米Appleは10月23日午前10時(現地時間)、7.9型液晶ディスプレイを搭載したiPad miniをはじめとする新製品を発表した。
ティム・クックCEO |
米カリフォルニア州サンノゼのカリフォルニアシアターにおいて、ティム・クックCEOと、ワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントのフィル・シラー氏の2人が登壇し、「iPad mini」のほか、第4世代の「iPad」、13型Retinaディスプレイを搭載した「MacBook Pro」、5mmの薄さを実現した第8世代目にあたる「iMac」、そして、従来製品に比べて2倍の高速化を図った「Mac mini」を発表した。
製品の具体的な内容は別記事を参照していただき、ここでは発表会の内容についてレポートする。
発表会が行なわれたカリフォルニアシアターには、開演の2時間前となる午前8時頃にはすでに報道関係者の列ができるという過熱ぶりの中で発表会は幕をあけた。
iPad miniや13型Retinaディスプレイを搭載したMacBook Proが発表されるのではないかといった情報は事前に流れており、結果としては、ほぼ予想通りの発表内容となったが、それでも、2012年の年初に、「今年はイノベーティブな製品を投入すると宣言したが、その約束通りの製品が投入できたと考えている」というクックCEOの言葉の通り、発表会会場では、参加者の拍手や歓声があがり、いつもの盛り上がりと変わらないものとなった。
まずクックCEOが示したのが、数々の数字だ。
すでにリリースでも発表されているiPhone 5が発売直後の週末までに500万台の販売台数に達したことや、10月から発売となったiPod Touchなどの新たなiPodシリーズがすでに300万台を販売したこと、iOS 6を搭載した製品の累計出荷台数が2億台に到達したことを、次々にスクリーン上に数字を映し出しながら、先頃発表した製品が好調な売れ行きを示していることを強調した。
クックCEOが示した数字は、これ以外にも、クラウド上に保存されているドキュメントの数が1億2,500万に達していること、iMessageでは、3,000億件のメッセージがやりとりされていること、Game Centerでは1億6,000万件のアカウントが登録されていること、さらにShared Photo Streamでは7,000万件の写真が共有されていることなど多岐に渡った。
また、iOSのアプリケーション数は70万種類に上り、そのうち、iPad向けアプリケーションは27万5,000種類に達していることなどを示したほか、「AppStoreによるアプリケーションの累計ダウンロード数は350億件。開発者に支払った金額は65億ドル」、「Androidにも多くのソフトウェアが登録されているが、タブレットに最適化したアプリケーションの数が少ない。ほとんどがスマートフォン向けのアプリケーションをそのまま利用している。タブレット用ではAppStoreの方が多い」などと語った。
クックCEOは、講演の随所で、タブレット分野におけるiPadの強みを訴求していたのが印象的だ。
7.9型液晶ディスプレイを採用したiPad mini | iPad mini(左)と第4世代iPad | iPadシリーズの価格体系 |
背面 | 手に持ったところ | 卓上に置いたところ |
例えば、iPadで利用できるiBooksでは1,500万冊が用意されており、すでに4億冊がダウンロードされたという実績を発表したほか、このほど、日本語の縦書きに初めて対応したことを公表。「英語では左から右にページをめくるが、日本語の縦書きでは、右から左にページをめくる。これに対応した」と語り、会場を湧かせた。
また、Fortune 500社の94%がiPadを導入および導入テストを行なっていることや、高校の教科書の80%がiBooks対応となっており、2,500教室でiBooksを実際に導入していることも示した。
米国の高校で使用される教科書は、高価であり、さらに重厚な装丁となっているため、重たく持ち運びにくいという問題があったが、これがiPadとiBooksによって解決されているというわけだ。
こうした事例を示しながら、iPadが累計で1億台の出荷に到達したことを初めて明らかにし、その一方で、タブレットの利用で最も多いとされるウェブ利用においては、調査会社の資料をもとにiPadが91%という高いシェアを誇っていることを示した。
こうした数々のデータを示す中で、第4世代のiPadおよびiPad miniを発表した。iPad miniでは、新たに7.9型の液晶ディスプレイを採用しているが、シラー氏が強調してみせたのは、9.7型を採用した従来からのiPadとの比較ではなく、むしろ、ほぼ同サイズとなるAndroidに多い7型液晶ディスプレイモデルとの差だった。
シラー氏は、「7型と7.9型はそれほど差がないように見えるだろうが、単純比較しただけでも、iPad miniの方が35%も画面が大きい。そして、ウェブページを表示してみると、Androidでは、タブの部分や、メニューボタンなどがあるため、iPad miniの方が49%も大きくなる。さらに画面を横にしてみると、iPad miniの方が67%も大きくなる」などとした。
スクリーンには、その差がわかるようにグラフィカルに画面サイズを表示。7.9型を採用したことのメリットとともに、iPad用に開発された既存のソフトがそのまま動作する強みも訴えた。
iPad miniのキャッチフレーズは「Every inch an iPad」。英語では、「Every inch a ○○」という言い方で、身長は違っても同じ能力をもっていたり、同じ評価をされたりということを指す。日本語では「ミニなのは、サイズだけ。」というキャッチフレーズを使っているが、iPad miniでは、小さくても、iPadの性能は変えていないという点を訴求していく考えを示した。
PC関連では、13型Retinaディスプレイを採用したMacBook Pro、2倍の高速化を実現したMac mini、ディスプレイ部の薄さを5mmとしたiMacを発表した。
新たなMacBook Proは、従来の13型MacBook Proよりも20%薄くなり、史上最軽量のMacBook Proになったという。また、409万6,000ピクセルを実現。ほとんどのHD TVよりも高い解像度を達成しているという。ただし、シラー氏は、これを「世界で2番目の高解像度」と表現。「首位は約500万ピクセルを持つMacBook Proの15型Retinaディスプレイモデルがある。競合他社では、15型や17型で、13型のMacBook Proよりも、解像度が低いものも数多い」などと語った。
13型Retinaディスプレイを搭載したMacBook Pro | MacBookシリーズの価格体系 |
13型Retinaディスプレイを搭載したMacBook Proの内部構造 | MacBook Pro の13型Retinaディスプレイモデルのインターフェイスなど |
また、Mac miniでは、サーバーモデルとして、新たに1TBのHDDを搭載したモデルを用意。一番小さくて、一番手頃なMacというポジションはそのままに進化を遂げた。
Mac miniのインターフェイスなど | Mac miniの内部構造 |
価格は599ドル。日本での価格は52,800円から | Core i7を搭載した上位モデルは999ドル。日本では68,800円から |
一方、iMacでは、第8世代目への進化を遂げ、最薄部5mmという薄さを実現したのが特徴だ。これを実現するために、摩擦撹拌接合方式を採用。27型ディスプレイモデルと、21.5型ディスプレイモデルを用意している。
また、iMacでは、128GBのフラッシュストレージと、1TBあるいは3TBのHDDを組み合わせたFusion Driveを新たに提案。よく利用するアプリケーションは自動的にフラッシュストレージ側に格納し、高速起動などを行ない、あまり使わないソフトや、大容量のデータなどはHDDに格納することで、より効率的なストレージ活用を行なえるようにしている。
クックCEOは、「PC市場全体の成長率が2%に留まっているのに対して、Macは前年同期比15%増という高い成長を維持し、過去6年間に渡り、業界全体を上回る成長を遂げている。顧客満足度も向上し、米国ではナンバーワンのデスクトップマシンになった」と胸を張った。
最後に、クックCEOは、2012年に発表した数々の製品にもう一度触れながら、今年1年を総括。今回の新製品にも強い自信をみせた。
10月26日のWindows 8の発表直前での新製品の発表。そして、Samsungとの係争で敗北したカリフォルニア州連邦地方裁判所から100mも離れないところでの新製品発表としたことからは、対抗陣営に対するAppleの強い意思が感じられるといえよう。
(2012年 10月 24日)
[Reported by 大河原 克行]