笠原一輝のユビキタス情報局

WiMAX 2+の3日/3GBでの速度制限について考える

 UQコミュニケーションズ株式会社(以下UQ)は、1月15日に東京都内で記者会見を開催し、同社が展開している無線データ通信サービス「WiMAX 2+」の新しい料金プラン「UQ Flat ツープラス ギガ放題」、およびそれに併せて220Mbps(下り、理論値)のデータ通信に対応した端末2製品などを発表した。

 その発表に関しては別記事をご覧いただくとして、この記事ではUQがその新料金プランと同時に発表した、「3日間で3GBのデータ通信が発生した場合に一定の速度制限をかける」ことが、利用者、特に本紙の読者の中心であるPCユーザーにとってどのような意味があるのかを考えていきたい。

 以前の記事で筆者は、UQがWiMAX 2+において直近3日間1GBの容量に達した場合には速度制限が導入される予定であることは見直して欲しいと述べたが、今回の発表ではその点に関するUQ側からの答えがあった格好だ。結論から言えば、制限は導入されるが、ほかのキャリアに比べれば大幅に緩く、一般的な使い方なら十分使える条件になっている。

通信速度が速くなっているが、料金も上がってしまうという今回の新プランの特徴

 今回UQが発表した新しい料金プランに関して言えば、PCユーザーにとっては大きな意味があるものとなっている。最大のポイントは、7GBか無制限か、どちらかを選べる料金プランになっていることだ。具体的に比較してみると以下のようになる。

【表1】UQコミュニケーションズがWiMAX 2+向けに導入する料金プラン

UQ Flat ツープラス(2/19まで) UQ Flat ツープラス(2/20以降) UQ Flat ツープラス ギガ放題
契約期間 2年間(25カ月) 2年間(25カ月) 2年間(25カ月)
月間データ量
(LTEオプション未適用時)
実質無制限(2年終了後7GB) 7GB 無制限
大容量通信時
データ速度制限
4月1日以降あり
(3日間/3GB)
4月1日以降あり
(3日間/3GB)
4月1日以降あり
(3日間/3GB)
料金 3,696円 3,696円 4,380円
LTEオプション 1,005円 1,005円 1,005円
解約料
(ルーター同時購入なし)
9,800円 9,800円 9,800円
解約料
(ルーター同時購入あり)
1〜13カ月:19,000円、14〜25カ月:14,000円、26カ月目以降9,500円

 今回発表された料金プランそのものを、PCユーザーの視点でシンプルに評価するなら“実質的な値上げ”だ。というのも、これまで提供されていたUQ Flat ツープラスのプランは月間7GBまでで、以降128Kbpsに通信速度が制限されるようになっていたが、この月間7GBという制限は契約から2年間は適用されない。WiMAXやWiMAX 2+のようなデータ専用回線の場合、回線の番号を維持する必要性がほぼないため、多くのユーザーは2年間(実際には25カ月)の期間が終了したあと、回線を解約して新しい回線を契約するという使い方だっただろう。

 つまり、現行のUQ Flat ツープラスを契約していたユーザーは、3,696円/月(税別、以下同)で実質的には無制限に使えていたと言える。それが今後(2月20日以降)は、無制限プランは4,360円/月の「UQ Flat ツープラス ギガ放題」、7GB制限ありは3,696円/月の「UQ Flat ツープラス」となる。毎月の利用量が7GBを超えてしまうユーザーにとっては実質的に値上げと言うほかない。

 UQとしては、今後4x4 MIMOやキャリアアグリゲーションの仕組みを利用して、現時点で日本の無線データ通信回線としては最速の環境である下り220Mbpsを利用できるようになるので、その分は料金で……ということだと思うが、速度よりは料金重視というユーザーにとってはやや厳しい決定だ。

 ただ、現行のUQ Flat ツープラスは2月19日まで契約できるので、データ量無制限の回線を少しでも安く使いたいというユーザーは、今のうちに駆け込み契約しておくと2年間は無制限の回線を3,696円/月で利用できることになる。

UQの発表会で紹介された新プラン(UQ Flat ツープラス ギガ放題)と従来プラン(UQ Flat ツープラス)の比較
新規契約やWiMAX料金プランからの移行の場合には3カ月間従来の料金プランで新プランを体験することができる
2月19日までにUQ Flat ツープラスを契約すると、2年間WiMAX 2+が無制限で利用することができる
キャリアアグリゲーションにより下り220Mbpsに対応した「W01」(ファーウェイ製)。WiMAX 2+とau 4G LTEに対応している(au 4G LTEはオプション)
4x4 MIMOにより下り220Mbpsに対応した「WX01」(NECプラットフォームズ製)。WiMAX 2+だけでなく、WiMAX(ハイパワー)にも対応。Wi-Fiだけでなく、Bluetoothにも対応している

3日間/3GBで、少なくとも700Kbps程度になる速度制限

 今回の発表会でのもう1つのポイントは、UQが実質的には初めて導入することになる大容量通信時の速度制限の詳細が明らかにされたことだ。これまで同社は「ノーリミッ党」といったキャンペーンを行なうなど、データ通信に一切の制限を付けないことを売りにしてきた。すでに述べた通り、2013年の11月からサービスを開始しているWiMAX 2+のプラン「UQ Flat ツープラス」でも、月間7GBという制限は付いていたものの、契約から2年間はそれが適用されない条件だったので、実質的には制限がない状態だった。

 しかし、元々告知されていた通り、UQ Flat ツープラスも、新しく導入されるUQ Flat ツープラス ギガ放題も本年(2015年)4月1日より短期間に大容量の通信を行なった場合に速度制限されることが、今回の会見で明らかにされた。ただし、元々の予定では直近の3日間で1GBのデータ通信を行なった場合に速度が制限されるという表現だったのに対して、今回の発表では直近の3日間で3GBに条件が緩和されたことが明らかにされた。モデルケースに当てはめると下記表のようになる。これはユーザーが1日1GB近くを使った場合を想定して表にしたものだ。日によっては1.5GBになったり、400MBで済む日もあるだろうからそれをイメージした。


1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日 8日 9日
通信料 1.5GB 1.0GB 0.9GB 1.0GB 1.5GB 0.4GB 0.5GB 1.1GB 0.5GB
合計
(3日/1GBの場合)
2.5GB 3.4GB 2.9GB 3.4GB 2.9GB 2.4GB 2.0GB 2.1GB
合計
(3日/3GBの場合)
2.5GB 3.4GB 2.9GB 3.4GB 2.9GB 2.4GB 2.0GB 2.1GB

 同じだけ使ったとしても、直近3日間1GB制限の場合には、2日目以降毎日速度制限が入るが、3日間3GBの場合には速度制限が入るのは2回だけになる。もちろん、1日で3GB使う人には毎日制限が入ることになるのは言うまでもないが、毎日のようにHD解像度のストリーミングビデオを見続けるなどしない限りは、3日間3GBはなかなか行かないだろう。ちなみに筆者の場合は、OneDriveなどクラウドサービスとの同期を常時オンにしてあって、それでも月間で15GB〜16GB程度というのが通常だ。つまり1日平均でも500MBと程度となるので、3日間で3GBは計算上は届かないことになる。

 ただ、時には国内出張時に、WiMAX 2+回線を利用して自宅にVPNで接続して大容量のファイルをダウンロードするといったことが突発的に発生する。また最近では、出張先でふと何か見たくなって、Google Playマーケットでコンテンツを買ってAndroidタブレットで見ることもある。そうした時には1日で1〜2GB、場合によっては3GBに達するときも確かにある。

UQコミュニケーションズ株式会社 代表取締役社長 野坂章雄氏

 ここで重要なのは、この速度制限がどの程度の速度制限なのかという点だろう。今回UQコミュニケーションズ株式会社 代表取締役社長 野坂章雄氏は「極端に遅い速度ということではなく、YouTubeの標準画質が見られる程度、具体的には少なくとも700Kbpsの速度は確保したい」と述べている。

 この点はものすごく重要で、仮に速度制限を受けたとしても、少なくとも700Kbps(UQ側の説明によれば実際にはもっと速い場合もあるようだ、回線の混雑状況などにも依存するとのこと)の通信速度では利用することができる。これに対してほかのキャリアの場合や、UQ自身の2月20日以降契約分のUQ Flat ツープラスプランで7GBに達した場合には128Kbpsと極端に遅い速度に制限されることになるので、この点が大きな違いと言える。実際、仮に700Kbpsだったとすれば、それでも格安MVNOの遅い時ぐらいの速度は確保されているわけで、Webを見たり、SD解像度のビデオを見たりという用途なら十分に使えるだろう。

 通信キャリアがこうした制限を設けるのは、過去に「Winny」のようなP2P交換ソフトなどで一部のユーザーだけが帯域を極端に占有してしまったトラウマがあるからで、UQの野坂社長も「一部の人が帯域を独り占めすることを防ぎたい」とその意図を明確に説明している。確かにそうした問題に対する通信キャリア側の懸念は理解できる。しかし、これまでの128Kbpsに制限というやり方は、キャリアが“問題がある”とする使い方だけでなく、普通のユーザーの使い方(Webやビデオを見る)まで制限する結果になっており、率直に言ってやりすぎだったと思う。しかし、今回UQが導入する、“少なくとも700Kbps”という制限は、そうした一般的なユーザーの使い方までは制限しないという意味で歓迎していいのではないだろうか。

本当に実現して欲しいUQのビジョン、開発中のWiMAX 2+内蔵PCにも期待

 これまでのWiMAXやWiMAX 2+が本当の意味で無制限だったのに比べて、ほかのキャリアの制限に比べればはるかにマシな制限だとは言え、“一定の制限ありの無制限”になってしまったことはもちろん残念だ。以前の記事でも述べた通り、使い方を決めるのはユーザーの側であって、通信キャリアであってはならないと筆者は考えている。仮に帯域を占有するユーザーがいたとしても、そうした状況も含めてなんとかする回線を用意するというのが通信キャリアの本来の役目であり、それを果たして欲しいと思うからだ。

 ただ、現状は無線の帯域は有限の資源であり、その割り当てを決めるのが国である以上、通信キャリアとしては割り当てられた範囲内でなんとかしなければならず、難しい立場であることは事実だ。ぜひともUQやそのほかの通信キャリアも含めて、総務省に働きかけを続けて無線の割り当てを見直してもらい、もっと多くの電波を通信に割り当ててもらえるように努力をして欲しいと切に願いたい。それが実現されるまでは、ある程度の制限はユーザーとしても受け入れざるを得ないだろう。

 UQの野坂社長はプレゼンテーションの最後に、1枚のスライドを表示した。そこには、Microsoftが紹介するクラウドサービス(OneDriveやOffice 365など)とPCがWiMAX 2+回線を通じてデータのやりとりを行なうイメージが示されていた。それが現実に可能かと言えば、例えばデータの初回のアップロードが数十GBあるようなユーザーは、WiMAX 2+を利用して行なうことは難しく、WiMAX 2+だけでこの世界が完成するというのは正直難しいと思う。もちろんUQだってそれは分かっているはずで、それでもこのスライドを示したというのは、将来に向けてそうしたネットワークを提供していきたいという意志の表明だと筆者は受け取った。ぜひともそういう世界を実現して欲しいと思う。

 また、WiMAX 2+モジュールのPC内蔵の可能性に関しても、国内のあるPCベンダーと話をしているということを明らかにしている。WiMAX 2+はTD-LTEという方式で通信しているのだが、すでにTD-LTEのM.2モジュールやMini PCI Expressモジュールなどは市場にあり、それを搭載してWiMAX 2+対応とさせるのはさほど難しくないはずだ。従って、そんなに遠くない時期にそうした製品が市場に出回ってもおかしくないと言える。そちらも含めて、よりPCユーザーにとって使いやすい回線が提供されることを願ってこの記事のまとめとしたい。

UQの野坂社長のプレゼンで示された高速回線とPCの世界のクラウド化の進展をイメージしたグラフ。これが本当の意味で実現するように、回線のさらなる高速化、制限の撤廃に向けた動きに期待したいところだ。ところで、東芝、富士通、パナソニック、日本マイクロソフトの4社のPCが紹介されているのは、何かの示唆なのだろうか……

(笠原 一輝)