Windows 8カウントダウン

気づきを与えるWindows 8のエクスプローラー



 OSが提供する機能は多岐にわたるが、プログラムを書かないユーザーにとっては、データとしてのファイルを扱う体験がメインになる。その体験を支える重要なプログラムがエクスプローラーだ。今回は、Windows 8で新しくなったエクスプローラーの詳細を見ていくことにしよう。

●Windows 8をよろしく

 これまでコードネームだったWindows 8が、次期Windowsの正式名称となった。それに伴って、提供されるエディションも発表されている。

 今回は、32bit版、64bit版ともに、無印のWindows 8と、その上位版となるWindows 8 Proという2種類のエディションに整理されている。Windows 7までのProfessionalとUltimateが統合されたと考えていいだろう。無印とProの違いはドメインへの参加、BitLockerによる暗号化、そして、リモートデスクトップの有無などだ。無印版の状態を現時点で確認できないのでなんともいえないが、これまでのHome Editionでサポートされていなかったオフラインファイルの同期が無印でどうなるかは気になるところだ。なお、このほかに企業のソフトウェアアシュアランス契約用に提供されるEnterpriseエディションがある。以前紹介したWindows To Goの権利は、そちらにのみ含まれるようだ。

 また、残念なのは暗号化の機能が無印では省略されている点だ。これからはPCが持ち出される機会が多くなるだろうことを考えれば、これは両エディションでサポートしてほしかった。あるいは、Ultrabookのようなモバイルを想定したPCでは、ベンダーがProfessionalをプリインストールしやすいようにコスト的な施策を用意してほしいものだ。

 これらのエディションに加えて、Windows RTとして、ARM版のWindows 8が提供されることになっている。

 いずれにしても、Home Editionという名前がなくなり、Personalとは言わないまでも、無印と業務用という形で提供されるようになったわけで、HomeというキーワードがWindowsのエディション名から消えるのは、これからのPCの利用状況を反映した象徴的な出来事だといえるだろう。ただし、相変わらずホームネットワークやホームグループといった概念は健在だ。ここでの「ホーム」は「ドメイン(組織)」と対になるものであり、家族でPCを共有するということではないと考えればいいということなんだろう。

●リボンの採用で操作体系を刷新

 さて、本題の新エクスプローラーについて見ていくことにしよう。

 新しいエクスプローラーは、これまでのエクスプローラーに対して、できなかったことができるようになったわけではない。できることに気がつきやすくなるという言い方をするとわかりやすいかもしれない。

新しいエクスプローラーのウィンドウ

 その典型はOfficeアプリでお馴染みになったリボンGUIの採用だ。ただ、デフォルトではリボンの表示は最小化され、非表示になっている。リボンの表示/非表示は切り替えができるので、パワーユーザーであれば容易にオフにする方法を見つけることができるのだから、ここはデフォルトで表示してもよかったかもしれない。それとも、ExcelやWordとまったく同じなので、リボンについてはエンドユーザーもその扱いをよく知っているという判断があった可能性もある。リボンの採用により、タッチ操作もたやすくなるはずだ。小さなツールバーボタンやメニューバーのメニューを扱うよりも、リボン内のコマンドボタンの方が大きくタッチしやすいからだ。

 エクスプローラーウィンドウの上部には2行分の領域が確保されていて、最上部はリボンのタブ、その次の行はツールバーになっている。

 ツールバーには今までと同様に「戻る」、「進む」ボタンやアドレスバー、検索ボックスなどが用意されている。ここで気がつくのは「戻る」ボタンの右側に用意された「上へ」ボタンの存在だ。Windows 7のエクスプローラーでは、このボタンがなかったので、階層を上に行くためには、アドレスバーの階層表示をたどる必要があった。とはいえ、Alt+上方向キーというショートカットを使えば上に行けるのはWindows 7でも同様なので、パワーユーザーにとっては新しみを感じないかもしれない。でも、そういうことができるのだという気づきを与えるという点で、多くのエントリーユーザーにとっては便利なエクスプローラーに感じてもらえるはずだ。

●リボンの基本タブ

 リボンについては、リボンタブバーの右端に「リボンの展開」ボタンが用意されていて、そのクリックで表示/非表示を切り替えることができる。これはOfficeアプリと同じで、ボタンのデザインも同じだ。リボンには、

・ファイル
・ホーム
・共有
・表示

という4つの基本タブが用意される。

 それぞれのタブを見ていこう。

・ホームタブ

 まず、ウィンドウを開いた状態では「ホーム」タブにフォーカスがあたっている。そこに並ぶコマンドはクリップボード、整理、新規、開く、選択というグループに分類されている。目立って便利そうなのは、「パスのコピー」、「選択の切り替え」といったところだろうか。

・ファイルタブ

 こちらには「コマンドプロンプトを開く」が用意されているのを喜ぶパワーユーザーは少なくないんじゃないだろうか。しかも「コマンドプロンプトを管理者として」開くもある。

ファイルタブ

・共有タブ

 「送信」と「共有」グループが用意され、送信グループ内にZipコマンドが用意された。このボタンのクリックで選択状態のファイルがZipファイルになるわけだ。

共有タブ

・表示タブ

 多彩な表示カスタマイズができる。パワーユーザーなら「ファイル名拡張子」、「隠しファイル」の表示/非表示をチェック1つで切り替えられるのを喜ぶかもしれない。また、「選択した項目を表示しない」という大きなボタンもある。このボタンをクリックすると、選択したファイルやフォルダが隠し属性を持ち、表示から消える。「隠しファイル」のチェックで表示されるのだが、これは、ちょっと混乱を起こしてしまうかもしれない。

表示タブ

 表示関連では、これまでウィンドウの下部に確保されていた詳細ウィンドウがウィンドウの右側に移動された。これによってワイドスクリーンのように縦方向が窮屈なスクリーンで、リボンのように縦方向を圧迫するGUIを使っても、ウィンドウ内の情報量が少なくなってしまうことが抑制されている。

詳細ウィンドウのペインは右に移動した

 このように、今まで右クリックでアクセスしていた多くのコマンドを、リボン内のコマンドで実行できるようになっている。そのことで、知らなかったコマンドが明るみに出てきているわけだ。

●状況に応じて表示されるコンテキストタブ

 リボンは、基本タブのほかに、特定の項目が選択状態にあるときに、ツールタイトルがタイトルバー内に出現し、そのツールによるタブがコンテキストタブと呼ばれる特別なタブとして追加される。

 たとえば、検索ボックス内をクリックすると、検索タブが表示され、「場所」、「設定し直す」、「オプション」といったグループで各種の設定ができる。

検索の詳細設定ができる検索のコンテキストタブ

 コンテキストタブには、このほか、ライブラリを操作する場合のライブラリツールにおける「管理」タブ、画像ファイルを選択している場合のピクチャツールにおける「管理」タブ、ディスクを開いているときのディスクツールにおける「ドライブ」タブなどが用意されている。

 ここで気がつくのは、タイトルバーが単なるタイトル表示だけに使われているのではなく、こうした「××ツール」といったインフォメーションの表示に使われているほか、Officeアプリのように、クイックアクセスツールバーが用意されている点だ。

ライブラリのコンテキストタブ
ピクチャのコンテキストタブ。画像操作やスライドショーなどができる
ディスクのコンテキストタブ。リムーバブルディスクのフォーマットなどができる

 クイックアクセスツールバーは、タイトルバー左端の領域で、左角はコントロールメニューボタンが復活している。Windows 7のウィンドウでは、タイトルバー左端部分のダブルクリックでウィンドウを閉じるといったことはできたし、左端部分のクリックやAlt+スペースのショートカットでもメニューの表示はできたが、明示的なボタンとしては表示されていなかった。

コントロールボタンが復活した

 また、デフォルトでは「プロパティ」と「新しいフォルダー」がクイックアクセスツールとして表示されているが、それらを削除してしまうこともできるし、自分のよく使う任意のコマンドを置いておくことができる。リボンからコマンドを右クリックして、メニューから「クイックアクセスツールバーに追加」を実行するだけでいい。

 また、クイックアクセスツールバーは、タイトルバー左端の領域だけではなく、リボンの下にバーとして表示させることもできる。追加したツールボタンの数が増えてきた場合には、そのようにした方がわかりやすくなる場合もありそうだ。

カスタマイズ可能なクイックアクセスツールバーは、リボン下部に移動できる

 パワーユーザーは「できないはずがない」と思って機能を探し、その方法を発見して実行する。あるいはサードパーティのユーティリティなどで目的を達成する。でも、圧倒的大多数の一般ユーザーにそれを求めるのは酷ということなんだろう。そういう意味では、新エクスプローラーは、新機能満載と受け入れられるのかもしれない。