瀬文茶のヒートシンクグラフィック
REEVEN 「OKEANOS(RC-1402)」
~冷却性能を重視したREEVENブランドのハイエンドCPUクーラー
2014年10月8日 17:11
今回は、REEVENのハイエンドサイドフローCPUクーラー「OKEANOS(RC-1402)」を紹介する。購入金額は7,480円だった。
REEVENブランドにおける冷却志向モデルの頂点
CPUクーラーメーカーとしては、コストパフォーマンスを重視した製品作りで知られるREEVENは、2014年に製品のラインナップを一新し、新設計のCPUクーラー6製品を立て続けにリリースした。今回紹介するOKEANOSは、6つの新CPUクーラーの中でも最上位に位置する冷却志向のハイエンドモデルである。
OKEANOSは、2ブロックの放熱ユニットの間に冷却ファンを搭載する、ミッドシップレイアウトのサイドフロー型ヒートシンクを採用。銅製のベースプレートを採用するベースユニットと、57枚の放熱フィンを持つ放熱ユニットを2ブロック備える。両ユニット間の熱輸送には、6mm径ヒートパイプ4本と8mm径ヒートパイプ2本、計6本のヒートパイプを利用する。
他社のハイエンド製品のような、ヒートパイプと放熱フィンのろう付け、放熱フィンへのめっき処理などは省略されているものの、ベースユニットには、板に溝を掘ってヒートパイプを潰さない性能重視の設計を採用。また、銅製のヒートパイプとベースプレートにはニッケルめっきを施し、ヒートシンクの外観を銀色で統一。放熱ユニット最上段にはREEVENロゴ入りの飾り板を配置した。コストを抑えながらも、見た目と性能の両面に配慮して設計されている。
標準で付属する冷却ファンは、140mm径ファン「RM1425S17B-P」と120mm角ファン「RM1225S18B-P」。それぞれヒートシンク中央部と吸気側に配置し、ハイブリッドなデュアルファンを構成する。2基の冷却ファンはいずれもPWM制御に対応しており、140mm径ファンが300~1,800rpm、120mm角ファンが300~1,700rpmの範囲で、ファンの回転数を制御できる。また、各ファン用には静音化アダプタ(Speed Switch Adapter)が用意されている。このアダプタを用いることで、PWM制御時の最大回転数を140mm径ファンは1,100rpm、120mm角ファンは1,200rpmに抑えることができる。
ヒートシンクへの冷却ファンの固定には専用の金属製ファンクリップを用いる。ファンクリップは標準で3組6本が同梱されており、120mm角25mm厚のケースファンを別途購入することで、トリプルファン構成での運用が可能となる。
CPUクーラー本体と周辺パーツとのクリアランスについては、メモリスロットには吸気用のファンがメモリスロットの上空に被る。ヒートシンク自体も若干ながらメモリスロットに被っているため、全てのスロットを埋めるなら、メモリモジュールの高さは40mm以下に抑えたい。拡張スロットとには被っていないものの、余裕はほとんどない。バックプレートなど、裏面に実装パーツを備える拡張カードを利用する場合は、接触する可能性があるので注意が必要だ。
使い勝手の面で気になったのが、ファンの固定に関連する部分だ。ヒートシンク中心の140mmファンは、ヒートシンクをマザーボードに取り付けてから固定する仕様だが、取っ手のないファンクリップはこのファンの固定を困難にしている。また、メモリスロット側に配置する120mmファンに関しては、滑り止めを兼ねた防振ゴムなど、位置決めをするものがないため、搭載位置が容易に動いてしまう。ほかの要素の出来が比較的良い一方で、ファンの固定部分がストレスを感じる作りになっているのは残念だ。
OKEANOSは、IntelのLGA 115x/1366/2011と、AMDのSocket AM2(+)/AM3(+)/FM1/FM2(+)に対応したブリッジ式のリテンションキットを採用している。AMDの固定にやや癖があるものの、精度、作業性ともに優れており、ファン搭載時に1.145kgもの重量となるOKEANOSでも安心してマウントできる。出来の良いリテンションキットであると言える。ただ、一点注意したいのが、LGA2011-v3ソケットでの利用についてだ。
基本的にクーラーの互換性があるとされるLGA2011とLGA2011-v3だが、細かい部分で取り付け部分の仕様が変更されている。この仕様変更により、Intelのガイドライン通りに設計されたLGA2011-v3対応マザーボードでは、CPUクーラー固定部に差し込むねじの長さが約4.2mm以下であることが要求されるようになった。しかし、OKEANOSのLGA2011用スタッドボルトのねじ長は約5.0mm、この要件を満たすことができない。
ただ、Intelのガイドライン通りに設計されたLGA2011-v3対応マザーボードは少ない。この問題について筆者が調べた限り、Intel X99 Expressチップセット搭載マザーボードでは、ASRockの一部製品以外は基板に穴が開けられており、OKEANOSでも問題なく取り付けることができる。何ともややこしい話だが、LGA2011-v3での利用を考えるならマザーボード側の仕様に注意したい。
冷却性能テスト結果
それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定。それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。
Intel Core i7-2600Kの定格クロックである3.4GHz動作時の結果を見てみると、OKEANOSは50~61℃を記録している。これはCPU付属クーラーの85℃より24~35℃低い結果だ。CPUの発熱が増加するオーバークロック時には、4.4GHz時に61~79℃、4.6GHz動作時に71~94℃をそれぞれ記録。全ての条件で負荷テストをクリアした。
2基のファンがともに500rpm以下で動作する20%制御時の温度は流石に高いが、ファンの制御を回転数が1,000rpm弱となる50%まで上げた時点で、空冷CPUクーラーとしては屈指の性能を発揮している。OKEANOSが持つ冷却性能は相当に高いものであると言えるだろう。
動作音については、ファンの回転数が最も低い20%制御時は風切り音も軸音も気にならない。そこから50%制御までは比較的静かに動作するが、ファンの回転数が1,000rpmを超える程度から風切り音は大きくなり始め、フル回転時には相当に大きな騒音となる。今回実施した冷却性能テストの結果では、ファンの制御を50%に設定しても十分な性能を発揮していることから、相当に発熱が厳しい条件で使わない限り、ファンをフル回転数で動作させる必要はないだろう。
空冷最高クラスの冷却性能を1万円以下の価格で実現
実売価格は7,500円程度のOKEANOSだが、その冷却性能は1万円を超える超ハイエンドCPUクーラーに匹敵する冷却性能を持っている。一部のLGA2011-v3マザーボードへの取り付けに問題を抱えるが、リテンションキットの出来も悪くなく、取り扱い上で不満を感じるのはファンの取り付けに関わる仕様ぐらい。価格の割に非常に良くできた製品であると言える。
OKEANOSと同じ価格帯には、以前本連載で検証し、その冷却性能を高く評価したRAIJINTEK TITIS(旧名:NEMESIS)が存在している。いずれも優れた冷却性能を持っていることに変わりないが、静音から高冷却まで柔軟にカバーできる標準ファンを備えている点で、OKEANOSがやや有利な印象だ。
ハイエンドCPUクーラーらしい美しさには欠けるが、オーバークロックを施したCPUの常用を狙うため、CPUクーラーに高い冷却性能を求めるユーザーにとって、安価で良く冷えるOKEANOSは、魅力的な選択肢となるだろう。限られた予算の中で、できるだけ冷却性能の高いCPUクーラーを求めるなら、ぜひ検討するべき製品である。
REEVEN「OKEANOS(RC-1402)」製品スペック | |
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メーカー | REEVEN |
フロータイプ | サイドフロー |
ヒートパイプ | 8mm径×2本+6mm径×4本 |
放熱フィン | 114枚(57枚×2ブロック) |
サイズ(ファン搭載時) | 140×135×163mm (幅×奥行き×高さ) |
重量(ファン搭載時) | 1,145g |
付属ファン(120mm角) | 120mm角ファン 「RM1225S18B-P」 電源:4ピン (PWM制御対応) 回転数:300~1,800rpm 風量:16.6~92.5CFM ノイズ:4.0~33.4dBA サイズ:120×120×25mm |
付属ファン(140mm径) | 140mm径ファン 「RM1425S17B-P」 電源:4ピン (PWM制御対応) 回転数:300~1,700rpm 風量:16.3~92.4CFM ノイズ:5.8~36.4dBA サイズ:140×140×25mm |
対応ソケット | Intel:LGA 115x/1366/2011 AMD:Socket AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2/FM2+ |