山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

Windows PEで変わるサードパーティメインテナンス環境



 OSの管理などという作業からはできるだけ解放されたいというのは長年の夢ではあるが、なかなかそうもいかない。場合によっては、システム全体がおかしくなってしまうこともある。そこで今回は、Windows 7ネイティブのハードディスク統合管理ソフト、ジャストシステムの「Paragon Hard Disk Manager Suite 10」(8,295円~)を使いながら、これらの作業の効率化について考えてみる。

●HDDのメインテナンス全般をサポートする「Paragon Hard Disk Manager Suite 10」

 Windows 7のクリーンインストールはきわめて高速になった。感覚的にはVistaの3倍くらいになった印象だ。だからといってシステムの運用は、クリーンインストールしただけでは始められず、各種の設定やアプリケーションのインストールなど細かい作業が必要だ。OSのインストールが15分で終わったとしても、そのあとの作業を入れれば、「自分的クリーン」な状態になるまでには数時間は必要だろう。ザッと見積もっても半日仕事だと考えていい。

 個人的には、稼働しているPCごとに、そのPCに対して何をやったかを記録したログファイルを持っている。これはメーカー製のPCを使う場合も、まったく新しくシステムの自作をする場合も同様だ。もし、そのハードウェアを再構築しなければならなくなった場合も、そのログファイルを見れば、うっかりミスをすることなく、以前の環境を再現することができる。こうした作業は、新たなシステムが安定して稼働し始めた時点でバックアップをとっておけば、それを復元することで短時間で完了する。

 また、ディスク上のパーティション操作もやっかいな仕事だ。かつては操作が煩雑だったので、個人的には1つのディスクにパーティションは1つの原則で、領域が必要な場合はディスクを増設するという方法をとっていた。ただ、HDDの増設が容易なデスクトップPCならともかく、1台しかHDDを内蔵できないノートPCでは、どうしても領域を作る必要が出てくる。人によってはシステムの再構築はしょっちゅう行なうが、データに関してはそのまま移行するため、コピー等に要する時間を短縮するために、データは別パーティションに保存することにしていることも多いだろう。Windows 7では、個人用フォルダ内の用途別シェルフォルダを、別のフォルダに指定できるので、その点は便利だ。

 ということで、こうしたHDDに関するさまざまな作業を担うユーティリティを集めた統合ソフトがジャストシステムの「Paragon Hard Disk Manager Suite 10」だ。Windows 7に完全に対応しているので、使うにあたって不安はない。そもそもWindows 7はVistaのマイナーバージョンアップなので、こうしたディープなユーティリティでも、メジャーバージョンアップ時につきもののトラブルなどは心配しなくてよさそうだ。

プログラムを起動するとメインメニューが開く。ここからスウィート内の各種機能を呼び出し、ウィザード形式で実行していく

 機能としては次のようなものがある。

・バックアップと復元
・コピー
・パーティション操作
・抹消

「バックアップと復元」は、文字通り、パーティション単位のバックアップ、さらに、バックアップからの復元を行なう。スケジュールバックアップの機能も用意され、自動での運用も可能だ。

 また、「コピー」はHDDを丸ごと別のHDDにコピーする。1台のHDDに複数のパーティションが存在する場合は、それらをまとめてコピーすることになる。注意が必要なのは、バックアップが既存のHDDのデータとして保存されるのに対して、コピーは、コピー先のHDDの内容が削除されてしまう点だ。当たり前の話だがミスをすると失うものが多いだけに十分に気をつけるようにしたい。

 バックアップと復元、そしてコピーの操作では、Windowsのシャドウコピーの機能が利用できるので、システムを稼働させながらの作業も可能だ。

バックアップはディスク丸ごとから、パーティション単位まで柔軟に対応できる
コピーではディスクを丸ごと別のディスクにコピーできる。HDDの換装などの際に便利だが、USBメモリ等で起動して行なった方が安心かもしれない

 「パーティション操作」では、新たなパーディションを作成することができる。ちょっとややこしいのは、パーティションの縮小や拡大ができないように見える点だ。でもちゃんとできる。たとえば1台のHDD全体が1つのパーティションとなっている場合、そのパーティションの拡大/縮小をすることはできない。でも、新たなパーティションを作成し、既存パーティションとの間で空き領域を移動することができるので、結果としてパーティションの拡大や縮小ができるというわけだ。

パーティションの作成は、1HDDを1パーティションを占有している場合、ちょっと作業がわかりにくい。分割や縮小、拡大といったことが直接できるようになっていればわかりやすかった

 さらに、「抹消」は、HDDやパーティションの内容を完全に抹消する。稼働はするが処分したいHDD、また、ノートPCを譲渡するような場合に、個人情報等の漏洩を回避するために利用できる。

●リカバリーメディアを別に用意しておくと安心高速

 トラブルというのは突然起こるし、えてして、システムが起動できずに途方に暮れるということが多い。個人的には、そういうケースに陥った場合は、とりあえず、起動できないシステムドライブをは外し、新たなドライブをつけて、そこにOSを新規インストールし、古いシステムドライブをUSBなどで外付けして、必要なファイルを救うという方法をとってきた。起動できなくなったドライブに上書きやリカバリーでOSをインストールする場合もあるが、いったんトラブルを起こしたHDDをそのまま稼働させるのは不安で、結局は新しいHDDに入れ替えることになってしまうからだ。

 「Paragon Hard Disk Manager Suite 10」では、リカバリーメディアを作成することができる。CDやDVDに作れるのはもちろん、USBメモリにも作成でき、Linuxベースのユーティリティをこれらのメディアから起動することができる。このメディアでPCを起動することで、同スウィートのほとんどの操作に加え、特殊なパーティションからの起動などもできるようになる。例えば、メーカー製のPCのHDDリカバリー機能などを、MBRを書き換えるといった何らかの原因で使えなくなってしまったような場合にも、このリカバリーメディアを使えばうまく起動させることができる可能性がある。

リカバリーメディアビルダを使ってブータブルなUSBメモリなどが作れる。このUSBメモリもWindows PEプラットフォームならよかったにと思う

 一方、製品パッケージのCDそのものからも起動して、各種の操作を行なえる。これらの別メディアから起動して、救えるファイルは救う、また、ハードウェアの物理的な障害なのか、それとも論理的な障害なのかを切り分けて、被害を最小限に抑えることができる。

●OS標準を別のカタチで

 このスウィートによって提供される機能のほとんどは、Windows 7が標準で持っている。だから、日常の運用では、それほどありがたみを感じることはないかもしれない。だが、何らかのトラブルが起こったときに、とにかく、救えるものは救いたいとか、ノートPCのHDD換装などで、できる限り、手間を最小限に抑えたいといった場合には重宝するはずだ。場合によってはトラブルが起こってからショップに購入に走り、そのメディアで運用するといったことも可能だ。トラブルが起こったときは、えてして興奮しているもので、さらに深みにはまることがある。ちょっと自分の頭を冷却してから作業に取りかかった方がいい。

 Windows 7がきちんと動いてさえいれば、こうしたユーティリティの必要性はあまり感じない。でも、何かが起こったときの柔軟性は高い。つまるところは、Windows 7のトラブルはWindows 7以外のOSで対処するしかないということだ。ちなみに、自分でUSBメモリなどに作成したリカバリメディアはLinuxベースだが、製品CD-ROMからブートした場合は、Windows PEが起動し、製品のフル機能を使える。

 Windows PEは、Windows 7から3.0となっている。このプラットフォームは、Windows Preinstallation Environmentの頭文字をとって名付けられたもので、Vista以降の多くのメーカー製PCは、この環境を使ってハードディスクリカバリなどを行なうようになった。フル機能を持ったOSではないが、32bitのWindowsアプリケーションを動かす程度のことはできる。また、サードパーティのソフトウェアベンダーは、Windows PEを製品に組み込むことができ、「Paragon Hard Disk Manager Suite 10」の製品CD-ROMのような環境が作れるわけだ。ただし、この製品のWindows PE は2.1と記載されている。いずれにしても、PEを活用することで、いわば、マイクロソフトとサードパーティの合わせ技が実現し、こうしたマイクロソフト半謹製環境が実現されているというわけだ。