■山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ■
Windows 7は、アプリケーションとOSの連携をサードパーティに託すための仕組みを内包し、かつての業界隆盛をもう一度もくろんだ製品でもある。ただ、OSのみでできることは相変わらず多く、サードベンダー参入のスキは、それほど多くはないようにも見える。今回は、システムユーティリティの面からWindows 7の状況を見ていくことにしよう。
●疑わしければエラーをチェックOSとそれに含まれるアプリケーションだけで何でもできる状況が続いている。この傾向は昨日今日始まったわけではない。Windows 3.xの時代から、各社のPC差別化のためにソフトウェアの幕の内弁当状態が始まり、今に至っている。その結果、いわゆるサードパーティとしてのソフトウェアベンダーは窮地に追い込まれたといってもいい。かつてのエコシステムをもう一度揺り戻すことはWindows 7に課せられた使命でもある。
Windows 7では、かつてはOSの一部として提供されていたメールや映像、写真関連のアプリケーションを切り離し、MicrosoftのLiveサービスに委ねることにした。その方針には賛否両論あるが、結果として、Liveをプリインストールするメーカー製PCが多く存在することで有名無実化しているのも事実だ。
そして、システムユーティリティだが、少なくとも、たいていのことはOSの機能だけで実現可能となっている。生半可な製品では、とても追加コストを投じてもらえそうもないくらいに実用的なものとなっている。
まず、スタートメニューから「コンピューター」を開いてみる。すると、システムに実装されているディスクの一覧が表示される。任意のドライブを右クリックしてプロパティを表示させ、ツールタブを見ると、
・エラーチェック
・最適化
・バックアップ
という3つのメインテナンス系基本機能が見つかる。これらの機能はXPの時代から何も変わっていないようにも見える。
まず、エラーチェックは、
・ファイルシステムエラーを自動的に修復する
・不良セクターをスキャンし、回復する
という2つのオプションを指定してスタートさせる。従来の問題点はチェックの結果がわかりにくかったことだが、Vista以降は、終了後、詳細を表示させ、何があったかのレポートを表示させることができる。ただ、不良セクターを回復させた場合、元のファイル名がわからない状態で、ドライブのルートに助かったファイルの内容を集めたファイルが作成されるものの、それでは途方に暮れてしまうのも確かだ。不良セクターの回復はフォーマット直後に念のためにやるものくらいに思っていた方がよさそうだ。本当なら、ここは1つ、もう少しインテリジェントな機能が欲しかったところだ。
エラーチェック後に詳細を表示させ、問題についてのレポートを読むことができる |
●デフラグすれば気分だけでも高速化
ディスクデフラグツールは、HDD上の断片化したファイルを統合するためのもので、場合によってはシステムパフォーマンスを向上させることができる。この機能はデフォルトで毎週水曜日の午前1時に実行されるようになっているので、手動でスタートさせることは少ないだろう。エラーチェックと同様に、ディスクのプロパティのツールタブから呼び出すことができる。
スケジュールに関しては、自分で細かく設定することも可能だ。頻度、日、時刻などを決めて自動実行させることができる。多くの場合は、自分がPCを使わないであろう深夜などを指定しておくのがいいのだが、自宅のPCなどは、自宅を留守にする昼間に設定しておけば、PCを使っているときにバックグラウンドで動き出し、不快な思いをすることがない。
デフラグではビジュアルな要素がなく、見ていてもつまらない |
デフラグのスケジュールは任意に設定ができる。PCを使わない時間を選んでおくといい |
ディスクの分析も、最適化も、ビジュアルに状態が表示されるわけではなく、単に数値で断片化の状態などが表示されるだけで、見ていてもつまらない。よほどのことがないかぎり、自分で実行する必要はないだろう。
●完全システムイメージバックアップがあれば修復も容易一方、大幅に強化されたのがバックアップの機能だ。ドライブのプロパティからのみならず、コントロールパネルにも「バックアップと復元」というアプレットが用意され、そこから各種の作業を行なうことができる。
バックアップではシステムイメージを作成することができるようになった。これは、VistaまではBusiness以上のエディションでComplete System Backupとして提供されていたものに近いが、7では、バックアップ先にネットワークドライブを選べないといった制限はあるもののHome Premiumでも提供されている。
この機能を使い、システムを丸ごと別のドライブにバックアップすることができ、万が一の場合はそこからの修復が可能だ。一般的な丸ごとバックアップではなく、いくつかの論理的な作用が働き、一時ファイルやキャッシュファイル、インデックスデータベースなど、修復後に再作成できるものは除外され、バックアップに必要な時間や容量を節約できるというメリットもある。
ドライブのプロパティのツールタブから、コントロールパネルにある「バックアップと復元」が呼び出される |
バックアップは、最初に設定セットアップをしておくことで、以降、定期的なスケジュールにしたがって実行される |
なお、使用にあたっては、ちょっとした落とし穴があることに留意してほしい。個人用フォルダ内にあるマイピクチャやマイドキュメントなどのシェルフォルダは、プロパティでその場所を指定し、別のドライブの別のフォルダに場所を変更することができるが、バックアップは、その内容もいっしょにバックアップしようとする。ちょっと間抜けな仕様になっているので、イメージの作成前に、他のドライブを参照していないかどうかをチェックし、元に戻しておくことをおすすめする。あるいは、バックアップ対象を自分で選択するようにし、別のフォルダを参照しているフォルダはバックアップの対象としないようにするといいだろう。
なお、バックアップはデフラグ同様に定期的なスケジュールで行なわれるように設定することができ、デフォルトでは毎週日曜日の19:00に行なわれるようになっている。ただし、インストール直後の状態では実行は行なわれず、必ず、セットアップの前作業が必要となる。
●システムログでコンピュータの状態を知ろうコンピュータの管理に関しては、コンピュータを右クリックしたときのショートカットメニューにある「管理」からも多くの作業ができるようになっている。システムに対してやらなければならないことは、コントロールパネルの「アクションセンター」を開けば一覧が可能だが、コンピュータの管理では、イベントログを見たり、細かいシステムの状況などをチェックできる。たまにはイベントログを参照し、気になる現象が起きていないかどうかを確認しておくと安心だ。
アクションセンターでは、そのシステムに対して起こさなければならないアクションが一覧できる。ここではバックアップが行なわれていないことが警告されている |
さらにディスクの管理では、パーティション操作に代表される高度なディスク操作が可能だ。今の時代、ディスクをパーティションに細かく区切るユーザーは、それほど多くはないと思われるが、システムの再インストールを頻繁に行なうユーザーなどは、待避が必要になるデータを別ドライブに置きたい場合などもあるようだ。そのような場合、ボリュームの拡張や縮小ができれば柔軟性も高まるというものだ。
基本的にOSだけあれば、多くのメンテナンス作業が可能となっているのはうれしいことだが、ユーザーによっては、さらにキメの細かい作業をしたいと考えるかもしれない。そのために、多くのフリーソフトウェアが存在するし、パフォーマンスチェックなどの定番ソフトも多くある。
昨秋のWindows 7の発売から、すでに半年近くが経過しようとしているが、そろそろWindows 7ネイティブ対応をうたったシステムユーティリティ製品も出てきているようだ。次回は、そのような製品が、Windows 7の標準添付ユーティリティに対して、どのようなアドバンテージを持っているかをチェックしてみることにしよう。