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大阪府立大、次世代二次電池の“リチウム硫黄電池”を大容量/長寿命化する手法を開発

~リチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度を目指す

正極、負極、有機電解液から構成された従来のリチウム硫黄電池(左図)と、硫化リチウムベース固溶体と硫化物固体電解質を組み合わせた正極を評価した全固体電池

 大阪府立大学工学研究科は24日、次世代蓄電池として注目される「リチウム硫黄二次電池」の大容量化と長寿命化につながる硫化リチウムベース固溶体を用いた正極を開発したと発表した。

 リチウム硫黄電池は、現在二次電池として広く普及しているリチウムイオン電池より、高い理論エネルギー密度(電極材料1kgあたりのエネルギー[Wh])を備えており、次世代の蓄電池として期待されている。

 しかし、電極反応時に中間反応生成物の多硫化リチウムが有機電解液に溶出するため、電池容量が劣化する問題がある。また、Li+イオン貯蔵材料の硫化リチウムが絶縁体であるため、可逆容量が小さくリチウムイオン電池のような容量を得るためには、硫化リチウム正極材料の高容量化が必要とされているため、実用化にはいたっていない。

 今回大阪府立大学は、硫化物固体電解質と硫化リチウムベースの固溶体を組み合わせた正極を開発。硫化リチウムの理論容量である1,100mAhg-1以上の可逆容量を示したことに加え、2,000サイクルの充放電実験においても容量劣化が観測されず、長寿命化を達成できた。

 本研究で得られた成果は、これまで報告されている硫化リチウム正極のなかでももっとも優れた容量と寿命を備えており、リチウム硫黄二次電池実現の可能性を広げるものという。また、同電池が実用化されることで、より大容量で長寿命なポータブル電子機器や家庭用分散型電源、非常用電源の開発に大きく貢献するとしている。

 今後は実質的に利用できる電池のエネルギー密度を像再させるために、正極層の厚膜化、軽量化を目的とした固体電解質層の薄膜の作製、高エネルギー密度の負極材料を開発する。これによって従来のリチウムイオン電池の2倍以上のエネルギー密度を有する全固体リチウム硫黄二次電池の構築を目指していくという。