瀬文茶のヒートシンクグラフィック

サイズ「ASHURA SHADOW」

~サイズの10周年記念限定CPUクーラー

 今回は、サイズの10周年記念CPUクーラーとして発売が予定されている「ASHURA SHADOW」を紹介する。発売予定日は10月23日で、価格は5,980円前後になる見込み。

【17時50分追記訂正】記事初出時、発売予定日を16日としておりましたが、23日に変更されました。また価格が判明したため追記します。

黒色メッキが美しいハイエンドサイドフロー

 サイズのASHURA SHADOWは、2月に発売された140mmファン搭載サイドフローCPUクーラー「阿修羅(SCASR-1000)」のヒートシンクをベースに、全面黒色メッキを施したCPUクーラーだ。ヒートシンクへのメッキ処理以外については阿修羅から目立った変更点はない。

 ASHURA SHADOWのヒートシンクは、6本の6mm径ヒートパイプ。銅製のベースプレートを備えるベースユニット。アルミニウム製放熱フィン50枚で構成された放熱ユニット。以上の3ユニットで構成された、オーソドックスなレイアウトのサイドフローヒートシンクである。ベースとなった阿修羅同様、ベースユニットと放熱ユニットの配置をオフセットすることで、メモリスロットの干渉を回避するデザインが採用されている。

 ヒートシンク全面に施された黒色のメッキは、近頃流行りのマットブラックなカラーアルマイトとは一味違う、金属らしい光沢感を湛えたハイクオリティな仕上がりだ。筆者は、サイズ製のヒートシンクに対して、「コストパフォーマンス志向が強く、飾り気の少ないヒートシンクが大半」というイメージを抱いているのだが、ASHURA SHADOWはそのイメージとは全く異なる高級感漂うヒートシンクである。

 ASHURA SHADOWには、阿修羅と同じ「隼140」のPWM制御対応モデルが1基同梱されている。このファンは、PWM制御によって回転数を500(±300)~1,300rpm(±10%)の範囲で制御可能な140mm径ファンで、取り付け穴位置は120mmファンと互換性がある。ファンの取り付けには専用のファンクリップを用いて行なう。なお、同梱されているファンは1基のみだが、ファンクリップは2基分用意されている。別途、25mm厚かつ120mmファンと穴位置互換のケースファンを用意することで、デュアルファンでの運用も可能だ。

ASHURA SHADOW 本体
ASHURA SHADOW 付属品
標準ファンの「隼140」。PWN制御対応の140mm径25mm厚ファンだ。
ファンの固定には専用のクリップを用いる。
メモリスロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE利用時)
拡張スロットとのクリアランス(ASUS MAXIMUS V GENE利用時)

 ヒートシンクの形状が阿修羅と同じであるため、周辺パーツとの干渉具合についても阿修羅と全く同じ状況だ。ベースユニットと放熱ユニットをオフセットしたことで、メモリスロットとのクリアランスには余裕がある一方、140mm径ファンに最適化された幅広の放熱ユニットと拡張スロットのクリアランスはやや厳しい。裏面実装部品の多い拡張カードを最上段スロットに搭載する場合は注意が必要だ。

冷却性能テスト結果

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%(フル回転)」の3段階に設定し、それぞれ負荷テストを実行した際の温度を測定した。

【グラフ】テスト結果

 テスト結果を確認していくと、3.4GHz設定時の温度は55℃~67℃で、CPU付属クーラーより18℃~30℃低い温度を記録している。また、オーバークロック動作時の温度については、4.4GHz設定時に66℃~78℃、4.6GHz設定時に75℃~94℃を記録した。4.6GHz動作時のPWM制御20%時の温度が、本連載のテスト中止基準ギリギリの94℃であったものの、全ての条件でテストを完走することができた。

 さて、今回の温度検証の結果について、同一の機材で2月にテストした阿修羅の結果と見比べてみると、同じPWM制御20%時のCPU温度に大きな差があることに気が付く。比較すると、ASHURA SHADOWの方が温度が高くなっており、4.6GHz動作時のデータを比べると8℃もの差がついている。

 なぜこのような差がついているのか、それは両データ取得時のファンの回転数差を見れば一目瞭然だ。PWM制御的には同じ20%だが、ASHURA SHADOWのファンが約450rpmで動作しているのに対し、阿修羅は約680rpmで動作している。付属ファンである「隼140」のスペックを考慮すると、ファンの個体差によるものであり、ファンの回転数を考慮すれば、ASHURA SHADOWと阿修羅の冷却性能はほぼ同等であると見て良いだろう。

 なお、ファンの動作音については、20%制御時(約450rpm)と50%制御時(約700rpm)については、風切り音も軸音も特に気にならない程度に留まっており、ケースに収めずとも十分に静音動作と言えるレベルであった。フル回転時(約1,450rpm)はさすがに風切り音が大きくなる。冷却性能的には回転数700rpm程度でも十分優秀な結果が得られているので、静音動作を望むのであれば、この程度まで回転数が落ちるように制御すると良いだろう。もっとも、標準ファンは前述の通りバラつきの大きいファンなので、こだわりのあるユーザーなら、ほかのケースファンへの交換を検討したい。

記念モデルでハイエンドCPUクーラーが作れることを証明したサイズ

 ASHURA SHADOWのベースとなった阿修羅は、それまでのサイズ製CPUクーラーにあった、ヒートシンクの作りの甘さと、リテンションキットの完成度の低さを一気に改善した。コストパフォーマンスとユニークな形状を売りにしてきたサイズブランドのCPUクーラーにとって、同系統のハイエンド製品と遜色ない性能と使い勝手を一気に実現した阿修羅は、革新的な製品であったと言えよう。

 ただ、性能と使い勝手でハイエンドCPUクーラーと肩を並べた阿修羅も、ハイエンドCPUクーラーが持つ高級感のある見た目は持ち合わせていなかった。ASHURA SHADOWは、阿修羅に欠けていた「高級感」というピースを見事に補完した製品だ。

 見た目の好みは人それぞれなので、一概にASHURA SHADOWが優れているとは言えないのだろうが、筆者としては、あの色気の無かった阿修羅が、メッキ一つで見違えるほど美しいヒートシンクになったこと。そして、コストパフォーマンス志向の強いサイズが、10周年記念モデルとは言え、ここまで美しくヒートシンクを作り上げたことに驚かされた。

 ASHURA SHADOWでハイエンドらしいヒートシンクが作れることを証明したサイズが、今後どのようなCPUクーラーを開発していくのだろうか。それは筆者の知るところではないが、時にはASHURA SHADOWのように、所有欲を満たしてくれるハイクオリティなCPUクーラーが登場することに期待したい。

サイズ「ASHURA SHADOW」製品スペック
メーカーサイズ
フロータイプサイドフロー
ヒートパイプ6mm径×6本
放熱フィン50枚+飾り板(1枚)
サイズ145×65×161mm(幅×奥行き×高さ)
対応ファン140mm径25mm厚ファン ×1
電源:4ピン(PWM制御対応)
回転数:500(±300) ~1,300rpm(±10%)
風量:37.37~97.18CFM
ノイズ:13.0~30.7dB
サイズ:140×140×25mm
対応ソケットIntel:LGA 775/1150/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1/FM2

(瀬文茶)