西川和久の不定期コラム

デル「Latitude 12 Rugged タブレット」

~過酷な環境に耐えられる11.6型Core M搭載Windowsタブレット

 2015年7月23日、デルは頑丈なPC「Latitude Rugged」シリーズに属する11.6型Core M搭載Windowsタブレット「Latitude 12 Rugged タブレット」を発表した。発表から少し遅くなってしまったものの、編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

プロセッサなどハードウェアスペック以外が凄い11.6型タブレット

 本製品の最大の特徴は、プロセッサやパネルなど、一般的なハードウェアスペックではない。同社の製品紹介サイトへ行くと、雪山での使用や、砂まみれになっている写真が掲載されている。これからも分かるように、一般的なマシンでは作動不可能もしくは壊れてしまうような環境下での使用を想定したタブレットだ。

 余談になるが、この手のマシンを試用するたびに思い出すのが、昔、長野オリンピックの大回転の撮影に行った時のエピソードだ。会場に着く前にコンビニでおにぎりを何個か購入し、ダウンジャケットのポケットへ入れ、現場に到着。撮影が終わって(当時使ったカメラはキヤノンEOS D2000)、小腹が減ったので食べようとしたところ、カチカチに凍ってて食べれなかった(笑)。気温は測ってないが相当温度が低かったのだろう。荷物になるのでノートPCは現場へ持ち込まなかったものの、長時間は動かなかったかも知れない。

 逆に砂に関しては、海外ロケで、砂浜にノートPC置いたまま……といったことは何度もしている。傷むだろうが、壊れたり作動不良になることはなかった。塵や鉄粉とは違い、砂浜の砂はある程度大きいので、内部に入り込んでも特に問題ないようだ。

 前置きが長くなってしまったが、今回ご紹介するデル「Latitude 12 Rugged タブレット」は、こんな“生ぬるい”場所ではなく、もっと過酷な環境で使用するのを目的として作られている。主な仕様は以下の通り。

【表】デル「Latitude 12 Rugged タブレット」の仕様
プロセッサCore M-5Y71(2コア4スレッド、クロック 1.2GHz/2.9GHz、キャッシュ 4MB、TDP/SDP 4.5/3.5W)
メモリ8GB(LPDDR3-1600)
ストレージM2.接続SSD 128GB
OSWindows 8.1 Pro(64bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 5300、Micro HDMI
ディスプレイ非光沢11.6型1,366×768ドット(Gorilla Glass 3)、手袋対応10点タッチ対応
ネットワークIntel Dual Band Wireless-AC 7265、Bluetooth 4.0
インターフェイスUSB 3.0、マイクロ・シリアルポート、microSDカードリーダ、3.5mmオーディオジャック、800万画素カメラ
センサーGPS
サイズ/重量312×203×24mm(幅×奥行き×高さ)/1.62kg以上(2セルバッテリ1個を装着時)
バッテリ2セル/26Whr×2(ホットスワップ対応)
価格311,100円から(税抜)

 プロセッサはCore M-5Y71。2コア4スレッドでクロックは1.2~2.9GHz。キャッシュは4MBでTDP/SDPは4.5/3.5Wとなる。メモリは8GB/LPDDR3-1600。ストレージはM.2接続の128GB SSDだ。OSは64bit版のWindows 8.1 Proを搭載。

 グラフィックスは、プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 5300。外部出力用としてMicro HDMIを装備している。

 ディスプレイは、非光沢の11.6型1,366×768ドットでGorilla Glass 3を使用。「Direct-View」パネルで直射日光下でも見やすくなっている。タッチは、手袋でも操作できる10点対応、タッチペンも筐体に内蔵している。

 ネットワークは、有線LANはなく、無線LANは、IEEE 802.11a/b/g/n/ac対応の「Intel Dual Band Wireless-AC 7265」とBluetooth 4.0。オプションで「DW5809e LTE/HSPA+ Mobile Broadband Card」を搭載することも可能だ。

 その他のインターフェイスは、USB 3.0、マイクロ・シリアルポート、microSDカードリーダ、3.5mmオーディオジャック、800万画素カメラ。センサーはGPS。またセキュリティ面は、Intel vPro、スマートカードリーダ、指紋認証、TPM 1.2などに対応している。

 加えて、ポートカバーとデバイスの内側にHZOの保護技術を適用することによって、IP65(防塵および圧力防水)をクリア。またパッシブ式とアクティブ式冷却を組み合わせた「第4世代QuadCoolファン」を搭載する。

 サイズは312×203×24mm(幅×奥行き×高さ)、重量1.62kg以上(2セルバッテリ1個を装着時)。バッテリはホットスワップ対応の2セル/26Whr×2。

 アクセサリとして、「Ruggedタブレット・デスク・ドック」や「キックスタンド付きキーボードカバー(後日発売予定)」も用意されている。

 そして本機最大の特徴であるタフネス(堅牢性)については、手元でテストできる内容ではないため同社のサイトから一部抜粋すると「MIL-STD-810Gテスト:運送中の落下(1.2m、ユニット単体、26回落下)、動作中の落下(0.9m)、風雨、風塵、風砂、振動、稼働中の衝撃、湿度、塩水噴霧、高度、爆発性雰囲気、日射、極端温度、熱衝撃、凍結/解凍、本番稼働までの戦略的スタンバイ」、「温度範囲(動作時):-29℃~63℃」、「温度範囲(非動作時): -51℃~71℃」、「IEC 60529による侵入保護:IP65(防塵および圧力防水)」……など、一般的にはちょっと信じられない環境下での使用を想定しているのが分かる。

 税別価格は311,100円からとタブレットとしては高価だが、これだけの重装備、ちょっと落としたりコーヒーをこぼしたりする程度で壊れる一般的なタブレットとは比較にならないのは言うまでもない。

前面。パネルの下に回転ロック、音量±、Windows、ファンクション1/2/3ボタンが並ぶ
左/下。左側面ポートカバーの下に音声入出力、Micro HDMI、microSDカードリーダ。下側面にドッキング用の接点
右/上。右側面は、電源ボタン、ポートカバーの下にマイクロ・シリアルポート、USB 3.0。もう1つのポートカバーの下に電源入力。上側面はタッチペンの収納スペース
背面。右上に800万画素カメラ、中央少し上にドッキング用の接点、中央右側のスリットにスピーカー。下側の大きい左右2つのパネルはバッテリ
バッテリ部。ホットスワップに対応したバッテリ/重量145g(1つ)。同じ構造が左右対称で右側にもう1つある
付属のACアダプタとバッテリなど。ACアダプタは85×55×22mm(幅×奥行き×高さ)/177g
タッチペンと小型スケールも内蔵。左上に収納スペースがある
重量。バッテリ2つ搭載して実測で1,783g
シャワーで防水チェック。大丈夫だとは分かっていても気の乗らないテスト。もちろん全く問題ない。落下テストは動画にしても一瞬なので省略した

 筐体はご覧のようにCASIOのG-SHOCKっぽい何ともヘビーなデザインと質感だ。11.6型にも関わらず、1,783gもあるのでズッシリ重いが、これはこれで悪くない。操作系はWindowsなので普通のタブレットと何ら変わらないが、[Windows]ボタンなどにはバックライトを搭載している上に、バイブレーションが仕込まれている。

 IP65(防塵および圧力防水)をクリアしているので試しにシャワーで水を浴びせてみたが、当然ながらビクともせず、そのまま作動し続けた(まれに水圧をタッチと勘違いするのか、画面がスクロールするが)。

 前面はパネルの下に回転ロック、音量±、Windows、ファンクション1/2/3ボタン。左側面ポートカバーの下に音声入出力、Micro HDMI、microSDカードリーダ。下側面にドッキング用の接点。右側面は、電源ボタン、ポートカバーの下にマイクロ・シリアルポート、USB 3.0。もう1つのポートカバーの下に電源入力。上側面はタッチペンの収納スペース。

 背面は右上に800万画素カメラ、中央少し上にドッキング用の接点、中央右側のスリットにスピーカー。下側の大きい左右2つのパネルはバッテリを搭載できる。このバッテリはホットスワップに対応しており、Windowsを作動させながら交換可能だ。重量は1つ145g。付属のACアダプタはのサイズと重量85×55×22mm(幅×奥行き×高さ)/177gとなっている。

 ディスプレイは非光沢の11.6型1,366×768ドット。Gorilla Glass 3を使用しているので強度も十分ある。また極寒での使用を想定して、手袋でのタッチにも対応しているのが特徴的だ。試しに手袋して操作したが全く問題なし。もちろんタッチペンでの操作もズレもなく快適に操作可能だ。

 パネルの輝度はあまり高くなく、視野角もそこそこ。発色/コントラストは普通と言ったところか。確かに外で試すと見やすかったこともあり、この辺りは通常用途と異なり、「Direct-View」も含めチューニングポイントが違うのかも知れない。

 振動やノイズ、発熱はテストした環境では皆無。後半のベンチマークを参考にして欲しいが、プロセッサ温度がかなり低めに抑えられている。サウンドは、Dell Audioに「MAXX VOICE PRO」を搭載しており、オンだとちょっとこのクラスのタブレットとは思えない音がする。オフにすると非常にか細い音だけにその差には驚きだ。

Core MとM.2 SSD搭載機としては標準的な性能

 OSは64bit版のWindows 8.1 Pro。Windows 7 Professional/8.1/8.1 Proの32bitまたは64bitが利用可能で、Windows 10/10 Pro(64bit)モデルも準備中とのこと。初期起動時のスタート画面は2画面で、「私のデバイスを登録」、「Dell Backup and Recovery」などがプリインストールとなる。デスクトップは壁紙の変更とDell Backup and Recoveryのショートカットだけとシンプルだ。

 SSDはM.2接続の「LITEON L8H-128V2G-11 M.2 2280 128GB」を搭載。119.12GB中、実質C:ドライブのみの1パーティションで約110.5GBが割り当てられ空きは77.9GB。

 Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac対応の「Intel Dual Band Wireless-AC 7265」。BluetoothもIntel製だ。またオプションの「DW5809e LTE/HSPA+ Mobile Broadband Card」も入っており、チャームのネットワークに「モバイルブロードバンド」が追加されている。

スタート画面1。Windows 8.1標準だ
スタート画面2。私のデバイスを登録、Dell Backup and Recoveryなどがプリインストール
起動時のデスクトップ。壁紙の変更とDell Backup and Recoveryのショートカットだけとシンプル
デバイスマネージャ/主要なデバイス。SSDはLITEON L8H-128V2G-11 M.2 2280 128GB。Wi-FiはIntel Dual Band Wireless-AC 7265、BluetoothももIntel製。オプションのDW5809e LTE/HSPA+ Mobile Broadband Cardが入っていた
SSDのパーティション。119.12GB中、実質C:ドライブのみの1パーティションで約110.5GBが割り当てられている
オプションのDW5809e LTE/HSPA+ Mobile Broadband Card。チャームのネットワークに「モバイルブロードバンド」が追加

 プリインストールのソフトウェアは、Windowsストアアプリは特になし。デスクトップアプリは、「Dell Backup and Recovery」、「Dell Command Power Manager」、「Dell Commnad Update」、「Dell Digital Delivery」、「Dell Notification Center」、「Dell Update」、「私のデバイスを登録」、「Dell Audio」など同社系のツール、そしてIntel系のツールなど。

 Dell Command Power Managerは名前の通り、バッテリ系のツールだ。情報表示に加え、ピークシフト、サーマル管理などに対応している。Dell Audioは「MAXX VOICE PRO」を搭載。先に書いた通りオン/オフでかなりスピーカーの音が変化する。

アプリ画面1
アプリ画面2
Dell Command Power Manager
Commnad Update
Dell Audio

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(2コア4スレッドで条件的には問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 4.2。プロセッサ 6.4、メモリ 7.3、グラフィックス 4.2、ゲーム用グラフィックス 4.6、プライマリハードディスク 8.15。PCMark 8 バージョン2は2403、CrystalMarkは、ALU 29945、FPU 24894、MEM 27767、HDD 32528、GDI 6596、D2D 3845、OGL 4922。

 Core Mなので爆速ではないものの十分に速く、M.2接続SSDのスコアも高い。総合的にタブレットとしは優秀な方だろう。またプロセッサの温度は、40~56℃辺りと、かなり低めに抑えられている。パッシブ式とアクティブ式冷却を組み合わせた「第4世代QuadCoolファン」が効いているようだ。

 BBenchはDell電力プラン、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ(バッテリ2つ装着時)。バッテリの残3%で54,967秒/15.3時間。バッテリ2つだと軽く12時間を超えた。容量が同じなので1つだと半分になると思われる。ただし、バックライト最小はかなり暗いため、実質はもう少し短くなろだろう。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 4.2。プロセッサ 6.4、メモリ 7.3、グラフィックス 4.2、ゲーム用グラフィックス 4.6、プライマリハードディスク 8.15
PCMark 8 バージョン2。2403
PCMark 8 バージョン2/詳細。クロックは800MHzから最大の2.9GHzまで。プロセッサの温度は、40~56℃辺りまでと割と低め
BBench。Dell電力プラン、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ(バッテリ2つ装着時)。バッテリの残3%で54,967秒/15.3時間
CrystalMarkの結果。ALU 29945、FPU 24894、MEM 27767、HDD 32528、GDI 6596、D2D 3845、OGL 4922

 以上のようにDELL「Latitude 12 Rugged タブレット」は、Core M-5Y71、メモリ8GB、M.2接続の128GB SSD、非光沢の11.6型1,366×768ドットのパネルを搭載したタブレットだ。

 ここまでならある意味普通であるが、タッチは手袋をしながらでも操作可能、ポートカバーとHZOによる完全防水機構、第4世代QuadCoolファンなどに対応した上で、IP65、作動/非作動時の幅のある温度範囲、米国の軍調達基準MIL-STD-810G、およびIEC侵入保護等級の第三者機関テストをクリアするタフなマシンに仕上がっている。

 内容や価格的に、万人にお勧めできるマシンではないが、タフなタブレットを望んでいるユーザーは、喉から手が出るほど欲しい1台ではないだろうか。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/