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パナソニック、創業伝統の出荷式でレッツノート XZ6が全国各地に嫁入り

~AI化が進む神戸工場での先進的な生産手法を披露

出荷するレッツノート XZ6を持つITプロダクツ事業部幹部

 パナソニックは、兵庫県神戸市の同社神戸工場において、「レッツノート XZ6」の出荷式を行なった。この日だけで、1,500台のレッツノート XZ6を出荷。全国の量販店などに届けられる。

 パナソニック AVCネットワークス社 常務 ITプロダクツ事業部・坂元寛明事業部長は、「神戸工場では、5年前に、SXシリーズを発売した際、出荷式を行なった。出荷式は節目ごとに開催しており、20周年モデルである着脱式2in1 PCのXZ6は、まさにレッツノートにとって節目にあたる製品。事業部全体を挙げて出荷式を行なう」とした。

 パナソニックでは、創業者である松下幸之助氏の発案によって、正月の恒例行事として「初荷」が行なわれてきた。現在でも、新製品を全国に届ける初出荷の時には、出荷式の伝統が受け継がれているという。

 「なぜ、パナソニックは出荷式を行なうのか。それは、生産、出荷するだけがモノづくりではないと考えているからだ。創業者は、商品は『娘』と一緒だと話し、娘をお客様のところに嫁がせるという意味がある。この意義を年1回の初荷で社員に注入していた。設計し、出荷し、その先の『嫁ぎ先』で無事に動作し、貢献するといったところまで、真心を込めて作り込んでいくことが大切である。モノを出荷するという覚悟を決めるのが出荷式である」とした。

 さらに、坂元事業部長は、今年(2017年)4月に、米国市場で発売する予定の新タフブックにおいて、米国の拠点で初めて出荷式を行なう予定であり、「米国人が法被を来て、出荷式を行なうことになる」ことを明らかにした。

兵庫県神戸市にあるパナソニック神戸工場
過去20年間に渡る歴代製品が展示されている
パナソニック AVCネットワークス社 常務 ITプロダクツ事業部・坂元寛明事業部長
パナソニックの出荷式は松下幸之助氏が発案した「初荷」が原点
レッツノート XZ6を運ぶ坂元事業部長(左)と清水所長(右)
レッツノート XZ6を持つ坂元事業部長
トラックに積み込む
トラックに積載され出荷を待つレッツノート XZ6
出荷式での鯉の滝登り
トラックを送り出す神戸工場の社員

 2月17日に発売されるレッツノート XZ6は、同シリーズ初の着脱式2in1 PCで、Core iプロセッサを搭載した12型のタブレット兼モバイルPCとしては世界最軽量となる約1,019gを実現。取り外したタブレット本体でも約550gとなり、同様に世界最軽量を実現している。

 また、タブレット部だけで約4.5時間、モバイルPCでは最大約15時間のバッテリ駆動を実現しているほか、0.4mm厚のマグネシウム合金製リアキャビネットを採用。フロントシャーシには0.45mm厚のマグネシウム合金を採用したほか、3層構造により落下時などにも対応できる強度を確保している。

 パナソニックが、モバイルPCで目指す「軽量」、「高性能」、「頑丈」、「長時間バッテリ駆動」といった要素を高い次元で実現した製品であり、「MADE IN KOBE」を標榜する神戸工場での高い品質のモノづくりによって、市場に投入されることになる。

 パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部ITPBD・TSBU技術統括担当の谷口尚史部長は、「どこでも自由なスタイルでビジネスをスピードアップすることを目指して開発した製品。ノートPCとして作成業務をこなし、軽量タブレットとして提案活動に活かすことができる。外回りが多いビジネスマンがハイブリッドな使い方ができ、業務効率化に繋げることができる」などとした。

 また、繰り返して着脱することを想定して、新開発の高耐久コネクタを採用。頑丈ドッキング構造としていることにも言及。「タフブックやタフパッドで培った頑丈設計技術を活用した。故障して業務が滞ったり、不便になるといった状況にならないようにした」と述べた。

 頑丈性能を実現するために、ノートPCスタイルでの76cm落下試験(動作時の底面方向)、26方向30cm落下試験、100kgf加圧振動試験、キーボード打鍵試験のほか、新たにタブレットドッキング部の着脱試験、タブレット単体での76cm落下試験(動作時の6方向)、ヒンジ耐久試験を追加したという。

 パナソニックストア向けの製品では、ブラックボディや背面カメラ、カラー天板などの選択が可能であるほか、全モデルで第7世代Core vProプロセッサーを搭載できる。さらに、同ストアにて、「LTEがついてくるキャンペーン」を実施。XZ6シリーズ LTE対応モデルとWonderlink、LTE Aシリーズを同時注文すると、初期費用と月額費用が最大6カ月無料となるSIMカードを本体に挿入して提供。購入特典として、専用アクティブペンとムック本、オリジナル専用タブレットケースのプレゼントも行なっている。

 パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部マーケティングセンター東アジア営業統括部の向坂紀彦統括部長は、「Webでは、予想を上回る形で予約をもらっており、量販店ルートでも力強い商談を進めている。法人向けには、味の素への一括導入を始め、パイプラインは好調に積み上がっている。全体としては、予想を2桁(10数%)上回っている」という。味の素では、社内の働き方改革において、XZ6がタブレットPCカテゴリにおける社内標準機に選定された。

 XZ6シリーズでは、4年間保証に登録すると、神戸工場で勤務する社員の顔写真が入った納品明細書を発行するといった新たな試みも開始した。

 坂元事業部長は、「責任を持って生産と修理を行なっていることを示した。担当している社員の顔写真を入れることで、ユーザーに対して、安心感を与えることを意識した取り組みの1つになる。従業員にも緊張感が生まれ、会社の価値を高めることに繋がる」とした。

パナソニックのレッツノート XZ6
パナソニックAVCネットワークス社ITプロダクツ事業部ITPBD・TSBU技術統括担当の谷口尚史部長
XZ6は神戸工場で生産されている
XZ6のタブレット部は風船3つで持ち上がる軽さだ(縦方向です)
さまざまな試験を行ない頑丈性能を追求している
防水試験機の様子。IPX4に対応した試験を行なう
ホースで水を当てる試験も行なう
タブレット単体での76cm落下試験。76cmは机の高さになる
3連型360度LCD開閉試験機。XZ6のために導入した
ヒンジ部への衝撃をテストする専用検査機。これも新たに導入した
10m電波暗室。もともとは外部の施設を借りていたが、待ち時間が多く検査に時間がかかるため自前で設置した
各国の基準に合うように電波暗室で測定する
パナソニックストア向けのカスタマイズを行なうエリア
パナソニックストアではさまざまなカスタマイズができる
カラーキーボードを選べるのもパナソニックストアの特徴
4年間保証を結ぶと神戸工場の社員の写真が言った確認書が送られてくる
パナソニックストアモデルでは各種キャンペーンも実施
タフブックは米国では数多くの警察に導入されている。事故や事件の発生時に証拠となる映像を記録する
タフパッドはフォークリフトに搭載されるケースもある

 一方、同社では、神戸工場の様子を公開した。

 神戸工場は、1990年6月に、ワープロ専用機の専門工場としてスタート。1991年8月からPCの生産を開始している。

パナソニック AVCネットワークス社ITプロダクツ事業部プロダクトセンター・清水実所長

 レッツノートの開発、販売、サービスを行なう守口市の拠点とは車で約1時間の距離で、2つの拠点を結ぶ社員専用バスを1日3便走らせており、「開発、製造、販売、サービスが一体となったモノづくりができる」(パナソニック AVCネットワークス社ITプロダクツ事業部プロダクトセンター・清水実所長)という。

 現在、レッツノートのほか、タフブックやタフパッドの一部を生産。月産7万台弱の生産能力を持つ。ちなみに同社では、台湾の生産拠点で、タフブックやタフパッドの生産を行なっている。

 パナソニック AVCネットワークス社ITプロダクツ事業部プロダクトセンター・清水実所長は、「神戸工場は、開発、製造、販売、サービスまでの自社一貫体制と、全部門が顧客と直接対話するお客様ダイレクトを実現。これによって、ジャパンクオリティを実現している」とし、「神戸工場では、『柔軟・迅速』、『カスタマイズ・サービス』、『高品質』、『体験型ショールーム』の4つを、モノづくりの基本姿勢としている」と語る。

 「柔軟・迅速」では、工場直結の材料倉庫を持ち、VMI倉庫やBMI倉庫を通じてタイムリーに部品を調達。生産計画を毎日見直して、需要にも柔軟に対応しているという。さらに、組み立て工程では、セル生産方式を導入し、1台ずつのカスタマイズにも対応する多品種変量生産を実現しているという。

 「高品質」では、神戸工場内に設置している各種試験装置を取り揃えていることに言及。全世界の電波規制に対応し、不要輻射測定精度を大幅に向上させることができる10m電波暗室、熱衝撃試験や防水試験機、落下試験機などの信頼性評価設備、X線CT撮影装置やSEM/EDS・断面研磨装置、非接触3次元測定装置などの分析装置により、耐久性や信頼性の保証が可能になるとした。

 また、品質管理システム「KISS(Kobe Intranet Solution of Super-Production)」により、部品ごとの品質を管理。「いつ、どこから部品を購入し、どの製品に使用し、どのユーザーが使用しているのかということを管理できる。仮に材料や部品に問題が発生した際には、すぐにアクセスして対応することができる」とした。

 さらに、故障予兆管理システムでは、全世界の修理拠点の修理データを収集したグローバル品質情報システムを活用。独自のアルゴリズムによって、品質問題が発生しそうな動きを事前に検出。早期に対応ができる体制を整えている。

 試算によると、ノートPCが故障し、それによって被る損失額は、PCサポートのための固定費や、修理/交換のために発生する費用、PC修理中の業務効率低下などを合わせると、平均して273,312円に達しているという。「品質や頑丈性に優れたPCを選択することが、企業におけるTCO削減に直結するという意識が、企業の間に徐々に浸透してきている」(パナソニック・坂元事業部長)としており、その点でも、神戸工場が実現する高品質の取り組みが評価されているという。

 「カスタマイズ・サービス」では、一品一様のカスタマイズへの対応を実現し、個別のソフトウェアのインストールやハードウェアの組み込みなどを行なっているほか、個人ごとの設定にも対応することで、企業に納入した場合にも、個別の設定作業が不要になり、すぐに使える環境を実現している。また、特定法人向けや、Webで購入したユーザーに対しては、神戸工場内に設置しているコールセンターで年中無休で対応。ここで得た情報は、量産工程や開発・設計にもすぐに反映され、「量産工程では次の1台から、開発・設計では、次の新製品から対応することができる」(パナソニック・清水所長)とする。

 そして、体験型ショールームでは、神戸工場そのものをショールーム化し、商品の活用事例を提案したり、体感したりできるほか、個別の動作検証などを行なえる環境を整えているという。「神戸工場ならではのモノづくりの現場を見学してもらうことで、信頼性の高いモノづくりを体感してもらうことができる」とした。

 「2016年度は1月末時点で2,058人が神戸工場を訪れており、事例の紹介や提案、ソリューションを体感してもらっている」とする。

 さらに、今後の神戸工場の進化についても触れた。

 納期短縮に向けては、これまで人が行なっていた生産計画、材料調達などにおいて、AIを活用。これにより、受注即納品の体制を目指すほか、防水ディスペンサー塗布やLCDフィルム貼り付けなどの作業を自動化。「レッツノートは尖った製品が多いため、それを匠の技で補っている。だが、人の経験に頼らない高品質なモノづくりも必要になる。匠の技術を伝承し、100%の良品化を目指す」(パナソニック・清水所長)とした。

 また、「バーチャル設計やバーチャル検証の導入、人と機械が融合したモノづくりによって、一品一様のモノづくりを進化させる」とし、既に基板製造ラインの最終検査工程において双腕ロボットを導入しているほか、フレキケーブルの折り曲げ作業にもロボットを活用していることに触れる一方、今後は、PCの組み立てラインにもロボットの活用を検討し、「投資対効果を見ながら、ロボットの導入を増やしていきたい」とした。

 さらに、AIの活用によって、トレーサビリティと予兆管理を進化。「故障ゼロの世界を実現することで、ユーザーの仕事を止めないモノづくりを促進する」という。また、需要予測に基づいた生産計画や、スマートグラスを活用して、グラス上に調達する部品を表示するピッキングシステム野の実現、工程間の部品移動などを自動的に行なうスマートファクトリーを導入することについても触れ、「今後6年ぐらいを視野に入れた取り組みだが、パナソニックグループの中でも先進的に取り組みたいと考えている。これにより、効率性が高い工場を実現する」(パナソニック・清水所長)などとした。

 では、神戸工場の様子を見てみよう。

パナソニック神戸工場の概要
神戸工場におけるモノづくりの考え方
柔軟・迅速への取り組み
高品質への取り組み
カスタマイズ・サービスへの取り組み
体験型実証ショールームへの取り組み
神戸工場が目指す近未来の取り組み
基板実装ラインの様子
まずはレーザー印字装置で基板にIDを付与
クリームはんだを塗布する工程
高速マウンターでコンデンサーや抵抗などの部品を装着
基板への実装状態を検査する
CPUやメモリなどの大型部品を装着するマウンター
続いて高温炉ではんだ付けを行なう
外観検査機。基板への実装状態を検査する
検査工程においてはロボットを活用して省人化を図っている
XZ6シリーズの生産開始に合わせて導入した双腕ロボット
双腕ロボットで基板の検査を行なっている様子
基板実装工程では引き継ぎノートやバーコードリーダを活用して管理を行なっていた
2016年12月からFZ-N1を利用し、全てを統合して運用している
またタフパッドを利用して生産に必要な情報を一元的に管理している
初公開されたZX6シリーズの生産工程
ディスプレイの組み立て前工程
タブレット部の組み立て。ファンを搭載する
フレキへの部品組み込み工程
フレキの折り曲げの自動化マシン
フレキの接続作業の様子
ベース部の組立の様子。細かい配線が多い
バッテリを搭載し、フレキ接続が終わった状況
作業が終わると隣の人に手渡しする
各種部品をネジで固定する
ピンセットを使ってシールを貼り付ける工程
ベース部のカバーを取り付ける
保証書を付けてベース部の作業は完了
タブレット部とベース部を組み合わせる
検査ソフトをインストール
ディスプレイやオーディオの官能検査の様子
組み上がった状態をカメラを使って検査する
外観検査を行なっている様子
最終検査工程の様子