瀬文茶のヒートシンクグラフィック

ENERMAX ETS-T40-TAV

~ENERMAXブランドのサイドフローCPUクーラー

 今回は、3月15日に発売されたばかりのサイドフローCPUクーラーENERMAX「ETS-T40-TAV」を紹介する。購入金額は4,280円だった。

ETS-T40-TAのニッケルめっき省略モデル

 今回紹介する「ETS-T40-TAV」は、2011年7月にENERMAXがCPUクーラー市場参入と同時にリリースしたETS-T40シリーズの新モデルだ。

 「TDP 200W対応」「熱抵抗値 0.09℃/W」を謳ってリリースされたETS-T40シリーズは、同じヒートシンクをベースに、搭載ファンやめっき処理の有無により「ETS-T40-TA」、「ETS-T40-TB」、「ETS-T40-VD」の3種類を同時発売するという珍しい形でデビューした製品だ。冷却性能面について強気な謳い文句を打ち出していたものの、ヒートシンク自体のスペックに際立ったものがなかったこともあり、発売当初はENERMAX初のCPUクーラーである点と、バリエーション展開などが注目を集める程度の存在であった。

 しかし、2012年に入り販売価格が低下してくると、シリーズ中でもコストパフォーマンスに優れていた「ETS-T40-TB」が高い人気を獲得。一時は全国規模で品薄になるなど、サイドフロー型CPUクーラー屈指の人気を得るまでに至り、現在も定番モデルとして高い人気を誇っている。

 そのETS-T40シリーズに、1年8カ月の期間を経て登場した新モデル「ETS-T40-TAV」は、最初に発売された3モデルの1つ「ETS-T40-TA」と同じ、ブルーLED搭載120mmファン「T.B.APOLLISH-PWM」を搭載しつつ、同モデルの特徴であったヒートシンク全面へのニッケルめっき処理を省略したマイナーチェンジモデルである。

 「ETS-T40-TAV」のヒートシンクは、オーソドックスなサイドフローレイアウトを採用し、4本の6mm径ヒートパイプがCPUに直接設置するヒートパイプダイレクトタッチタイプのベースユニットと、52枚の放熱フィンからなる1ブロックの放熱ユニットを備える。

 それほどスペックや形状が際立ったヒートシンクではないが、ヒートパイプ周辺のエアフローを改善する「VGF(Vortex Generator Flow)」、ヒートシンク内の空気圧力を高めるという「SEF(Stack Effect)」など、特許を取得した技術を放熱フィンの加工に取り入れることで、放熱ユニットのエアフロー改善が図られている。

 「ETS-T40-TAV」に標準で付属するファンは、ENERMAXブランドの120mmファン「T.B.APOLLISH-PWM」1基のみだが、「ETS-T40-TAV」には120mm角25mm厚ファンの固定が可能な金属製クリップが2セット同梱されており、最大で2基のファンを搭載することが可能だ。ENERMAXは、2基のファンを搭載することにより、TDP 200W以上の発熱にも対応可能であるとしている。

 ヒートシンクと周辺パーツとのクリアランスについては、ミッドシップレイアウトタイプのハイエンドCPUクーラーに比べれば緩いものの、ASUS MAXIMUS V GENEとの組み合わせでは、ファンがCPUソケット側にもっとも近いメモリスロットに被ってしまった。ファンの取り付け位置はある程度調整可能だが、大型のヒートスプレッダを備えるメモリと組み合わせる場合は注意が必要だ。

冷却性能テスト結果

 それでは、冷却性能テストの結果を紹介する。今回のテストでは、マザーボード側のPWM制御設定を「20%」、「50%」、「100%」の3段階に設定した際の温度をそれぞれ取得した。

 なお、「ETS-T40-TAV」に同梱されている120mmファンの「T.B.APOLLISH-PWM」は、PWM制御により800~1,800rpmの範囲で回転数を調整可能とされている。実際にPWM制御を適用した際の回転数は、20%設定時に約780rpm、50%制御時に約970rpm、100%設定時に約1,820rpmだった。

 各条件の温度データを確認してみると、Core i7-2600Kの定格動作に近い3.4GHz設定時のCPU温度は56~65℃を記録しており、CPU付属クーラーより20~29℃低い結果となっている。ファンの回転数が約780rpmと低速な20%制御時でもCPU付属ファンより20℃低い温度に抑えているのは、なかなか立派な結果である。

 一方、発熱が増大するオーバークロック動作でのテストでは、4.4GHz動作時は全てのファン制御設定でテストを完走出来たが、4.6GHz動作時は20%制御時にCPU温度が94℃を超えたためテストを中止した。各設定で記録したCPU温度は、4.4GHz動作時は70~81℃、4.6GHz動作時が84~90℃だった。過去に優秀な冷却性能を発揮した製品と比較すると、発熱量の増加に伴うCPU温度の上昇が大きいことが気になるところではあるが、このクラスの製品としては十分及第点を与えられるパフォーマンスと言えるだろう。

 テスト中の動作音については、約780rpmで動作する20%制御時はたいへん静かに動作しており、風切り音や軸音などの騒音が気になることはなかった。約960rpm動作の50%制御時も十分静かに動作するため、PWM制御をうまく行なえば、標準ファンのままでもかなりの静音動作が実現できる。ただし、約1,820rpmで動作する100%制御時は風切り音が大きくなるため、静音動作の実現には、PWM制御の上限設定が可能な程度にマザーボードのPWM制御設定が充実している必要がある。

欠点の少なさが魅力のヒートシンク

 ETS-T40-TAからニッケルめっき処理が省略されたETS-T40-TAVは、サイドフロー型CPUクーラーの定番モデルとしての地位を確立したETS-T40-TBと同じヒートシンクを備え、搭載ファンのみが異なる製品だ。両製品のどちらかを選ぶ場合は、実売価格とファンの好みで選ぶことになるだろう。

 今回、ETS-TA40シリーズを手にしてみて、コストパフォーマンス志向のCPUクーラーとして、実に欠点の少ないCPUクーラーに仕上がっていると感じた。ハイエンドCPUクーラーに匹敵するほどではないものの、CPU付属クーラーから大幅な温度低下と静音化が可能なヒートシンク性能と、マザーボード表面に土台を組んで、固定バーでヒートシンクを固定するリテンションの採用など、過去に定番製品として名前の挙がることのあった製品よりも、数段高い完成度を実現している印象だ。

 このレベルの製品でありながら、時には3,000円を割る価格で販売されているのだから、人気を得るのも当然だろう。低価格かつ扱いやすい製品を探しているのであれば、ETS-T40シリーズは要チェックだ。

ENERMAX「ETS-T40-TAV」製品スペック
メーカーENERMAX
フロータイプサイドフロー型
ヒートパイプ6mm径×4本
放熱フィン52枚
サイズ139×70×160mm(幅×奥行き×高さ、ヒートシンクのみ)
重量610g(ヒートシンクのみ)
付属ファン120mm角25mm厚ファン×1
電源4ピン(PWM制御対応)
回転数800~1,800rpm(±10%)
風量33.26~75.98CFM
ノイズ16~26dB
サイズ120×120×25mm
対応ソケットIntel:LGA 775/1155/1156/1366/2011
AMD:Socket AM2系/AM3系、Socket FM1/FM2

(瀬文茶)