LG、偏光方式立体視対応の23型液晶ディスプレイ
~DirectXゲーム対応2D→3D変換ソフトも付属

「D2342P-PN」

4月下旬 発売
価格:オープンプライス



 LGエレクトロニクスジャパン株式会社は、偏光方式を採用した立体視が可能な23型液晶ディスプレイ「D2342P-PN」を4月下旬より発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は29,800円前後。

 偏光方式の立体視に対応する液晶ディスプレイ。D2342P-PNには、重量が16gの専用の偏光式メガネと、通常使うメガネの上から取り付けられる重量8gのクリップ式の偏光式レンズが付属。また、2Dから3Dへ変換を行なうDDDのPC用ソフト「TriDef」が付属し、写真や動画、DVDに加え、DirectXベースのゲームも3Dに変換できる。

 3D表示はHDMI入力された映像にのみ対応するが、PC以外でもBlu-ray Discプレーヤーや、PlayStation 3などでもソフトが対応していれば、立体視ができる。映像の方式は、トップアンドボトム、サイドバイサイド、インターレースに対応する。

 主な仕様は、最大表示解像度が1,920×1,080ドット、最大表示色数が約1,670万色、輝度が250cd/平方m、応答速度が中間色で5ms、コントラスト比が1,000:1(最大500万:1)、視野角が2D時で上下170度/左右160度、3D時で上下80度/左右12度。

 インターフェイスはHDMI 1.4a、DVI-D、ミニD-Sub15ピン。本体サイズは546.4×179.3×407.3mm(幅×奥行き×高さ)、重量は3.5kg。75mmのVESAマウントに対応する。

ユーザーの要望に応え、OSDのボタンはタッチ式でなくスイッチ式にしたディスプレイインターフェイスは右手に3系統本体側面
台座部分は取り外し可能で、75mm VESAマウントに対応偏光眼鏡は通常タイプと、メガネの上に取り付けるクリップオンタイプを標準添付

●今後3Dは偏光式に集約

 20日に行なわれた製品発表会では、LG DisplayのMoonhyun Nam氏(IT promotion team)と、LGエレクトロニクス・ジャパンの道山涼司氏(コンシューマーエレクトロニクス セールスグループ セールスマネージャー)が偏光式立体視の仕組みや、製品の特徴などを解説した。

Moonhyun Nam氏道山涼司氏

 偏光式ディスプレイは、パネル自体は通常のものを使うが、前面に偏光フィルムを貼る。このフィルムはパネルの奇数ラインと偶数ラインに合わせて偏光軸をずらしてあり、出力映像はライン毎に右目用と左目用を分けて同時に表示する。付属のメガネにも偏光フィルムが貼ってあるので、右目用の映像は右目にだけ、左目用の映像は左目にだけ届き、脳内で立体的(奥行きがあるように)認識される。

 メガネを利用する立体視としては、もう1つアクティブシャッター式がある。こちらは、通常の2倍(あるいはそれ以上)の速度で右目用と左目用の映像を交互に表示。メガネ側では、それとタイミングを合わせて、片目ずつ交互に見えるが、表示速度が十分に高速なので立体的かつ通常の動画と同様に見える。

 それぞれ一長一短ではあるが、同社では偏光方式の方がメリットが多いとする。具体的には、まず偏光方式の方が液晶およびメガネのコストが安い。3D対応コンテンツとPCなどの機器が手元にあるとして、D2342P-PNでは本製品の価格である約3万円の追加投資で立体視が楽しめる。一方、PC用アクティブシャッター式製品の事実上の標準である3D Visionでは、液晶の価格が3~4万円程度、メガネが1万5千円程度かかり、場合によってはビデオカードもGeForceに交換する必要がある。

 メガネについては、アクティブシャッター式にみられるちらつきがないため、目への余計な負担がほぼないのと、輝度が下がりづらいという点もある。同社が示したデータによると、アクティブシャッター式では、2D時400cd/平方mあるものが3D時には44cd/平方mにまで落ち込むが、本製品では2D時250cd/平方mの輝度を3D時でも100cd/平方mで維持できるという。

 加えて、電子回路やバッテリが不要なので軽くて装着感が良いほか、クリップオン式レンズを使うことで、眼鏡をかけている人も利用しやすい(ただし、アクティブシャッター式でも、メガネの上からかけられる物は存在する)。

 クロストークの面でもアクティブシャッター式は概ね4%以上発生するのが、偏光式では1.8%程度に抑えられるという。

D2342P-PNの特徴アクティブシャッター式と偏光式の仕様の比較
偏光式はクロストークが少なく、明るい画像が得られる

 もちろんデメリットもあり、1つは視野角の問題。アクティブシャッター式では、見る角度に制限はないが、上述の通り、本製品は3D時に視野角がかなり狭くなる。この点について同社では、視野角は多人数で同時に視聴する際に問題になるが、本製品は1人で使うことがほとんどで、画面から70cm程度離れて正面に座れば、視野角の制限による影響はほぼないとしている。

 縦方向の解像度が半減するのも偏光式の問題だが、この点については、左右の目に届く映像の縦解像度は半分になるが、最終的にはそれを脳で合成するので、数値分ほど解像感は失われず、十分な画質が得られるとしている。

 また、PCでゲームをプレイする場合、3D Visionでは数多くのDirectXタイトルが問題なく動作し、一部には最適化されたものもある中、TriDefは汎用的なソフトであるため、GPUがNVIDIAなのかAMDなのかは問わないが、対応できるゲームのタイトル数が少ない。これについては、カスタマーセンターなどに寄せられた声などもあわせ、DDDへと働きかけを行ない、ソフトのアップデートによって随時対応タイトル数を増やしていきたいとした。

TriDefにより写真、DVDのほかDirectXゲームも3D変換できる同社が発売するOptimus Padは3D動画を撮影でき、それもこの液晶で立体表示できる

 なお、同社が偏光式ディスプレイの価格を引き下げられた背景には、LG Chemicalという偏光フィルムを製造するグループ会社があることに加え、LG Displayにおいて膨大な投資を行ない、液晶パネルに偏光フィルムを貼る工場を新設し、歩留まりを上げたことが大きく寄与している。

 同社は2010年にはアクティブシャッター式用製品も発売したが、先に挙げたメリットと、この投資を回収する意味からも、今後は基本的にPC用立体視対応製品は偏光式に集約するという。また、その次の段階としては、裸眼立体視を考えていることを明らかにした。

(2011年 4月 20日)

[Reported by 若杉 紀彦]