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実測下り195Mbps超を確認。WiMAX 2+のCAの公開検証を取材

~美人時計モデルと“ヤ倍速”を体験

真岡市で行なわれた実証実験で実現されたWiMAX 2+のCAによるスループット。ボードを持つのは美人時計のモデル室伏真璃さん、東京女子大学在籍の大学生だそうだ

 UQコミュニケーションズ株式会社(以下UQ)は、同社が導入を開始したWiMAX 2+の回線を束ねて通信する「CA」(Carrier Aggregation)の電波測定の様子を報道関係者などに公開した。

 UQが提供している従来のWiMAX 2+は、下り110Mbpsの通信速度を実現しているが、CAを利用することで2本の通信回線を1つとして扱え、2倍の下り220Mbpsでの通信が可能となる。UQはCA対応地域を順次拡大予定で、現在栃木県真岡(もおか)市において先行導入している。

 今回その真岡市で、1月末から販売が開始されているWi-Fiルーター「Speed Wi-Fi NEXT W01」に、CAに対応したβ版ファームウェアを導入し、物理層(PHY)レベルのスループットで220Mbps、TCP/IPレベルのスループットで195Mbps超で通信できる様子を公開した。

美人時計のモデルやパイロットモニターに参加するユーザーが参加したセレモニー

 検証に先立って、真岡市でのWiMAX 2+のCAパイロットモニターに参加するユーザーと、UQが提携している美人時計のモデル室伏真璃さんが参加したセレモニーが行なわれた。セレモニーでは、パイロットモニターを代表して3名のユーザーが参加し、UQコミュニケーションズ株式会社代表取締役社長の野坂章雄氏からWi-Fiルーターの貸与が行われ、最後に室伏さんを加えての記念撮影が行なわれた。

UQコミュニケーションズ株式会社代表取締役社長の野坂章雄氏(左)からパイロットモニターへ参加するユーザーへWi-Fiルーターの貸与が行なわれた
発表会でも使われた鍵を利用しての撮影セレモニー

今春より、WiMAX 2+の周波数帯域を20MHzから20MHz×2へ順次拡張

 同社執行役員技術部門長の要海敏和氏は、電波測定に先立って、WiMAX 2+のCAに関する技術概要の説明を行なった。

UQコミュニケーションズ株式会社執行役員技術部門長の要海敏和氏

 現在UQが提供している通信サービスは現在2種類ある。1つは2009年2月のサービスイン以来提供しているWiMAXで、現在は下り最大40Mbps、上り15.4Mbpsの通信速度(理論値、以下同)でサービスが提供されている。これに対して2013年11月に導入したWiMAX 2+は、現在、下り最大110Mbps、上り最大10Mbpsという通信速度を実現している。WiMAXとWiMAX 2+は全く異なる通信方式だが、WiMAX 2+用Wi-Fiルーターなどは、一部の製品を除きWiMAXとWiMAX 2+の両方に対応できるようにし、通信方式の違いを端末側で吸収する仕組みになっている。

 UQはこれまで、同社が保有する2.5GHz帯での50MHzの帯域の内、30MHzをWiMAXに、20MHzをWiMAX 2+に割り当てて運用してきた。これは、元々サービスを提供してきたWiMAXが30MHzを利用しており、WiMAX 2+はそのスタート当初にUQが総務省から2013年に新しく割り当てられた20MHzを使ってきたという歴史的経緯からこうした構成になっている。

 だが、WiMAXの方に多く割り当てられている帯域を、より多くのユーザーがより高速で通信できるWiMAX 2+へと割り当て直す方が、効率は良くなる。そこで同社は今春より、WiMAXを10MHz、WiMAX 2+を40MHzへと変更する作業を段階的に開始している。

 この割り当て変更により、WiMAX 2+を20MHz×2のCAで利用し、トータルで40MHzの帯域を活用できるようになる。現在のWiMAX 2+の回線は、20MHzの帯域で下り最大110Mbpsだが、CAにより下り最大220Mbpsの通信速度を実現できるようになる。

 ただし、この作業により、10MHzへと帯域が減らされることになるWiMAXは、現在の下り最大40Mbpsが13.3Mbpsへ下がることになる。

CAの概要。現在WiMAXに30MHz割り当てられている30MHzの内20MHzをWiMAX 2+に変更し、それと既存の20MHzを束ねてCAとして利用することで220Mbpsを実現する
美人時計モデル室伏真璃さんの手の先にあるのが、アンテナの電柱の下部。バッテリや電源周りの装置がここに集中している。バッテリは最大で6時間の駆動が可能だという
WiMAXとWiMAX 2+のアンテナ。太い方2本がWiMAX 2+のアンテナで、細い方2本がWiMAXのアンテナ。1本に見えるWiMAX 2+アンテナは実は2本で1組になっている。4本に見えるアンテナは実際には6本のアンテナとなっている

物理層で220Mbpsのスペック通りのスループットを実現するWiMAX 2+のCA

 そうした技術的な背景を持つWiMAX 2+のCAだが、現在栃木県真岡市で実証実験が行なわれている。この実証実験は、CAを全国展開する前に、技術的な問題がないかどうかを確認するためのもので、真岡市にある基地局でWiMAXに割り当てられていた20MHzをWiMAX 2+用に出力するという切り替え作業が2月12日に行なわれ、すでにCAが利用できるようになっている。なお、今後同じ作業が全国で行なわれることになるが、いつどこから行なわれるのかは現時点では未定だ。内部での実験だけでなく、栃木県在住者の一般ユーザーを対象にパイロットモニターも行なわれている。

 WiMAX 2+のCAでは、プライマリセルとセカンダリセルというそれぞれ20MHzのセルを束ねるが、この内プライマリセルには、制御系の信号も入っており、基地局の状況や端末がある場所などに応じて、セカンダリセルの利用や解放を動的に処理する。実際、今回の検証はバスの中に設置されているSpeed Wi-Fi NEXT W01を利用して行なわれたが、バスが移動している間、基地局が切り替わるタイミングなどでセカンダリセルが解放され、プライマリセルだけで通信する様子が何度か確認できた。

 ただし、要海氏によれば、セカンダリセルが解放される機会はさほど多くなく、97%の割合でセカンダリセルは有効になっているという。つまり、CAが有効になっている端末/地域ではほとんどの状況でCAが有効になる。

 また、WiMAX 2+のCAは、隣り合っている帯域を利用している。他のキャリアは全く異なる帯域同士でCAしている場合があるが、それに比べて安定してCAができるという。

CAの仕組み、プライマリセル(PCell)とセカンダリセル(SCell)の割り当ては動的に変動する。
基地局に近いなど条件の良い時は、プライマリセル、セカンダリセルの両方が利用できるが、基地局と基地局の狭間などではセカンダリセルが切り離されたりとリソースの割り当てが変更される

 最初の検証は、バスが止まった状態で行なわれた。場所は、WiMAX 2+のアンテナが見渡せる場所で、WiMAX 2+のMIMO(Multiple Input Multiple Output、送受信共に複数のアンテナで通信する方式のこと)が生かせ、電波が反射する建物があるという条件の良いところだ。MIMOの性能を最大限生かすには、都心のように高い建物など電波が反射しやすい建物が必要だが、真岡市では、平屋ないしは2階建ての民家というMIMOにはあまり適していない建物が多く、MIMOの性能を最大限に発揮できる場所を探すのに苦労したとのことだった。

 この状態で、物理層(PHY)と呼ばれるTCP/IPに変換される前の物理的な通信層のスループットで理論値に近い220Mbpsが出ており、TCP/IPの段階でも195Mbps超のスループットが最高値として叩き出されていた。なお、利用された電波は実際に商用利用されているもので、実際にその基地局には一般のユーザーも接続されている状態でのテストとなっていた。

 その後、バスが動き出すと、平屋や2階建ての建物が多い真岡市内で、TCP/IPスループットは100~150Mbpsあたりに落ち込んでいたが、多くの場所でCAが有効になったままだった。さすがに基地局と基地局の境目あたりに来ると、セカンダリセルが切り離されCAが無効になるが、通信は途切れることなくきっちりとハンドオーバーされており、安定して通信できてることが確認できた。

 要海氏は10MHzに帯域幅が絞られたWiMAXでの通信速度についても触れ「2月19日の夜に10MHzになったWiMAXでの通信速度も計測してみたが、下りはピーク8.8Mbps、平均では8.477Mbpsという結果になった。現在までのところ、真岡市のお客様から著しく問題が出たという問い合わせは受けていない」と述べた。もっとも、これはユーザーの密度があまり高いとは思えない真岡市での話しであり、都心のようにユーザー数が多いところでは別の話の可能性がある。速度を気にするユーザーなら、やはりWiMAX 2+への移行を検討した方がいいだろう。

 また、要海氏は3月から販売を予定している4x4 MIMO対応でCA非対応のルーター「WX01」についても実証実験を行なったことに触れ、最初の停車地と同じ場所で計測したところ192Mbpsと、2x2MIMOでCA対応のW01と同じようなスループットを実現したと説明した。MIMOは高い建物が沢山あるような都心部ではより有利。都心部ではWX01の方がより適しているということができるかもしれないという。

最も条件が良かった時の結果。受信最大で195.82Mbpsが実現された
物理層レベルでのスループットでは理論値に近い219.9Mbpsという数字が確認できた
真岡市のWiMAX 2+アンテナ。これら全てがWiMAX 2+ CAに対応したアンテナに既に変更されている
検証のバスが走ったルート、何度かハンドオーバーが発生する場所を通った
バスが走り出すと、MIMOの効率などが落ちるため、スループットが若干低下した
ハンドオーバーが発生しているところなどではこのように2つめのセル(右上のScellと書かれている部分)が無効になっている。Scellは有効になったり、無効になったりと動的に割り当てが変わる
2月12日に行なわれた真岡市での割り当て変更作業のスケジュール。実際に利用されているユーザーがいる中での切り替えとなるので、これだけの手順を踏んで行なわれた
10MHzになったWiMAXでの下りのスループット。真岡市での夜中のテストで8Mbps前後となっていた
3月に発売される予定の、4x4 MIMO(送受信4本ずつのアンテナで通信する方式、現行のWiMAX 2+は2x2)に対応したWX01でのテスト。こちらでも192Mbpsという通信速度が出ることが実証されたという

(笠原 一輝)