタブを切り替えて、右ペインで調節を行なうという、非常にわかりやすいものとなった。従来は半角カナが使われていたり、モードによって操作方法が違うといったややわかりにくいUIだったが、本製品では使いにくさが払拭され、洗練されたものとなっている。

 まず設定画面で出てくるのは独自の「THX Trustudio Pro」機能。THXは、映画や家庭用AV機器のクオリティチェックを行なう機関だが、本機能はCreativeがTHXと協力して開発し、生演奏や映画、レコーディングスタジオのオーディオ体験をPCにもたらそうというものだ。

 具体的には、バーチャルサラウンドを実現する「Surround」、圧縮によって失われた高音や低音を補正する「Crystalizer」、低音を改善する「Speaker」、人の声を強調する「Dialog Plus」、そしてボリュームを安定化させる「Smart Volume」の5つの機能からなる。X-Fiシリーズにも搭載されていた「X-Fi Crystalizer」や、「CMSS-3D」、「バスブースト」などの機能が、THX認証されるようになった、と言えばわかりやすいかもしれない。

 実は、2010年に発売された「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium HD」にもTHX Trustudio Proは搭載されていたし、Creativeはこの技術を一部のマザーボードメーカーにもOEM提供しているため、使えるマザーボードも存在するのだが、Recon3D、もといそのコントローラであるSound Core3Dは、これらの機能を「ハードウェア」で実装されているのが、最大のウリだとしている。

 実際、Xbox 360やPlayStation 3で使うときも、THX Trustudio Pro機能が使える。設定画面の「高度な設定」のタブには、THXオーディオ設定をデバイスへエクスポートする機能が搭載されており、エクスポートした値が適用される格好だ。

 なお、ハードウェアでTHX Trustudio Proが使えると謳われているので、ソフトウェアで処理されている“はず”の「X-Fi Titanium HD」のそれと、音楽を再生したときのCPU負荷の比較をしてみたが、筆者の環境においては、CPU負荷の違いも大差はなかった。ハードウェアで実装するメリットはやはりXbox 360やPlayStaiton 3で使用した時に発揮するのだろう。


設定のエクスポート画面THX Trustudio Pro関連の機能のみエクスポートされるタスクマネージャー

 2つ目のタブである「CrystalVoice」も、本製品のウリの1つだ。マイクの音量調節だけでなく、声を女の声やドワーフ、エイリアン、ロボットなど、さまざまなキャラクターに“変身”できるエフェクト(FX)機能、音量を安定化する機能、ノイズを軽減する機能、エコーキャンセル機能などが利用できる。なお、CrystalVoiceはPCでのみ利用でき、XboxやPS3接続時は機能しない。

 このほか、スピーカー/ヘッドフォンの切り替え、Dolby Digitalデコーダのダイナミックレンジの設定(シネマチック)、出力/入力のボリューム(ミキサー)、イコライザー機能などの設定タブがあるが、いずれもとっつきやすい機能で、特筆すべき点はない。

 ただ、ミキサーの画面に「再生リダイレクト」があることからわかるよう、現在鳴らしている音全てをミキシングして録音する機能がある。

【17時訂正】記事初出時、マイク音声もミキシングして録音可能としておりましたが、正しくは不可です。お詫びして訂正します。

ヘッドフォンとスピーカーの切り替え画面Dolby Digitalのダイナミックレンジコントロール
ミキサー画面イコライザー画面

 ところで「SCOUT MODE」だが、コントロールパネルでは設定できないものの、ボタンとして用意されているので、これをONにした試してみたところ、どうやら高音を全体的に強調する機能のようで、これによってFPSゲームなどで敵の「足音」を察知しやすくしたもののようだ。FPSゲーマーにとって便利な機能かもしれない。

 Mac環境でも同様に使えることも、特徴の1つだ。コントロールパネルのUIも機能もまったく同様で、使い勝手が良い。

●音質

 オーディオデバイスとして肝心な音質だが、THX Trustudio ProをすべてOFFにし、Etymotic Researchのイヤフォン「ER-4S」を繋げて試聴したところ、やや高音部分が控えめで、音の分離も今ひとつといった感じ。特に、X-Fi Titanium HDのフロントパネル出力と比較すると、その傾向がわかりやすい。ただ、X-Fi Titanium HDのほうがやや高音を強調しすぎで、例えば歌を聴いているとサ行が耳につくことはあるため、その点、Recon3Dのほうは落ち着いて聴ける感じだ。

 アクティブスピーカーであるボーズの「M3」につなげてもその傾向は変わらず、X-Fi Titanium HDのRCA出力と比較すると、やはり何か物足りない印象だ。音楽鑑賞などをメインとする用途では、本製品はどちらかといえば積極的にオススメできるものではない。

 THX Trustudio ProのSurroundやCrystalizer、SpeakerをONに、値も調節してみたが、いずれも効果は控えめといった感じで、「すごくサラウンド感がある」とか「高音や低音がとっても強調された」といったことはなかった。ソースにそれほど手を加えない「自然さ」という観点からしてみれば妥当だが、機能という観点からしてインパクトが欠ける感じだ。

 ヘッドフォンの出力インピーダンスについては特に謳われていないが、インナー型イヤフォンとしてインピーダンスが比較的高い100ΩのER-4Sでは十分に音量がとれたので、特に問題はないだろう。

 しかし、逆にインピーダンスが低い「ER-6i」(16Ω)などで聞くと、ホワイトノイズの多さが気になる。X-Fi Titanium HDのフロントパネル出力ではまったく気になることはないが、Recon3Dでは挿した瞬間すぐにホワイトノイズがわかるレベルだ。とはいえ本製品はインピーダンスが高いオーバーヘッドの大型ヘッドフォンで聞くことを前提としているため、大した問題ではないだろう。

●Xbox 360で使ってみる

 上記のようにRecon3Dを見てきたが、どうもPCでメインに使うというよりも、Xbox 360などのゲーム機でメインに使ったほうが良いという印象を受けたので、手持ちのXbox 360と接続してみた。

 まず、本体の左側のスイッチをXbox 360に設定し、USBケーブルはXbox 360本体のUSBコネクタ、光デジタルケーブルはXbox 360背面と本体をそれぞれつなぐ。本来は別途付属のモジュールを介して、マイクとコントローラを繋げるべきだが(Xbox 360はコントローラからマイク音声を転送するため)、今回はマイクを使用しなかったため、ヘッドフォンのみを接続した。

 Recon3D自体は、PCMとDolby Digital Live 5.1の信号に両方対応するが、Dolby Digitalで使うためにはXbox 360の設定画面で別途設定を行なう必要がある。いったんDolby Digitalが入力されれば、本体上部のランプが点灯するようになっている。

Xbox 360と接続したところXbox 360側でDolby Digital 5.1出力を選択するDolby Digitalが入力されると、本体のランプが光る

 さて、実際にいくつかのゲーム試用してみた結果だが、前述のように、THX Trustudio Pro技術自体、効果がやや控えめということもあって、特にバーチャルサラウンドの恩恵は少ないように思えた。もっとも、使ってる機材がカナル型のER-4Sなので、ユニットが大きく開放感のあるオーバーヘッド型だと効果が高いのだろう。

 マイク関連の機能は試してはいないが、実は本製品を使うメリットは、ボイスチャットの音とゲーム中の効果音/BGMなどが一緒になってヘッドフォンへ流れてくることだ。本来Xbox 360のヘッドセットは、モノラルで、オンラインボイスチャットの音声のみヘッドフォンから聞こえ、ゲーム中の効果音とBGMはTV側のスピーカーに出力される仕組み上、片耳はどうしても塞がってしまい、そこから入る情報量が減っていたわけだが、本製品を間に挟むことでこの問題が解消するわけだ。特に敵の足音を早期に察知するFPSゲームなどで有効なものだろう。SCOUT MODEとともに活用されたい。

 しかし、ボイスエフェクトやエコーキャンセルなどを含むClystalVoiceが、単体で利用できないのがやや残念なところ。せめてエフェクト機能だけでも使えるようになれば、活用シーンはさらに広がると思う。

●音質重視ではないが、多機能で使いやすさは評価できる

 というわけで、Recon3Dを全体的に見ると音質面はやや厳しい評価となったが、PCで使う場合、従来のCreative製品よりも洗練されたコントロールパネルのUIが魅力的になったと言えるだろう。

 また、今回は特に試していないが、ボイスチャット関連でも、PC環境ではエフェクトやエコーキャンセル機能、ゲーム機環境ではヘッドセットとの組み合わせが有効だ。Sound Core3Dの開発コンセプト自体がボイスコミュニケーションを主体としたものなので、これらを活用したいユーザー、特にゲーム機でのボイスチャットを不満に思っていたユーザーにとって、待望の製品と言えるだろう。

(2011年 12月 1日)

[Reported by 劉 尭]