笠原一輝のユビキタス情報局

最上の脱着型2-in-1を目指すSurface Pro 3の完成度

Surface Pro 3

 日本マイクロソフトは、Windowsタブレット「Surface Pro 3」をいよいよ17日より発売する。それに先んじて記者説明会が7月14日に行なわれ、報道関係者に実機をテストする機会が与えられた。説明会の内容に関しては別記事を参照して頂くとして、本記事ではそうしたセッションの中から分かってきた、Surface Pro 3の中身に関してお伝えしていきたい。

3:2の2,160×1,440ドット12型液晶へ大胆に変身したSurface Pro 3

 MicrosoftのSurface Proシリーズは、初代のSurface Pro、2代目となるSurface Pro 2に次ぎ、本製品で3代目となる。

【表1】Surface Proシリーズの比較(筆者作成)
Surface Pro Surface Pro 2 Surface Pro 3
CPU 第3世代Core(Ivy Bridge) 第4世代Core(Haswell)
GPU IVB-GT2 HSW-GT2 HSW-GT2/GT3
メモリ 4/8GB
SSD 128/256GB 128/256GB/512GB
液晶ディスプレイ 10.6型/1,920×1,080ドット 12.6型/2,160×1,440ドット
デジタイザ ワコム/1,024階調 N-Trig/256階調
TPM TPM 1.2 TPM 2.0
スタンド 1段階 2段階(24度、40度) 無段階(20〜150度)
バッテリ 42Wh
Office Office 2013 Home and Business
OS Windows 8 Pro(64bit) Windows 8.1 Pro Update(64bit)
Surface Pro(左)と比較するとディスプレイがずいぶん大きくなったと感じる
内容物は簡易マニュアルとデジタイザペン、本体
外箱

 Surface Pro 3の大きな変更点はいくつかあるが、最大の点は液晶ディスプレイだろう。近年のWindows PCでは、Microsoft自身が奨励してきたこともあり16:9のアスペクト比を持った液晶が一般的に採用されてきた。しかし、今回Microsoftは大胆にも、自らそれを大きく外れた3:2のアスペクト比になる2,160×1,440ドットの12型ディスプレイを採用してきた。従来製品は、16:9で1,920×1,080ドットの10.6型パネルだったため、もちろん筐体も大幅に変更され、完全に新規デザインとなっている。

 かなり高精細だが、標準状態では、全てのディスプレイで同じ拡大率を利用するがオフで、テキストサイズは4段階ある内の上から2番目の設定(つまりフォントやウインドウなどを比較的に大きめにする設定)になっているため、文字が小さすぎることはない。ちなみに、強制的に一番小さくする設定にしてみたところ、画面は広く利用することができたが、フォントやアイコンなどはかなり小さくなったので、標準設定で使うのが良いと感じた。

Windowsの設定で2,160×1,440ドットの解像度表示を確認
フォントの標準状態はこの状態。4段階あるうちの上から2つ目の設定
フォントを最小設定にすると、Windowsのアイコンなどはかなり小さく表示される。標準設定が最も使いやすそうだ

 なお、これはディスプレイの解像度が変わったことと連動しているのかは分からないが、カメラ(前面/背面とも500万画素)で撮影できるアスペクト比が、一般的なWindowsタブレットなどで利用されている4:3と16:9以外に、3:2のアスペクト比が用意されていた。実際に撮影してみると、以下の解像度になっていた。

【表2】Surface Pro 3のカメラのアスペクト比ごとの撮影解像度
3:2 4:3 16:9
解像度 2,592×1,728ドット 2,592×1,944ドット 1,920×1,080ドット

 もっとも高い解像度は4:3なので、4:3が標準のアスペクト比で、それ以外は4:3から削られているようだ。

新しいタイプカバーとスタンドでキー入力が大きく改善

 もう1つの大きな強化点は、クラムシェルモード時の使い勝手が大幅に改善されていることだ。具体的には、別売になるキーボード付きの「タイプカバー」の改良と、本体の裏面に設置されているスタンドの角度が自由調節になったことにより、入力性が改善している。タイプカバーは、コネクタは従来製品と互換性があるが、形状は新しい筐体に合わせて変更/改良されている。本体とドッキングする部分に加え、その手前部分にも磁石が入っており、本体下部にもくっつけて装着できるようになっている。これによって不意の脱落を防ぐとともに、キーボードに傾斜がつくことで入力がしやすくなっている。

 従来のタイプカバーは、率直に言ってカバーにオマケでキーボードが付いているという感じが否めなかったのだが、今回のタイプカバーではそれがずいぶんと改善されている。角度を付けた時、ややぐらぐら感は否めず、まだ改善の余地があると感じたが、それでも「キーボードを打っている」という感じは、前の世代とはまるで違う。

 なお、キーボードは日本マイクロソフトから販売されるものは日本語配列のみになる。米国などで売っている英語キーボードも物理的および電気的には接続可能なので、サポート対象外とはなるが自分で買いに行くなり、輸入すれば使うことは可能だ。余談になるが、新しいタイプカバーを従来製品に着けたり、従来製品用のタイプカバーをSurface Pro 3に着けることも可能ではあるが、本体の大きさが異なっているので、カバーとしての役目は果たせなくなる。

 背面のスタンドも、Surface Pro 2では24度、40度の2段階しか選べなかったのが、新しいSurface Pro 3では20度〜150度の間で無段階で変更できるようになっている。自分の都合の良い角度で液晶ディスプレイの角度を変えられるようになったのは、他のほとんどのタブレット製品にはない利点と言える。

Surface Pro 3(左)の新しいタイプカバー(ブルー)。本体下部に磁石でくっつき角度が付いていることが分かる。それに対してSurface Pro(右)はぺったり机についている
従来のSurface Proのタイプカバーと同じ状態でも使える
新しいSurface Pro 3のキックスタンド
Surface Pro(右)が1段階でしかスタンドを設定できないのに対して、Surface Pro 3は無段階で20〜150度まで設定できる
ちょっと見えにくいがJATEの認定など各種の認定マークはスタンドの裏側に
スタンドが調整できるようになったことで、従来のSurface Proではほぼ不可能だったパームトップも可能になっている。もちろん普通のクラムシェル型に比べれば不安定だが、従来よりは遙かにマシになった
意味があるかはともかく、旧来のタイプカバーもSurface Pro 3で使うことができる
こっちはもっと意味がなさそうなSurface Proに新タイプカバーを着けたところ

デジタイザはN-Trigの256段階へと変更。手のひら検出機能も実装

 Surface Pro/Pro 2までは、ワコム製のデジタイザペンが採用されていた。ワコムのデジタイザペンは、業界標準とも言えるもので、イラスト業界でもプロ/アマ問わず、ファンが多い。

 しかし、今回のSurface Pro 3では、それが一転してイスラエルのN-Trig製に変更されている。このため、ペンに関しては、Surface Pro/Pro 2とSurface Pro 3では互換性がない。N-Trigデジタイザの利点は、筆圧検知の階調が比較的少ないものの、コストが安価という利点がある。また、ペンと液晶表面の視差が小さいというのも、N-Trigのデジタイザの特徴の1つ。ペン利用時は手のひらが液晶に触れても反応させない機能も搭載される。筆圧の階調が減ったのは、イラストなどを主目的とするユーザーには残念だが、文字入力主体のビジネス用途であれば十分すぎる性能を持っていると言えるだろう。

 実際、N-Trigはそうしたコスト対効果を評価されており、「VAIO Duo 11/13」、「VAIO Tap 11」、「VAIO Fit」シリーズにも採用されている。併せてAdobeのPhotoshopなどでもサポートが始まっている。

 このデジタイザペンは、ユニークな機能として、上部にボタンが用意されており、ボタンを1回押すとWindowsストアアプリ版のOneNoteが起動し、すぐにメモを取ることができる。また、2回押すと、画面をキャプチャしてOneNoteに取り込むことができる。Microsoft製品ならではの機能だ。

 なお、このボタンは、アプリケーションの割り当てを、デスクトップ版のOneNoteや他のアプリケーションに変更したりはできない。また、このボタンの機能は、デジタイザペンとは独立して、Bluetooth LEで本体と接続されている。このため、ボタン用にボタン電池があり、デジタイザペン用には単6電池が利用される仕組みになっている。

新しいデジタイザペン。N-Trigのデジタイザに対応している。紫のボタンがOneNote起動用のボタン
タイプカバーに付属するペンホルダー。自分でよい場所を選んで取り付けて利用する形。ただし、1度つけたら終わりなので、取り付けるときは慎重に

上位モデルのCore i7はGT3内蔵の4650U

 CPUに関しては既報の通り、Core i7/i5/i3を搭載。いずれもHaswellの開発コードネームで知られる第4世代Coreプロセッサとなる。これまでは、Coreプロセッサのうちどの製品が搭載されるかは明らかになっていなかったが、実際には以下のCPUが採用されている。

【表3】Surface Pro 3のコンシューマ向けSKU
CPU Intel HD Graphics GPUエンジン数 SSD メモリ 参考価格
Core i5-4300U 4400(GT2) 20 128GB 4GB 120,744円
Core i5-4300U 4400(GT2) 20 256GB 8GB 150,984円
Core i7-4650U 5000(GT3) 40 256GB 8GB 177,984円
Core i7-4650U 5000(GT3) 40 512GB 8GB 219,024円

 性能重視の人なら注目したいのは、Core i7が4650Uであることだろう。4650Uの内蔵GPUは、GT3という開発コードネームで知られる内蔵GPU「Intel HD Graphics 5000」で、演算エンジン数が40基になっている。一般的なCore i7やCore i5に内蔵されているGT2(Intel HD Graphics 4600/4400)というコードネームのGPUでは20基。このため、GPUの性能は、倍まではいかないが、かなり大きな差がつく。3DゲームやOpenCLを利用したGPGPU的な用途も考えるなら、上位SKUのCore i7-4650Uを選択すべきだ。

Surface Pro 3のUEFI BIOS設定

 BIOSに関しては、Surface Pro/Pro 2と同じくテキストベースのメニューを持つUEFI BIOSになっているが、Surface Proでは設定できる項目がTPMのオン/オフ、セキュアブートのオン/オフぐらいだったのが、Surface Pro 3ではブートするデバイスの順番、外部ポートのオン/オフなども設定できるようになっている。このあたりは企業ユースを意識した変化だと思われるが、企業向けにも販売したいのであれば、BIOS自体のパスワードロックなども追加して欲しいところだ。

 また、従来製品ではハードウェアベースのTPM 1.2だったが、Haswellとソフトウェアとの組み合わせになるTPM 2.0に変更されている。このため、TPM 1.2が必須のソフトウェアを使っている企業では若干注意が必要になる。Windows 8.1 Pro標準の暗号化機能であるBitLockerに関してはTPM 1.2でもTPM 2.0でもどちらでも利用できる。ただし、標準状態では有効になっていない。

バッテリ容量は引き続き42Wh、Webブラウジングで9時間の駆動が可能

 モバイルユーザーにとって最も気になるバッテリだが、Windows上からバッテリ容量を計測するツール(YBinfo)で見てみたところ42Whだった。これは、Surface Pro/Pro2と同じ容量。基本的に同じプラットフォーム(Haswell)を利用しているSurface Pro 2と比較すると、Surface Pro 3は、高解像度化によりディスプレイの消費電力が増えていると考えられるので、駆動時間は若干短くなっていると思われる。

 公称ではWebブラウジングで9時間の駆動時間とされているが、筆者が前述のツールで確認してみたところ、何もアプリケーションを立ち上げていない状態で実消費電力は3.5〜4.5Wの間程度を行き来していたので、Webブラウザなどを起動すると少し上がって5W弱ぐらいの平均消費電力になるだろう。ここから計算すると、42WhでWebブラウジングで9時間という数値は妥当だろう。

 ACアダプタはSurface Pro/Pro 2とは互換性がない。これは、オプションで用意されるドッキングステーションのコネクタが、ACアダプタのコネクタに統合されたためだ。互換性は失われたが、従来のドッキングステーションは、ACアダプタとUSBケーブルの2本を接続する必要があったが、新ドックでは1本で接続きるようになっている。コネクタ自体も薄型化されている。

 ちなみに、このACアダプタは従来と同じように上下逆にも取り付けることができる。正直そんなにメリットがあるとも思えない(逆につけた場合、机にケーブルが干渉して少々取り回しにくい)が、逆に付けても動くのは分かりやすい。

 インターフェイスは従来製品と同じで、USB 3.0端子、Mini DisplayPort、microSDカードスロット、ヘッドフォン端子となる。無線はIEEE 802.11acとBluetooth 4.0に対応し、ワイヤレスWAN(3G、LTEなど)は搭載されていない。

フリーソフトのYBinfoで確認してみると、42Whの容量であると確認できた
ACアダプタも小型化されている(上がSurface Pro 3用、下がSurface Pro用)
ACアダプタの重量は205g
上がSurface Pro用、下がSurface Pro 3用のコネクタ
どちらの方向からも刺さるようになっている
本体の左側面、Mini DisplayPortとUSB 3.0ポートがある
本体の左側面にはヘッドフォン端子と音量ボタン
スタンドの内側にmicroSDカードスロット

Surface Proシリーズは2-in-1デバイスとして検討しよう

 Surface Pro 3のポイントはいくつかあるが、筆者は主に以下の点を挙げたいと思う。

・12型で2,160×1,440ドット/3:2のディスプレイ
・新しいタイプカバーと無段階スタンドで快適な入力ができる
・CPUにGT3内蔵のCore i7-4650Uを選択可能
・バッテリで9時間駆動が可能
・タイプカバーと本体で1.1kg弱

 タイプカバーと本体を合わせて重量を計測してみると、実測値で1.095kgと、1.1kgを切っていた。脱着型の2-in-1デバイスは、脱着機構によりどうしても重たくなりがちだが、GT3内蔵のCore i7-4650U、SSD 512GB、メモリ8GBというハイスペックながらも、1.1kgに過ぎないというのは評価する上で重要なポイントだ。

 日本マイクロソフトの関係者によれば、Surface Pro 2までのデータだと、日本ではSurfaceキーボードの同時購入率は、なんと100%を超えているという。つまり、本体以上に専用キーボードが売れているということだ。これは、タイプカバーとタッチカバーの両方を買っているユーザーが多いということだろう(なお、Surface Pro 3にはタッチカバーはない)。前回の記事でも触れたが、日本のユーザーはSurfaceをタブレットとして買っているのではなくて、タブレットとしても使えるPC、つまり2-in-1デバイスとして買っているのだ。

 その観点から評価すると、Surface Pro 3はタイプカバーとスタンドの改善で生産性が向上しており、CPUにCore i7-4650Uと512GB SSDという高性能構成が選べる点などから、ノートPCとしても十分なハイスペック製品。タイプカバーを取り外せば800gのタブレットとしても活用できる。2-in-1デバイスの中で脱着型を選びたいというのであれば、まっ先に検討して良いのではないだろうか。

タイプカバーの重量は296g
本体の重量は799gと公称値より若干軽かった
タイプカバーと本体をあわせた合計は1,095g
Surface Proでタイプカバーと本体を合わせた重量は1,136gなので若干軽量化されている

(笠原 一輝)