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Kindle国内立ち上げから1年の施策と効果とは

Kindle Paperwhite
友田雄介氏

 Amazon.co.jpは、10月25日に「Kindle連載」の発表会を開催した。その中で同社Kindleコンテンツ事業部事業部長の友田雄介氏は、日本におけるKindle立ち上げからのこの1年間の施策や、電子書籍と紙書籍との関係性などについて説明を行なった。

 同社が掲げるKindleのビジョンとは何か。それは「あらゆる時代の、あらゆる言語の、全ての本を、世界中のどこでも、60秒以内で手元に届ける」ことだという。ちなみに、同社の言う「Kindle」とは同社の電子書籍端末のことだけをいうのではなく、PC、iOS、Androidなどのアプリを含めた幅広いプラットフォームでの電子書籍サービスを指す。

 Amazon.comは米国で1995年に紙書籍の取り扱いを始め、その販売量は右肩上がりで増えているが、2007年から始めたKindle本(電子書籍)の販売量は2011年に紙を超え、2013年現在では紙の2倍に迫ろうという勢いで増加している。

 一方、日本はというと、Kindleのサービス立ち上げがちょうど1年前ということで、まだ紙書籍の販売量には遠く及ばない。しかし、Kindleストアオープンから1年間での紙書籍に対するKindle本の売上比率は、米国、ドイツより高く、英国に比肩する。英国でのKindle本の勢いが強いのは、すでに米国でKindleサービスが始まっていたことで、英国で販売できる英語のKindle本の量が多かったことに起因する。そういった状況ではないにも関わらず、日本での電子化の普及が早いのは注目に値するだろう。

 前述の通り、日本では1年前の10月25日にKindleサービスを立ち上げ、当時はマンガ15,000作品を含む、50,000点の日本語書籍を取り揃えた。これがこの1年間で、日本語書籍は約3倍の148,000点に、コミックは約3.5倍の53,000点にまで増えた。

 ちなみに、サービス開始から数カ月の2012年末の段階で、Kindleストアでのマンガの販売数は、紙のマンガの半分を超えている。そういった事情もあり、先に発売された「Kindle Paperwhite」は日本でだけ、ストレージ容量を2倍の4GBに増やしている。

 こういったKindle本の好調さの背景には、電子書籍の手軽さや利便性もあるが、サイト上での紙書籍に対する「Kindle化リクエスト」も寄与しているという。具体例として、1984年に発売され、ロングセラーではあるがベストセラーには入っていない「失敗の本質」という書籍は、Kindle化リクエストが継続的に増加していたため、出版社と協力し一から電子化を図ったところ、紙を超える売り上げを記録した。

 他の取り組みとしては、紙版と電子版の積極的な同時発売がある。同時発売を行なうと、紙の売り上げが落ちるのではという予想もあるが、「グラゼニ」というマンガでは、8巻において紙から43日遅れでKindle版を出したところ、30日間の紙の売り上げが1に対しKindle版が0.2だった。これに対し、同時発売を行なった9巻は、8巻紙版に対して紙が1.1、Kindle版が0.4、11巻では紙が1、Kindle版が0.7というように、紙の売り上げが落ち込むことはなく、Kindle版も順調に売り上げた。ちなみに、同時発売ができずKindle版が8日遅れとなった10巻では、Kindle版に対して紙と同時の「予約」を行なったが、紙の売り上げは1倍、Kindleの予約分売り上げは0.2、予約のない売り上げは0.4という結果で、電子版に対する予約は、機会損失を防ぐ効果があったとした。

 また、同社は日替わりおよび月替わりのセールも行なっている。セール対象品は、通常より40〜50%以上価格が安くなる。闇雲な安売りに対しては批判的な声もあるが、9月に日替わりセールを行なった30作品の平均販売数は、セール当日にそれまでの7日間の平均に対し、501倍という極めて高い売り上げを達成。そして、セールが終わった翌日以降の7日間でも、8倍の売り上げを維持しており、セールによって作品の露出を高めることなどで、終了後も効果が継続するとした。

 このほか、個人がAmazonで出版をできる「Kindleダイレクト・パブリッシング」については、費用が無料で、最大70%のロイヤリティが得られ、世界中で販売可能であることから、新しい出版市場を創造しているとした。

(若杉 紀彦)