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ソケットのピン配置から見る、同じLGA1151でCoffee LakeとSkylakeを隔てる理由

 デスクトップ用の第8世代CoreプロセッサことCoffee Lakeがグローバルで発売となった。既報のとおり、Coffee Lakeは、SkylakeおよびKaby Lakeと同じLGA1151ソケットを採用しており、機械的には完全な互換性を有しているのだが、電気的な互換性がないとされている。

 このため、Intel 100/200シリーズの旧世代マザーボードでCoffee Lakeを使うことはできないし、新たに発表されたIntel Z370でSkylake/Kaby Lakeを使うこともできない。それでは、具体的にどのぐらい違うのだろうか。

 筆者もこの件に関して気になったので、Intelのサイト上で公開されているCoffee LakeおよびSkylakeのデータシートから、その違いを見つけ出すことにした。

 Coffee Lakeのソケットピン配置については、「8th Gen (S-platform) Intel Processor Family Datasheet Vol.1」の122ページにある「Ball Map」で確認できる。一方、Skylakeのソケットピン配置については、「6th Generation Intel Core Processor Family Datasheet, Vol. 1」の126ページにある「Land Map」で確認可能だ。

 ただし、いずれも複数のページに分かれており、分割方法も異なるためたいへん比較しにくい。よって筆者はこれらを1つの画像に合成した。Skylakeのものについては、ページごとにテーブルの高さが異なっていたため、高さを揃えてあるが、いかんせんビットマップをベースとした編集であるため、若干の見にくくなっている点をご了承いただきたい。

Coffee Lakeのピン配置
Skylakeのピン配置

 Intelが公開しているマップは文字が細かく、大変確認しにくいのだが、おおよそ色分けがなされているため、大まかな機能は把握しやすい。たとえば、上からAYの列からADの列までは、概ねDDRメモリに関する信号線が占めていることがわかる。ACから下の左側(灰色の部分)はグラフィックスの電源供給。右側は、アンコア部の電源、そしてDMIやPCI Express、ベースクロックの信号線などがある。

 下の大半は「VCC」で、赤く塗りつぶされているが、これはコアへの電源供給ライン。淡い黄色の「CFG」は、PCI Expressの動作モードなど、さまざまな設定を行なうためのライン。濃い黄色の「DDI」はディスプレイ関連……などとなっている。ちなみに黒で塗りつぶされているのは、いわゆるGND(グランド)だ。

 さて、ぱっと見て大差がないように思えるかもしれないが、それもそのはずだ。大幅にピン配列が異なる場合、万が一ユーザーが誤って異なるCPUを挿入してしまい、電源を入れてしまったら、CPUを壊してしまいかねない。ある程度の互換性が保たれているのも無理はない。

 そのなかでも大きな違いが見られるのは、ソケットの左下にある、および中央左上のコア電圧に関連する部分。SkylakeではReservedとなっていたピンが、すべてVCCに割り当てられているのだ。Coffee LakeやSkylakeは、過去のHaswellなどとは異なり、コア電圧はCPU内部のFIVRで生成するのではなく、外部から供給するのだが、新たに増えた2コア分の電源も供給しなければならなくなったので、今回このピンが使われるようになったわけだ。

 すべてのピン配置や電気特性を調べたわけではないので、確証はないのだが、少なくともIntel 100/200シリーズのマザーボードのBIOSアップデート程度でCoffee Lakeを動かすことは難しい。一方で、マザーボードメーカーがなんらかの工夫で新しいZ370マザーでSkylakeやKaby Lakeを走らせることはできそう、というのが筆者の感想である。あとは、Intelがそのような動作を許すかどうか次第だろう。

 しかし、Skylakeの時点でわざわざデータシートに「Reserved」とされるピンを用意し、Coffee Lakeで6コアの電源供給のために使うということは、IntelはLGA1151の設計当初から、6コアの搭載を考えていた可能性は高いとも言える。

Skylakeのピン配置をもとに、Coffee Lakeでおもに変更となったVCC関連のピンの部分を赤丸で囲った