富士通セミコンダクター、ARMコアに主力製品をシフト
~FM3ファミリ第1弾44製品を11月下旬からサンプル出荷

FM3シリーズ。富士通の8bit時代のPCは電子デバイス事業部で誕生。当時のFM11、FM8、FM7といった歴史的PCを意識して、FMという型番を採用したという

11月4日 発表



 富士通セミコンダクター株式会社は、ARMのCorex-M3を採用した32bit汎用RISCマイコン「FM3ファミリ」の第1弾として、44製品を11月下旬からサンプル出荷し、2011年1月下旬から順次量産出荷する。

 これまで同社では、約30年に渡って独自コアを開発し、32bitはFRコアを採用した製品を中心にラインナップしてきたが、今回の新製品により、汎用分野においては、ARMコアを中心に展開することになる。

富士通セミコンダクター マイコンソリューション事業本部汎用品事業部・布施武司事業部長

 「車載機器や特定アプリケーション分野においては、引き続き、独自コアのF2MC-8FX 8bit、F2MC-16LX 16bit、FRコア32bit製品を提供していくが、それ以外の分野では、独自コアの製品開発をストップした。市場の動向、要求に対して、ARMコアを採用したFM3ファミリを広く展開し、今後はARM Nextを視野に入れたロードマップも提案していく」(富士通セミコンダクター マイコンソリューション事業本部汎用品事業部・布施武司事業部長)とした。

 3年~5年後には、独自コアのFRコアをARMコアの出荷が追い越すことになると見ている。

 FM3ファミリは、同社が持つARMコアASICの実装経験と、長年市場で支持されているFRマイコンで培った周辺機能を融合。FAサーボ制御、インバータ制御などの高速処理が求められる32bit市場向けのハイパフォーマンス製品として、「MB9BF500」、「同400」、「同300」、「同100」を投入。さらに、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などの白物家電、デジタル民生機器、OA機器など、コストパフォーマンスと低消費電力が要求される16bit市場向けのベーシック製品群として、「MB9AF100」シリーズを投入する。

富士通セミコンダクターの事業分野FM3ファミリのカバーする市場は多岐に渡る
多くの特徴を持つFM3ファミリでさまざまな付加価値を提供世界中で組み込み機器の開発をサポート

 同社独自の技術を採用した高速NOR型フラッシュメモリを搭載。競合他社製品に比べてゼロウエイトベースで30%以上の高速化が図れるクラス最高レベルの高速メモリアクセスにより、60MHzまで待機時間なしでの応答を実現している。また、書き込み回数で10万回、保持特性で20年を達成しているという。

 さらに、定評があるモーター制御実現のFRマイコン周辺機能の継承と、それを進化させた新たな周辺マクロを採用。従来はモーターの回転位置を検出するためにCPUを介しソフトウェアで実行していたものを、新たにモーター回転位置検出カウンタを搭載したことにより、自動的に行なうことができ、CPU負荷の低減も可能にしたという。

 同社では、まずは、3ユニット最大16チャネルの12bit A/Dを搭載した製品を投入。これにより、モーター位置制度の向上を図り、きめ細かな制御を可能にできるとしたほか、今後は、14bit A/Dの採用製品の投入に続き、さらに高機能化させる考えも示した。

富士通セミコンダクター マイコンソリューション事業本部マーケティング統括部・細田秀樹担当部長

 「32ピンから176ピンまでの製品をラインアップし、最大で144MHzの高速度動作の実現や、ベーシック製品では1.8~3.6V、ハイパフォーマンス製品では2.7~5.5Vのワイドレンジ動作電圧を実現。低消費電力、最適なコストパフォーマンスを実現した製品になる。また、当社が得意とするフラッシュ技術とともに、CAN、USB、Ethernetといった通信機能搭載マイコンの強みも生かす」(富士通セミコンダクター マイコンソリューション事業本部マーケティング統括部・細田秀樹担当部長)とする。

 加えて、安全回路機能にも特徴があるとし、CPUの誤動作監視を行なうハードウェア/ソフトウェアウォッチドッグタイマー(WDT)、外部クロック異常検出機能のクロックスーパーバイザー(CSV)、モーター出力信号緊急停止機能を搭載。また、インバータ制御タイマーでは、モーター制御用に3相制御用のPWM出力波形の生成を可能としているという。

 サンプル価格は、「MB9BF506RPMC」が650円となっている。2011年度で月産100万個の出荷を計画している。

富士通セミコンダクターのマイコンロードマップFM3ファミリの開発コンセプト
FM3ファミリのロードマップ第1弾の今回は一気に44製品を投入

 また、開発ツールに関しては、IAR SYSTEMSおよびKEILが提供することが決定しており、両社からスターターキットが2011年4月にも出荷されることになるという。

 「サードパーティとの連携により、ベンダー固有の開発ツールに束縛されることがなくなり、ツールリソースの有効活用、ワールドワイドでの言語対応が可能になる」(細田担当部長)とした。

IAR SYSTEMSおよびKEILが提供する開発ツールのサンプル

 同社では、国内外を含めて約700社のARMサードパーティ各社との連携や、技術サポート部門、技術営業を増強することで、独自のソリューション展開を行なうほか、海外18拠点に技術サポート部門を構築し、支援体制を強化する。

 「お客様が開発で必要とするさまざまなミドルウェア、リファレンスを提供し、富士通セミコンダクターの名刺を持った社員が、しっかりとした支援体制を敷いていくことに力を注ぐ。ARM9やARM11などのSoCと、Cortex-M3によるマイコンのアーキテクチャーを統一することで設計資産および設計技術をシームレスに適用できる」(細田担当部長)とした。

 同社では、今回の新製品投入にあわせて海外事業の強化を図る考えで、「現在は約6割が国内事業。将来的には国内外の比率を半々にしたいと考えている。非車載分野では国内が多いが、顧客の海外での事業展開強化にあわせて、この分野でも海外比率を高めたい」としている。

 2009年度における国内マイコン市場の富士通のシェアは12.8%で第2位。世界市場では第8位となっている。

(2010年 11月 4日)

[Reported by 大河原 克行]