インテル、タブレット端末やSandy Bridgeを日本でデモ

来日したムーリー・エデン氏

6月8日 開催



 インテル株式会社は8日、都内で記者会見を開き、同社代表取締役社長の吉田和正氏と、米国本社より来日した副社長 兼 PCクライアント事業本部長のムーリー・エデン氏が、Intelの今後の製品展開やビジョンなどについて語った。

 冒頭で吉田氏は、「PC市場の活性化のためには、ユーザー体験を向上させる必要があり、そのためには新しい技術の製品が必要である。それを作っていくのが我々の役目であり、Hyper-ThreadingやTurbo Boostなどの新しい技術を投入しているが、それはユーザーの目につかない形で、ユーザー体験の向上に結びついている」とした。

吉田和正氏ノートPC市場の拡大インテルのアーキテクチャはさまざまな機器に応用可能

 また、「WiMAXを始めとしたインフラがさらに充実することで、今後はPC以外のデバイスもインターネットに接続するようになり、いろんなシーンでインターネットが使われるようになる。また、アジアはまだインターネット人口の比率が20%前後と低く、伸びしろがある。我々はその市場のニーズにトップからボトムまで応えられるもの提供できるのが強みである」と述べた。

●PC市場は依然として堅調な理由
ムーリー・エデン氏

 続いて、ムーリー・エデン氏が、PC市場の現状および今後の展望について説明。

 同氏は2008年後半のリーマン・ショックについて、「世界が不況に陥ったため、我々はPC市場が縮小するのではないかという予測を立てた。しかし結果はその逆だった。PC市場が依然として堅調な理由に、PCが、1人1台に必要なパーソナルなデバイス、生活の必需品に変化したからだ」と説明。

 具体的な例として、「私が携帯電話を買い換えたとしても、古い携帯を奥さんに譲るようなことはしない。なぜならばそれには友人の連絡先や、自分で撮ったお気に入りの写真など、パーソナルなデータが入っているからだ。PCもそれと同じであり、1人に1台ずつ必要なデバイスとなっている」と述べた。

 それは市場のデータにも反映されており、米国の調査によれば、クリスマスに欲しいものの上位にノートブックPCが入っているという。「インターネットが生活に欠かせないものとなった以上、それにアクセスするためのノートブックPCも同様に必需品となり、世界不況に陥ったとしても人々が食生活を続けるように、PCへの需要は堅調に推移した」と例えた。

GDPに左右されないPC市場の需要クリスマスに欲しいものの上位にノートPCが存在する幅広い分野でインテルアーキテクチャを応用できる

 さらに、インターネットの利用方法も変化してきており、Webサイトの増加やソーシャルネットワークサービスの普及、そして写真やビデオなどの高画質化などにより、「それをより快適に扱えるクライアントが必要となった」とする。それが、2010年1月に発表した「新2010 インテル Coreプロセッサー ファミリー(Core i7/i5/i3シリーズ)」の需要を押し上げ、急速に普及した一因となったと述べた。

 そのCore i7/i5/i3は、性能が必要とされる時に一時的にオーバークロックするTurbo Boost機能や、CPUとグラフィックスコアの電力を共有してより高い性能を実現できることなどを特徴としている。従来のCore 2製品と比較して、写真編集が約2倍、ビデオ編集が約3倍になるデータを引き合いに出し、現代的なインターネット環境にマッチする性能を備えていることをアピールした。

Webサイトの数は1兆を超える写真コンテンツの増加Core iシリーズとCore 2シリーズの性能比較
一時的にオーバークロックするTurbo Boostの有効性Turbo Boostの仕組みCPUとGPUも電力をシェアする

 また、COMPUTEX期間中に発表した、CULV向けのCore iシリーズについても、「薄型軽量の分野だからこそ、Turbo Boostの技術はさらに活かされる。従来の製品と比較して大幅に性能が向上され、より快適なインターネット環境が外出先で実現できる。これらの製品にはWiMAXの搭載も重要になってくるだろう。我々の製品によってより良いノートPC製品が実現され、PC市場がさらに伸びていくだろう」と述べた。

ラップトップ製品の小型化NECやパナソニック、東芝、ソニー、富士通から出る薄型軽量のノートをアピールするエデン氏

●Sandy BridgeとOak Trail

 次世代のPC向けCPUである「Sandy Bridge」については、「CPUとグラフィックスが1つに統合され、32nmプロセスで製造される。グラフィックス性能も強化され、カジュアルの3DゲームユースならCPU統合型グラフィックスで十分にカバーでき、メディア対応も強化される。このほかの詳細については現時点では明かせないが、1つ言えることはTurbo Boostが強化されることだ。もはや“Super Turbo”と呼んでもいいぐらいに、性能が飛躍的に向上する」と述べた。

 ここで同氏はSandy Bridgeによって実現する3Dのデモビデオを流した。ビデオでは、実際の人間の顔の表情をカメラを通してキャプチャし、それを元にアバターに表情をリアルタイムに反映させるものや、ショッピング時に、画面上の好きな洋服を選んで、Webカメラで取り込んだ自分の画像にリアルタイムに合成して試着したときのイメージを確認できる様子などが紹介され、「これがSandy Bridge世代のCPUパワーでできるようになる」と語った。

 また、アジェンダにはなかったが、会見ではSandy Bridgeを用いたCinebenchのデモが行なわれ、「現在最速のCore iプロセッサよりも高速である」ということがアピールされた。

Sandy Bridgeの概要Sandy BridgeのCinebenchによる比較。左がCore i7、右がSandy Bridge
Sandy Bridgeを用いれば、リアルタイムに選んだ洋服のモデリングをカメラの映像と合成できる
【動画】カメラで表情をキャプチャし、3Dアバターに反映させるデモ

 一方、低消費電力向けには、スマートフォンやタブレット端末、ネットブックなどがあるが、同社は今後これらにも積極的に取り組んでいくとする。

 スマートフォンについては、Moorestownプラットフォームで対応していく。「Intelのアーキテクチャがこの大きさでも実現され、AndroidをはじめとするさまざまOSに対応し、今後市場で展開していくだろう」と述べた。

 ネットブックの分野だが、「これらのユーザーは性能やスクリーン、キーボードなどのデバイス的な要素よりも、ファッションまたはコンテンツを重視する」と強調。HPの「Vivienne Tam Edition」や、Intelの「クラスメイトPC」などの実例を挙げ、「ユーザーが欲しいと思えるものを提供してくことが重要」という認識を示した。

 また、インターネットアプリケーションが要求する性能も向上しており、2つの物理コアと4つのスレッドを持った薄型のネットブックも市場からニーズがあるとし、2010年後半にもこれらを備えたネットブックが実現されるだろうと述べた。

スマートフォンなどの低消費電力分野にも対応していくネットブック分野の進化HPの「Vivienne Tam Edition」はファッションとしての意味合いが強い
VAIO Pもまたファッションの一部であるインテルのクラスメイトPCより薄型なネットブックの実現
薄型ネットブックの一例

 一方タブレット端末については、MoblinやWindows 7搭載デバイスの試作機を交えながらデモし、「我々はタブレット端末向けにOak Trailプラットフォームを提供していく。最大の特徴は、ユーザーに選択肢を与えることだ。Windowsも動くし、MoblinやMeeGo、Androidなど、ユーザーは好きなOSを選択することができる」とメリットを述べた。

タブレット端末の試作機試作機ではタッチでの操作が可能Moblin搭載タブレット端末の一例
こちらはWindows 7搭載だが、スキンをかぶせてUIが変更され、操作性が向上しているタブレット端末向けのOak Trailプラットフォームエデン氏

 最後に同氏は、「PC市場はまだ健全であり、今後も大きな成長機会が期待できる。また、Sandy Bridgeの登場やタブレット市場の拡大により、新たなビジネスチャンスが生まれる。我々はIntelのアーキテクチャをトップからボトムまで提供し、魅力のあるプラットフォームをユーザーに提供していきたい」と述べ、話をくくった。

(2010年 6月 8日)

[Reported by 劉 尭]