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「スパイ疑惑報道はC級の創作」とカスペルスキー氏一蹴

「スパイ疑惑報道はC級の創作」とカスペルスキー氏一蹴

 米紙Wasington Postは10日(現地時間)、セキュリティソフトなどを提供するカスペルスキーが、NSAの情報流出や大統領選におけるサイバー攻撃への関与が疑われていた問題についての新たな記事を公開した。それによると、イスラエルの諜報機関が2015年の時点で、同社の関与について米国当局に情報提供していたという。

 NSAは「安全保障上の懸念がある」として9月に連邦政府機関のコンピュータからカスペルスキー製品を排除していた(過去記事"米国土安全保障省がカスペルスキー製品の排除を通達")。

 同紙によると、イスラエルの諜報機関は、カスペルスキーのネットワーク上で機密情報であるNSAのハッキングツールを発見したため、その事実をNSAに通報した。さらに、続く調査で流出したファイルはロシア政府の管理下にあったことが判明したため、ロシア政府がカスペルスキー製品を利用して米国にスパイ行為を行っているという一連の疑惑につながったという。

 カスペルスキーは、「我々は私企業であり、ロシアを含むいかなる政府とも不適切な協力関係を持ったことはなく、地政学的な争いに利用されているだけ」と声明を発表。

 同社の創設者でもあるユージン・カスペルスキー氏も自身のブログで、この疑惑について報道する各紙が"情報源"や"事情通"に対する取材に基づいた根拠のないセンセーショナルな報道を行なっていると批判を展開。メディアや米国の発表を「C級映画のシナリオ並(B級未満の意)」とした。

 しかし、NSAの機密情報を保有していた件については、「未知の脅威に対応するヒューリスティック検知機能を支えるシステムは、疑わしいファイルを自動的に検出して同社に転送する」ことに触れ、そうした過程で機密情報が収拾された可能性は否定していない。

 こうした情報収集も、"強行すぎる"として今回の事件で批判にさらされたが、この件に関しても「サイバー攻撃と戦う唯一の方法であり、考えを改めるつもりはない」としつつ、「顧客の信頼を今後も裏切るつもりはない」とした。

 また、流出経路としてNSA職員が自宅に機密情報を持ち帰り、自宅コンピュータのカスペルスキー製品がその情報を収拾した、と推定されていることについては、「事実だと仮定すると、カスペルスキー製品が未知の脅威、それも諜報機関レベルのものを検出できるということなので、むしろ誇るべきことだ」として、一連の疑惑に無関係であることを繰り返し強調した。