マイクロソフト、佐賀県でシニア向け施策を展開
~シニアネットとの協力で講師育成などに成果


会場となった佐賀県鹿島市の鹿島市生涯学習センター「エイブル」

 マイクロソフトと佐賀県は、11月20日、佐賀県鹿島市の鹿島市生涯学習センター「エイブル」において、佐賀県ICT利活用促進セミナー「がばい楽しか情報化生活 in 鹿島」を開催した。

 「がばい」とは佐賀の方言で、「すごい」などの意味がある。

 これは、財団法人佐賀県長寿社会振興財団が主催し、佐賀県鹿島市および鹿島市教育委員会の後援で開催された佐賀県高齢者大学鹿島校による「第5回学校祭」の講演会の1つとして実施されたもので、マイクロソフトの加治佐俊一業務執行役員兼最高技術責任者(CTO)や、一般社団法人ICT能力開発協会の青山司理事、同協会カリキュラム委員会 古賀昭委員長が講演した。

講演するマイクロソフトの加治佐俊一CTO

 会場には、65歳以上のシニアを中心に約150人が来場。マイクロソフトの加治佐CTOは、マイクロソフトリサーチで開発中の近未来のコンピューティング環境などをビデオで紹介。また、10月22日に発売されたWindows 7の機能や特徴などについても説明した。

 また、会場からの質問にも回答。「Windows XPから、Windows 7に買い換えた方がいいのか」、「日本製のPCを選んだ方がいいのか」といった質問が飛んだ。これに対しては、加治佐CTOは、「2~3年以上前に購入したPCであれば、新しいものに買い換えるのがいいだろう。Windows Vista搭載PCであれば、パッケージ版に入れ替えても快適に動作する」としたほか、「日本のメーカーでも、海外のメーカーでも大丈夫。自分がなにをやりたいかという用途によって選ぶのがいい。困ったときに、電話でサポートを受けることもあるが、その点でも、メーカーの差がなく、安心してもらえる」などと回答した。

会場からはパソコンの利用や購入に関する質問が相次いだ会場でプレゼント抽選役を務めた加治佐CTO。番号が読み上げられるたびに拍手と歓声がおきた

 そのほか会場からは、「ソフトの使い方がわからない場合に、その度に知人に聞くわけなはいかない。また勉強の仕方がわからない。どうしたらいいのか」との質問が寄せられ、「パソコンはなんでもできるといわれるが、絶対やらなくてはいけないことを選んで、ゆっくり勉強してもらえればいい。また、NPOなどを通じて学習するのも1つの手だろう」などとした。

 また、会場に設けられたタッチ&トライコーナーでは、Windows 7を搭載したPCが展示され、来場したシニア層が、Windowsタッチ機能などの簡単なユーザーインターフェースを見て、その使い勝手の良さに関心を寄せる例などが見られた。

会場に用意されたWindows 7搭載パソコン。タッチ機能はシニアに大人気だったタッチ機能を使った手書き入力。「みそらひばり」と入力して一発で検索

 マイクロソフトと佐賀県は、2009年2月に、ICTの利活用促進を通じて、佐賀県内の地域活性化を目指すことで連携すると発表。マイクロソフトが自治体向けに提供する「地域活性化協働プログラム」を全国で初めて導入し、佐賀県が目指す「地域全体をICTの視点で振興」などの取り組みを支援。佐賀県庁および佐賀県下の関連する団体や、CSO(Civil Society Organizations=市民社会組織)と呼ばれる個人やNPO法人などの市民活動団体との連携によって、ICTを利活用した地域活性化の先進的モデル地域を目指している。

 今回の佐賀県ICT利活用促進セミナーは、その一環として行なわれたもので、県内に在住するシニア層へのICTスキル向上などを狙っている。

 また、この日は、NPO法人「シニアネット佐賀」が、佐賀市内のiスクエアビルの市民活動プラザを会場に、年賀状作成講座を開催。9人のシニアが参加して、年賀状作成に挑戦している様子を、マイクロソフトの加治佐CTOが視察した。

シニアネット佐賀が開催した年賀状作成講座の会場となったiスクエアビルマイクロソフトの加治佐俊一CTOも教室の様子を視察した

 シニアネット佐賀では、これまでにもインターネット初心者を対象に、「チャレンジPC講座」の名称で、1回20人を定員に、2時間の講習会を4日間のカリキュラムで実施してきた経緯がある。

 シニアネット佐賀の近藤弘樹理事長は、「講座を実施するにあたり、講師のほかに、4~5人の講師サポーターが参加し、受講者を支援する体制をとっている。今年3月~10月にかけてマイクロソフトの支援を得て、講師および講師サポーターに対して、5回に渡って指導スキルアップの講座を開催した。年賀状作成講座やシニア向けPC教室、オープンスペースを利用した勉強会などを行なっているが、教え方がうまい、わかりやすいなどの評価を得ている」などととした。

 シニアネット佐賀では、今年初めには50人だった会員が、10月末時点では75人と1.5倍に増えており、マイクロソフトとの協業成果が表れた格好だ。

 また、シニアネット基山の久野美津代代表は、「毎週木曜日、日曜日に勉強会を実施しており、月8回の開催となっている。1時間をフリータイムとし、計2時間を講習する形式をとっているほか、さらに毎月1回、懇親会を行なっている。これにより、なんでも質問しやすく、仲良く学習できる環境を作っている。マイクロソフトと佐賀県による講師養成セミナーに参加して、教える側も刺激になった。こうした活動が徐々に成果に結びついており、鳥栖地区においてシニアネット基山の認知が広がりはじめた」などとした。

 NPO法人などのCSOをサポートする立場にある、特定非営利活動法人「さが西部市民活動サポートセンター・フロンティア」鹿島コーチズマネージャーの篠田憲章氏は、「CSOから講師養成に対する要望が高いほか、フロンティアから直接、シニア層、主婦層にPCの利活用に関して、教えてもらえないかといった提案もある。現在、拠点としている『あすとプラザ』においてPC講座を行なっているが、マイクロソフトの講師養成セミナーを受講したことで、我流による指導から、講師としての心構えを持った指導方法に変わり、受講者にも好評である」としたほか、山田健一郎事務局長は、「高齢者の生き甲斐づくりに、ICTの利用は有効である。講師の数も4倍に増加したが、これからますます増やしていきたい。そのための活動を強化する」などと語った。

佐賀県の各シニアネットの代表と意見交換をする加治佐俊一CTOシニアネット佐賀の近藤弘樹理事長シニアネット基山の久野美津代代表
さが西部市民活動サポートセンター・フロンティア 鹿島コーチズマネージャーの篠田憲章氏さが西部市民活動サポートセンター・フロンティアの山田健一郎事務局長

 マイクロソフトと佐賀県の連携によって開催した講師養成講座は、今年2月以降、これまでに19回が開催されており、延べ230人が受講したという。

 現在、セミナーを開催できる講師数は、シニアネット佐賀が10人、シニアネット基山が10人、フロンティアが6人。シニアネット基山ではこの1年間で2名から5倍に、フロンティアでもこの1年間で2人体制が3倍になった計算だ。

 また、シニアを対象にした初心者向けICT関連イベントは、県内でこれまでに4回が開催されており、累計で約500人が参加。佐賀県からの委託事業によるのシニアネット主催の講座も、12月にかけて実施される年賀状作成講座に加えて、1月、2月は、ムービーメーカーの講座が予定されている。そのほか、NPO基盤強化のためのICTセミナーも、これまでに7回が開催され、約370人が受講したという。

 マイクロソフトと佐賀県の連携は、協業開始から9カ月を経過して、シニアのICT利活用の促進という点で、大きな成果をあげているようだ。

(2009年 11月 20日)

[Reported by 大河原 克行]