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ZMPほか、物流支援用ロボット台車「CarriRo」を共同開発

〜Intel製CPU内蔵の自動運転車用コントローラ「IZAC」も発表

ロボット台車「CarriRo」(キャリロ)
7月2日 発表

 株式会社ZMPは7月2日、THK株式会社と日本電産シンポ株式会社、そして東京藝術大学と共同で、物流支援ロボット「CarriRo」(キャリロ)を共同開発したと発表し、東京・六本木で記者会見とデモンストレーションを行なった。荷物の運搬に使う汎用の台車をロボット化したもので、ハンドル部で押す人の力を検知してアシストする機能のほか、発信器を付けた人間や同タイプの台車の後に自動追従する機能、ビーコン付きポールを併用することで指定エリア内を自動マップして自律移動する機能を持つ。人手不足の解消・生産性向上・労働環境改善に役立つとしている。

 2014年秋を目処に、物流会社向けにサンプルのテスト出荷を開始し、共同で実証実験を行なった後、2015年中に約40万円(6年リースで月あたり7千円程度)で量産出荷、販売する予定。2020年に開催される東京オリンピックでは、競技場での機器や資材、飲食の搬入用途のロボットとして提案をしていくほか、世界展開を狙うという。

 公開されたモデルはプロトタイプで、詳細は明らかにされなかった。仕様は今後、「現場のニーズに合った機能やコストを考えながら最終的に決めていく」予定で、現在は非公開。可搬積載能力も未定だが、通常の宅配業者が使えるもの(100kg程度)を目指し、少なくとも30〜50kgくらいは運べるものにするという。段差や坂の登坂能力は現在のものは2〜3センチ程度だが、そのあたりはタイヤの径に依存する面もあり、実証実験で詰めるとのことだ。本体重量はプロトタイプは重たいが、商品版では10kg程度にするという。

 測距センサーを使った追従方式や使われているセンサー類も詳細は非公開とのこと。屋外での自律移動技術を応用した、絶対位置を示すためのビーコン付きポールについても、ビーコンの具体的詳細は非公開だった。1度台車を押してルートを覚えさせると、その経路を自動移動するという。なお精度は、ポールは6本程度使った30〜50mくらいのエリアで誤差数センチ程度とのことだ。ポール数は、通常の作業空間(中規模倉庫)ならば4本くらいで済むと考えているという。

「CarriRo(キャリロ)」本体。正面に測距センサ、バンパーなど
人の後の追従も可能。ハンドル部に力を検知するセンサが内蔵されている
ビーコン付きポールを併用すれば誤差数センチ程度で自律移動可能
30kg-50kgくらいは運べるものにする予定
「CarriRo(キャリロ)」の構成
集配所や中規模倉庫での活用を目指す
【動画】キャリロのデモ。人への自動追従と、台車のカルガモ走行

「ロボット」と「自動運転車」技術の融合

株式会社ZMP代表取締役社長の谷口恒氏

 2001年に設立されたZMPは、かつてはヒト型ロボットや音楽ロボットを開発していたロボットベンチャーだった。その後、ロボット開発を通じて得た自律移動技術を応用して自動運転技術に乗り出し、今では「ロボット」と「自動運転車」の両方をビジネス領域としている。

 記者会見でZMPの谷口恒代表取締役社長は、同社がある小石川近辺の印刷会社や集配所での手押し台車を使った繰り返し作業風景を見て思い付いたと述べた。ZMPは「Robot of Everything」という言葉を掲げており、今後、建設や土木、農業などの分野にでも自動運転とロボット技術で進出していきたいと考えている。特に「働き方だけではなく、ライフスタイルを変えていくことが重要」だと考えているという。今回、工業デザインとワークライフスタイルデザイン担当として東京藝術大学の長濱雅彦氏らに参画してもらったのも、そこに理由があると述べた。

これまでのZMPの取り組み
ZMPが販売しているロボット教材
RoboCar MV2

ロボットには互いに知的な関係を築いていくデザインが必要

東京藝術大学の長濱雅彦氏

 東京藝術大学の長濱雅彦氏は、デザインコンセプトとして、ブロックのように連なっていくイメージからレゴブロックを意識したと述べた。倉庫内で働いている人たちにもユーモラスな気持ちになってもらいたいと語り、また物流現場で使われるとすれば各家庭の前まで行くことから「生活者との橋渡し」になってもらえるようなものとして、センサー部分にも少し表情を入れたと語った。

 長濱氏は「工業デザインとロボットとは相容れないところがある。透明な存在になっていくことがロボットのあるべき姿だろうと思っていた。アートの世界ではロボットに対する違和感があった」という。だが「谷口社長から『RT(ロボットテクノロジー)』という考え方を習った」と続けて、ロボット技術の入った道具は「これまでの道具とは違った形で付き合うもの。これまでは人間に負荷のかからない造形作りだったが、互いに知的な関係を築いていくデザインが必要。ユーモアみたいなものが求められていくのかもしれない」と述べた。

ZMPによるキャリロのPV。東京藝大・長濱氏がディレクション。制作は映像作家・大西景太氏

コンパクト、タフで、静かで、安全

THK常務執行役員 IMT事業部長の星野京延氏

 「CarriRo」の技術的な特徴は、THKと日本電算シンポによる新開発のインホイールモーターと、ZMP独自のAIコントローラにある。確かに動作音は静かだ。モジュールは台車の真ん中に2つ付けられており、キャリロはその場回転もできる。

 THK株式会社は1971年創業で、なめらかな直動機構要素である「LMガイド」のパイオニアでトップメーカー。THKはタフネス、ハイクオリティ、ノウハウの略だ。THK常務執行役員 IMT事業部長の星野京延氏は、谷口社長とは1年前に知り合い、ロボットについてさまざまな議論を交わしたという。そして「THKもたくさんのロボット部品を供給させていただきたい」と述べて、キャリロに実装した駆動系の回転モジュールを紹介した。特に人と共存する生活支援ロボットにおいては、工場用設備とは違う要求があると考え、コンパクト、タフネス、サイレント、セーフティの4要素を念頭に開発を行なっていると述べた。

 キャリロにはロータリーモジュールインホイールを提供している。軸受け、減速機、モーターを一体化させコンパクトにしたもので、減速機は日本電算シンポが担当した。1つで3方向の荷重が受けられるクロスローラーリングを採用して小型化、歯がないローラーで回転を伝達する「トラクション減速機」を使うことで静音化を実現した。「タフで人にやさしいものは何なのか追求した」という。

トラクション減速機とクロスローラーリングの実物
2社から「CarriRo」用に新開発のインホイールモーターを提供
クロスローラーリングとトラクション減速機で静かでコンパクトに
一体化させることで部品点数も減少
3方向の荷重が受けられるクロスローラーリング
トラクション減速機で振動レスで静かに
歯こぼれしないので安全性も
次世代ロボットに今後も部品を提供していくという

Core i7使用の自動運転車用コントローラボックス「IZAC」

自動運転コントローラIZACの概略

 ZMPからは同日、Intel製CPUを使用した自動運転用コントローラボックス「IZAC」(アイザック)も発表された。IZACは「Intel ZMP Autonomous Controller」の略で、自動運転技術開発用プラットフォームとして用いられるハードウェア。名前のとおりマザーボードにIntelのCPUを用いており、試作機はCore i7を使用している。

 試作段階で、2014年9月からテスト販売を開始する。ZMPが開発してきた自車位置推定やマッピング、レーン検出、経路生成、そしてステアリングやブレーキ・アクセルコントロールなど自動運転車用の関連アルゴリズム群も合わせてコンポーネントとして提供される予定だ。

 ZMPは、2012年からトヨタプリウスをベースにしたロボットカー「RoboCar HV/PHV」を自動運転車開発プラットフォームとして販売している。また同社は5月7日、Intelがグローバルに展開する投資部門であるIntel Capitalから、自動車の技術革新に特化した「インテル・コネクテッド・カー基金」を通じて投資を受けている。投資の詳細は明らかにされていない。

 これまでは自動運転を行なう車のコントローラボックスに外付けのPCを接続して、開発ソフトウェアのテストを行なってきたが、IZACは高速演算もリアルタイムで行なうことができ、車両制御までがワンボックスで可能になった。ネットワーク系など非リアルタイム系の処理と、車両制御など高いリアルタイム性が要求される処理を1つのボックス内で行なえるようになった。自動走行に特化したシンプルで堅牢なタスクの並列実行、タスク間連携の仕組みをZMPからミドルウェアとして提供する。CおよびC++言語を使用した開発だけでなく、自動運転技術のような制御系の研究開発で標準的に使用されているMATLAB/Simulinkからのコード生成にも対応する。OSはリアルタイムLinuxを用いる予定とのこと。ユーザーは既存コンポーネントを組み合わせて利用することもできるし、独自にアルゴリズムを実装することもできる。

IZACの構成
IZACのソフトウェア構成
提供されるコンポーネント
RoboCar PHV。一見、普通の車のように見える自動運転車
ZMPのRoboCarによる画像認識・処理の様子
ZMP技術開発部部長の三原寛司氏
インテル株式会社取締役副社長の宗像義恵氏

 会見にはインテル株式会社取締役副社長の宗像義恵氏も登壇。「さまざまな端末からデータがクラウドに上がってくると、インテルとしては大きなデータセンタービジネスが展開できる」と述べて、新マーケットとしての車載の情報端末や次世代の運転支援技術、コックピットの統合化などに対して期待を見せた。インテルキャピタルからの投資は、インテルが考えるロードマップと、ZMPのそれとが同調したからだという。

 谷口社長は、ZMPでは実用化を目指したリーズナブルな自動運転の実現を目指して開発していると述べた。「IZAC」は現在はまだ設計試作の段階。今年末までに既存のZMP RoboCarユーザーなどを対象にテストマーケティングを行ない、フィードバックを得て、来年(2015年)の7月には製品化することを目指す。なお「IZAC」とは1世代だけの特定の製品だけではなく、「Intelのプロセッサを使って、自動運転に向けて長く進化させていくもの」で、将来的にはカーナビサイズで、目的地を設定すれば周囲をセンシングしながら自動運転していくような時代の実現を目指す。

Intel In-Vehicleソリューションのビジョン
インテルキャピタルからZMPへの投資
握手を交わすインテル取締役副社長の宗像義恵氏(左)とZMP谷口恒氏(右)