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京大、大型大気レーダーでの宇宙ゴミの観測に成功

~1~10cmサイズのゴミを観測可能に

レーダーから送信された後、スペースデブリから後方散乱されるエコー(信号)を、レーダー観測施設にて取得し、信号処理を行うことによって、スペースデブリの状態を推定

 京都大学は6日、大気観測用のMUレーダーを用いた宇宙ゴミ(スペースデブリ)の観測に成功したと発表した。

 地球の周回軌道上には、衛星打ち上げに使用されたロケットの上段ステージや、役割を終えた人工衛星など機能を持たない人工天体が周回している。現在確認されている10cm以上のサイズのものだけでも2万個以上あるが、これらデブリの飛行速度は秒速8kmほどあり、数cm程度のものでも衛星や宇宙ステーションに衝突すると甚大な被害を引き起こす。

 また、デブリ同士が衝突し、デブリの総数が劇的に増えることも近年起きている。このままでは、デブリが連鎖的に自己増殖し続ける「ケスラーシンドローム」へと繋がり、数多くの衛星等が破壊されたり、新たな打ち上げや宇宙開発が不可能になるといった事態が発生しかねない。

 デブリとの衝突回避や回収などのため、そのサイズや、スピン、形状などの情報を知る必要がある。1cm以下のデブリは比較的衝突効果が小さく、一方10cm以上のデブリは世界中の光学望遠鏡やレーザー観測装置で定常的に観測されている。そのため、1cmから10cmの間のサイズのデブリの軌道分布や特性を把握することが重要な課題となる。

 今回京大は、佐藤亨博士が提案したシングルレンジドップラーインターフェロメトリ(SRDI)法という手法を適用。回転するデブリから後方散乱される信号を、回転周期以上の観測時間を通して、レーダー観測施設で取得し、その時系列データに信号処理を行ない時間-周波数情報を取得し、それを元にサイズ、スピン、形状などを推定した。

 この方法の有効性は数値シミュレーションで理論上は確認されていなかったが、大気観測用MUレーダーによる実際の観測を実施し、有効性を示した。デブリ専用の観測レーダー装置では、S帯やX帯を用いることが多く、識別できるのは3~10cmとなる。MUレーダーによるSRDI法では1~10cm程度のデブリを観測することが期待される。また、光学望遠鏡と違い、天候に左右されない長所もある。

RDI法:自転する物体の回転中心からの距離によってドップラーシフトが異なることを利用し、相対速度の情報と距離情報を使用。SRDI法:距離情報を用いず、相対速度の情報を用いる