Windows 10カウントダウン

OneDriveに入る大きなメス、そしてその先は?

 順調に毎月更新され、いろいろと機能が追加されている次期WindowsのTechnical Preview。普通に使っている分にはメインで使ってもいいのではないかと思うくらいだが、やはり、そこはプレビューだ。さまざまな観点から試行錯誤が行なわれている。今回は、仕様がガラリと変わったOneDriveについて見ていくことにしよう。

身近になるクラウドストレージをわかりやすく

 11月12日、直近のビルドとしてBuild 9879の配布が始まった。例によってシステム全体をそっくり置き換えるような大規模なアップデートだったが、そこで大胆な手が入ったのが「OneDrive」だ。MicrosoftはOffice 365ユーザー向けにOneDriveの容量を無制限にすることを表明したばかりで、日本のユーザーも同様の扱いとなるという。そのOneDriveが変わったのだ。おそらくWindows 10の時代には、クラウドストレージという存在は、今よりもずっと身近なものになっているだろう。そんな状況にどう対応していくかは、きちんと考えておかなければならない。

 さて、現行のWindows 8.1 UpdateまでのOneDriveは、個人用フォルダ内にOneDriveというシステムフォルダが作られる。SkyDrive時代からアップデートを重ねて使っているユーザーは、実フォルダ名はSkyDriveのままだが、システムフォルダとしてはOneDriveだ。

 OneDriveは、ローカルストレージとしてのOneDriveと、クラウドストレージとしてのOneDriveのフォルダ内容を同期する仕組みで、クラウドにあるファイルを、

1. 全てオフラインでアクセスできるようにする(ローカルにコピー)
2. 全てオンラインでのみ使うようにする(オンデマンドでコピー)

のどちらかを選択した上で、2.の場合は、フォルダやファイルごとに、オフラインでも使うかどうかを個別に設定することができている。

 全てのファイルにオフラインでもアクセスできるようにするためには、クラウドストレージ側と同等の空き容量がローカルにも必要となる。当たり前だが、クラウドに存在するファイルを全て同期してコピーする必要があるからだ。

 例えば、1TB相当のファイルがクラウド側にあるのに、ローカルのタブレットPCには64GBのストレージしかなく、空き容量として使えるのが30GB程度の場合は、全てのファイルを同期してローカルに置くことができない。その場合は、2.を選んだ上で、使用頻度の高いフォルダやファイルだけを同期の対象にするわけだ。

 1.と2.どちらを選んでも、システムフォルダとしてのOneDriveをエクスプローラーで参照すると、クラウド側のストレージにあるファイルを全て確認することができた。それが現行のOneDriveの特徴でもある。

 これはオフライン時でも同様だ。クラウド側のファイルやフォルダはプレースホルダーと呼ばれる仕組みでクラウド側にあるファイルの実体へのポインタとしてローカルに存在する。あたかもファイルやフォルダに見えるが、実際には、それを開こうとした時点でオンデマンドでダウンロードされるようになっている。当然、その時にオフラインであればファイルを開くことはできない。

 ただ、例えば画像ファイルであれば、プレースホルダーにサムネール情報なども保存されているので、どんなファイルがあるかを把握するには十分だ。ちなみに、デジカメで撮影したJPGとRAWファイルが混在する133GB分のファイルは、プレースホルダーなら293MB分を占有するにすぎない。この仕組み、構造を理解することができれば、これはこれで便利だったのだ。

 個々のプレースホルダーは、それがファイルであってもフォルダであっても、オンラインの状態で右クリックすると、そのショートカットメニューから「オンラインでのみ使用する」、「オフラインで使用する」を指定でき、それに応じてファイルの実体がローカルストレージにダウンロードされたり、実体が削除されてプレースホルダーとなり、その実容量分のディスク領域を空けることができていた。

 新しいビルドのOneDriveは、このプレースホルダーの仕組みを撤廃し、ローカルに存在する実ファイルのみを表示するようになった。クラウドストレージから、どのフォルダを同期の対象にするかをあらかじめ指定しておき、指定したフォルダ内のファイルだけを実ファイルとしてダウンロード、OneDriveフォルダ内で確認できるようにしたのだ。ファイル単位でオフライン使用はできなくなっている。

 その結果、ローカルにはないが、クラウドにはあるファイルやフォルダの内容を知りたい場合は、WebでOneDriveサイトを開くか、ストアアプリのOneDriveを使って参照するしか方法がなくなってしまった。プレースホルダーの仕組みは、一般的なユーザーには分かりにくかったという判断なのだろう。

 不便と便利、明解と不可解を両立させる方法はなかったのだろうかとも思う。せめて、オプションでもいいから、プレースホルダーを使う、使わないを決める方法を用意してほしいものだ。これは、この先の議論になるだろう。これはあくまでもプレビューでの仕様であり、これからまた変わるかもしれない。公式サイトには多くのプレビューワーからの意見が寄せられている。とにかく、いろんな意見を集めるという役割をTechnical Previewは持っているわけだ。

トラブルにも遭遇

 と、何ごともなかったかのように新OneDriveのことを書いているが、実際には、ちょっとしたトラブルに見舞われた。ビルドの更新を重ねて、現在のビルドに辿りついているわけだが、今回のビルドまでは、現行のOneDriveと同じ仕組みだった。個人的な環境としては、すでに、クラウドにあるOneDrive上のファイルは約500GB分あって、今回の評価用に使っているLet'snoteのストレージには入りきらない。

 ところが、アップデート後のOneDriveは、それらのファイルを全て同期の対象にしようとしてしまい、現行では入りきらないというアラートを出して動作を停止してしまうという現象に遭遇した。本当ならできるはずの、同期するフォルダの選択に進めない状態だ。

 まずは、リカバリを試してみた。Technical Previewは、PC設定の「保守と管理」の「回復」で、全てを削除してWindowsを再インストールする場合、ビルドが更新されるごとに回復パーティションの内容が書き換わっているようで、一気にクリーンな最新ビルド環境ができあがる。この方法を試してみたのだが、結果は同じで、やはり、うまくOneDriveが機能してくれない。

 仕方がないので、最初に作ったTechnical PreviewのDVDを使って再インストール、順次、ビルドを更新して最新ビルドまでアップデートを重ねた状態にした。

 そして起動後、タスクマネージャを使って詳細タブからSkyDrive.exe(OneDrive Sync Engine)のプロセスを探し、それを右クリックしてプロセスツリーを終了させた上で、個人用フォルダ内のOneDriveフォルダをいったん削除し、C:\Windows\System32\SkyDrive.exeを再起動したところ、本来はそうなるであろうOneDriveの初期設定プロセスが動き、同期する対象フォルダを指定することができるようになった。その結果、通知領域のOneDriveインジケータも、その右クリックで、各種設定ができるようになったことが確認できた。

 一歩間違えば、不要なファイルが削除されたと勘違いされて、全てのファイルが消えてしまう。同期はバックアップではないからだ。念のために、あらかじめ、クラウドにある全ファイルのバックアップをとってからこの作業をしたのは言うまでもないが、どうやら杞憂だったようだ。でも、根拠がない限りは、用心に用心を重ねた方がいい。

 インターネットを検索すると、この現象で困っている事例がいくつも見つかる。ただ、これで全てが解決したわけではなく、手元の環境では、PC設定のOneDriveが「Some settings are managed by your system administrator」となっていたり、ストアアプリのOneDriveが「Your system administrator has blocked the use of OneDrive」となって正常に機能しないなど、ちょっと困った状態になっている。こちらは、まだ解決方法が見つかっていない。

クラウド側のOneDriveに大容量のファイルがあると、アラートが表示される。どのフォルダを同期するか指定するようにあるが、実際には、先に進めない
SkyDrive.exeのプロセスを停止し、OneDriveフォルダをいったん削除してから再起動すると、同期するフォルダの指定ができるようになった

OneDriveは、これからどうなる

 新しいOneDriveでは、Officeと連携して素早い同期を行なうことで共有ドキュメントを他ユーザーと同時に扱う機能が追加されている。この機能の詳細については、排他制御など、まだよく分からないことが多く、引き続き、レビュー中だ。

 このように、OneDriveそのものは大きく変わらないが、その扱われ方は変わった。ファイル単位で同期する、しないを指定できなくなってしまったが、これについては、大きな影響はないと思われる。その一方で、ファイルやフォルダの右クリックで、直接、その共有リンクが得られるようになったのは便利だと思う。ショートカットメニューでこの機能を実行すると、OneDriveの共有リンクがクリップボードに格納され、メールや文書内にペーストすれば、そのファイルへのリンクを簡単に第三者に伝えることができる。

 また、Performanceタブが追加され、占有帯域を増やしてアップロードのスピードを上げる設定ができるようになっている。この設定がうれしいユーザーも多いかもしれないが、これとは逆に帯域を占有しないように、アップロードのスピードを落とすオプションも欲しかったところだ。こんなオプションでもなければ、すぐに、ISPの上りトラフィック制限に引っかかってしまうからだ。

 さらに、PCごとのローカルファイルを、WebのOneDriveを使って参照できる機能も用意された。この機能では、同じMicrosoftアカウントでサインインしている全てのファイルにリモートからアクセスでき、ピア・ツー・ピアで必要なファイルを開くことができるというものだ。ただし、参照する側はWindows 8.xでいいが、参照される側はTechnical Previewが実行されている必要があるようだ。また、ダウンロードのみで、書き込みはできない。

 かつて、「Foldershare」から「Live Mesh」になり、その後継としてデビューしたSkyDriveのことを思い出す。ダイアログボックスもそっくりなのには驚く。

 どうやら、何か、秘密がありそうだ。

帯域幅を広げるオプションを設定するためのタブが追加されている
設定ダイアログは、かつてのSkyDriveと瓜二つだ

(山田 祥平)