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クリエイター向け機能をさらに盛り込んだWindows 10 Fall Creators Update
2017年5月12日 11:42
米Microsoftが開催中の開発者向け年次会議Build 2017。会期2日目の基調講演は、テリー・マイヤーソン氏(Windows and Devices Group担当上級副社長)からスタートした。ステージに登壇した同氏はWindows 10の次のメジャーアップデート「Windows 10 Fall Creators Update」について発表した。
2017年後半に登場するWindows 10 Fall Creators Update
ステージに登場したマイヤーソン氏は、Windowsのすばらしさを訴求したあと、すぐにメジャーアップデートの紹介に入った。
その特徴として、
- デバイスをまたぐ Love + engagementをかなえるWindows 10の次期メジャーアップデート
- 継続的な配布をかなえるWindowsストア
- 開発者にとってのホームグラウンドにふさわしい魅力的なツール
の3点を挙げ、今年(2017年)の後半に「Windows 10 Fall Creators Update」をリリースすると発表した。同社は先立ってOffice 365と同期しながらのアップデートサイクルを発表したため、おそらくは9月の公開だと思われる。
前日の初日基調講演がWindowsと多少距離を置いた立ち位置を強調していたのと比べて、今回話題は大きくWindows寄りで、そのコミュニティの絆を強調しているのが印象的だ。ファンデーションとしてのWindowsをアピールし、Fall Creators Updateについての数々の新機能を紹介した。
余談だが、基調講演後の取材によれば、この「Fall Creators Update」という名称は、南半球の各国からクレームが入ったという。北半球の国々にとってのFallは、南半球の国では「Spring」だからだ。だが、もうこの名称は動かないということだ。
デモはまず、新たに加わった「Windows Story Remix」が紹介された。.NETアプリとしてストア配布もされる。AIとディープラーニングを駆使した写真とビデオのストーリーメイクができるアプリだ。基盤としてMicrosoft関連サービスの共通API群であるWindows Graphを使い、さまざまサービスのデータを駆使して最適なストーリー編集を自動的にできるというものだ。具体的にはWindows標準のフォトアプリに実装される機能となるようだ。
AIを使った検索ではキーワードで指定した顔やアクションを選び出したり、シーンに最適な音楽を選び出してくれる。ビデオ編集では3Dオブジェクトにも対応し、デモでは、主役と指定した女性の顔を、素材の中で認識し、彼女がキックしたサッカーのゴールシーンのボールを火の玉の3Dオブジェクトに置き換え、ゴールした瞬間、爆発するような特撮的エフェクトを瞬時に完成させる様子が披露され会場を沸かせた。開発者は、これらで使われるさまざまAPIにアクセスできるという。
OneDriveがユーザーの強い要望で以前の仕様に戻る
一連のデモのあと、マイヤーソン氏に呼び込まれて登場したのは、1年近い長い休暇のあとに元の立場に復帰したジョー・ベルフィオーレ氏(the Operating Systems Group担当副社長)だ。
復帰後、初の大舞台となる基調講演だが、ベルフィオーレ氏は次期Windowsが取り入れる新しいデザインシステムである「Microsoft Fluent Design System」を発表した。フラット風のWindowsの新しいデザインスキームで、「Motion」、「Scale」、「Light」、「Depth」、「Material」の5つの要素で構成される。また、Windowsと前述のMicrosoft Graphの強力な連携についても強くアピールした。
さらに、ベルフィオーレ氏は、OneDriveファイルオンデマンド機能の搭載について紹介した。Windows 8/8.1で搭載されてはいたが、Windows 10では、わかりにくく混乱をまねくということからいったん退いた機能が復活した形だ。
デモではエクスプローラでファイルを見たときに、ステータス項目が詳細一覧に表示されていて、そのファイルがローカルにあるのかクラウドのみにあるのか、完全に同期しているのかが一目でわかるようになっていた。反面、ファイルやフォルダアイコンには、現状のようなチェックマークはつかないようだ。
ローカルにないファイルやフォルダを開こうとするとダウンロードされるほか、クラウドのみに存在するものについては右クリックによるコンテキストメニューでオフライン利用を指定することで前もって同期しておくこともできる。これらはAndroidやiOSのOneDriveアプリでも対応する。これによって、ローカルのストレージをまったく消費せずに、自分が持っているファイルのすべてを掌握できるようになるという。
あのときの作業をすぐに再開
新機能の紹介はまだまだ続く。次は、「Windows Timeline」だ。“あの日あのとき何をしていたか”が一目でわかるもので、タイムライン形式でそのとき開いていたウィンドウのサムネールが表示され、そこで使われていたデータに素早くアクセスすることができる。まるでタイムマシンのように、そのときの作業が再開可能となる。
Microsoft Graphが基盤になっていることから、デバイスをまたいでできるというのもうれしい。たとえば、Windows PCで見ていたニュース記事を、iPhoneのCortanaがタイムラインとして表示し、すぐにiPhoneで開いて続きを読めるというのもいい。「あとで読む」機能が大幅に拡張したようなものと考えればいいだろう。もちろん編集していた文書についても同様の操作が可能だ。クラウドサービスがエンドユーザーにこうした形で開放され、デバイスに縛られずにやりたいことを継続することができる。
そして、「Cloud-Powered Clipboard」。こちらは、PCでクリップボードにコピーした要素をiPhoneでペーストする様子がデモされた。こうして複数のデバイスが連携することで、再びWindows PCが好きになる、とベルフィオーレ氏。Windows PCは、ユーザーが所有するさまざまデバイスを分け隔てなく愛しているというわけだ。
開発環境も大幅進化
このほか、開発関連についても数々のツール群が発表された。クロスプラットフォームでUIを共有できる「.NET Standard 2.0 for UWP」をはじめ、People、Activities、Devicesをつなぐ「XAML Standard 1.0」、「Project Rome SDK for iOS/Android」などだ。もはや、AppleのApp Storeへの登録以外の作業でiOS用のアプリ作成にMacはいらないまでになっている。
この春のCreator Updateに続き、またしても“Creator”を名乗るアップデートとなるが、実際には奥の奥まで手の入ったバージョンとなりそうで期待が高まる。もっとも、今回の基調講演では、気になるARM対応のWindowsについてはひと言も触れられなかった。そのことだけが気にかかる。
なお、基調講演の真っ最中に、InsiderのFast ring向けに、Build 16913の配布が開始された。その中にはデモで紹介されたフォトアプリが含まれている。