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レノボ、「ThinkPad 10」の開発背景や搭載技術を披露【解説編】

〜「ThinkPadらしさとは黒いことや赤いポッチではない」

「ThinkPad 10」

 レノボ・ジャパン株式会社は6日、10.1型Windows 8.1タブレット「ThinkPad 10」の技術説明会を開催。設計を担当したエンジニアも集まり、内部構造やアクセサリなどを含めた同製品の詳細を解説した。

 「ThinkPad 10」については既報の通り、Atom Z3795を搭載し、64bit版Windows 8.1/8.1 Proも利用可能な10.1型タブレットだ。液晶解像度は1,920×1,200ドット(WUXGA)で、デジタイザペンにも対応する。発表直後は法人向けのみの販売だったが、7月29日には個人向けモデルも発売。直販サイトによるカスタマイズ販売も8日より開始する。

【お詫びと訂正】初出時に解像度を1,920×1,080ドットとしておりましたが、1,920×1,200ドットの誤りです。お詫びして訂正させていただきます。

 説明会で製品の紹介を行なった同社製品事業部 ThinkPad製品担当の吉原敦子氏は、「ノートPCは伸びも減りもしない予測される中で、キーボードを持たないタブレットだけでは入力作業がしにくいという声もあり、2-in-1の領域が伸びる気配を感じているところ」と市場投入の背景を説明。

 製品の主要なポイントとしては、「Atom Z3795で(メインストリーム)PC並みの性能」、「WUXGA(16:10)対応のIPS液晶」、「Gorilla Glassの採用」、「通常形状のUSBポート採用」、「豊富なアクセサリ」、「企業インフラへの組み込みが容易な64bit版Windows 8.1 Pro対応」を挙げた。

 アクセサリはThinkPadシリーズらしく、純正オプションを多数ラインナップ。これはユーザーの検証を軽減する目的もある。市場投入の背景としても挙げられた「キーボード」は、製品に付属こそしないものの2種類を用意。1つはケースにタッチセンサー式のキーボードを搭載する「タッチケース」。もう1つはThinkPadノート製品のような打ちやすさを確保する「ウルトラブックキーボード」で、ともにマグネットを使ってズレない工夫も追加されている。加えて、ThinkPad Tablet 2やThinkPad 8に対応するBluetoothキーボードも利用できる。

 このほかインターフェイスを拡張するドックは、従来モデルの「ThinkPad Tablet 2」ではプロテクタを装着したまま取り付けることができなかったが、ユーザーからのフィードバックを得て改善。プロテクタを取り付けたまま、ドックへ装着できるようになり、建設現場などでの利便性を高めたと言う。

製品事業部 ThinkPad製品担当の吉原敦子氏
ThinkPad 10の主な特徴
ThinkPad 10の製品概要
ThinkPad 10の純正オプションとして2種類のキーボードを用意
ドックはプロテクタを装着したままでも利用できるよう改善
ThinkPad 10のアクセサリの豊富さをアピール

4つの視点でこだわりの設計を紹介

 続いて、内部構造や設計思想など、製品の技術解説を同社大和研究所 タブレット開発部長の加藤敬幸氏が行なった。

 ThinkPad 10は“いつでもどこでも仕事に便利”をコンセプトにしているが、「従来の“いつでもどこでも”という言葉は、電車の中でも使えるなどモバイル利用を指すことが多かった。出先だけでなく、自宅や仕事環境などを含めた、本当の意味で“いつでもどこでも”仕事に使ってもらいたい」と、そのコンセプトを掘り下げて説明。そして、そのコンセプトを実現するために必要な要素として、「携帯性と堅牢性の両立」、「仕事をこなせるパフォーマンスと使いやすさ」、「豊富で便利なアクセサリ」、「ビジネスをサポートするWindowsプラットフォーム」の4ポイントを挙げ、どのようなこだわりで設計されているかを紹介していった。

大和研究所 タブレット開発部長の加藤敬幸氏
ThinkPad 10の製品開発コンセプト

 「携帯性と堅牢性の両立」について、それぞれで2つの注力箇所を紹介。携帯性の実現(=薄型/軽量化)については、外装にアルミカバーの採用で薄型化。従来の「ThinkPad Tablet 2」が1.2mm厚のプラスチック外装であったのに対し、アルミ化することで0.8mm厚へ33%薄型になった。

 また、液晶部のタッチモジュールとカバーガラス「Gorilla Glass」を見直し。ThinkPad Tablet 2との比較で、タッチモジュールとカバーガラス合わせて3.85mmから3.25mmへ薄型化し、先のアルミカバーの採用と合わせると約1mm薄型化されている。さらに、このGorilla Glassの薄型化は軽量化にも寄与していると言い、ThinkPad Tablet 2からアスペクト比が変わったために7%面積が大きくなった一方で、厚みを0.7mmから0.55mmへ薄型化したことで、約72gから約59gへ軽量化されたと言う。

 また、加藤氏が「悩みの種」と話す、無線LAN(Wi-Fi)やWWAN(LTE)などのアンテナも、新しいアンテナパターンやRFマッチング回路の最適化で小型化。ThinkPad 8同様に、外装にアルミカバーを採用しつつ無線機器を利用できるようなチューニングを施している。

 堅牢性については、従来のThinkPadノート製品で「ロールケージ」として使用してきたマグネシウム素材をフレームに使用。このほか、本体の薄型化で通常形状のUSBコネクタの上下にスペースがほぼなくなったことに対し、メタルブラケットでコネクタを強化することで、抜き差し時の外圧による破損を防ぐようにしている。

 堅牢性の試験については、ThinkPadノート製品と同じ評価に加え、曲げ試験や液晶落下試験など、新たにタブレット専用の試験も追加している。

外装のアルミ、タッチパネルモジュール&Gorilla Glassを薄型/軽量化
アンテナもThinkPad Tablet 2から小型化した
マグネシウムフレームの採用で堅牢性を向上。コネクタもメタルブラケットで強化している

 「仕事をこなせるパフォーマンスと使いやすさ」については、タブレットであってもノートPCに匹敵する性能が必要との考えで開発。Bay Trail-TののAtom Z3795を採用することで、ThinkPad Tablet 2はもちろん、Core i5-4200Mを搭載した14型ノートであるThinkPad T440pと比べても、オフィス利用を想定したPCMark7のスコアが上回ることを紹介。ただし、このThinkPad T440pはHDDモデルとのことで、ストレージ容量のニーズに合わせて選んで欲しいとした。

 また、液晶にWUXGAを採用する点も改めて強調。1,366×768ドットのThinkPad Tablet 2から2.2倍の作業領域となった。一方で高解像度化による消費電力増を避けるため、LCDの供給元と共同で低消費電力の高効率LEDバックライトを開発。ThinkPad Tablet 2でも採用していた、タッチパネルモジュールと液晶に空気の層を作らず成形することで視認性や操作性を高めるダイレクトボンディングも継続して採用している。

 デジタイザペンについてはワコム製を採用。今回、ThinkPad Tablet 2との大きな違いとして、ThinkPad Tablet 2ではペンを本体に収納できたが、ThinkPad 10は収納不可となった点が挙げられる。これについて加藤氏は「本体を薄型化したため、本体に収納できることを重視するとペンが細くなって使いにくくなる。そこで本体収納を諦めて、より使いやすいペンを実現した」と、難しい判断ではあったが、利便性を重視した結果であるとした。

 実際にペンは一回り太くなったほか、消しゴム機能も新たに搭載。ペン先も改善され、わずかな抵抗感をもたせることで紙に書いているのに近いフィーリングを実現している。さらに、精度や落ちやすい画面の端や、デジタイザの反応に悪影響を与える本体内の磁石などに対してもチューニング。従来よりも精度を高めたとしている。

ThinkPad Tablet 2から飛躍的に性能が伸びただけでなく、ノートPCのThinkPad T440pと比較してもオフィス利用ではより高性能な結果
WUXGAへの高解像度化しつつ消費電力を抑える高効率なLEDバックライトを採用。10時間以上のバッテリ駆動時間を確保した
本体収納を諦め、消しゴム機能の搭載や高精度化した、より使いやすいデジタイザペンを採用

 「豊富で便利なアクセサリ」については、先述の通り、ユーザーが検証の手間をかけることなく機能拡張できるようにするため、純正アクセサリを多数揃える。そのためのインターフェイスも底面に2種類用意。1つは底面中央にある「ドッキングポート」で、ガイドに設けられた左右の穴との位置合わせをして端子を接触させる必要があるが、電源や高速インターフェイスを利用できる。もう1つは、その脇に設けた5ピンの「Pogo(ポゴ)ピン」で、こちらはマグネットなどでワンタッチで取り付けできる代わりにUSB 2.0のみの信号を利用できる。それぞれのオプションで、どちらのインターフェイスを利用するのが検討し、最適化している。

 実際のアクセサリもいくつか紹介された。「クイックショットカバー」は8型のThinkPad 8でもラインナップされていたものの10.1型版と言えるもので、カバーの端を折り曲げることでレンズを露出させ、手軽に写真撮影が行なえる仕組みになっている。さらにThinkPad 10用では、デジタイザペンを収納するホルダーを備えたほか、タブレットスタンドにもなる。スタンドはThinkPad 10背面にゴムで止める仕組みになっており、角度に柔軟性を持たせている。

 キーボードは先述の通り2種類。ちなみにThinkPad Tablet 2ではオプションのキーボードとBluetoothで接続していたが、「無線接続には善し悪しがある。Bluetoothはペアリング作業が必要で、大量導入される企業ユーザーには面倒という声もある」とのことから、いずれもポゴピンを用いたUSB 2.0接続へと変更された。

 インターフェイス拡張や充電を行なえる「ThinkPadタブレットドック」は、USB 3.0×3、HDMI、Gigabit Ethernet、音声入出力を搭載。こちらはドッキングポートを用いることでUSB 3.0やHDMIなどの高速なインターフェイスを利用可能となっている。

 本体に付属するACアダプタについても、12V/36Wの専用アダプタを用意。ThinkPad Tablet 2ではMicro USB 2.0、ThinkPad 8ではMicro USB 3.0を使って充電していたが、充電時間短縮のために専用ACアダプタを採用したと言う。結果、80%の充電に要する時間はThinkPad Tablet 2の180分から、107分へ短縮された。

 専用ACアダプタへの変更にはMicro USBの上下が分かりにくいことも理由にあるそうで、ThinkPadノート製品で採用されている、上下逆に挿すことができる角形の端子を採用している。ただし、ThinkPad 10の薄型設計に合わせたサイズとなっており、ThinkPadノート製品のACアダプタとは互換性がない。

ThinkPad 10のアクセサリ群
オプション用インターフェイスを2種類用意し、適材適所で使い分ける
ThinkPad 8でも好評だったというクイックショットカバーは、スタンド機能やペンホルダーを搭載
2種類のキーボードはいずれもUSB 2.0接続へ変更
USB 3.0×3ポートなどを備えるドックを用意
充電時間短縮のため、従来モデルのMicro USB給電から、専用のACアダプタへ変更した

 「ビジネスをサポートするWindowsプラットフォーム」については、32bit/64bit両サポートについて真っ先に紹介。企業ではタブレット、ノートPC、デスクトップPCなどさまざまなデバイスがあり、管理を容易にするために、OS共通化のニーズがあることから、両サポートにニーズがあるのだと言う。指紋リーダ、スマートカードリーダなどのオプションを利用した認証システムをサポートしていることも、企業インフラに組み込みやすくしている。

 さらに、暗号化機能のBitLockerなどでOS起動前にPINコード入力が求められることから、OSブート前の環境でもソフトウェアキーボードが利用できるようBIOSでサポートした。また、USBなどのIOインターフェイスの使用制限や、BIOSのリモート管理機能なども可能となっている。

 このほか、コンシューマにも便利な機能として「SHAREit」を紹介。これはWindows、Android間で無線LANを使ったファイルコピーを行なえるツールで、受信側でアプリを立ち上げておき、送信側でファイル選択後に表示される画面から希望の転送先を選択するだけでコピーできるという手軽さが特徴のツールとなっている。

32bit/64bit両対応や指紋/スマートカードによる認証機能など、企業インフラへの組み込みやすさに配慮
堅牢なセキュリティを支えるBIOSの機能として、OSブート前のソフトウェアキーボード機能やIOインターフェイスの制限機能などを提供
ネットワーク設定を行なうことなく簡単な操作でファイル転送が可能な「SHAREit」

 最後に加藤氏は、インダストリアルデザイン(ID)についても紹介。「ThinkPadのIDというと黒いことや赤いポッチという印象があるかも知れないが、それはあくまで結果で、根底に考えるのは“シンプルで無駄のない外観”であること」とする。

 ThinkPad 10が“ThinkPadであること”をベースにこだわったのは、使いやすさとアクセサリのデザイン。そのポイントとしては、側面が垂直ではなく9度の角度を付けることで置いた状態から持ち上げやすくしたことや、太くなって使いやすくなったペンなどを紹介。

 また、「Dシェイプ」と呼ばれる1辺の両角のみ丸みを持たせないデザインは、上下の判別のしやすさやキーボードとの一体感を生む。さらに、コネクタのレイアウトについても、電源コネクタは右下が良いなど使用頻度を想定した研究に基づいたものであるとした。

「ThinkPad 10」のインダストリアルデザイン

説明会で展示された実機や分解モデルを紹介する【写真レポート編】に続きます。

(多和田 新也)