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デル、 産業向けVRセミナーを開催。VRの歴史から将来のHMD、触覚を使った「ビヨンドVR」まで

デルのVR向けワークステーション

 デル株式会社は30日、東京・六本木の東京ミッドタウンで「いよいよやって来た! 産業向けVRの現状と可能性」と題した産業向けVRセミナーを開催した。現在デルはVRソリューション事業を強化している。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 准教授の南澤孝太氏による基調講演や各種企業による事例紹介やデモ展示が行なわれた。

今はVR革命の黎明期

デル クライアント・ソリューションズ統括本部統括本部長の山田千代子氏

 挨拶に立ったデル クライアント・ソリューションズ統括本部統括本部長の山田千代子氏は、最初にVRを意識したのはSFテレビドラマ「スター・トレック」に登場する「ホロデッキ」(あらゆる仮想空間が作れる部屋)だった、と子供時代を振り返った。ワクワクしたが、実現は無理だろうと思ったという。だがホロデッキの体験は、思ったよりも早く現実化しようとしている。データを集めること、忠実に反映することが可能になり、HMDやメディアスーツも高品質のものが市場に投入されはじめている。消費者向け、産業向けに活用できるようになっている、と続けた。

 Dellは1984年に、当時19歳のマイケル・デル氏が創業した会社だ。ハードウェア会社というイメージが強いが、クラウド、マイグレーション、デバイス、ビッグデータといった分野の関連会社を戦略的に買収しており、業務を拡大している。

 VRに関係が深いのは同社の「Precision」ワークステーションだ。NVIDIAのVR認定プログラム「VR Ready」対応PCとして2つのラインナップを揃えている。個人向けの「ALIENWARE」と法人向けのPrecisionとなる。

デルのワークステーションの歴史
デルの「VR Ready」対応ワークステーション

 山田氏は「機材は揃った、機は熟している。あとはどういったものを作り上げるかというところにかかっている。インターネット、携帯電話普及の時と似ている。デルはVR分野を牽引するソリューションプロバイダを目指し、VRの可能性を追求していきたい」と挨拶を締めくくった。

Precisionタワーとモバイルノート

「ビヨンドVR」はVRによる身体の再設計。「ハプティックデザイナー」の誕生へ

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科准教授の南澤孝太氏

 続けて「VRによる身体の再設計」と題して、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科准教授の南澤孝太氏が基調講演を行なった。南澤氏はVR研究で著名な舘研究室の出身。テレイグジスタンス(遠隔存在感)の研究を行なっていた。人の身体の感覚を、ロボット、あるいはコンピュータの中の感覚とどう繋ぐかという研究だ。

 南澤氏は、VRの歴史を振り返った。VR研究は1965年、アイバン・サザーランド(Ivan Edward Sutherland)氏による「ウルティメイト・ディスプレイ(Ultimate Display)」の研究から始まったと考えられている。彼はVRの将来を予言した。当時、右目と左目に別々の映像を映し出して立体感が感じられる映像を、シースルーで投影することに成功していた。

アイバン・サザーランドによる「Ultimate Display」(1965年)

 その後、サザーランドの弟子たちはSun MicrosystemsやAdobe Systemsなどを立ち上げることに関わったが、VRそのものの研究はなかなか進まなかった。「バーチャル・リアリティ」という言葉が誕生したのは1989年。その後、いったんブームがきたが、沈静化した。ここ最近、スマートフォン普及によって優れた機器が安価かつ高速に作れるようになったことで、また新たなVRブームが起きているというのが現状だ。

VR研究の誕生
VRという言葉が生まれた1989年
最初のVRブーム
今は安価なHMD普及期に入っている

 では、VRが普及期に入った今、研究で行なわれている「ビヨンドVR」はどんなものか。人が自分の身体を作って得る経験を記録したり、共有したりすることだという。毛布に包まれたり、スポーツアスリートの身体スキル、人同士が抱き合ったときの感情的なエモーショナルな側面などを記録して伝える。それが次のVRの課題であり目標だという。南澤氏らは「エンボディド・メディア(身体性メディア)」と呼んでいると述べ、ロボットを遠隔操作する様子や、重機を身体感覚を使って操る実験の様子、ドローンを使った身体体験などを示した。

身体経験の記録や伝達
テレプレゼンスロボット「TELESAR V」
テレプレゼンス技術を応用した重機の遠隔操作

 2015年に行なったのが「HUG」というプロジェクトで、孫の結婚式・披露宴に出られない寝たきりの祖母に、HMDとロボット「Pepper」を使って、バーチャルに出席してもらった、というものだ。

HUGプロジェクト

 イタコのようなコンセプトだという。現在の電話やSkypeだと身体がない。だがロボットの身体であっても自分の意思で動くことができれば、周囲もそれがその人だと認識できることで、エモーショナルな経験ができたという。身体経験をネットワーク共有するというものだ。

 触覚の伝達も、実感を伝えるためには重要だ。これまでのシステムは非常に高価だった。そこで複雑なシステムをシンプルにすることを考えて、これまでに「GravityGrabber」、「GhostGlove」などを開発した。

GravityGrabber
GhostGlove

 さらに触覚技術を多種多様な人たちに広く使ってもらうことを考えて開発したのが「TECHTILE toolkit」だ。触覚を音で記録・再生するシステムである。振動を伝えることで、もののさわり心地を伝えることができる。応用すれば、ビデオと同期して触覚情報を入れることもできる。効果音ならぬ効果触覚が作れる。触覚コンテンツを作るハッカソンも行なっている。

テクタイルツールキット
遠隔地の人に触覚を伝達できる

 身体性メディアを扱うクリエイターのためにコンソーシアムも作っている。人の経験そのものをメディアにできないかと考えているという。南澤氏は事例として、スポーツ選手の経験を伝える「SMASH」、聴覚障害でも音を楽しめるようにした「Karada Tap」プロジェクト、ゲームのイベントに応じてさまざまな触感を感じられるようにして身体全身でゲーム世界に入り込んで楽しむことを目指した「Rez infinite Synesthesia Suit」を紹介した。

Rez infinite Synesthesia Suit

 「Rez infinite Synesthesia Suit」では、ゲームクリエイターと一緒に、どこにどんな感覚が来ると良いかを検討した。「この敵を撃ったときにはこういう感覚、このBGMについてはこの振動」といったかたちで、1つ1つ触覚をデザインしていったという。ただ単なる振動ではなく、より効果的になるように、振動パターンをデザインできる時代になってきた、と述べた。このスーツは東京ゲームショウでも公開される予定だ。

 南澤氏は、振動のデザインができる人を「ハプティックデザイナー」と呼んでいるという。人間の身体感覚、経験をデジタルにして経験をデザインできる人を育てようとしているという。「VRは単なる体験ではなく、人間の可能性を拡張する、別世界に入り込んだり、隣の人と心が通じ合ったような経験などを提供できる可能性がある」と語った。

 人間の拡張の1つとして取り組んでいるのが「超人スポーツ」だ。情報空間と生活空間が溶け合った空間で行なう、あるいは人と機械が一体になった人機一体感を提供できるような新たなスポーツをデザインしようとしている。それらはいずれ日常生活に入りこんでくるという。人と人の垣根を越える、あるいは人と能力の限界を突破するようなスポーツに取組んでいるので興味があれば参加してほしいと語った。

身体を情報化し経験をデザインする「ハプティックデザイナー」
「超人スポーツ」は人機一体を目指す

ソリッドレイは複数人でVR空間を共有するシステム「SHIP」を開発中

株式会社ソリッドレイ研究所代表取締役社長の神部勝之氏

 続けて、「急激に変化しつつあるVR業界、今後の対応」と題して、株式会社ソリッドレイ研究所代表取締役社長の神部勝之氏が講演した。ソリッドレイ研究所は1987年に立体映像専門会社として設立。神部氏は「コンピュータのなかにある3次元データを立体化したかった」と当時を振り返った。

 周囲からは全員に反対されたそうだ。にもかかわらず創業したのはなぜか。当時、3次元処理が飛躍的に進歩した。にもかかわらず出力はディスプレイという2次元平面。それは変だと考えたのだという。

 当時の記念撮影の写真にプロトタイプが写っている。大きな機械にのぞき窓が付いている。これが小さくなったのがHMDだというわけだ。

 最初はどこに売れるか分からなかったが、すぐに買い手が見つかった。流体解析の結果を見たいというのが買い手のニーズだった。結果を見るのが2次元平面ではよく見えない。会社設立後2~3週間後、いきなり電話がかかってきて、受注となったのだという。

ソリッドレイ研究所創業当時の写真
当時の新聞記事

 当初6人、4,000万円の売り上げで始まった会社は倍々で成長した。3次元データを眼の前で見えるようになった。次は触ってみたいと考える。データグローブを買ってきて触れるようにした。そういう流れで自然にVRへと業務領域が広がっていったのだという。

 VRはVirtual Realityの略。Virtualは、仮想ではない。本物ではないが、本物と同じ本質を持っている、という意味だ。電子マネーはバーチャルマネーである。お金ではないがお金と同じ本質を持っている。

 神部氏は、VRシステムは「コンピュータの中に作られたバーチャル空間に人間が入り込み、何らかの作業を行なうことだ」と続けた。VRは流行している。だが30年前からあるのだ。1990年には松下電工が「VRキッチン」を作って発表した。研究ではなく産業分野で初めて使った例として、当時は衝撃だったという。1990年代、VRバブルがあった。国が応援したからだ。予算を申請するときに「VR」と書くと申請書が通りやすかったといったこともあったという。CGを作るためにSGIのワークステーションも売れた。

VRシステムとはコンピュータの中に作られたバーチャル空間に人間が入り込み、何らかの作業を行なう
VRの歴史

 SGIの一部の人たちが続々と参加して作ったのがNVIDIAのグラフィックスボードだった。神部氏によれば、当時、PC用の5万円のボードが、5,000万円のコンピュータと同じくらいの性能を出すような価格破壊が起きた、という。そして高価なグラフィックスワークステーションの時代は終わった。「安くなったからよかった」というわけにはいかず、当時、ワークステーションを売っていた商社もVR業界から撤退してしまった。こうしてVRバブルが崩壊したのだと背景を紹介した。

 次に神部氏は、ヘッドトラッキング・システムと、正面と床面に大画面を配置した「デュオサイト」というシステムを紹介した。例として、バーチャルキャラクターとインタラクションできるアプリケーションを挙げた。

デュオサイト。バーチャルキャラとインタラクションできる
デュオサイトの仕組み

 ここでいったん話を変えて「見るとは何か」と問いかけた。我々は1つのものしか見てないが、実は2つの目で見ている。だからカメラを2個持っていることになる。画面を見ていても、実は本物を見てない。網膜に入った映像信号は脳の中で、それぞれの特徴別に分けられて、別々に並列処理される。そして最後に統合される。そして頭の中で作っている。今知覚されているものは全て脳の中で作られているものだ。心理実験で用いられる錯覚、錯視は分かりやすい例だ。ある信号を与えても、違うことを知覚しているのだ。VRはそれを活用すべきだという。

 企業のなかのVRで売れ筋コンテンツは「教育」だという。神部氏は、工場内のグレーチング回廊での事故VRを例として示した。

視覚は脳内で作られている感覚
工場内のグレーチング回廊での事故VR

 今年になって、安価なHMDが登場した。HMDのアミューズメントは必ず来るという。

HMDの性能比較
Oculus Riftは新星のように現れたというう

 一方、産業界はこれからだ。何が変わるのか。ソリッドレイでは「複数人でVR空間を共有するシステム」にチップを賭けるという。過去のVRは1人しか体験できなかった。HMDを使うことで、複数人で同じ空間を共有できる可能性がある。

 同社ではこのシステムを「SHIP(Solidray Helps Immersive Party)」と名付けて、開発を進めている。HMDを付けると危ないので専用テーブルも作ってし、ナビゲーター用のインターフェイスも開発したという。この複数人で同じVR空間を共有するシステムを今年冬くらいから出荷する予定だ。

複数人でVR空間を共有するシステム「SHIP」
HMD専用テーブルやナビゲーター用インタフェイスも開発中

CG業界とVR、VRの産業応用

株式会社ボーンデジタルセールスエンジニアの中嶋雅浩氏

 次に、株式会社ボーンデジタルセールスエンジニアの中嶋雅浩氏が「VR最新動向まとめ」について、北米で行なわれたSIGGRAPHの動向、VRビジネス向け情報などについて講演した。SIGGRAPHでは「VR Village」というコーナーが設置されており、最新システムの体験ができたという。展示コーナーではNVIDIAによるポイントクラウドからVRコンテンツを作る技術展示などが目を引いたとのことだった。一部のコンテンツではライティング技術などを使って写真並みのクオリティが出せるようになっているそうだ。

 今ビジネスでVRに取り組んでいる人たちは、安いデバイスが出ているため「考える前にまず買え」という形になっているのではないかと言う。安価ゆえにまず小規模先行投資が行なわれて、そのあとに開発が行なわれているのではないかと考えていると語った。

VRビジネス展開アプローチ
デバイス

 具体的な展開はその後に行なわれるわけだが、VRコンテンツの多くはゲーム系の蓄積で作られている。ものづくり系会社には蓄積がない。そのためゲーム系の会社が制作委託されることが多い。そしてBtoBではシミュレーションやデザイン検討、教育、あるいはBtoCではVRショールームやECサイト、見積もりサービスなどに用いられる。

 中嶋氏はそれぞれのフェーズについて解説した。導入するデバイスとしてはHTC Viveが諸般の面でお勧めだという。ソフトウェアは選択肢が2つある。Unityのようなゲームエンジンを使うか、Autodesk VREDのようなビジュアライゼーションソフトを使うかだ。だが多くの人がゲームエンジンしか目が行っていないという。ゲームエンジンを使えばインタラクションは容易になるが、ゲーム開発に向いたデータやマテリアルの準備が必要だ。ビジュアライゼーションソフトはデザイン検討やプレゼン向けのものなので、各商品のパーツやマテリアルなどを複数持てるようになっており、例えば車のイメージを提示するのにはこちらのほうが向いている。開発知識は必要なく、繋げばすぐに見られる。BtoBならばこちらで済むことも多いという。

 また、ハードウェアの課題として、HMDの高解像度化とVR酔い防止のための高フレームレート化が進んでいる。注視点だけを高解像度化する「Foveated Rendaring」という技術を用いることで、処理を軽くすることができる可能性がある。

注視点だけを高解像度化する「Foveated Rendaring」

 活用例として、 VRを使うことでモックをなくしたり、設計要件を確認したり、テレカンファレンスや教育などで、同じVR空間を共有する例を示した。また、VRで実寸でものを見る必要はない、子供目線に切り替えてみるということもできる。ショールームもコストダウン可能だ。HMDを使って、バーチャル空間でショールームを訪れることもできるし、そこからECサイトへ誘導することもできると述べた。

 また、VRならではの特徴として、ユーザーがいじった部分をクラウドに集約して解析するという例を挙げた。それができないと「ただの客寄せパンダで終わってしまう」と指摘した。

 VRコンテンツ作りの課題としては、マテリアルライブラリの問題などを挙げた。業務展開のためには必須になるという。

VRならば子供の視点で体験することも可能
マーケティングに使うならクラウドに集約して解析すべき

将来のHMDには1PFLOPSのコンピューティングパワーが必要に

日本AMD株式会社GPUセールス&マーケティング本部部長の森本竜英氏

 日本AMD株式会社GPUセールス&マーケティング本部部長の森本竜英氏が「Radeon VRへの取り組み VRシステムのコマーシャル分野における展望、事例紹介」としてAMDのVRの取り組みについて講演した。

 VRにおいては現実感の度合いが重要であり、将来的には現実と変わらないくらいのリアリティを持つVRを実現できればと考えているという。そのためには各感覚を同期・統合して伝えることが重要だ。リアルな現実感を生成するためにはスケーラブルなCPU、GPU、アクセラレータが必要になる。

現実と変わらないくらいの現実感が目標
スケーラブルなCPU、GPU、アクセラレータが必要に

 現実感を維持するためにはレイテンシを限りなくゼロに近づける必要がある。初期のVRでは処理遅れのため酔ってしまう人が多かった。自分の動きと視野が遅れてしまうからだ。現実感が失われると、外の世界に引き戻されてしまう。目標とするVRをつくるためには、各デバイスが分担して処理をすることが必要になる。

 ハードウェアだけではなくソフトウェアも重要だ。AMDでは「LiquidVR」というソフトウェア開発キット(SDK)を提供している。

 LiquidVRには大きく4つの機能がある。「Latest Data Latch」、「Asynchronous Shaders」、「Affinity Multi-GPU」、「Direct-to-Display」である。例えばヘッドセットはGPUに繋がっているが、直接絵を出しているわけではない。いったんCPUに戻している。ここで「Direct-to-Display」APIを使うことで、それを直接出すようにするとオーバーヘッドをなくすことができる。また「Affinity Multi-GPU」は複数枚のGPUを使うためのAPIだ。性能をスケールさせるために、それぞれのGPUに片方ずつ別々の目用の画像、あるいは「右目の上」、「右目の下」といった形でレンダリングする領域を分割して分担させる。これらの仕組みによって、レイテンシを減らすことができる。

4つの機能がある AMD LiquidVR
「Affinity Multi-GPU」

 HMDは今現在は90フレームだが、将来、さらに高フレームレート、さらに高解像度化が予想されている。将来的には、片目あたり解像度が16Kになり、フレームレートは120~144fpsくらいになると言われている。なぜ16Kなのかというと、現実とディスプレイを見ているのとが区別できなくなると言われている解像度がそのくらいだからだ。そういうデバイスを動かすためには、1PFLOPSくらいのコンピューティングパワーが必要になる。さらに小型化も進められる。森本氏は、ハードウェアの進化よりもさらに早い速度でHMDが進化するのではないかと見ているという。

 ではどんなマーケットがあるのだろうか。森本氏は、教育、メディカル、ビッグデータビジュアライゼーション、トレーニング・シミュレーション、エンターテイメント、ゲーミング、バーチャル・ソーシャル、リモートプレゼンスを挙げた。

将来のHMDは1PFLOSPのコンピューティングパワーを必要とする
市場

 エンターテイメントでの期待は強く、映画館チェーンなどが食指を伸ばしているという。既にVR用映画フォーマットが作られ始められており、ほぼ全ての映画会社などが入ったコンソーシアムが立ち上がっている。2Dで見るものから3D、VRとなると、映画のフォーマットが全く変わる。今までは視点誘導は簡単だったが、後ろでイベントが起こった時に、どうやってアテンションを持っていくか。音響が1つのカギだと考えているという。

 教育では、体験学習や、アクセンチュアとVR面接などに取組んでいるとのこと。また大手ゼネコンから、現場合わせを減らすためにVRを活用したいといった提案もあり、進めているという。思い付かないような用途で提案されることが多く驚いていると語った。医療用では手術前の手順確認ソフトウェアなどを開発している。この分野でもハードウェアの高性能化が求められている。

各プレイヤーが参加してVR用映画フォーマットが作られ始めている

VRシステムとデル

デル クライアント・ソリューションズ統括本部ビジネスデベロップメントマネージャーの中島章氏

 最後に、デル クライアント・ソリューションズ統括本部ビジネスデベロップメントマネージャーの中島章氏が「VRシステムを支えるデルからのメッセージ」と題して講演した。

 デルがVRというソリューションにどのように関わるのか。「ハードウェアメーカーだけではできないことがある」と中島氏は話を始めた。ソフトウェア、コンテンツも必要だ。商用利用アプリケーションは多岐に渡っている。ゲーム1つとってもBtoCだけではなく、BtoBtoCがある。そこにデルのワークステーションが存在感を持てるという。

 デルがワークステーションに参入したのは1997年。その後、各業界で使われている。

VRの商用利用が拡大中
ワークステーションマーケットとデル

 中島氏は改めて「VR-Ready」認定のコンシューマー向けと法人向け2つのラインナップを紹介した。法人向けは当日保守が標準となっている。

Precisionワークステーション
「VR-Ready」認定の2つのシリーズ

 Precisionの競合優位性としては、メモリエラーの発生を抑える「Dell Reliable Memory Technology」技術を挙げた。問題があるメモリブロックを使わないようにすることでシステムダウンを減らすことができる技術だ。

 性能を最大限発揮するためのDell Precision Optimizerという技術もある。それぞれのアプリケーションが最大限に生かせる設定を自動的にやってくれるソフトウェアである。システムの性能を最大化できる。また、ハードウェア面からも改善を進めていて、メンテナンスも容易になっているという。

Dell Reliable Memory Technology
Dell Precision Optimizer

 中島氏は「VR-Ready」認定の推奨構成、どのようなソフトウェアがどんなハードウェア構成で動いたかを示すISV認証プロセス、同社ワークステーションの導入事例などをアピールして講演を締めくくった。「パートナー企業と連携して、VRシステムを提案していきたいと考えている」という。

Dell 「VR-Ready」認定の推奨構成
ISV認証プロセス
プロジェクションマッピングや商業施設設計にも用いられている