ASUSTeK Computerは26日、都内でUltrabook「ZENBOOK」の発表会を開催。台湾本社から会長のジョニー・シー氏が来日し、製品の特徴やコンセプトについて説明した。
製品発表の記事にもある通り、ZENBOOKは禅の精神をコンセプトにしている。シー氏によると、ZENBOOKは、素朴でありながらも、美しさと性能の調和を実現し、慌ただしい現代において、内なる平穏を求めるユーザーに向けたものだという。
その具体的な内容だが、シー氏は「Super Hybrid Engine II」と総称される一連の機能/仕様について解説した。Ultrabookは、スリープからの高速復帰を1つの特徴としており、本製品では2秒で復帰する。この2秒というのは、最善の場合ではなく、常に2秒だとシー氏は強調する。というのも、同じように高速復帰を謳う他社製品では、数時間スリープさせた後の復帰では10秒以上かかることもあるが、ZENBOOKではあらゆる状況で2秒で復帰するとしている。この機能が、どのような技術を用いているのか詳細は不明だが、ウィジェットでオン/オフできるようになっているので、ソフトウェアでなんらかの最適化を行なっているものとみられる。
また、本製品はスリープ状態で最大約14日間バッテリが持続する。加えて、バッテリ残量が5%を切ると、自動的にハイバネーション状態に移行するので、放置してもデータを損失することがないとしている。
バッテリの持続時間については、独自の「Powerwiz」というウィジェットで、ゲームプレイ時/オフィス作業時/スリープ時などの状況別に後何時間持つかがリアルタイムで表示される。
スリープ時間にかかわらず2秒で復帰 | スリープモードでバッテリが最大約14日間持続 | バッテリ駆動時間を示す独自のウィジェットを搭載 |
性能については、まずSSD、USB、解像度などについて競合製品との具体的な比較を紹介した。この比較対象は「世界で最も売れている競合製品」として紹介されたが、内容から13インチのMacBook Airであると推測される。
SSDはその競合製品がシーケンシャルリード215.6MB/sec、シーケンシャルライト213.7MB/secに対し、ZENBOOKは、それぞれ435.9MB/sec、346.2MB/sec。USBメモリを使った場合の実効転送速度は、競合の28.3MB/secに対し、182.99MB/sec。液晶は競合の1,440×900ドット、350cd/平方mに対し、1,600×900ドット、450cd/平方mとの数値を示した。
さらに、同じWindows PCとの比較も行なった。こちらの対象は先だって発表された日本エイサーのUltrabook「Aspire S3」だと思われ、ZENBOOKの方が3DMark06が約32%、ストレージ性能が3~4倍、USB転送速度が6倍以上高く、バッテリ(ネット閲覧時)は2倍長持ちするが、重量は200g以上軽いとした。
ただし、Aspire S3にはSSDモデルもあるが、ここの比較数値はHDDモデルのものとなってることを差し引いて考える必要がある。また、バッテリについては、シー氏が例示した時間は3.5時間に対し、日本エイサーの公称持続時間は5時間となっている。
もう1つシー氏が強調したのが、音質の良さ。ZENBOOKでは、Bang & Olufsen ICEpowerと協業した音響を搭載。シー氏は壇上で、マイクなどを通さずZENBOOKの実機から音楽を再生させたのだが、確かに17mmという厚さからは想像できない大音量でありながらも、音が割れたりということはなかった。
価格についても、11.6型の下位モデルで84,800円という、これまでの他社のUltrabookを下回る設定だが、これは11インチMacBook Air下位モデルと同じであり、やはり同製品を意識した価格付けとなっている。
“X社売筋商品”とのストレージ性能比較 | 同USBの比較 | 同液晶解像度の比較 |
同液晶輝度の比較 | “Y社新製品”との3DMark06の比較 | 同ストレージの比較 |
同Windowsエクスペリエンスインデックスの比較 | 同USBの比較 | 同重量の比較 |
同薄さの比較 | 3製品のバッテリ駆動時間の比較 | 下位モデルは84,800円 |
ゲストとしてインテル取締役副社長の宗像義恵氏が招かれ、Ultrabookの構想について説明した。
同社では、Ultrabookを1995年のマルチメディアPC、2003年のモバイル機能(Centrino)に続く、大きな変革だと位置付けている。また、一過性のものではなく、既報の通り、Ultrabookの発展に向け、3億ドルの基金を設立したほか、すでに2012年の「Ivy Bridge」、2013年の「Haswell」というプロセッサでの展開をも見据えていると述べた。
インテル宗像義恵氏 | Ultrabook基金を設立し技術革新を促進 | 次世代移行のプラットフォームでもUltrabookを継続発展させる |
発表会終了後、シー氏はいくつかのメディアのインタビューに応じ、2012年1月に米国で開催されるInternational CESにおいて、何らかのクラウドサービスを発表する予定であることを示唆した。
詳細は不明だが、シー氏はAppleやAmazonのハードウェアとクラウドの連携について、大きな成功を収めていると評価はしつつも、環境がクローズであることを指摘。ASUSTeKとしては、GoogleやMicrosoftのようなオープンなアプローチを採用。ただし、Chromeのようにすべてをクラウド前提にするのではなく、ローカルで処理を行なうのに必要十分な性能を持ったハードと組み合わせたサービスのようなものを発表予定であることを明らかにした。
また、UltrabookはノートPCの一形態であるが、今後ノートPCとタブレットのどちらが優勢なのか、あるいはASUSTeKはどちらに注力するのかについては、今は移行期であり、当面は成り行きを見守りながら、ユーザー体験を最優先させつつ両輪で展開していきたいとの慎重な姿勢を示した。ただし、Windows 8が投入されると、タブレットの用途がより広がるだろうの考えを示した。
このほか、今回の製品開発に当たっては、シー氏およびCEOのジェリー・シェン氏も企画・設計に加わったことなどを語った。Ultrabookのような薄さと高性能を両立させるに当たっては、さまざまな試行錯誤とトレードオフの判断が必要で、状況に応じてシー氏らが指示を与えていったという。プロトタイプについては初期から製品版までに20回以上作成したといい、当初は不可能とさえ思えたことを成し遂げたチームを誇りに思うと自己評価した。
(2011年 10月 27日)
[Reported by 若杉 紀彦]