西川和久の不定期コラム

Microsoft「Windows 8 Enterprise RTM 90日間評価版」
~RTMが遂に完成! Modern UIとデスクトップ環境を試す



Windows 8 Enterprise RTM

 日本時間の8月16日未明、MSDNやTechNet向けにWindows 8のRTM(Release to Manufacturing:製品版)がリリースされ、同時に一般向けとしてWindows 8 Enterpriseの90日間評価版も公開された。早速ダウンロードし、いつもの仮想PCへインストールしたので、画面キャプチャを中心に完成形のWindows 8をご紹介したい。


●全部入りのWindows 8 Enterprise

 Windowsは、Windows Vista以降、エディションが細かく別れ分かりにくいものになっていたが、Windows 8では整理されスッキリしたものになった。各エディション機能の有無は、ここでは触れないものの、大雑把に書くと、x86/64版のWindows 8 < Windows 8 Pro < Windows 8 Enterprise。ARM版のWindows RTとなる。

 ただし、Enterpriseに関しては一般向けに販売されず、企業向けのSA契約に基づいて提供される。内容的にはWindows 8 Proに企業向けの機能を追加したものであり、Windows 8 Proの機能は全て含まれる。

 日本時間の8月16日未明に公開されたRTM(Release to Manufacturing:製品版)は、10月26日に出荷されるものと同じ内容であり、約2カ月ほど早く試せる。ただMSDNやTechNetの購読は有料であり、アカウントを持っている人しかダウンロードできず、残念がっている人も多かったと思うが、同日、一般向けとして、Windows 8 Enterpriseの90日間評価版も公開された。Windows Live IDなど、同社が提供しているクラウドサービスなどのアカウント(Microsoftアカウント)さえあれば誰でも簡単にダウンロードすることができる。

 プロセッサ、メモリ、グラフィックスに関してのシステム要件は、プロセッサが1GHz以上、メモリが1GB以上(64bit版は2GB以上)、グラフィックスがWDDM1.0/DirectX 9以降と、Release Previewと同じだが、Enterprise版と言うこともあり、システムサイズが若干大きいのだろうか、32bit/64bit版ともに、ディスク容量は20GBが必要となる(他のエディションでは16GB/20GB)。

 解像度は1,024×768ドット以上を推奨。ただしスナップ機能(画面分割)を使うには1,366×768ドット/HD解像度以上が必要とされている。

 対応している言語は、簡体字中国語、繁体字中国語、英語、英語(UK)、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、韓国語、ポルトガル語(ブラジル)、スペイン語。今回は32bit日本語版をダウンロードしたが、ISOイメージで約2.53GBだった。

 これまでのレビュー同様、インストールの全工程を画面キャプチャしたのでご覧頂きたい。一部画面が増えているのがわかる。

スプラッシュ画面Windowsセットアップ/言語などの選択Windowsセットアップ/今すぐインストール
Windowsセットアップ/セットアップを始めていますWindowsセットアップ/ライセンス条項Windowsセットアップ/インストールの種類選択
Windowsセットアップ/Windowsをインストールしています再起動パーソナル設定
簡単設定PCへのサインインMicrosoftアカウントのパスワード入力
セキュリティ情報を追加アカウントを作成していますマウスカーソルを角に移動します*
PCの準備をしています*アプリをインストールしています*Windows 8が起動した

 ご覧のように、ほとんどの画面キャプチャは、以前のRelease Preview版と変わらないものの、後半、アカウントを作成している待ち時間に「マウスカーソルを角に移動します」など、Windows 8の基本操作をアニメーション表示する画面が追加された。筆者のようにβ版の頃から触っていればこの表示は不要だが、ほとんどの人は初めて触るWindows 8。Windows 7などと比べ、かなり操作方法が異なるので、それを配慮したのだろう。

 またその後の「PCの準備をしています」、「アプリをインストールしています」に関しては、掲載した画面キャプチャからはわからないが、背景色が画面表示中、徐々に変化するように変更された。なお90日間評価版という事もあり、ライセンスキーを入力、アクティベートする画面は表示されなかった。

 Parallels デスクトップ(Build7.0.15106)に構築した仮想PC(2CPU/2GB/64GB)へインストールするのにかかった時間は約10分。何のトラブルも無く完了。既にParallels Toolsも設定済みで、仕上げは画面解像度を変更する程度だった。現在試用している範囲で問題は無く、Parallelsから何かを修正するアップデートも出ていない。

 なお、これまで“Metro UI”と呼んでいた新しいUIだが、商標の問題からだろうか、最近“Modern UI”と呼び方が変わったようだ。

チャーム表示管理ツールアプリ/Modern UI(左側Bing~リーダーまで)
アプリ/デスクトップロック画面ログイン画面

 ここまで触った印象は、Release Preview版とほとんど変わらず(Release Preview版も結構安定していた)、ロック画面用の壁紙やスタート画面の背景パターンが増えた程度で、取り立てて良くなった点も悪くなった点も無い。

●標準搭載のModern UIアプリ

 標準搭載のModern UIアプリは、メール、カレンダー、Internet Explorer、ストア、People、フォト、地図、SkyDrive、メッセージング、ファイナンス、スポーツ、天気、ニュース、Bing、トラベル、ゲーム、カメラ、ミュージック、ビデオ、リーダー。管理ツール系は全て従来通りのデスクトップ環境となる。

 メール、カレンダー、People、メッセージングはソフトウェア的には1つのアプリでまとめられている。リーダーはスタート画面に非表示。ほとんどクラウド側にデータがあるアプリばかり。ローカルデータを主にしているのは、ミュージックとビデオ程度だろうか。試しにネットワークの接続を切ったところ、キャッシュに残っている部分はオフライン状態で表示可能、それ以外は「インターネットに接続されていません」とエラーになった。

 少し説明が必要なアプリについて書くと、メールが扱えるアカウントはHotmail系(Hotmail.com, live.com, MSN)、Outlook系(Exchange, Office 365, Outlook)、Google、その他。その他に関しては見た限りIMAPのみのサポートで、POP3が見当たらなかった。

 PeopleはFacebook、Twitter、LinkedInのタイムラインをまとめて表示、各個人の最新情報や写真、プロフィールなども個別に見る事ができる。フィルターにも対応しており、各サービス単独の表示も可能だ。

 フォトはピクチャライブラリ、SkyDrive、デバイス、Facebook上の写真を同時に扱える。メッセージングは、MessengerとFacebookに対応。ミュージックとビデオはローカルファイルだけでなく、“ファイルを開く/再生する”で、ファイル/コンピューターまで戻れば、DLNAサーバーも表示され、サーバー内のデータを扱うこともできる。

 ファイナンスやスポーツなどニュース系アプリは、トップ画面+αはModern UI、詳細はWebブラウザで、SkyDriveも例えばxlsファイルを開くと、Microsoft Excel Web App Previewでの表示と、アプリとWebブラウザのハイブリッドだ。

 どのアプリも全画面表示で項目が左右にスライドする独特のModern UIになっている。またHD解像度以上の場合は“スナップイン”と呼ばれる機能が有効となり、幅320ドット、スプリッター(22ドット)、1,024相対ドット以上と画面が分割される。ただし、それ以上の解像度でもサブビューの幅320ドットは固定で、メインビューの幅が広がるだけ。サブビューは左右どちらにも配置できるが、片方のみで、幅が余分にあっても両サイド同時表示はできない仕様だ。

メールカレンダーPeople(スナップイン)+Internet Explorer
ストアストア/アプリの更新フォト
地図SkyDriveメッセージング
ファイナンススポーツ天気
ニュースBingトラベル
ゲームカメラミュージック
ビデオビデオ/DLNAサーバーへアクセスリーダー

 一通りアプリを触り、一番気になったのはPeopleアプリだ。これは以前からも気になっていたのだが、FacebookやTwitterなどの更新情報を表示できる件数が50件と固定されており、それ以前の情報は表示できない。FacebookにしてもTwitterにしても50件はかなり少なく、しばらく見ないともう追いかけられなくなる。

 もう1点、メールアプリは、Microsoftアカウントを設定しない限り、他のメールアカウントを設定できない。これはMicrosoftアカウントを使用しない、ローカルアカウントでログインした時も同じだ。個人用途ならまだしも企業用途でMicrosoftアカウントを使用するのは考えにくく、結果、メールアプリは使えない状態となる。

 細かい点では、DLNAサーバーにある動画をビデオアプリで観るとき、サーバー側がサムネイル表示に対応していない場合、一覧表示は同じアイコンが並ぶだけで、ファイル名はアイコンにマウスオーバーしない限り表示されない。これではパッと見何が何だか分からず使い辛いので、ファイル名による一覧表示にも対応して欲しい。

●PC設定

 Modern UIでのコントロールパネル相当の部分がこの「PC設定」。設定できる項目は、パーソナル設定/ロック画面、パーソナル設定/スタート画面、パーソナル設定/アカウントの画像、ユーザー、通知、検索、共有、全般、プライバシー、デバイス、簡単操作、PC設定の同期、ホームグループ、Windows Update。タッチ操作を考慮し、スッキリしたレイアウトになっている。

 全般/PCをリフレッシュする/全てを削除してWindowsを再インストールするなどが目新しいところか。ただ全般/言語/言語設定などは、いきなりコントロールパネルへ飛んでしまうなど、今ひとつ完全Modern UI化されていない印象を受ける。

 これ以外の、例えばキーボードやマウスの細かい設定に関しては従来通りコントロールパネルを使用する。

パーソナル設定/ロック画面パーソナル設定/スタート画面パーソナル設定/アカウントの画像
ユーザー通知検索
共有全般(1/2)全般(2/2)
プライバシーデバイス簡単操作
PC設定の同期ホームグループWindows Update

●デスクトップ環境

 デスクトップ環境は従来のWindowsをそのまま引き継いでいる。ただし、スタートメニューやAeroの廃止、ExplorerのリボンUI対応など、Windows 7とはまた違った雰囲気だ。特にスタートメニューがModern UIのスタート画面に変わっているので、しばらくは戸惑うことになる。日頃使うソフトウェアやフォルダーは、デスクトップにショートカットを貼ったり、タスクバーに置いたり、できるだけスタート画面を表示しないよう、工夫する必要がありそうだ。

 細かい部分としては、Windows エクスペリエンス インデックスは、最大が7.9から9.9へと引き上げられた。各アプリケーションも部分的に改良している場合もある。またDVDビデオを再生する時必要なMPEG-2コーディックが非搭載となったため、そのままでは観ることができない。

 画面キャプチャにある“Windows To Go”は、USBメモリなどからWindows 8を起動する機能であるが、Windows 8 Enterpriseのみの対応で他のエディションには含まれない。日頃使う環境を持ち出し、他のPCで動かせる便利な機能なだけに残念だ。

システム+タスクマネージャーExplorerのリボンUI ON/OFFパフォーマンスの情報とツール
Internet ExplorerWindows To GoDVDビデオは非対応

 アプリケーションが保存されているC:\Program Filesを見ると非常にシンプルな構成になっているのがわかる。またコントロールパネルには“Flash Player”が標準で入っていた。

 以上、Windows 8 EnterpriseのRTM版を画面キャプチャ中心にご紹介した。おそらくWindowsはじまって以来の大掛かりな変更が加えられているため、戸惑う人も多いのではないだろうか。またModern UIアプリに関しては、コントロールパネル周りで指摘したように、結構荒削りの部分も残っている。

 興味があれば、今回のように仮想PCや、余っているPC、ブートストレージが簡単に交換できるPCなどで、一足早くこの90日間評価版を試して欲しい。今年後半以降のPCの未来が見えるはずだ。