瀬文茶のヒートシンクグラフィック

サイズ「MUGEN MAX(無限大 / SCMGD-1000)」

~サイズブランドのハイエンドヒートシンク

 今回は、サイズのサイドフロー型CPUクーラー「MUGEN MAX(無限大 / SCMGD-1000)」を紹介する。購入金額は5,910円だった。

140mmファンを装備して大型化した無限シリーズ最新モデル

 サイズのMUGEN MAXは、2006年に発売された「INFINITY」(後にMUGENに改称)を祖とするサイズブランドの上級サイドフローCPUクーラー「無限シリーズ」の第5弾となる製品だ。Intel、AMDの両プラットフォームをサポートし、140mm径の大口径ファンを搭載するMUGEN MAXは、サイズブランドのハイエンドモデルに位置付けられている。

 従来の無限シリーズ製品は「MUGEN∞3(無限参)」のように、製品名に世代を示すナンバリングがされていたが、MUGEN MAXでは漢字名の「無限大」も含め、このナンバリングが行なわれておらず、製品型番も従来の「SCMG-X000」ではなく「SCMGD-1000」に変更されており、第4弾製品「MUGEN4」までとは別ラインの製品として扱われている。メーカーに確認したところ、従来の無限シリーズ製品が120mm角ファン搭載製品であったのに対し、MUGEN MAXが140mmファン搭載製品となったことが変更の理由とのことだった。MUGEN MAX(無限大)は、文字通り「大きい無限」というわけである。

 ヒートシンク本体は、熱輸送ユニットに6本の6mm径ヒートパイプを採用。放熱ユニットは39段のアルミニウム製放熱フィンと最上段の飾り板で構成されている。サイドフロー型CPUクーラーとしては、オーソドックスな形状のヒートシンクだが、ベースユニットの位置を放熱ユニットの重心からオフセットして配置することで、メモリスロットとの干渉を回避しているほか、放熱ユニットを4ブロックに分割してエアフローの損失を抑制する「多重エアフロー透過構造(M.A.P.S / Multiple Airflow Pass-through Structure)」を採用するなど、さまざまな工夫が盛り込まれている。

 ニッケルめっき処理を施したヒートパイプを採用し、研磨によって鏡面に仕上げた飾り板を放熱ユニット最上段に配置するなど、コストパフォーマンスを重視するサイズ製品らしからぬ外観へのこだわりが見て取れる。一方、ベースユニットとヒートパイプの接続は、旧来の同社製品同様、溝を掘った板と平板でカマボコ状に押しつぶす形を採っている。ハイエンド製品らしく見栄えに気を使った一方で、ベースユニットの作り込みが、先に登場した阿修羅や虎徹に比べ甘くなっている点は気になった。

 冷却ファンには、サイズオリジナルの140mm径25mm厚ファン「隼140」のPWM制御対応モデルを採用。120mm角ファンとネジ穴位置の互換性を持つラウンドフレーム採用のこのファンは、500(±300)~1300(±10%)rpmという、低速から中速までの回転数域をカバーしている。ファンのヒートシンクへの固定には、専用の金属製クリップを利用する。ファンクリップは4本(2セット)同梱されており、25mm厚の120mm角ファンまたは140mm径ファンの追加、交換が可能。

サイズ MUGEN MAX本体
リテンションキット。色は異なるが、阿修羅や虎徹に同梱されたものと同じブリッジ式リテンションを採用している
140mm径25mm厚ファン「隼140」。PWM制御により500(±300)~1300(±10%)rpmの回転数域をカバーする
ファン固定用のクリップ。4本(2セット)用意さており、別途ファンを用意すればデュアルファンでの運用が可能
ヒートシンクへのファン取り付け。ファンクリップは25mm厚ファンのみの対応
ヒートシンク正面。風が抜けやすいよう、放熱ユニットは4ブロックに分割されている
ヒートシンク側面。メモリスロットとの干渉を回避する目的で、ベースユニットの位置はファン取り付け面へとオフセットされている
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE利用時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE利用時)

 メモリスロットとのクリアランスについては十分に確保されている。一般的なレイアウトのマザーボードであれば、メモリとの干渉を心配する必要は無いだろう。拡張スロットについては、今回テストに用いたASUS MAXIMUS V GENEの場合はギリギリ被らないという状況で、拡張カードの裏面に背の高い実装部品がある場合は干渉する恐れがある。最上段位置にPCI Express x16スロットを備えたマザーボードとの組み合わせる場合は注意したい。

 リテンションキットについては、カラーリングこそ異なるものの、阿修羅や虎徹に付属したものと同じブリッジ式リテンションが採用されている。MUGEN MAXの場合、放熱ユニットがブリッジの固定ネジの上に被る格好になるのだが、放熱ユニットにはドライバーを通すための穴が設けられている。長めのドライバーを用意しておけば、取り付けはそれほど難しくない。

冷却性能テスト

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

 Core i7-2600Kの定格動作クロックである3.4GHz動作時の結果をみてみると、MUGEN MAXが記録したCPU温度は52~59℃。これはフル回転で動作させたCPU付属クーラーが記録した85℃より26~33℃低い結果であり、ファンの回転数を考えても、なかなか優秀な結果と言ってよい数字だ。

 一方、オーバークロック動作時の温度に関しては、4.4GHz動作時に68~80℃、4.6GHz動作時に78~91℃となった。最も回転数を絞った20%制御時のファン回転数が約500rpmであることを考えれば、全ての条件でテストを完走したことは評価できるのだが、3.4GHz動作時の優秀な結果からすると、発熱が増した条件での結果は思ったほど振るわないという印象だ。

 静粛性に関しては、20~50%制御時の動作音は十分に静かであると言える。ケースに納めて運用すれば、他のパーツの騒音の方が気になる場合が多いだろう。フル回転時は回転数が約1,360rpmに達するため風切り音が目立つ。また、若干ではあるが、ファンの振動によりヒートシンクからビビリ音が発生していた。

低速ファン向けハイエンドサイドフロー

 コストパフォーマンス志向の製品作りで定評のあるサイズが作り上げたハイエンド製品であるMUGEN MAX。どういう製品に仕上げているのか興味があったが、今回実際に見て試した上でのMUGEN MAXの印象は、冷却性能より静粛性を重視したCPUクーラーであるというものだ。

 MUGEN MAXは、海外で特に人気のThermalright製CPUクーラー「Macho」を強く意識して作られた製品なのだろう。放熱フィン1枚当たりの面積を広く取る代わりにフィンピッチを広くする放熱ユニットの設計や、メモリスロットとの干渉を回避するオフセット配置など、Machoシリーズを意識したと思われる設計がMUGEN MAXの随所に見て取れる。

 価格的にも性能的にも、Thermalright Machoの対抗モデルとしてのMUGEN MAXは、十分その役割を果たせる製品と言えるだろう。ただ、阿修羅や虎徹を作り上げたサイズのハイエンド製品として見た場合、やや物足りなさというか、中途半端にコストパフォーマンス志向の設計を引きずっているように感じられる。

 ベースユニットをしっかり作り込み、パイプだけと言わずヒートシンク全面にめっき処理を施し、ファンとヒートシンクの間に防振材を設けて……などなど、MUGEN MAXのクオリティを高める余地はまだまだ存在する。コストパフォーマンスという面で確固たる支持を得ているサイズだからこそ、そのハイエンド製品には、クオリティに振り切った製品作りを期待したい。

サイズ「MUGEN MAX(無限大/SCMGD-1000)」製品スペック
メーカーサイズ
フロータイプサイドフロー
ヒートパイプ6mm径6本
放熱フィン39段+飾り板1枚
サイズ(ファン搭載時)145×109×161mm(幅×奥行き×高さ)
重量870g
付属ファン140mm径25mm厚ファン×1
電源:4ピン(PWM制御対応)
回転数:500±300~1,300rpm±10%
風量:37.37~97.18CFM
ノイズ:13~30.7dBA
サイズ:140×140×25mm
対応ソケットIntel:LGA 775/1150/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2/AM2+/AM3/AM3+/FM1/FM2/FM2+

(瀬文茶)