瀬文茶のヒートシンクグラフィック

Intel「TS13X(BXTS13X)」

~Intel純正のオールインワン水冷ユニット

 今回は、Intelのオールインワン水冷ユニット「TS13X(BXTS13X)」を紹介する。購入金額は10,880円だった。

Haswell-Eにも対応可能な純正水冷ユニット

 TS13Xは、CPUメーカーであるIntel純正のオールインワン水冷ユニットだ。2011年発売のオールインワン水冷ユニット「RTS2011LC」の後継モデルとして2013年に発売され、現在は、空冷CPUクーラーのIntel TS13A(BXTS13A)とともに、TDP140WのHaswell-Eに対応可能なIntel純正クーラーとして販売されている。対応ソケットはIntel LGA115x/1366/2011(2011-v3)。

 オールインワン水冷ユニットとしてのTS13Xは、完全密閉仕様のメンテナンスフリー型で、ラジエータとポンプ内蔵型の水冷ヘッドをチューブで接続したシンプルなもの。銅製のウォーターブロックでCPUの熱を冷却液に引き渡し、37mm厚の120mmラジエータで冷却液の放熱を行なう。メンテナンスフリー型であるため、冷却液の追加は行なえない。

 標準で付属する冷却ファンは、PWM制御に対応した120mm角25mm厚ファン。800~2,200rpmの範囲で回転数を調整できるほか、フレームに搭載したスイッチにより、軸部分に備える青色LEDのオンオフを選択できる。この120mmファンはフレームの形状が特殊なため、ラジエータに対して吸出し方向で取り付けるには、付属の金属製スペーサーを利用する必要がある。

 TS13Xの製造はAsetekが担当しており、このことは水冷ヘッドに記された「COOLED BY ASETEK」という一文から確認できる。Asetekは、多くのPCパーツメーカーにオールインワン水冷ユニットをOEM供給しており、Corsairやサイズと言ったサードパーティーの他、AMDのRadeon R9 295X2の純正GPUクーラーを供給している。多数のOEM採用実績が示すとおり、品質と信頼性についての評価が高いメーカーである。

TS13X本体
リテンションキット
水冷ヘッド。ポンプを内蔵しており、給電はファン用4ピンコネクタで行なう。また、冷却ファン接続用のコネクタも備えている。
ラジエータ。120mmサイズで厚みは37mm
冷却ファン。青色LEDを搭載する120mm角25mm厚ファンだが、特殊な形状のフレームを採用している
冷却ファンのフレームに設けられたスイッチ。これを操作することで、青色LEDの点灯と消灯を切り替えることができる
ファン固定用のねじ、ファン用スペーサー、サーマルグリス、結束バンド
冷却ファンを吹き付け方向で取り付けたところ
冷却ファンを吸出し方向で取り付けたところ。ファンのフレームに銀色の金属製スペーサーを取り付けている
水冷ヘッドと周辺パーツとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE利用時)

 TS13Xの水冷ヘッドのサイズは、LGA115x系の上位CPUに付属する空冷CPUクーラーよりも小さい。従って、CPUクーラー周辺パーツとの干渉に関して心配する必要は無い。ラジエータの取り付けに関しては、ラジエータ自体が120mm角ファンより大きい(150×118mm)ため、PCケース側の120mmファン搭載部の周囲には多少のスペースが必要となる。

 リテンションキットは他のAsetek製品と同じタイプのものが利用されており、水冷ヘッドを抑える金具にネジを取り付ける樹脂パーツは、取り付け方向を変えることでLGA115xとLGA1366/2011に対応する。LGA115x/1366の取り付けに用いるバックプレートは樹脂製で柔らかく強度は無いが、水冷ヘッドの重量を支えるには十分だろう。ただ、樹脂パーツは比較的破損しやすいため、ねじの締め過ぎには注意したい。

冷却性能テスト

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定。それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

【グラフ】テスト結果

 冷却性能テストの結果、TS13Xは3.4GHz動作時に53~60℃を記録した。これは、CPUに付属する空冷CPUクーラーより25~32℃低い結果であり、CPU付属の空冷CPUクーラーより格段に優れた冷却性能を持っていることが確認できる。発熱の増大するオーバークロック時のテストでも、全ての条件でテストの完走に成功しており、4.4GHz動作時に67~80℃、4.6GHz動作時に77~93℃を記録した。

 動作音については、回転数が2,000rpmを超える全開動作時ははっきりとうるさいが、PWM制御50%設定あたりの1,200rpm前後なら風切り音は比較的大人しい。完全に絞り切って800rpm前後まで回転数を落とせば、ファンの動作音はほぼ気にならなくなる。ただ、水冷ヘッド内蔵のポンプの動作音が存在するため、無音と呼べるレベルの静音動作は期待できない。

純正CPUクーラーでは最高の冷却能力を持つCPUクーラー

 CPU付属クーラーを圧倒した冷却性能テストの結果を見る限り、TS13XがIntel純正のCPUクーラーの中で最高の冷却能力を持ったCPUクーラーであることは間違いないだろう。もっとも、サードパーティー製のCPUクーラーも含めれば、その実力は4,000~6,000円程度のサイドフローCPUクーラーと同程度と言ったところ。

 TS13Xのようなオールインワン水冷ユニットの場合、大量の冷却液による膨大な熱容量で温度上昇を抑制することは期待できず、冷却性能はラジエータの放熱能力に依存する。「水冷」と聞くと、空冷CPUクーラーよりも高い冷却能力を期待したくなるところではあるが、120mmサイズのオールインワン水冷ユニットに、大型空冷CPUクーラーを凌ぐ冷却性能を期待することは厳しい。

 120mmサイズのオールインワン水冷のメリットは、利用できる環境の多さにある。大型のサイドフローCPUクーラーだと、メモリスロットや拡張スロットとの干渉や、横幅の狭いPCケースに組み込めないなど、問題が生じやすいが、TS13Xなら120mmファンが搭載できるPCケースの大半に搭載できる。大型サイドフローCPUクーラーが組み込めない環境では、TS13Xのようなオールインワン水冷ユニットが、冷却性能的に最高の選択肢となることも珍しくない。

 10,000円を超える価格はかなり高価だが、3年間のメーカー保証付き純正CPUクーラーということで、信頼性については期待できる。純正と言う響きに魅力を感じるIntelユーザーや、オールインワン水冷ユニットの購入を検討しているユーザーなら、TS13Xを検討してみる価値はあるだろう。

Intel「TS13X(BXTS13X)」製品スペック
メーカーIntel
フロータイプ─(オールインワン水冷)
チューブ長約300mm
ラジエーターサイズ150×118×37mm (幅×奥行き×高さ)
水冷ヘッド全高31mm
重量820g
付属ファン120mmファン ×1基
電源:4ピン(PWM制御対応)
回転数:800~2,200rpm
風量(最大):73.84CFM
ノイズ: 21~35dB
サイズ:120×120×25mm
対応ソケットIntel:LGA115x/1366/2011(2011-v3)

(瀬文茶)