マイクロソフト株式会社は30日、障碍を持った高校生/高卒生を対象にした大学体験プログラム「DO-IT Japan 2009」を報道関係者向けに公開した。
DO-IT Japanは、「Disabilities, Opportunities, Internetworking and Technology」の略で、東京大学先端科学技術研究センターが主催し、マイクロソフトをはじめとした企業が協力して2007年から実施している。全国の障碍がある高校生、高卒生を対象として、大学を体験するプログラムを提供している。
マイクロソフト最高技術責任者の加治佐俊一氏 |
マイクロソフトがDO-IT Japanに協力する狙いを、加治佐俊一最高技術責任者は次のように説明する。
「マイクロソフトでは、米国本社での取り組みを含めすでに20年間、アクセシビリティ機能の拡充を進めている。Windows 7でもAPI拡張のほか、新しい機能が取り込まれている。また、アクセシビリティ機能を持った機器及びソフトを開発しているパートナー19団体も、Windows 7でもきちんと動作するように最終確認作業を進めている。こうした取り組みの一環として、DO-IT Japanでは東京大学と協働してプログラムの企画、運営、ソフトウェアの提供を行なっている。障碍を持った高校生に、ICTが自分達の将来に役立つものであることを理解し、新しい可能性を広げてもらうお手伝いをしていきたい」
実際のプログラムとしては、毎年10人前後の高校生/高卒生が選抜され、4泊5日の大学体験に参加する。プログラムでは、(1)大学を知る、(2)ITスキルを習得する、(3)障碍を理解する、(4)暮らしのイメージをつかむ、(5)コミュニケーションの技法を学ぶの5つの柱をベースとしたカリキュラムが組まれている。
マイクロソフトのアクセシビリティへの取り組み | マイクロソフトのDO-IT Japanでの取り組み | DO-ITの概要 |
東京大学先端科学技術研究センターバリアフリー系準教授の巖淵守氏 |
日本では全学生の0.17%が障碍者で、全学生の11%、200万人を超える障碍者が学んでいる米国に比べると、障碍者の学ぶ機会はまだまだ少ないのが実情だという。この実情を踏まえ東京大学先端科学技術研究センターのバリアフリー系準教授の巖淵守氏は、DO-IT Japanを開催する意義を次のように説明する。
「障碍者がPCがあれば大学受験しやすくなるという場合、申請は個人が行なうため、申請内容やどこまで申請が認められるのかといった情報が共有されていない。そのため、受験生側も苦労が多く、申請を受ける大学側も対処方法に悩んでいるのが実情。DO-ITでは障碍に対するICT活用の有効性を認識するといった体験を行なうと共に、同じ目的を持った参加者同士が触れ合うことで、知見を広げ、次代のオピニオンリーダーとなる人材の育成を実現していきたい」
2009年度のプロジェクトは、7月29日から8月1日までの期間開催され、新規参加者9人を含む27人が参加している。
参加者の中には、前例はわずか3人で、先天性では例のない全盲聾で大学進学を目指す高校3年生の男子も参加している。全盲聾ということで手話通訳者を通じて情報を取得することになるが、PCと専用機器を利用することで情報の取得、発信が自ら行なえるようになるという。
7月30日にはマイクロソフトのオフィスでWindows Liveメッセンジャーを通じてのミーティング体験や、Windows Liveスペースで紹介されているDO-ITに参加した先輩の体験などを体験した。
Windowsの機能の中には障碍者が利用すれば便利な機能がたくさんあるものの、「そうした機能があることが十分に認知されていないのが実情。マイクロソフトが徳島県と交わした高齢者、障碍者のICT利活用促進を協働で取り組むといった施策を、もっと多くの地域で進めていく必要がある」とマイクロソフトの加治佐最高技術責任者は説明している。
今回公開されたオンラインメンタリングの紹介 | オンラインメンタリングではビデオキャストを通じて先輩の体験談を視聴することもできる |
参加者は東大のスタッフなどを中心としたサポーターの助けを得ながら、Windows Liveの利用方法を学ぶ |
(2009年 7月 30日)
[Reported by 三浦 優子]