西川和久の不定期コラム

ドスパラ「Diginnos Mobile DG-W10M」

~Snapdragon 210搭載/5型のWindows 10 Mobileエントリーモデル

 去年(2015年)の年末、まとめ記事で触れたが、この年末年始はWindows 10 Mobile搭載スマートフォンが続々と登場している。搭載しているSoCやメモリ、ストレージ、パネルサイズなどによって価格が異なるものの、比較的安価なレンジからなのが嬉しいところ。今回は、その中から「Diginnos Mobile DG-W10M」をご紹介したい。

オーソドックスなエントリーモデル

 現在、国内に流通しているWindows 10 Mobile搭載スマートフォンは、Snapdragon 210/1GBか2GB、Snapdragon 410/1GBか2GB。そしして月末にSnapdragon 617/2GBが登場する予定だ。海外ではSnapdragon 808/810のハイエンドモデルが出ているものの、今のところ国内で該当機種はない。

 このような中、今回ご紹介する「Diginnos Mobile DG-W10M」は、Snapdragon 210/1GB。ストレージ16GBで約5型IPS式1280×720ドットのパネル、200/800万画素カメラなど、エントリーモデルとしては標準的な構成となっている。主な仕様は以下の通り。

ドスパラ「Diginnos Mobile DG-W10M」の仕様
SoCQualcomm MSM8909(Snapdragon 210/クアッドコア)
メモリ1GB
ストレージ16GB eMMC+microSD(SDHC対応)
OSWindows 10 Mobile
ディスプレイ約5型IPS式1,280×720ドット、タッチ対応
ネットワークIEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0
4G/LTE Band1/3/5/19
3G/W-CDMA Band1/5/9/19(Band6を内包)
インターフェイスMicro USB、microSDカードスロット、音声入出力、前面200万画素/背面800万画素カメラ、Micro SIM×2(ただし国内はSIM1スロットのみ)
センサー 加速度センサー、GPS
サイズ/重量142.5×70.5×9.2mm(高さ×幅×厚み)/145g
バッテリ(駆動時間)2,300mA(連続通話時間 最大400分/連続待受時間 最大240時間)
その他液晶保護フィルム、Micro USB(オス)-USB(オス)ケーブル、交換用背面カバー黒に加え、白色、水色付属
価格18,500円(税別)

 SoCはQualcomm MSM8909。Snapdragon 210と呼ばれているもので、クアッドコア、最大1.1GHz。GPUはAdreno 304。メモリは1GB、ストレージはeMMCで16GBを搭載している。OSはもちろんWindows 10 Mobile。Buildは10.0.10586.00で、現在までに10.0.10586.29のシステムアップデートが出ている(Fast Ringでは10.0.10586.63がテスト公開中)。

 ディスプレイは約5型IPS式1,280×720ドット(タッチ対応)。現在、フルHDのパネルを搭載したモデルはなく、(一部例外があるものの)5型1,280×720ドットが、国内Windows 10 Mobile搭載機のスタンダードっぽい雰囲気になっている。5型だとフルHD欲しいところだが、1,280×720ドットでも294ppiとほぼ300ppiなので、文字のジャギーなどはほとんど気にならない。

 ネットワークは、IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 4.0。4G/LTEがBand1/3/5/19、3G/W-CDMAがBand1/5/9/19(Band6を内包)に対応している。ドコモ網を使うMVNOなら困ることはないだろう。

 インターフェイスは、Micro USB、microSDカードスロット、音声入出力、前面200万画素/背面800万画素カメラ、Micro SIM×2。ただし2つあるSIMスロットの内、国内使用は片方のみとなる。センサーは、加速度センサー、GPSを搭載。

 サイズは、142.5×70.5×9.2mm(高さ×幅×厚み)、重量145g。少し前にご紹介したMADOSMAと比較して若干厚みがあり、気持ち重い。バッテリは着脱可能な2,300mAを内蔵し、連続通話時間が最大400分、連続待受時間が最大240時間だ。

 基本バックカバーは黒だが、着せ替え用の白色、水色が付属。また液晶保護フィルム、USB式ACアダプタ、Micro USB(オス)-USB(オス)ケーブルもパッケージに含まれ、税別価格18,500円。

 同クラスとしては、FREETELの「KATANA01」(Snapdragon 210/1GB/8GB/4.5型854×480ドット)の12,800円と、KATANA02(Snapdragon 210/2GB/16GB/5.0型1,280×720ドット)の19,800円があり、KATANA02に近い価格となっている。特にメモリ1GBか2GBかの差が性能に影響しそうだが、手元に2機種ないため、現時点(執筆時)では比較できていない。

前面。パネルの上、やや左寄りに200万画素前面カメラ。下にHOMEなどハードウェアキー
上/右。上側面にMicro USBと3.5mmステレオミニジャック。右側面に電源ボタン
下/左。下側面は何もない。左側面に音量±ボタン
背面中央上に800万画素背面カメラ、その下にフラッシュ。下やや左寄りにスピーカー用のスリット
カバーを取り外したところ。左からmicroSDカードスロット、Micro SIM1(国内用)/SIM2。大部分が2,300mAhのバッテリーパック
SIMスロット周辺アップ。各スロットの上にmicroSD、1、2とアイコンがある。筐体に技適マーク
黒、白、水色のカバー、バッテリパックなど付属品。3色のカバーは、好みやその日の気分で変えることができる。液晶保護フィルムも付属
重量は実測で142g
MADOSMA(左)との比較。側面が“ストレート”か“丸い”かの違いと、若干Diginnos Mobile DG-W10Mの方が厚みがある。最大輝度は同程度

 筐体の質感は価格なりだが、と言ってチープな感じでもない。また黒以外に付属する白と水色のカバーへ変えるだけでも結構見た目の雰囲気が違い、その日の気分で楽しめる。カバーは境目の部分に少し爪などを入れれば簡単に外すことができる。

 前面上左寄りに200万画素前面カメラ、下に[戻る]、[ホーム]、[検索]のボタンを配置。これらはハードウェア式だが、バックライトは非搭載。左側に音量±ボタン、右側に電源ボタン、上側にMicro USBとステレオミニジャック。下側には何もない。背面は、中央上に800万画素のリアカメラとその下にフラッシュ、下やや左寄りにモノラルスピーカー用のスリットがある。

 気になる約5型パネルのクオリティは上々。MADOSMAは色温度が高く青っぽく見えたが、Diginnos Mobile DG-W10Mは、逆に黄色っぽく色温度が低め。個人的にはこちらの方が好みだ。また自動/25%/50%/75%/100%と切換えできる明るさもほどほど。視野角やコントラスト、発色も良好。タッチもスムーズに反応する。この価格でこのクオリティなら文句無しだ。

 ContinuumはSnapdragon 210なので非対応だが、Miracastを使って画面のミラーリングには対応している(Windows 10 Mobileの標準機能)。Bluetoothでキーボードやマウスなどを接続できるので、PowerPoint Mobileを使ったプレゼンなどに利用することは可能だ。

 サウンドは、スピーカーからの出力は、モノラルでパワー不足。音質を語るものではない。が、その感覚でイヤフォンを繋いでビックリ! 最大だと煩いほどのパワーがある上、全体的に押し出し感があり、低音の細かい部分まで聴き取れ、クオリティは(価格を考慮すれば)高い。正直これには驚いた。ただし音源によっては最大にすると歪み出すので要注意。少なくともMADOSMAよりは良いように思う。

 またMADOSMA、KATANA01、Diginnos Mobile DG-W10M、全てでBluetoothのaptXに対応していることが確認できた(手持ちのBluetoothスピーカーで確認)。Microsoftに問い合わせていないが、安価な機種3台共に対応しているので、Windows 10 MobileはaptX標準搭載だと思われる(Windows Phone 8.1も後半のUpdateで標準搭載となっている)。これは他のスマートフォン用OSと比較してある意味アドバンテージになるだろう。

 ただし、Windows 10 Mobile自体はUSBオーディオ(Class1)に対応しているものの、これら3機種は、USBホスト接続に非対応のため、外部のUSBオーディオ機器(キーボード/マウスも)などを接続できない。余談になるが、NuAns NEOはUSB Type-Cを搭載し、USBホスト接続にも対応しているので、USBオーディオ機器を接続することは可能だ。

Windowsユーザーなら分かり易い設定やUI

 初期設定は非常に簡単だ。Wi-Fiの設定以外は、基本的に[次へ](もしくは該当する)ボタンをタッチするだけで作業は完了する。

 途中にある「各種サービスを同期しましょう」は、ここでMicrosoftアカウントを入力すると、そのアカウントに紐付けられたいろいろなサービスなどが自動的に同期される。また、もしほかにもWindows 10 Mobile搭載機があれば、アプリケーションやスタート画面の並びを同じにすることもできる。

 今回は[後でサインインする]としてスキップしているが、例えばアプリストアに使用中のMicrosoftアカウントを設定すれば、購入済みのものも含めダウンロードできる。基本的にこれらの動きはデスクトップ版のWindows 10と同じなので、感覚的にも視覚的にも非常に分かりやすい。

ようこそ
それでは始めましょう
ライセンス条項を示します
日付と時刻
Wi-Fiに接続
すぐに作業を開始
各種サービスを同期しましょう
アプリのインストール
完了しました

 スタート画面は約2画面(縦スクロール分)。アプリフォルダに対応し、背景が透けて見える(設定で色や透明度の変更が可能)ライブタイルは、うまく設定すると、かなり見栄えのする画面を構成できる。

 クイックアクセスと通知エリアは、画面上からのスワイプで表示する。画面キャプチャは、全て表示している状態で、[折りたたむ]と、一番下1列(4つ)だけの表示となる。この点もデスクトップ版のWindows 10と非常によく似ている。

スタート画面(1/2)
スタート画面(2/2)。アプリフォルダにも対応
クイックアクセスと通知エリア

 設定はご覧のように、デスクトップ版Windows 10とそっくりだ。ストレージは初期起動時、3.15GBが使われている。ただし、標準アプリの更新とシステムの更新を行なった後の値だ。アプリ、ダウンロード、音楽、画像、ビデオを本体のストレージかmicroSDへ、それぞれ個別にセットできるため、microSDと併用すればヘビーに使わない限り容量不足になることはないだろう。

設定。一番下に「更新とセキュリティ」がある
設定/システム/ストレージ。初期起動時約3.15GBを使用。アプリ、ダウンロード、音楽、画像、ビデオを個別に本体かmicroSDかに振り分け可能
設定/システム/バージョン情報。もともとバージョンは10.0.10586.00だったが、10.0.10586.29に更新して評価した

 標準搭載のアプリは、「アラーム&クロック」、「ウォレット」、「エクスプローラー」、「カメラ」、「サポートに問い合わせる」、「ストア」、「ストレージ」、「ニュース」、「フォト」、「ボイスレコーダー」、「ボッドキャスト」、「マップ」、「メッセージング×2」、「映画&テレビ」、「設定」、「天気」、「電卓」、「電話×2」、「Cortana」、「Excel」、「Facebook」、「FMラジオ」、「Get Started」、「Grooveミュージック」、「Microsoft Edge」、「OneDrive」、「OneNote」、「Outlookカレンダー」、「Outlookメール」、「People」、「PowerPoint」、「Skype」、「Skypeビデオ」、「Windowsフィードバック」、「Word」、「Xbox」……と、デスクトップ版のWindows 10でもお馴染みのものばかりだ。

 違いはデスクトップもしくはタブレットUIか、スマートフォンUIかの違いとなる。TH2のタイミングでリリースされたので、Cortanaも機能する。

アプリ画面(1/5)
アプリ画面(2/5)
アプリ画面(3/5)
アプリ画面(4/5)
アプリ画面(5/5)

 メッセージングと電話が2つあるのは、SIMスロットが2つある関係からだ。特にオリジナルのアプリは含まれていない。また仕様には書かれていないが、国内に対応したFMラジオも搭載している。この時、イヤフォンのケーブルがアンテナになり、音声はスピーカーへ切り替えることも可能だ。

ニュース
エクスプローラー
FMラジオ

 キーボードは標準で、英語、日本語10キー、日本語QWERTYがインストール済み。[+キーボードを追加]で、他国語も設定できる。モードの切換えは、スペースキーにある[<日>]の部分をスライドさせると、設定/時刻と言語/キーボードで設定されたキーボードが順にトグルする。なお、他社のIMEをインストールすることには非対応だ。iOS、Androidに遅れている部分となる。

設定/時刻と言語/キーボード
QWERTY配列

 このように、Windows 10 Mobileは、全般的にAndroidほどカスタマイズする要因が無く(ランチャーまでも違うケースが多い)、またデスクトップ版Windows 10とUIが似ていることもあり、初めてでも、また機種変更しても、同じ操作性が保たれる面ではOS XとiOSの関係にある意味似ているかも知れない。

背面800万/前面200万画素のカメラ

 カメラアプリはMicrosoft純正そのままだ。フラッシュオン/オフのみの標準モードと、フラッシュオン/オフ、ホワイトバランス(auto/曇り/晴れ/蛍光灯/白熱灯)、焦点距離(auto/比較的近距離のマニュアル/無限遠)、ISO感度(auto/100/200/400/800/1600/3200)、シャッタースピード(auto/ 1/16000~2s)、露出補正(-0.2~2.0)が行なえるプロモードの2種類をワンタッチで切り替えられる。

 設定としてはフォトタイマー(2/5/10秒)、ブラケット(3/5枚):(-0.5EVから0.5EV/-1EVから1EV/-2EVから2EV)、そして縦横比(4:3/16:9)、フレームグリッド(オフ/三分割/黄金分割/十字線/スクエア)、フォーカスライト(フラッシュ設定を使用/自動/常にオフ)、ビデオ録画(最大1,280×720ドット/30fps)がある。「カメラボタンの長押し」に関しては、本機に該当するボタンがないため機能しない。

カメラ(標準モード)
カメラ(プロモード)
カメラ(プロモードでの露出補正)
カメラ/設定/フォトタイマー
カメラ/設定/ブラケット
カメラ/設定/設定

 背面800万画素のカメラは、Exifの情報によると、レンズの焦点距離3mm、f/2.8、最大解像度は2,592×1,456ドットとなっている。作例は最後の夜景以外、適度に露出補正した以外は全てオートで撮影。夜景に関しては、車のナンバープレートが写るとまずいので、シャッタースピードを最大の2秒としてヘッドライトなどが流れるようにしている。

 実際に使った感想は、オートホワイトバランスが頻繁に変わり、思った色になかなかできないこと。また青空バックで撮ると少しマゼンタ被りする。もちろん何かに固定すればいいのだが、どれにしてもホワイトバランスが合わないケースがほとんどだった。この時期は晴れた日でも色温度が低いので規定値での固定は難しいところ。

 AFはマクロの距離から結構素早く反応するものの、例えば花のアップなどは、中抜けして、背景にピンが合うことが多かった。この辺りは、手ぶれ補正も含め、チューニングされているiPhoneなどと比較するとそれなりに劣る印象。ある程度割り切りが必要だろう。

作例
ISO116, f/2.8, 1/60秒
ISO101, f/2.8, 1/2,976秒
ISO100, f/2.8, 1/243秒
ISO100, f/2.8, 1/403秒
ISO100, f/2.8. 2秒(ISOとシャッタースピード固定)

 最後に簡単なベンチマークテストを行なった。まずバッテリ駆動時間は、明るさ50%、音量50%(相当)にしてYouTube/Wi-Fi接続で連続再生したところ約5時間で電源が落ちた。処理的には重い方だと思われるのでこれだけ持てば十分だ。

 EdgeでのGoogle Octane 2.0のスコアは2,252。Snapdragon 410を搭載したMADOSMA(3,063)と比較して約3割減と言ったところ。このテストはブラウザのJavaScript性能だが、普通に操作して体感的にも似た感じだ。

Google Octane 2.0のスコアは2,252

 以上のようにドスパラ「Diginnos Mobile DG-W10M」は、Snapdragon 210/1GB/16GB/5型のWindows 10 Mobile搭載SIMロックフリースマートフォンだ。エントリークラスなので動作は遅めだが、我慢できないほどでもなく、Windows 10 Mobileを体感するにはお手頃な価格が魅力的。また液晶保護フィルムと、3色のバックカバーが標準で付属するのも粋な計らいだ。

 LTEにも対応し、仕様の範囲内で気になる部分も特になく、サブ機としてや、Windows 10 Mobileお試し機を探しているユーザーにお勧めできる1台と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/