弥生株式会社とマイクロソフト株式会社は26日、中小企業をターゲットとしたIT導入による業務効率化促進に向け協業すると発表した。
ターゲットとする市場規模と協業による獲得目標企業数 |
弥生がマイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Windows Azure」を開発基盤とした「弥生SaaS(仮称)」の開発を表明し、今後3年間で、日本にある約366万社の小規模法人・個人事業主のうち10%にあたる36万社に、新たに弥生およびマイクロソフト製品・サービスを利用してもらうことを目指す。
協業の具体的な内容は以下の4点。
(1)今後1年間に6回の開催を予定しているイベントやセミナー、弥生のユーザー向け会報誌やマイクロソフトの中小企業向けポータルサイトなどを通じた業務IT化の事例、シナリオを紹介するといった啓蒙活動。マイクロソフトの中堅中小企業向け相談窓口である「マイクロソフトIT化支援センター」 を活用したIT化支援を実施。マイクロソフトが実施している、ITベンチャーや起業家向け支援プログラム「Microsoft BizSpark」と、中小規模のWeb開発会社向け支援プログラム「Microsoft WebsiteSpark」を、弥生ユーザーやパートナー企業向けのセミナー等で紹介し、提供するIT化優遇策を提供。
(2)PCメーカー、弥生、マイクロソフトの3社共同で、業務ソフト活用セミナーを開催し、PCと弥生シリーズおよびマイクロソフト製品を組み合わせた特別パッケージを販売。家電量販店と弥生、マイクロソフトの3社共同で、量販店における業務ソフト活用セミナーを開催するなどの販売促進活動の実施。
(3)弥生製品の最新のマイクロソフト プラットフォームへの早期に対応を実施。すでに、2009年12月発売の「弥生10」シリーズでは Windows 7/Server 2008 R2、SQL Server2008に対応済で、「Microsoft Office 2010」関連製品群に関しても、早期対応を予定。
(4)Windows Azureをプラットフォームとした「弥生SaaS(仮称)」を2011年半ばより提供。一部会計事務所とその顧客など一部の弥生ユーザー向けに「弥生SaaS(仮称)」のベータ版を2010年から提供開始予定。
マイクロソフトと弥生の協業によって実現する幅広い選択肢と統合プラットフォーム | マイクロソフトが実現するオンプロミス型、クラウド型のプログラム・データの移行・連携性と同一アーキテクチャ |
協業の枠組み | 業務IT化の啓蒙 | 業務IT化の支援 |
両社のパートナーとの連携による販売促進 | 弥生がデルとの連携により実施している販売促進例 | PCメーカーとの共同セミナーの枠組み |
弥生がヤマダ電機との連携により実施しているセミナー開催例 | 弥生パートナー企業との共同セミナーの枠組み |
弥生 代表取締役社長 岡本浩一郎氏 |
弥生の岡本浩一郎社長は今回の協業の背景として、「日本全国には、従業員数20人以下の企業が366万社存在しているが、手書きで会計などの業務処理をしている企業や、PCを導入しているものの表計算などで業務処理を行なっている企業が依然として多数存在している。これらの企業に対し、より洗練された業務アプリケーションを使うことで業務効率がアップすることを、小規模向け業務ソフトのトップベンダーである弊社と、ITのトップブランドであるマイクロソフトさんとの協業により訴えていく」という狙いがあると説明した。
また、以前から開発することを表明していた「弥生SaaS」のプラットフォームとしてマイクロソフトのWindows Azureを選択した理由として、「弥生シリーズは長年に渡りマイクロソフトのプラットフォームでの開発を進め、最新製品である弥生10シリーズは.NET、Visual Studioを全面的に採用して開発しており、むしろWindows Azureを使わない方が不思議な状況といえる。SaaSのプラットフォームとしてAzureを採用したのは必然」(弥生・岡本社長)と強調した。
弥生製品の最新MSプラットフォームへの対応状況 | 弥生SaaS(仮称)での新たな市場開拓 |
マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏 |
マイクロソフトの樋口社長も、「弥生のメインユーザーである従業員規模10人、20人といった小規模企業の皆様は、ITメンテナンスのための人材がいないといった問題もありクラウドというアプローチが最も適したユーザー層だといえる。こうした規模のお客様は、Word、Excelは使って頂いているものの、それ以外の業務では依然として手書きで行なっているという例も少なくない。スモールビジネス分野で圧倒的な強みを持つ弥生との協業によって、業務のIT化が進んでいないお客様の業務効率を変えていくことができると大きな期待を寄せている」と協業の意味をアピールした。
開発が発表になった「弥生SaaS」は具体的な発売時期、価格等は現段階では一切未定としているものの、「現行のパッケージ製品は会計、販売、給与といった業務ごとの縦割りになっているが、弥生SaaSでは縦割りをなくし、業務に合わせて自然に各機能が連携された全く新しい統合ソフトとしていく」(弥生・岡本社長)と現行製品とは異なるコンセプトの製品となることが明らかになった。
弥生製品のロードマップ |
将来的にはパッケージ版、SaaS版の境界がなくなるというロードマップが示されたが、「これはパッケージ版がなくなるという意味ではない。5年、10年というスパンでお客様が状況によってどちらでも利用することが可能で、オンプレミス(社内)版を使っているのか、クラウド(社外)版なのか意識してもらわなくても大丈夫な状況になるという世界を目指している」(弥生・岡本社長)とパッケージ版がなくなるわけではないとした。
すでに提供しているホスティング版の弥生シリーズについては、「現在提供しているのは、既存製品と全く同じ中身を異なるデリバリー方法で提供するもの。今回発表したSaaSとは内容が異なる」(弥生・岡本社長)という。
(2010年 3月 26日)
[Reported by 三浦 優子]