NEC PC、群馬事業場で業界最短の「1日修理」体制を公開
〜レノボ・ジャパン向け修理体制構築は今後検討へ

NECパーソナルコンピュータの群馬事業場



 NECパーソナルコンピュータは、故障したPCが修理拠点に到着後、24時間以内に修理を行ない、出荷する「1日修理(1 Day Repair)」の体制を構築している。購入から1年以内の無償保証期間内のPCを対象に実施しているもので、「安心・簡単・快適」を事業方針に掲げる同社ならではのサービス体制ともいえよう。1日修理を行なう、群馬県太田市の群馬事業場で、その取り組みを追った。

●PCの生産ノウハウを蓄積した拠点
NECパーソナルコンピュータでは、リフレッシュPCの再生も行なう

 NECパーソナルコンピュータの群馬事業場は、NECブランドのPCの修理および保守業務のほか、不要PCの買い取り相談窓口や、同社認定中古PCである「NECリフレッシュPC」の再生を行なっている拠点でもある。国内で圧倒的なシェアを誇ったPC-9800シリーズの時代には、デスクトップPCの主力生産工場であり、PCの生産ノウハウが蓄積されている修理拠点ともいえる。

 実際、昨年(2011年)秋のタイ洪水被害の影響により、HDDの入荷が遅れ、その後、期末に向けた集中的な生産が必要になった際、PCの生産拠点である米沢事業場でベースモデルを組み上げたのち、HDDを追加する作業を、群馬事業場内で実施。そのための生産ラインを群馬事業場に構築し、生産量の拡大に対応するといった取り組みが3月上旬まで行なわれていた。これは、BCP(事業継続計画)の観点からも有効であり、群馬事業場は同社のPC生産を支える隠れた拠点ともなっている。

●東日本の1都15県を対象に月6,000台を修理

 NECパーソナルコンピュータは、全国11カ所の修理拠点を持っているが、群馬事業場は東日本テクニカルセンターとして同社最大規模のPC修理拠点となる。対象としているエリアは、北海道を除く東日本地区の1都15県。同事業場では、個人向けPCを対象に、直接個人からの修理申し込みと、約3,000社9,000店舗を通じた修理依頼に対応。約40人の修理専門スタッフの体制により、約12,000種類の同社PCおよび修理を行なうことができ、月6,000台のPCを修理しているという。

 NECパーソナルコンピュータ保守サポート事業部の土屋晃事業部長は、「故障したPCの使えない時間を短縮化すること、そして、確実に直すことが、修理部門における顧客満足度向上への取り組みとなる。迅速に修理をすることは、大きな差別化になる」とする。

 また、NECパーソナルコンピュータ東日本テクニカルセンターの星野敬正センター長は、「これまでは24時間での修理対応率を95%以上とすることを目指してきたが、繁忙期である2011年12月にも97.8%の修理が24時間対応となり、安定した形でこの体制を維持できるようになった。そこで、対外的にも1日修理を打ち出すことができるようになった。さらに8時間修理体制においても、2011年6月には4割程度だったものが、2012年2月には87.8%にまで高まっている。今後、さらに8時間以内での出荷比率を高めていきたい」と語る。

 24時間以内での修理、出荷は、現時点では98%前後で推移していることになるが、「不具合の状況が修理工程で復元できない場合があり、この場合にはユーザーとのやりとりがどうしても必要になる。また、音がうるさいなど故障の範囲が特定しにくいものに関しても、同様にやりとりが必要。こうした点を考えると、24時間以内の出荷率はほぼ限界に達しつつある」というのも事実だ。また、「現在は残業で対応している」という修理品が集中する時期の対応を考えても、やはり同様に24時間の出荷率は限界に達しつつあるともいえる。あとは、8時間以内の出荷比率の上昇とともに、修理の確実性や、修理内容をわかりやすく説明するなどの付加価値サービスの拡充などが、顧客満足度向上のポイントなるだろう。

 NECパーソナルコンピュータでは、「交換主要部品説明書」を用意。これを修理したPCに貼付することで、修理した部品内容を分かりやすく示したり、故障を起こしにくいような使い方を提案する「パソコンご使用上の注意点について」といった説明書を同梱。これによって、修理から戻ってきたPCを引き続き安心して使えるような環境を実現している。これも、確実に修理を行ない、引き続きPCを安心して使ってもらうという観点からの強化策の1つだと言える。

 2012年4月からは、これまでハガキを利用していたユーザーに対する修理対応アンケート調査を同社サイトからも行なえるようにし、修理した翌日には、ユーザーからの評価が届くという仕組みを構築。ユーザーの声をいち早くサービス品質に反映しやすいようにする。

 なお、有償での修理サービスについては、修理費用の見積書の回答時間などが必要になるため平均40〜48時間、販売店経由の場合には、販売店からの移送時間などがあるため、平均100〜110時間の修理になるという。

群馬事業場 NECパーソナルコンピュータの群馬事業場で修理を行なうスタッフ NECパーソナルコンピュータ保守サポート事業部の土屋晃事業部長
NECパーソナルコンピュータ東日本テクニカルセンターの星野敬正センター長 HDDの最終取り付け作業を行なっていたエリア。47,000台のPCを生産したという 群馬事業場に寄せられた感謝の声の数々
販売店を窓口にするルート便による修理リードタイム短縮への取り組み
これまではハガキによってユーザーの満足度を調査 4月からスタートするWebでの修理後アンケート なにが交換されたのかがわからないという声に対応して用意した「交換主要部品説明書」
PCを長期に渡って使ってもらうため「パソコンご使用上の注意点について」

●1日修理体制の仕組みは追う
NECパーソナルコンピュータの「1日修理」の流れ

 NECパーソナルコンピュータが提供する1日修理の流れはこうだ。

 万が一、PCが故障した場合、NECパーソナルコンピュータのサポート窓口である「121コンタクトセンター」で修理を申し込むと、NECあんしんサービス便により最短1日で修理品を引き取る。引き取ったPCが、東日本エリアの1都15県の場合には、群馬事業場に運び込まれる。

 NECパーソナルコンピュータによると、修理問い合わせのうち、約8割が電話口での問診サービスで対応が完了するという。つまり、問い合わせのうち、2割がハードウェアの故障などにより、実際の修理対象になるという。

 故障したPCは、毎朝午前8時30分に、群馬事業場に到着。その後、診断工程で、修理箇所の特定や、着荷した修理品と添付品などを確認する作業を経て、修理工程に運ばれる。修理工程では1人のスタッフが最後まで対応するという体制だ。

 修理を担当するスタッフは、PCサービス専門職に必要とされる技術知識を認定する業界標準試験の「CompTIA A+」を、全員が取得している。

 修理に使用する部品は、診断工程の段階ですぐに部品ストアに通達が出され、必要な部品の在庫引き当てが行なわれ、修理工程に投入される。

 修理が完了すると検査工程に入る。ここでは修理対象となった部分の復旧確認のほか、ウイルスチェックなどの検査が行なわれる。これが完了すると、梱包工程を経て、24時間以内に出荷されることになる。出荷されたPCは、最短1日でユーザーの手元に届けることができるという。

 最近では、8時間修理の出荷比率が上昇していることから、個人ユーザーが修理品の配送手続きを行ない、修理が完了し、手元に戻ってくるまでに3日間というケースが増えているという。

 なお、修理するPCの群馬事業場への到着日あるいは到着翌日が休日(日曜日あるいは年末年始)の場合には、翌営業日以降の発送となる。また、保証期間を過ぎているために、有償サービスとなり、見積書の送付や返答待ちなどの時間を要する場合には、1日修理の対象外となる。そのほか、故障現象が再現できず、修理箇所が特定できない場合、HDDの初期化承諾が確認できない場合なども1日修理の対象外となる。

●1日修理を実現するための数々の工夫

 1日修理の実現には、多くの創意工夫が盛り込まれている。

 まず、従来はトラックルートごとに時間を分けていたが、これを午前8時30分に集中させる形へと変更。また、午前中は着荷に集中させ、午後は出荷に集中させるという思い切った仕組みを採用することで、午前中に数多くの修理品の受付業務を行なえるようにした。外部に委託していた受付業務を内部に取り込んだことも、すぐに修理作業を開始できることにつながっている。これらの取り組みにより、診断時間の開始は約30分前倒しできたという。

 「早い時間帯にいかに多くのPCの修理を開始できるかが、修理リードタイムを短縮する要素になる。修理の作業は着荷しなければ始まらない。着荷を待つのではなく、一気に着荷させ、10時30分ぐらいまでに修理が完了すれば、約1時間かかるツールを活用した無人の検査などに、お昼時間を利用でき、これも時間短縮に直結させることができる」という。

 また、修理情報ナレッジシステム「K1」を活用し、ここに蓄積されている約24,000種類のPC、10,000種類の周辺機器に関する修理データおよび技術データを活用。交換部品などの過去の修理として蓄積された約300万件のデータも利用することで、ノウハウやスキルを共有化して、効率的な修理業務につなげるといった取り組みも行なっている。

 K1からは、各種の診断ツール、検査ツールをダウンロードすることも可能であり、これも診断工程および検査工程で活用されている。

 診断に関しては、必要とされるテストを網羅した総合ツールに加え、症状や機種にあわせて最適なテストを実施するために、HDDテストツール、メモリテストツール、負荷テストツール、インターフェイステストツール、表示テストツールなどを用意。従来は3.5時間かかっていた診断時間を1.9時間へと45%短縮した。

 「診断の品質を落とさずに、診断時間を45%削減できたことは、1日修理の実現に大きく寄与している」(星野センター長)という。

 さらに、部品配膳については、配膳システムをバッチ処理からリアルタイム処理へと変更したこと、部品のピッキングサイクルを1ロットあたり10個から5個へと小ロット化したことで、平均配膳時間を22分から13分へと短縮。また、在庫部品に関しても、メンテナンスサイクルを週ごとから、日ごとへと改善したことで、月平均121件発生していた在庫部品不足が、月平均30件にまで削減できたという。

 修理が完了したPCには、OSなどのソフトウェアを新たにインストールするが、ネットワークを介したインストール時間についても、平準化作業を進めることで、従来は1時間〜2時間30分といったバラつきがあったものが、約1時間で進められるようになったという。

 診断、修理および検査工程においては、手作業で作業書にペンで記入するシーンが数多くみられている。これは一品一様となる修理において、標準化することが難しい点があげられる。「着荷時点で細かく添付品を確認するといった作業の必要もあり、手作業を採用している。だが、将来的にはRFIDの導入なども検討していきたい」(星野センター長)と、今後の改善にも意欲をみせている。

 出荷工程においては、従来は午後6時としていた最終出荷便を、午後7時にまで延長。これにより、修理当日の出荷数量の拡大を実現している。

 これに伴い最終梱包を午後7時まで、修理品の最終回収時間を午後5時までと、それぞれ1時間延長している。
 
 では、NECパーソナルコンピュータ群馬事業場における修理工程の様子を写真で見てみよう。

NECパーソナルコンピュータ群馬事業場のPC修理エリア 1日修理の着荷から出荷までの様子 エリア内にはサポート/サービス向上を目指すキャッチフレーズが掲げられている
24時間以内の出荷は98%以上の達成率、8時間以内の出荷も87.8%に達している 着荷便を午前8時30分から集中的に受け入れる 修理PCの入出荷口の様子。午前は入荷、午後は出荷に集中する
無償修理対象PCはあんしん便で優先的に入庫する 修理部品の入出荷口 部品の管理業務エリア
修理部品倉庫の様子。7188平方メートルのエリアに、約3万口座の部品がストックされている 部品の配膳時間および在庫不足も解消されている
有償での修理が行なわれものは見積もり回答待ちのエリアに保管される 故障状況が復元できない場合などは電話で所有者に問い合わせるエリアを用意 デスクトップPCの修理の様子
ディスプレイ一体型PCの修理の様子。こちらは横長の机で作業が行なわれる ノートPCの修理の様子 修理情報ナレッジシステム「K1」によりノウハウ、スキルを共有化
診断および検査工程で利用される総合ツール 独自開発した診断・検査ツールによる時間を短縮化した
修理が完了したノートPC 最後に梱包作業を行なう 出荷最終便の時間を1時間遅らせた

●レノボ製PCの修理体制はどうなるのか

 ところで、今後の動きとして注目されるのが、やはりレノボ・ジャパンとの連携だろう。

 すでにレノボ・ジャパンは、個人向けPCの電話サポートにおいて、NECパーソナルコンピュータのインフラを活用。また、NECパーソナルコンピュータが持つ米沢事業場の生産ラインを、レノボの法人向けPCのカスタマイズにおいて活用する方向で検討を開始している。

 この流れで、群馬事業場の修理体制を活用するも当然想定されることになり、仮にこれが構築されれば、レノボブランドのThinkPadなども、これまで以上に迅速な修理が可能になるのは明らかだ。

工程を紹介する看板は日本語とともに英文も表示する

 NECパーソナルコンピュータ保守サポート事業部の土屋晃事業部長は、「これから検討課題になっていく可能性はあるだろう」としながらも、「群馬事業場でPCの修理を行なうスタッフは、ThinkPadの修理も行なえるスキルは持っている。ThinkPadの修理では、特別な仕組みがあるわけではないということはすでに分かっている」などとし、レノボ製PCの修理への対応が可能な体制が、事実上、準備されていることを示す。

 修理エリアでは、日本語表示とともに、英文でも工程の内容を表記しており、「レノボの関係者が視察に訪れた際にも、分かりやすいように英文で表示している」という説明があった。この説明からも、レノボとの関係強化に向けた動きがあることが裏付けられる。

 レノボ製PCの修理を群馬事業場で行なうようになれば、レノボ・ジャパンの顧客満足度の上昇につながることは明らかだ。

 いつ、どんな形で群馬事業場で、レノボ製PCの修理が開始されるのか。これから注目しておきたい動きのひとつだといえる。

(2012年 3月 27日)

[Reported by 大河原 克行]