笠原一輝のユビキタス情報局

Intel、Huron Riverに続くノートPCプラットフォームを開発中
〜2011年第4四半期に前倒しの可能性も



 Intelは来年(2011年)の年頭に、次世代プロセッサのSandy Bridgeなどから構成される次世代モバイルプラットフォームのHuron Riverを市場に投入する計画を持っている。OEMメーカー筋の情報によれば、Huron Riverに基づいた製品は2010年12月にも生産が開始される予定とのことで、計画通り順調に進めば2011年1月には店頭に製品が並ぶことになりそうだ。

 Intelはその後の計画も順調に進めている。Sandy Bridgeの後継製品は、製造プロセスルールが22nmで製造されるIvy Bridgeであることは、Intelから公式に明らかにされているが、OEMメーカーにはすでにIvy Bridgeのモバイルプラットフォームに関する情報も開示され始めているという。説明を受けたというOEMメーカーの関係者によればIvy Bridgeのモバイルプラットフォームの開発コードネームは“Chief River”(チーフリバー)となるという。

 しかもその投入時期は、当初想定されていた2012年の第1四半期ではなく、1四半期ほど前倒しされ2011年の第4四半期中になることも真剣に検討されており、AMDが2011年の後半に投入するSabineプラットフォームに対抗することになる。

●順調に開発が進んでいるHuron River

 その前に、まずHuron Riverの進捗についてお伝えしたい。Huron Riverの仕様などに関してはすでに過去の記事などで触れているので、ここでは繰り返さない。

IDFで公開されたHuron Riverを搭載したノートPC

 ここで強調したいのは、Huron Riverに関してこれといって大きな問題がなく順調に進んでいるということだ。筆者が取材したOEMメーカーの関係者は口をそろえて「Sandy Bridgeは特に大きな問題が見当たらなく、当初のスケジュール通り運んでいる。今年(2010年)の初めのCalpellaでは、実際の製品が市場に出回るまで若干時間がかかったが、Huron Riverはそうはならないだろう」と証言している。今年初めにリリースされた現行のCore iシリーズ(Calpellaプラットフォーム)は、発表されてから実際の製品が出回るまで1カ月程度の遅れがあった。これはIntelからOEMメーカーに対して潤沢にチップが供給されるようになるまでの時間に若干のタイムラグがあったためだという。

 しかし、Huron Riverではこうしたことはなく、年内にもOEMメーカーに対して潤沢に供給される見通しであるとのことで、当初から順調な立ち上げが期待できそうだ。関係者によれば、すでに製品のプロトタイプは概ね完成しており、現在はソフトウェアの最後の詰めや、OSイメージの作成段階に入っているところも多いようで、12月には生産が開始できるスケジュールで動いているようだ。

 現時点ではIntelがいつ発表するかは公式には明らかになっていないが、ここ数年International CESで新しいプロセッサのお披露目がされるということを考えると、今回もCESで発表されると考えるのが妥当な見方だろう。


●Huron Riverの後継として開発されているされるChief RiverとLewis River

 Huron Riverに関して、すでに開発の最終段階に近づき、あとは実際の生産と出荷を待つだけになってきたこともあり、OEMメーカーの関心は翌年以降のプラットフォームへと移りつつある。

 OEMメーカー筋の情報によれば、IntelはHuron River以降のノートPC向けプラットフォームとして2つのプラットフォームを用意しているという。まずHuron Riverの後継となるのがChief Riverであり、さらにその後継となるのがLewis River(ルイスリバー、開発コードネーム)となる。

 Chief Riverは、プロセッサのIvy Bridge、チップセットのPanther Pointから構成されている。プロセッサのIvy Bridgeはすでに明らかにされている通り、Sandy Bridgeの22nmシュリンク版となる。ただ、製造プロセスルールが微細化されるだけでなく、いくつかの機能拡張も行なわれる予定だ。その代表は、内蔵GPUのいわゆるDirectX 11への対応だ。すでに以前の記事で述べた通り、DirectX 11に対応していないことはSandy Bridgeの弱点になっており、この点を改善することがIvy Bridgeの役割となる。

 Panther Pointは、Sandy Bridge用であるCouger Pointの後継となるチップセットだ。Panther Pointでは、Couger Pointの弱点だった部分が補強されることになる。それがUSB 3.0への対応だ。

 以前の記事で説明したとおり、Couger Pointは、Intel 5 Series Chipset(Ibex Peak)に比べてSATA3、つまり6GbpsのSATAへの対応が主な強化点であることを説明した(その時に言及し忘れたが、DMIが倍速になるという強化点もある)が、その時にUSB 3.0への対応は見送られていると述べた。その積み残しであるUSB 3.0への対応はこのPanther Pointで実現される。

 そして、Chief Riverの後継として2013年をターゲットに開発されるのが、Lewis Riverだ。現時点ではLewis Riverは、プロセッサのHaswell(ハスウェル、開発コードネーム)、チップセットのLynx Point(リンクスポイント、同)から構成されることがわかっているが、それぞれどのような製品になるのかに関してはまだわかっていない。ただし、Haswellに関しては、IntelのTICK-TOCKモデルのうちのTOCK(マイクロアーキテクチャの進化版)に相当するため、大幅な強化が行なわれることになることは間違いないだろう。

●Chief Riverを来年の第4四半期に前倒しする可能性も高い、AMDのSabineに対抗

 OEMメーカー筋の情報によれば、Chief Riverは当初はPanther Pointではなく、Huron River用のチップセットとして提供されるCouger Pointと組み合わせて提供される。これは、Ivy Bridgeのリリース時期とPanther Pointの提供時期が異なっているからだ。

 以前の記事でも説明した通り、Sandy BridgeとIvy Bridgeはピン互換になる。これはデスクトップPCだけでなくノートPCでも同様で、ノートPCメーカーはSandy Bridge用のマザーボードをそのままIvy Bridge用に使い回すことができる。かつ、これがもう1つ重要なことだが、Ivy BridgeでもSandy Bridgeと同じ熱設計消費電力(TDP)の枠は維持される。つまり、筐体側の再設計も必要なく、ノートPCメーカーはIvy BridgeがIntelから供給されれば、非常に容易にHuron RiverのシステムをIvy Bridgeへと転換して出荷することが可能であると言える。

 こうした事情があるため、IntelはIvy Bridgeの前倒し投入を真剣に検討しているという。複数のOEMメーカーの関係者によれば「IntelがChief Riverを、2011年第4四半期に投入する計画があると言ってきた」と、本来であれば例年と同じように2012年の初頭の計画を、2011年の第4四半期に前倒しする可能性が高いと通知してきたと証言している。ただし、Intelが計画しているのはChief Riverのうちプロセッサのみということで、実質的にはIvy Bridgeの前倒しと表現した方がいいかもしれない。

 もちろん、これはIntelが来年の後半に大量生産に移行する22nmプロセスルールが順調に立ち上がればという前提条件はつくだろう。なお、Intelはすでに22nmプロセスルールへの多額の投資を決定しており、その立ち上げにも万全の体制で臨んでいる。

●Chief Riverの前倒しはAMDのSabine対抗を強く意識か

 なぜIntelは例年の慣例(CESで発表)というスケジュールを変えてまで、Chief Riverの前倒しを検討しているのだろうか? もちろんそこには、競争上の理由がある。

 というのも、その時期にAMDがSabineプラットフォームを投入する予定であるからだ。Sabineプラットフォームとは、AMDのAPU(CPUとGPUを統合したプロセッサ)であるLlanoとチップセットのHudsonから構成されているノートPCのプラットフォームで、メインストリーム市場をターゲットにしている。AMDはOEMメーカーに対して、Sabineプラットフォームを来年の後半に投入すると説明しており、デュアルコア版を第3四半期に、クアッドコア版を第4四半期に投入すると説明しているという。

 つまり、IntelのChief River前倒しはこれを強く意識したものだと考えればわかりやすいだろう。仮に、Sabineが思ったよりも良い製品であった場合、Chief Riverを前倒しすることによりそれに対抗することが可能になる。すでに述べたように、Ivy Bridgeの強化点の1つにはDirectX 11への対応があり、それがAMDのLlanoの売りの1つであるのだから、ぶつける“弾”としては十分だと言ってよい。

 このように、Intelは2011年のAMD対抗策を真剣に検討していると言っていいだろう。前の記事で触れた通り、Brazosには低コストで製造できるMontevinaの継続および新製品の投入で対抗し、そしてSabineにはCheif Riverの前倒しと、万全な体制といっても過言ではないだろう。逆に言えば、来年AMDが投入する“弾”の方も、Intelを真剣にさせるだけの魅力をもった製品だとも言うことができるわけで、エンドユーザーである我々にすれば両社がぶつかり合うことで、よい製品をより早く入手できることは歓迎してよいのではないだろうか。

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(2010年 11月 8日)

[Text by 笠原 一輝]