山田祥平のWindows 7 ユーザーズ・ワークベンチ

オフラインファイルで複数台のPCを同期しよう



 Windows 7が登場し、いわゆるデバイス事情が少しずつ変わりつつある。かつて家庭に1台だったPCは、ネットブックなどの廉価なPCの登場で、1人に1台が当たり前、さらには、その派生としてモバイルPCが再注目されるようになり、CULVノートなどが普及、1人が複数台のPCを持つことも珍しくなくなってきた。今回は、複数台のPCをWindows 7で扱うためのノウハウについて紹介したい。

●オフラインファイルでファイルを同期

 複数台のPCをとっかえひっかえ使う際に、もっとも煩わしく感じるのが、ファイルの分散だ。あのデータファイルは確かこのPCにあったはず。あると思ったらないのでコピーしてくる。あっちとこっちで別々に編集したら、何がなんだかわからなくなるといった具合だ。こうした不便を解消する方法の1つが、ファイルの同期だ。Windows 7では、Professional以上のエディションで「オフラインファイル」という名称でこの機能が提供されている。

 そもそも、オフラインファイルとは、ネットワーク経由でアクセスできる共有フォルダの内容を、ネットワークから切断されているときにも使えるようにしようという趣旨のものだ。切断中に、そのフォルダ内のファイルに変更が加えられた場合は、オンラインになったときに共有フォルダに反映される。

 この機能を利用することで、複数台のPCの各フォルダ内容を同一に保つことができるようになり、結果として、PCの台数分の数のバックアップを持つことができる。

 オフラインフォルダ自体の機能はWindows 2000のころから実装されていたが、積極的に使われているという話をあまり聞かない。それではもったいないほど便利な機能なので、ぜひ、試してみてほしい。

 使い方は簡単だが、まず、前準備として、オフラインファイルに使える領域を調整しておこう。コントロールパネルから「同期センター」を開いてほしい。Vistaから7への変更点の1つとして、コントロールパネルにあった「オフラインファイル」というアプレットがなくなってしまい、「同期センター」に統合されている。オフラインファイル関連の設定はそのほとんどをここから行なうことになる。

 ナビゲーションペインに「オフラインファイルの管理」というコマンドボタンがあるので、それをクリックすると、そのプロパティが表示され、各種の設定を行なうことができる。「ディスクの使用量」タブを開き、すべてのオフラインファイルの上限が十分かどうかを確認してほしい。各コンピュータで同期したいフォルダの総容量が、ここで設定した上限より少ないと、同期してオフラインで使えるはずのファイルが同期していないということが起こってしまう。個人的には、自分で作るデータファイルが、TBクラスの容量を持つことはないので、上限は最大の100%に設定しているが、この値は、ケースバイケースで柔軟に決めればいい。

オフラインフォルダが使うディスクの使用量の上限を設定し、同期もれが起こらないようにしておく

●個人用フォルダを丸ごと共有

 設定ができたら、次は、どのフォルダを同期するかを決める。個人用フォルダ内にある用途別フォルダは、それぞれの場所をネットワーク共有フォルダに設定することができるが、実はその設定をすると、自動的にオフラインフォルダとして扱われるようになる。ここでは、個人用フォルダ「syohei」内の「マイドキュメント」を、自分が使う可能性のあるすべてのPCで同期されるように設定してみよう。

 話をわかりやすくするために「big」「mini」という名前がついた2台のPCがあると仮定しよう。まず、どちらをマスターとするかを決めなければならない。ここでは「big」を母艦とし、その「マイドキュメント」をマスターとする。あとで、「マイピクチャ」や自分で作成した他のフォルダを同期させたいときに便利なように、個人用フォルダをまるごと共有フォルダとして設定しておこう。

 通常、個人用フォルダは、ユーザー名を持つフォルダで、システムドライブのフォルダツリーの中では、コンピューターのシステムドライブを開き、ルートにある「ユーザー」を開くと見つかる。ここでは「syohei」がユーザー名であり、個人用フォルダ名であり、それをそのまま共有名とする。

 見つけた個人用フォルダを右クリックし、プロパティを表示させ、共有タブを開こう。ここで「詳細な共有」ボタンをクリックし、共有名をフォルダ名と同じ、つまり、ユーザー名で共有する。自分以外のユーザーが使う可能性がある場合は、アクセス許可ボタンをクリックして、自分だけがフルコントロールできるように設定しておく。

個人用フォルダを丸ごと共有する
共有を設定した場合、アクセス許可は既定では誰でも読み取りができるようになっている。これでは書き込みができないので、適切なアクセス許可を自分に与えておく

 母艦での設定はここまでだ。

 次に、2台目のPCである「mini」での作業に移る。「big」と「mini」を同じネットワークに接続し、「mini」側で個人用フォルダを開き、「マイドキュメント」のプロパティから場所のタブで、その場所を「\\big\syohei\documents」と指定する。「マイドキュメント」はエクスプローラで見ると日本語名フォルダだが、実際には「documents」という英語名のフォルダだ。フォルダの英語名はコマンドプロンプトで確認できる。

コマンドプロンプトでみると、各用途別フォルダの英語名が確認できる

 パスを手動で入力して設定、適用ボタンをクリックすると、元の場所にあるファイルを移動するかどうかを確認するダイアログが表示されるので、それを確認すると、ファイルの同期がすぐに始まり、2台のPCのフォルダ内容、ここでは、マイドキュメント内の内容が同じになる。

●同期スケジュールの設定

 個人用フォルダ内の用途別フォルダでは、このように、場所をネットワーク共有フォルダに設定するだけで、オフラインファイルとして設定される。場所を設定することができない個別に作ったフォルダをオフラインファイルにするには、母艦側で共有フォルダを作成し、そのフォルダを別のPCで見つけ、右クリックして「常にオフラインで使用する」をクリックすることで、そのフォルダがオフラインフォルダとして設定され、ファイルの同期が行なわれる。多くの場合、新しく作成するフォルダも個人用フォルダ内に作成しておいたほうが何かと便利なので、あえて、個人用フォルダを丸ごと共有するようにしておいたわけだ。

個人用フォルダ内のマイドキュメントなどシェルフォルダは場所をネットワーク共有フォルダに設定すると自動的にオフラインファイルとなる
オフラインファイルに設定されたフォルダには緑の同期のマークが表示される

 さて、最初の同期が終わったところで、コントロールパネルの「同期センター」に戻ろう。オフラインファイルを設定した環境では、タスクバーの通知領域にもアイコンが表示され、その右クリックで「同期センター」を開くことができる。

 同期センターでは、オフラインで使うフォルダとして「オフラインファイル」が一覧に出てくるはずだ。同期は、ここで手動で強制的に行なわせることもできるし、ネットワークへ接続すれば適当なタイミングで自動的にも行なわれるが、どうもそのタイミングがあやふやだ。そこで、「スケジュール」をクリックして、同期のタイミングを手動で設定しておこう。

 新しい同期スケジュールを作成し、まず、「スケジュールされた時間」に必ず同期が行なわれるようにする。たとえば、今日の今から1時間間隔で繰り返すように設定しておけば、自宅にいるときには常に電源を入れておくことで、出かける1時間前までに変更を加えたファイルは、ノートPCを持ち出す時点で同期されていることになる。もちろん、それでは電気代がもったいないというのなら、でかける寸前に手動で強制同期したってかまわない。

 同期のタイミングについては、「その他のオプション」として、

コンピューターが次の状態にあるときにのみ同期を開始する
・起動状態である(スタンバイや休止状態ではない)
・アイドル状態が次の時間続いている
・外部電源使用時である

コンピューターが次の状態にあるときは同期を停止する
・スリープ解除するとき
・外部電源を使用していない

といった項目を指定しておける。たとえば、スリープ状態でカバンの中に入れて移動中のPCがスケジュールにしたがって同期を試行しても仕方がないので、起動状態で外部電源使用時のみに同期するように設定しておくなどすればいい。

スケジュールのオプションでは同期開始、同期停止に関する条件を指定できる
1時間おきに同期するなどのスケジュールを設定しておこう

●ネットワーク共有なら何でも同期できる

 こうしてオフラインファイルを使うと、外出先で作業して、自宅に戻ってPCの電源を入れてネットワークに接続すると適当なタイミングで同期が行なわれる。持ち帰ったPCには特にログオンする必要もないので、PCをスリープから復帰させて放置すればいい。そして、母艦に相当するPCを開けば、外出先での作業結果がきちんと同期されているのを確認することができるはずだ。

 もし、同期しないで異なる編集をしてしまったような場合は競合が起こる。その場合は同期センターで同期の競合を表示させ、母艦側のファイルを残すか、別のファイルを残すか、あるいは両方を残すかを指定することができる。

 オフラインファイルとして指定できるフォルダは、Windowsからネットワーク共有に見えるものなら何だってかまわない。つまり、マスターを持つシステムがWindows PCでなくても、NASのようなシステムに存在する共有フォルダでもいい。Macだってかまわない。

 手元の環境では、常時5~6台のPCを同期させているが、そのおかげで、出張時、外出時、プレゼン時といった用途に応じて持ち出すPCが異なっても、いつでも、いつものファイルにアクセスできる環境が実現できている。実に便利だ。

 残念ながら、Home Premiumでは、オフラインファイルの機能は提供されていない。でもあきらめることはない。その手のサービスはクラウドにいくつか存在するし、マイクロソフトでも、Windows Live Syncとして類似した機能を提供している。Liveのサービスの統合であるWindows Live Essentialは、これから夏にかけて段階的にアップグレードされていくそうなので、リニューアルされた時点であらためて紹介することにしよう。