次期Office for Macは2010年末に登場。Outlook for Mac搭載
〜Windows版Office 2010との高互換性を目指すMac BU

今回来日したMac BUのゼネラルマネージャ、エリックウィルフレッド氏(右)とマーケティング・プランニング シニアディレクターのパット・フォックス氏(左)

11月20日開催



 マイクロソフト株式会社は、同社Macintosh Business Unit(通称Mac BU)のゼネラルマネージャであるエリック・ウィルフレッド(Eric Wilfrid)氏の来日にともない、メディア向けのラウンドテーブルを開催した。Mac BUは、Mac向け製品を専門に開発する組織としてはAppleを除けば最大規模であり、同氏はそのトップにあたる人物である。

 MacBUは8月13日(現地時間)にWebカンファレンスを行なっており、Microsoft Office for Macの次期バージョンにおいては、既存のEntourage for Macに代わってOutlook for Mac を提供すると発表している。また次期バージョンのMicrosoft Office for Macは、2010年のホリデーシーズンに向けて開発中であることも、この時明らかにされた。

 一部のメディアにおいてはOffice 2010 for Macと報道されていたこともあるが、正式名称については言及されていなかった。実際、今回のラウンドテーブルにおいて再確認したところ、あくまで2010年末にリリース予定と言うだけで、正式名称は現時点で未定とのこと。詳細は後述するが、そのため本稿では次期Office for Macと呼称している。

 8月のWebカンファレンスでは、現行のOffice 2008 for MacのSKUが変わることも発表されている。日本国内では8月19日にニュースリリースが発表され、9月18日から新しい製品ラインナップでの販売がスタートした。2008年1月に発売されたこれまでのSKUに最新のアップデートを加えたほか、ビジネスユーザー向けのBusiness EditionではEntoruogeがEntourage 2008, Web Services Editionへと切り替わった。

9月18日から発売されている新しい「Office 2008 for Mac」。Business Editionには新たにMicrosoft Entourage 2008 for Mac, Web Services EditionとMicrosoft Document Connection for Macを搭載。ビジネス関連テンプレートや日本語字幕のトレーニングビデオも付属する。

 元々ファミリー&アカデミック版との差別化は、EntourageのExchange Server対応の有無とライセンスの形態により行なわれてきたが、新SKUのBusiness Editionは、新たに最新バージョンのExchange Serverをサポートするほか、Microsoft Document Connection for Macの提供で、Microsoft Windows SharePoint Services、Microsoft Office Live Workplace上にあるドキュメントへのアクセスとブラウズを改善した点などが挙げられる。これらはいずれも、2009年1月にレポートした開発途上の内容が製品化されたということになる。

 なお既存のBusiness向けユーザーも、同社のマックトピアより、Microsoft Entourage 2008 for Mac, Web Services Editionを入手することができる。また、日本時間の11月10日にはMicrosoft Office 2008 for Mac全体の更新プログラムも提供されているので、既存のユーザーはAuto Update機能、あるいはマックトピアを通じて製品の更新を行なうのがいいだろう。

●キャッシュバックキャンペーン「キャッシュの恩返し」を実施中

 エリック氏は、11月18日に発表された期間限定のキャッシュバックキャンペーン「キャッシュの恩返し」についても紹介した。これは同日より2010年1月6日まで行なわれるキャンペーンで、期間中に対象製品であるOffice 2008 for Mac Business Editionの通常版/アップグレードまたはOffice 2008 for Macファミリー&アカデミックを購入したユーザーにそれぞれ3千円から1万円をキャッシュバックするもの。

 名称はもちろん異なるが、米国においてもホリデーシーズンをターゲットにしたキャッシュバックキャンペーンは実施されており、言うなればこれはその日本版だ。ただし、キャッシュバック額は日本のほうが大きい。特にBusiness Editionのアップグレードは実売3万円弱のパッケージに対して1万円のキャッシュバックがあるので、かなりのお得感が感じられる。アップグレード対象製品も、10年以上前の製品となるMicrosoft Office 98 Macintosh Editionを含んでおり、さらにそれ以降のスイートおよび単体製品の正規ユーザーとなっているので、潜在的なアップグレード需要を一気に掘り起こす狙いもあるとみられる。

期間限定のキャッシュバックキャンペーン「キャッシュの恩返し」 日本におけるキャンペーンが特にお気に入りで、自らのMacにもシールを貼って世界中持ち歩いているというMac BUのゼネラルマネージャ、エリック・ウィルフレッド氏 Office Web ApplicationをMacから利用する際にも重視される互換性。クライアントとなるなるブラウザは、SafariやFirefox

 続いてエリック氏は、ラウンドテーブル開催の前日に公開されたWindows版のOffice 2010のパブリックベータについても触れ、このWindows版Office 2010との互換性も、より高めていくという方針を明らかにした。特に、現在はTechnical Previewを通して提供されているOffice Web ApplicationにはMac BUも連携して開発に携わることにより、MacにおけるクライアントブラウザとなるSafariやFirefoxでの互換性に注力するとしている。

●開発環境をCocoaにして登場する「Outlook for Mac」

 エリック氏がビッグニュースとして改めて紹介したのが、次期Office for Macにおいて、Outlook for MacがEntourageに代わって搭載されるという点だ。実は、Mac OS 9時代のOutlook Expressとは異なり、Exchange Server対応アプリケーションとしてのOutlook for Macという製品も以前には存在していたことがあるのだが、今回同氏が「新しいアプリケーションとして」とわざわざ前置きしてOutlookを紹介したのは、次期Office for MacのOutlookは、開発環境をCocoaベースにして一から作成されているというニュアンスが含まれていたはずだ。

 Outlook for MacがCocoaベースとなることで、ユーザーインターフェースはMac OS Xとの親和性がより高まり、新しいデータベースを採用することで現在のMac OS Xとの相性もさらに向上するものとされる。その場では言及されなかったが、具体的な例を挙げると、現行のEntourageではメールファイルが受信ボックス単位で1つのファイルとして管理されている。その利点も確かにあろうが、Time Machineを使ったロストファイルの復旧やSpotlight検索など、現行のMac OS Xでの利用を考慮するならば、受信BOX単位ではなくメール単位で管理した方がより効率的な運用が見込めるだろう。実際、Mac OS X標準搭載のMail.appはメール単位でのファイル管理がなされている。やや大雑把ではあるが、新しいデータベースの採用にはこうしたメリットがあるものと思われる。

 もう1つ、Outlook for Macで加わるのがIRM(Information Right Management)の採用である。Exchange ServerやSharepoint Serverの利用が前提となるが、受信したメールの印刷や転送処理、コピー&ペースト、返信の範囲などを送信者側から許可したり不許可にしたりする制限を加えることができるようになる。Windows向けのOutlookではすでに提供されている機能だが、Mac版のクライアントであるEntourageではサポートされていなかった。

Outlook for MacはCocoaベースによる一からの新開発。新しいデータベースでメールやカレンダー、アドレスなどを管理する。Windows向けに提供されていたIRM(Information Right Management)も、Macをクライアントとしても使えるようになる。

 やはりこのOutlook for Macの搭載が目玉となるであろう次期Office for Macだが、加えてエリック氏のプレゼン中に何度もでてきたWindows版Officeとの互換性をより高めるというポイントや、8月のWebカンファレンスで明らかにされたVBAの復活(Office 2004 for Macでは搭載されていたが、Office 2008 for Macには搭載されなかった)など、現時点で明らかにされている情報からは、特にビジネスそして企業内での運用に注力したメジャーバージョンアップになるものと予想される。

 次期Office for Macの発売時期は、米国において2010年末、いわゆるホリデーシーズンとなる。これは8月に行なわれたWebカンファレンスで明らかにされたスケジュールから変更されていない。日本を含む他地域での発売時期については具体的な日付こそ明言こそしなかったものの、ほぼ同時期ということになりそうだ。Office 2008 for Macでは日米同時発売を実現した実績があるだけに、次回も大いに期待したいところである。

 同氏のプレゼンテーションに続いて行なわれた主な質疑応答に関しては下記のとおり。

【Q】Outlook以外のExcel、Word、PowerPointについてはCocoa化されないのでしょうか。

【A】(Macにおける)ユーザーインターフェースの向上など、Cocoa化の重要性は認識しており、将来的にはそうした方向性が実現されるものと考えていますが、現段階で(次期Office for Macで)Cocoaで提供されるのはOutlookのみとアナウンスしています。

【Q】Office 2010 for Macという名称で紹介されている例もあるようですが、Webカンファレンスでも、今日のプレゼンテーションでも具体名は言及されていませんでした。製品名称については未定という認識で正しいのでしょうか。

【A】その質問をしてくれて良かった(笑)。ちょうど先週もレドモンド(米Microsoft本社)で名称についての会議をしてきたところでした。ですが、現時点でもまだ正式な名称は決まっていません。Windows版のOffice 2010と高い互換性を持たせることは非常に重要なポイントになってはいますが、名称については別のものを与えることも考えています。

【Q】Office 2008 for Macは非常にヒットした製品となりましたが、御社におけるリサーチの結果はどうだったのでしょうか。またそのユーザー層はどうなっていますか。

【A】質問のとおり、我々は世界中からのカスタマーの意見をリサーチして、ユーザーのニーズがどこにあるかフォーカスし、それを製品開発へと反映させています。今回、Office 2008のリサーチで学んだのは、多くのユーザーがWindows版Officeとのより高い互換性を求めているということです。例を挙げると、VBAを次期Office for Macで再度搭載するという結論もこうしたユーザーの意見に答えるものと言えるでしょう。VBAのニーズは非常にシンプルで、ほぼスプレッドシートで利用されています。しかし財務関係だけではなく、幅広いユーザー層からの要望がありました。確かにMacユーザー全体としてVBAの(積極的な)ユーザーは限られた数ではあるのですが、必要とするユーザーにとっては必須とも言える要素であることを再認識したうえで、次期Office for Macへの搭載となっています。

【Q】Excahnge ServerやSharePoint Serverを利用できないような個人ユーザーが、Outlook for MacでIRMのようなメリットを享受する手段はないのでしょうか。

【A】Microsoft Online ServiceであるBPOSは、そうしたユーザーのために提供をはじめたサービスです。次期Office for MacでもBPOSは利用できるので、継続して提供していくことになるでしょう。(国内担当者の仲尾氏から)現在は利用料金も値下げされて月あたり1,000円での提供になっています。30日間の無償体験期間もあるのでお試しください。

【Q】企業向けには有料でも、個人向けには無料にはなりませんか(笑)。

【A】Mac BUだけで決められる問題ではありません。Microsoft、あるいは業界全体での課題になると思います。

【Q】現行のOfficeでは、Windows版とMac版のユーザーインターフェイスが大きく異なっています。両方を使う場合は、例え使いたい機能が同じでもどこにそのメニューがあるのか探して、その操作を両方覚えないといけない。今後は共通化が図られていくのでしょうか。

【A】リサーチにおいてはユーザーインターフェイスへのご意見も多数いただいています。(OSとしての)Windowsでのユーザーエクスペリエンス、Officeでのユーザーエクスペリエンス、そしてMacでのユーザーエクスペリエンス、それぞれで最上の体験を目指しているわけです。Office 2008 for Macでは、Windowsのリボンインターフェイスに代わるものとして、グラフィカルに表示するなどの工夫をして似た感じにするようにしていますが、(リボンインターフェイスを意識するあまり)Macならではの使い勝手を損なっては意味がありません。次期Office for Macのインターフェイスが、(Windows版の)Office 2010とどの程度同じになるかはユーザーの意見を参考にしながら検討と開発を続けていますが、いずれにせよMac OSとの親和性を損なうものにはなりません。ユーザーの期待に沿えるようにしたいと考えています。

【Q】次期Office for Macでも、複数のエディション(SKU)が用意されるのでしょうか。またOutlooK for Macはそのすべてに搭載されることになるのでしょうか。

【A】(ターゲット層の異なる)エディションを複数出すことは、たぶんそうなると思います。ただ、どのエディションにそれぞれどのアプリケーションを含めるかということについては、現時点ではまだ決定も発表もしてはおりません。

【Q】(Office 2008 for Mac発売時のExpression Mediaのように)上位エディションには何か良いものが付くということはありませんか。

【A】それもまだ決まってはおりません(笑)。

【Q】iPhoneのアプリケーションの予定はありませんか。

【A】特に、今日お伝えできるようなことはありません。

【Q】Remote Desktop Connection(RDC)には、新しいプロトコルが加わって高速化されていますが、Mac向けに提供されているRDCが更新される予定はありますか。

【A】現段階では検討中です。

【Q】本日のお話のなかではWindowsとMacの高い互換性という点がクローズアップされていますが、Messengerについてはどうでしょうか。Mac版の7.0と、WindowsのLive Messengerとは機能面でかなり離れてきた印象がありますが?

【A】Messengerにおけるオーディオとビジュアルでの対応についてはよくうかがう質問です。これらについては、Mac版でもサポートすることをコミットしております。

【Q】(Mac OS Xを)Snow Leopardにしてから、LiveMeshが使えなくなっていませんか。

【A】(LiveMeshは)Mac BUが開発や管轄を行なっているサービスではないのですが、そのトラブルは1ユーザーとして理解しています。グッドニュースがあります。数日前に修正されました(笑)。Snow Leopardから是非試してみてください。

【Q】MacとWindowsにおいて互換性の決定的な違いは、ビデオ配信サービスにおけるDRMの対応だと考えています。一般ユーザーで配信サービスの映像をMac環境で見たいと考える人は少なくないと思うのですが?

※筆者補足:「Windwos Media Player for Mac」の開発がMac BUの手を離れて、Windows Media Playerの開発チームの管轄に入ったのは数年前のことになる。Mac OS Xに対応する現行(最終)バージョンはWindows Media 9で、Windows7に搭載されているWindows Media 12とはすでに3世代もの差がついた。Macユーザーの多くは「Flip4Mac WMV」や「Perian」などのコーデックをインストールすることで、Windows Media対応として配信されているWMVなどの映像サービスの一部をQuickTimeを経由してブラウザ上で視聴しているのが現状。ただしDRMには対応できないため、有償のもの、あるいは無償であってもDRMによる制御が必要なものについてはMacプラットホームでは視聴することができない。

【A】その点については理解しています。(配信サービスに限らず)例えばPowerPoint内でビデオ再生をする時などでも起こりえる問題となるでしょう。現段階で皆さんに何か具体的にお話しできるような対応や内容はないのですが、ニーズがあるということは認識しています。

(2009年 11月 24日)

[Reported by 矢作 晃]

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