笠原一輝のユビキタス情報局

IntelがClarkdaleのベンチマークデータを公開



 Intelは、Intel Developer Forumの期間中に記者説明会を開催し、デュアルコア版NehalemとなるClarkdaleのベンチマークデータを公開した。

 Clarkdaleは32nmプロセスで製造されるデュアルコアCPUと、Ironlakeの開発コードネームで知られる従来のGPU内蔵ノースブリッジに相当する部分から構成されており、両チップ間はQPIで接続され、いわゆるMCM(Multi Chip Module)構成となっている。発表は来年(2010年)前半に予定されている。

 Clarksdaleおよび、そのモバイル版となるArrandaleでは、新たにAESのアクセラレーション機能が追加されたほか、内蔵グラフィックスにも手が加えられている。プロセッサとしての処理能力だけでなく、3D描画性能やビデオ再生性能などが向上しているのだ。

●Westmereのデュアルコア版+Ironlakeから構成されるClarkdaleとArrandale

 Intelが来年の早い時期に発表を予定しているClarkdale(デスクトップ版)、Arrandale(モバイルPC版)という2つの製品は、Nehalemアーキテクチャをメインストリーム市場にもたらす役割を果たすことになる。現時点でIntelは両製品の価格を発表していないが、OEMメーカー筋の情報によれば、一番高い3.46GHzのSKUこそ300ドル弱になるが、ほとんどのSKUは100ドル台といった安価な設定となり、現在のLynnfieldコアのCore i7/i5などに比べて購入しやすくなっている。日本のナショナルベンダーも、今のところCore i7やCore i5を搭載した製品はほとんど用意していないが、Clarkdale/Arrandaleが投入されれば、Core Microarchitectureの製品からの移行が進むと考えられている。

 すでに製品として投入済みのLynnfieldやClarksfieldでは、メモリコントローラやPCI Expressコントローラが、CPUダイにネイティブに統合されている。これに対し、Clarkdale/Arrandaleでは、デュアルコアCPUと、従来でいうノースブリッジチップがQPIバスで接続されるデザインになっている。

Clarkdaleは32nmのデュアルコアWestmereと45nmで製造されるIronlakeがQPIで接続される構成となっている

AESによる暗号化解除のデモ。Arrandaleを搭載したシステム(左)はPenryn搭載システム(右)に比べて圧倒的に早く解読を終えていることがわかる
 CPUコア側となるWestmereだが、単に45nmのNehalemを32nmにシュリンクしてデュアルコアにしただけではない。いくつかの機能向上が図られているが、その1つがAESのアクセラレーション機能だろう。AESはデータ暗号化の手法の1つで、そのエンコード/デコードを専用に行なう機能がWestmereのデュアルコア版には内蔵されているのだ。このため、AESを利用して暗号化されているファイルの復号などは、圧倒的に高速に行なえるようになっている。

 

●45nmプロセスで性能が大幅に引き上げられるIronlake

 Ironlakeも、前世代に相当するG45/GM45などに比べて大きな機能向上が実現されている。G45/GM45が65nmプロセスルールで製造されていたのに対して、Ironlakeは45nmプロセスルールで製造されることになる。新しいプロセスルールを利用して生産されるため、Ironlakeではいくつかの機能向上が図られている。

 1つはCPUコアとの接続が、G45/GM45ではいわゆるP4バスで接続されているのに対して、IronlakeではNehalem世代の標準バスであるQPIで接続されている。QPIは、P4バスに比べて低レイテンシで、かつ帯域幅が広いため、システムバスがボトルネックになって性能がでないという事態が低減される。

 また、Ironlakeに内蔵されているグラフィックスコアもG45/GM45世代から拡張されている。G45/GM45世代では10個の実行ユニットから構成されていたのに対して、Ironlakeでは12個に増やされており、3D描画性能が向上する。さらにビデオ周りの拡張も加えられており、従来のG45/GM45では1ストリームだったHDビデオのハードウェアデコードも2ストリームに拡張されているのだ。

 もう1つのユニークな機能は、Intel Turbo Boost Technologyが、CPUコアだけに対してだけでなく、内蔵GPUにも適用されることだ。たとえば、CPUコアだけを使うようなアプリケーションの場合には、CPUコアのクロックの段階を引き上げるが、逆に3DアプリケーションのようにGPUを使う処理の場合には、CPU側のクロックは引き上げず、GPUのクロックを引き上げるのだ。こうした処理により、動的にCPUとGPUの性能を調整する。

BDの子画面を再生しているところ。このように2つのHD動画を同時にデコードできるようになっている今後配布される予定のGMAシリーズの新しいグラフィックス設定ツール。従来の味気ないツールとは異なり、グラフィカルに設定できる。なお、G45など従来の内蔵GPUでも利用することができるようになるとのことだ
Mini-ITXフォームファクターのマザーボードを使用したシステム。内蔵されているマザーボードClarkdale搭載システムのアイドル時の電力(右側)、左はLGA775ベースのMini-ITXシステムの電力
ピーク時の電力、アイドル時との差が大きいということは、アイドル時の省電力機能が有効に働いていることを示している

●Ironlakeの内蔵GPUは高い3D描画性能を実現

 こうした強化点を踏まえ、IntelはClarkdaleの性能データを公開した。すでに別記事で解説したとおり、IntelはIDFの初日にSPEC int_rate2008とSPEC fp_2008の結果を公開していたが、今回公開されたのは3Dゲームおよび3DMark Vantage、Sandraのメモリ帯域幅のテスト、PCMark Vantageの3つのデータだ。

 今回公開されたベンチマークデータの環境は、Clarkdaleが3.33GHzで、比較として利用されていたのはCore2 Quad Q9400(2.66GHz)、Core2 Duo E8500(3.16GHz)という2つのプロセッサが比較用として用意されている。環境は表1の通りだ。

【表1】ベンチマークの環境

CPUClarkdale 3.33GHzCore2 Quad Q9400 2.66GHzCore2 Duo E8500 3.16GHz
メモリDDR3-1333/4GBDDR2-800/4GB
GPU内蔵
HDDSeagate 1TB
3DMark Vantageの結果

 最初のデータは3Dデータだ。テストに利用されているのは3DMark Vantageの結果で、総合結果と3D描画の結果でいずれもQ9400もE8500も上回っている。これに対してCPUの性能がものをいうCPUテストではQ9400にやや負けるという結果になっている。

 この結果から、Ironlakeの3D描画性能が従来のG45に比べて大幅に向上していると言える。内蔵の実行エンジン数が増えたり、メモリコントローラの性能が向上していることなどが理由として考えられる。

SiSoft Sandraの結果

 2つめのデータはSiSoft Sandraのメモリテストだ。整数演算と浮動小数点演算のいずれも向上している。ただIronlakeはDDR3-1333のデュアルチャネル、G45はDDR2-800なので、そうしたメモリの違いもでていると考えられる。さらに、システムバスがP4バスからQPIに変更されたことで、メモリレイテンシが大幅に削減されていることも影響していると考えられるだろう。

PCMark Vantageの結果

 最後のデータはPCMark Vantageだ。この結果でもQ9400もE8500も上回っており、総合性能で、LGA775プラットフォームに比べて高い性能示すことがわかるといえるだろう。

●市場への投入は年明け早々が予想される、日本では2010年春モデルに搭載か

 IntelはClarkdaleとArradaleのリリース時期を2010年の早い時期、ないしは前半としか明らかにしていないが、OEMメーカー筋の情報によれば、Intelは来年早々の新製品発表を予定している。おそらく来年の年明けに行なわれるInternational CESでお披露目ないしは同時に発表になる可能性が高い。

 だから、実際に製品に搭載されて登場するのは、今年の年末から年明けにかけて発表される、各メーカーの春モデルなどになるのではないだろう。

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(2009年 9月 25日)

[Text by 笠原 一輝]