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Xiaomi、“九死一生のビジネス”なのに独自開発したモバイルSoC「澎湃S1」

 Xiaomi傘下でモバイル向けプロセッサを開発する子会社“松果”は2月28日、北京市内で記者発表会を開催し、同社初となるモバイルSoC「澎湃S1」を発表した。

 Xiaomiは2010年に発足したスタートアップ企業。2011年に初のプレミアムスマートフォンを投入し、その高いコストパフォーマンスで世間を驚かせ、中国国内のスマートフォンシェアトップに躍り出た。しかしその後、安価なスマートフォンを多数発表し、プレミア感が低下。高品質で安価なHuaweiやOPPO、VIVOといった企業の製品に押され、シェアが低下した。今回の澎湃S1は、そのスマートフォン市場で起死回生を図る目的で投入する。

 とは言え、プロセッサはスマートフォンと比較して開発期間が長く、開発に必要な投資も多い。今日始めて明日結果が得られるビジネスではない。そもそも結果が得られないビジネスかもしれない。そのため、松果が発足した2014年、中国メディアでは「プロセッサ開発は九死一生のビジネスなのに、なぜXiaomiは作ろうとしているのか」と疑問視する声が多かった。

 XiaomiでCEOを努める雷軍氏は発表会で「世界3大スマートフォンメーカーのApple、Samsung、Huaweiは、いずれも自らプロセッサを開発している。つまり、プロセッサ技術はスマートフォンの核心だ。3大メーカーと並び、スマートフォンビジネスを継続させたければ、プロセッサ開発を含めた長い視点で取り組む必要がある」と答えた。

 また、「最低でも10年間、開発を続けることを目標としなければ、結果は得られない。初期投資には10億人民元、長期的には10億ドル以上必要だ。幸い、Xiaomiにはこれまでスマートフォンで培った出荷量と技術、そして数千を超える特許がある。これが今後活きてくる」と語る。

 澎湃S1はアッパーミドルをターゲットとしたSoC。Cortex-A53 2.2GHz×4とCortex-A53 1.4GHzのbig.LITTLE構成CPUを中心に、Mali-T860 MP4 GPU、32bitのサンプリングに対応したオーディオDSP、14bitデュアルコアISP(Image Signal Processor)、ソフトウェアで定義可能なモデムなどを内包。プロセス技術は28nm HPCで、トランジスタ数は約10億。

 Xiaomiは、通常利用における99%の処理がLITTLE側のプロセッサで行なわれると分析しており、LITTLE側のCortex-A53のリーク電流の削減に注力した。GPUには独自の可逆画像圧縮技術を適用。必要なメモリバンド幅を50%削減し、電力効率を15%向上させた。オーディオDSPはデュアルマイクをサポートし、ノイズを低減。またISPも独自のダブルノイズリダクションにより、夜景などにおけるノイズ発生を抑えるとしている。

 モデムはベクタプロセッサをベースにハードウェアで構成し、ソフトウェアで要件を定義。これにより新規格への対応や性能の最適化なども、OTAアップデートで対応可能としている。

 発表会で公開されたAntutuベンチマークのスコアは64,817。競合のSnapdragon 625を超え、MediaTekのHelio P20とほぼ同等を実現したとしており、アッパーミドルクラスとしては十分な性能であることが分かる。

同社が公開したAntutuベンチマークの結果

 発表会の後半で雷氏は、他社のプロセッサの発表は“PPTチップ(つまりPowerPointの資料でしかないチップ)”だと揶揄した。つまりプロセッサの発表から量産までは最低半年、実際にプロセッサを搭載した製品の登場には1年近くかかるということだ。しかし澎湃S1は既に量産を始めており、発表会で雷氏はその実チップを手にして見せた。

澎湃S1の実物

 さらに、3月3日にも、初の澎湃S1搭載スマートフォン「小米5c」を投入すると発表した。5.15型の液晶ディスプレイを備えており、ローズゴールド、ゴールド、ブラックの3色。価格は1,499人民元。

小米5cを掲げる雷軍氏