やじうまミニレビュー
停電や雷から保護するルーター/モデム専用UPS
~モバイルバッテリにもなり、低電力マシンならPCでも使える!?
(2015/12/11 06:00)
シュナイダーと言うと、弊誌読者諸兄には業務PC用UPSメーカーとして定番というイメージがあるだろう。そんなシュナイダーが先日発売した「ネットワークバッテリバックアップ+モバイル電源パック」(BGE50ML-JP)は、一般家庭家庭用のルーターやモデム専用のバックアップ電源であり、かつモバイルバッテリにも変身するという実に変わり種の製品だ。
UPSとは、無停電電源装置のことで、コンセントと機器の間に挟んでおき、停電の際は、UPSに蓄えられた電力を機器に供給することで、機器への電源断を防ぐためのものだ。ただし、一般的なものは、機器の消費電力にもよるが、数分~数十分程度しか電源を供給できず、長時間の停電には対応できない。UPSの真の目的は、機器に永続的に電力を提供することではなく、UPSに同梱のソフトを利用し、停電を検知すると、機器に一時的に電力を供給しつつ、その間にシステムを自動的かつ安全にシャットダウンさせることで、機器の故障やデータの損失を防ぐことにある。
ネットワークバッテリバックアップ+モバイル電源パックも、電源障害を検知すると、接続している機器に電力の供給を開始する点ではUPSと挙動が同じだが、ルーターやモデムを安全にシャットダウンさせるといったことはなく、そのバッテリが持つ限り、それらに電力を供給し続けることを目的としている点で、UPSとは性格が異なる。シュナイダーによれば、昨今は異常気象で日本でも停電が増えており、その間、通信ができなくなることを防ぐ目的で、本製品を開発したという。
家庭向けルーターの場合、消費電力はエントリークラスで10W程度、ハイエンドクラスで35W程度なので、モデムを併せた場合でも、エントリークラスなら2.5時間程度、ハイエンドクラスでも30分程度は電源を供給できる計算となる。
また、本製品は耐雷サージ機能も搭載している。雷によって停電は起きなくても、雷サージによって、コンセントにつないだ機器が破壊されることがあるが、本製品はそれから守ってくれる。
基本的な使い方は簡単。簡単と言うより説明すら不要で、本体背面にあるコンセントにルーターやモデムの電源を繋ぐだけ。あとは何もする必要がない。と言うより、設定などは存在しない。雷や停電が起きるまで本製品は、何もせず単に電源供給をスルーしているだけだ。2口あるコンセントの合計出力は84VA(50W)で、ほぼあらゆるルーターやモデムに対応できるだろう。
この製品には、これ以外にも特徴がある。それは、バッテリ部分が取り外し可能で、モバイルバッテリとしても使える点だ。
モバイルバッテリ部分は、やや大ぶりだが、容量は11,400mAhあり、一般的スマートフォンなら約5回、タブレットなら約2回分充電できる。USBポートは2つあり、出力は1つが2.4A、もう1つが1Aとなる。また、本体にももう1つ1A出力対応のUSBポートがあるので、普段使っている際も、スマートフォンなどの充電器として使える。
モバイルバッテリを外しても、コンセントからルーターへのスルー給電はされているので、動作に支障はない。もちろん、この状態で停電が起きるとルーターは停止するが、一人暮らしで自宅にいない間なら、ルーターが止まっても、ほとんど問題にはならないだろう。
さて、最大出力が50Wと聞いて、これだけあれば低電力のものならPCも駆動できるのではと思いついた。そこで、メーカーが想定する使い方ではないが、小型PCと液晶ディスプレイを繋いでみたところ、動作することを確認できた。もちろん、自動シャットダウンはしないので、手動で電源を切ることになる。
利用したのは手元にあったLG製フルHD液晶「FLATRON W2363V」とパソコン工房製NUC「bz Cシリーズ:コンパクト」のCeleron N3050、メモリ8GB、SSD 120GBモデル。W2363Vは通常動作時の消費電力が42Wあるので、輝度を半分に落とした。bz Cシリーズ:コンパクトの消費電力は不明でACアダプタは65Wのもの。CPUのTDPが6Wなのでシステムとしては10W台くらいだろうか。とりあえず、CrystalDiskMarkを回しながらコンセントを抜いてみたが、何の問題もなく動作し続けた。
液晶ディスプレイは意外と消費電力が高く、最近の省電力を謳うLEDバックライトのものなら、なんとか50Wの枠に収まるが、古いCCFLバックライトのものだと100Wクラスになるので、無理だろう。実際、試してみたところ、BGE50ML-JPのブレーカーが落ちてしまった。
繰り返すが、本製品はルーター類以外を使うことを想定していない。PCなどを繋いで万が一問題が生じても、メーカーおよび弊誌では保証できないので、あくまでもこんな動作事例もあるという程度に受け取っていただきたい。
本製品のAmazon.co.jpでの実売価格(2015年12月時点)は20,800円。ちょっと高い買い物ではあるが、いざという時の備え+普段使いのモバイルバッテリと考えると、べらぼうに高いわけではない。転ばぬ先の杖として1つ持っておくと、いいかもしれない。