笠原一輝のユビキタス情報局

IDFで、バッファローなどがUSB 3.0対応製品を展示
〜対応製品は年内にも登場



 2009年の末に、USB 3.0に対応した製品が市場に登場することが、Intel Developer Forum(IDF)の会場で明らかになった。USB 3.0は、USB 2.0との下位互換性を実現しながら、転送速度をUSB 2.0の480Mbpsの10倍となる5Gbpsに高めた、次世代の外部I/Oだ。

 IDFの展示会場では、USB 3.0に対応したホストコントローラやHDDなどが展示されており、従来のUSB 2.0に比べて高い転送速度を実現していることなどがデモされた。しかし、USB 3.0が実際に普及するまでには、いくつかの課題を乗り越える必要がありそうだ。

●IDFの展示会場でUSB 3.0対応HDDなどが展示

 今回のIDFの展示会場では、USB-IF(USB Implementers Forum)のエリアが用意されており、そこでNECエレクトロニクス、TI、富士通などの半導体メーカーがブースを出して、USB 3.0に対応したホストコントローラ、Hubコントローラ、USB 3.0-SATA変換コントローラなど製品を展示していた。

 日本のメーカーで言えば、NECエレクトロニクスがUSB 3.0に対応したホストコントローラを展示し、富士通はUSB 3.0-SATA変換コントローラを展示していた。いずれのメーカーの関係者も、すでにコントローラチップの開発は終了しており、現在はエンジニアリングサンプルをメーカーなどに対して提供している段階だという。各社とも第4四半期に製品版を出荷開始する予定になっている。

 こうした状況を受けて、IDFではほぼ最終製品という製品がいくつか展示されていた。周辺機器メーカーのバッファローは、富士通のコントローラを採用したUSB 3.0対応HDDを展示しており、転送速度はSATA2で接続した場合とほぼ同じ速度が実現できていた(つまりHDD内部の転送速度いっぱいの転送速度ということだ)。従来のUSB 2.0では、eSATA接続する場合に比べて速度の点で劣っていたので、これは大きな進化と言えるだろう。

 このほかにも、台湾のASUSTeK Computerは「P7P55D Deluxe」というLGA1156マザーボードを展示しており、米Fresco Logicのホストコントローラを搭載したPCI Express x1(Gen2)の拡張カードがバンドルされていた。

 いずれもいち早く市場に製品を投入することを計画しており、第4四半期には自作PC市場や周辺機器市場などにUSB 3.0に対応した製品が出回ることになりそうだ。

IDFで展示されたバッファローのUSB 3.0対応HDD ASUSTeK ComputerのP7P55D Deluxe、バッファローのHDDはこのシステムに接続されていた P7P55D DeluxeにバンドルされるUSB 3.0のホストカード。PCI Express x1(Gen2)に対応している
富士通が公開したUSB 3.0、USB 2.0、SATAとインターフェイスの違いによるHDDの転送速度の違い。USB 3.0がSATAに匹敵するスコアを出していることに注目 富士通のUSB 3.0/SATA変換チップを利用した基板 NECエレクトロニクスのUSB 3.0ホストコントローラを搭載したPCI Express x1(Gen2)拡張カード

●Windowsのドライバ標準搭載は現時点では未定

 すでにあるコンシューマ市場に投入できる最終製品まで見えてきているUSB 3.0だが、本格的な立ち上げを果たすまでには、解決すべきいくつかの問題がある。

 1つめの課題は、ソフトウェアの対応に関する問題だ。というのも、現状のWindowsは、Windows 7を含めてUSB 3.0には標準で対応していない。USB 2.0であればOS側でEHCI(Enhanced Host Controller Interface)と呼ばれるホストドライバを持ち、その上でデバイス向けのドライバが走る形となっている。しかし、USB 3.0ではホストのドライバはxHCIと呼ばれるドライバになるが、Winodws 7にはxHCIのドライバが標準で用意されていない。このため、xHCIドライバは基本的にホストコントローラのベンダーが用意する必要があるのだ。

 Microsoftは現時点ではUSB 3.0の標準サポートをいつWindowsに実装するかに関して明らかにしていない。IDFのテクニカルセッションでMicrosoftが明らかにしたのは、将来的にUSB 3.0の機能を実装する気はあるものの、現時点では調査し検討している段階であるということだ。

 OS標準でサポートされているかどうかは、ユーザーの使い勝手に大きく影響する部分だ。ぜひとも早期の対応を期待したいところだ。

MicrosoftがIDFの技術セッションで公開したスライド。現時点ではXHCIのWindowsへの標準実装は調査、検討段階だという

●USB 3.0の普及はチップセットにコントローラが入ってから

 USB 3.0が普及するためのもう1つの課題は、こうした標準規格で必ず問題となる“鶏と卵”の問題だ。新しい規格がでてくると、一斉に歓迎するわけだが、実際にはすぐにはなかなか普及しない。というのも、周辺機器メーカーはPCの側が対応するのを待ってから製品を出荷しようと思うのでなかなか製品を出荷しないし、PCメーカーの側は周辺機器が出そろってから自社のPCを対応させようと考えるので、なかなか実装が進まない。

 特にPCメーカーの場合、単体のホストコントローラを搭載すると、確実に数十ドルのコストアップになってしまい、かつ周辺機器があまりそろっていない中では、あまり売りにならないので値段も上げることができない。従って、搭載に踏み切るのはなかなか難しいところなのだ。こうした場合には、なんらかの強制的な“卵”を市場に投入しない限り、なかなか新技術が浸透しないのだ。

 USB 2.0がそうだったように、USB 3.0でも強制的な“卵”になりうるのは、IntelやAMDなどが提供するチップセットに、USB 3.0のコントローラが入ってしまうことだろう。そうなれば、事実上ホストコントローラは無料になるので、あとはUSB 3.0に対応したコネクタだけが追加コストとなる。こうなれば、PCメーカーも比較的容易に(というかイヤでも)USB 3.0を実装することになる。

 問題はUSB 3.0のホストコントローラがいつチップセットに統合されるかだろう。現時点ではIntelはUSB 3.0のホストコントローラをいつチップセットに統合するのかについては全く明らかにしていない。しかし、ある程度の予想は可能だ。

 というのも、USB 3.0のホストコントローラは、ホストコントローラの内部でUSB 2.0のコントローラとは別に存在している必要があるため、チップセットのダイの中に占める面積は大きくなりがちで、仮に今のチップサイズに納めようとすると、より進んだ製造プロセスルールを利用してチップそのものをシュリンクしない限り難しいからだ。

 IntelはLGA1156ソケット用のチップセットであるP55などを、65nmプロセスルールで製造している。そもそもIntelのチップセットの製造は、ノースブリッジがCPUの1世代前、サウスブリッジが2世代前というルールで製造されてきた。P55の前世代となるICH10は、3世代前の130nmで製造されていたが、これはICH10がICH9の実質的にリファイン版だったためだろう。

 従来のサウスブリッジに相当するPCHがやはりCPUの2世代前のプロセスルールで製造されるというルールが守られるのであれば、チップセットが45nmになるにはCPUが22nmプロセスルールになる2012年以降ということになる。

 とすれば、USB 3.0の本格的な立ち上げもそのあたりになると予想できる。

●Light PeakとUSB 3.0は共存か競争か

 もう1つUSB 3.0の将来にとっては気になる話がある。それが今回のIDFでIntelが盛んにアピールした「Light Peak Technology」の存在だ。

 Light Peakは、2日目の午前中に行なわれたダディ・パルムッター氏の基調講演、3日目に行なわれたジャスティン・ラトナー氏の基調講演と、2回も紹介された。同じ技術が、CEOの総合基調講演と製品ごとの基調講演で触れられることはよくあるが、製品の基調講演と技術の基調講演の両方で触れられるというのは、ほとんどのIDFに参加している筆者でもあまり記憶にない。それだけIntelはこの技術を重要視している。

 Light Peakは、初期段階で10Gbpsと、USB 3.0(5Gbps)の倍の転送速度を実現したインターフェイス技術だ。ケーブル長も最長100mまでをサポートし、USB 3.0と比べて高いスペックであるところが目につく。IntelはこのLight Peakを“複数の周辺機器を接続する”技術と、微妙な表現をしている。

 要するに、周辺機器を接続するものとしていうとUSB 3.0と競合してしまうため、複数の周辺機器を一度に接続するモノとしてLight Peak Technologyを位置づけ、USB 3.0は1対1でデバイスを接続するモノと位置づけているようだ。

 だが、これは少しおかしな話だ。どちらも周辺機器を接続するためのものなら、最初からLight Peakを個々の周辺機器を接続するI/Oとして利用した方が合理的ではないだろうか。

 ここで思い出されるのが、そもそもIntelがUSB 3.0の最初の構想を打ち出したときには、光ファイバーによるコネクタも、提案の中に入っていた、という事実だ。つまり、Light PeakはもともとUSB 3.0でIntelが入れてほしかったものが受け入れられなかったので、独立して提案したものだと考えるのが妥当だろう。

 せっかく、業界がUSB 3.0に向けて努力を始めているという段階で、これはちょっとないだろう、というのが筆者の感想だ。ぜひとも次回のIDFでは、USB 3.0との関係をもう少し整理して位置づけをはっきりさせてほしいと思う。

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(2009年 9月 29日)

[Text by 笠原 一輝]

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