西川和久の不定期コラム

シャープ「RW-16G1」

~A4サイズをほぼ原寸で表示可能な15.6型のIGZOタブレット

シャープ「RW-16G1」(※写真のスタンドは筆者が用意したもので、本製品の付属物やオプションではありません)

 一般的なWindows搭載タブレットは8~10型前後、そして、先日発表された「Surface Pro 3」が12型だったように、おおよそこの辺りのサイズが多かったが、今回ご紹介するシャープの「RW-16G1」は15.6型。それも液晶一体型やキーボードなどと合体する2-in-1タイプではなく純粋なタブレットだ。

A4サイズがほぼ原寸で表示可能

 冒頭で書いたように、Windows搭載のタブレットのサイズは8型、10型、12型前後と、おおよそこの3パターンに別れている。8型クラスは持ち運び重視、10型クラスは扱いやすさ重視、12型クラスは2-in-1などでよりノートPC的に使えるよう考慮されたサイズ。これより大きいサイズは液晶一体型PCをタブレット的にも使えるものが大半だ。

 今回ご紹介するシャープ「RW-16G1」は15.6型。このサイズを採用した理由は、A4サイズのデータをほぼ原寸(約92%)で表示できるからだ。確かに日頃使う書類などは圧倒的にA4が多く、それを原寸で表示できるのなら見やすく、違和感も少ない。主な仕様は以下の通り。

シャープ「RW-16G1」の仕様
プロセッサCore i5-4200U(2コア4スレッド、クロック1.6GHz/Turbo Boost時2.6GHz、
キャッシュ3MB、TDP 15W)
メモリ4GB
ストレージSSD 128GB
OSWindows 8.1 Pro (64bit)
グラフィックスプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4400、HDMI出力、Mini DisplayPort
ディスプレイ15.6型IGZO/WQHD+(3,200×1,800ドット/235ppi)、10点タッチ対応
ネットワークIEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0+HS
インターフェイスUSB 3.0×3(内1つは電源オフ時給電対応)、SDカードスロット、音声入出力、
前面200万画素、NFC、ステレオスピーカー/デュアルマイク
センサー加速度センサー、地磁気センサー、ジャイロセンサー、照度センサー
サイズ/重量約382.8×244.5×12.5mm(幅×奥行き×高さ)/約1,250g
バッテリ駆動時間約9時間
その他デジタイザペン(筆圧検知256段階)付属、単6形電池使用
実売価格26万円前後(税別)

 プロセッサはCore i5-4200U。2コア/4スレッドでクロックは1.6GHz。TurboBoost時2.6GHzまで上昇する。キャッシュは3MB、TDPは15Wだ。メモリは4GB、ストレージはSSDで128GBを搭載。筐体の特性上、交換したり増設したりすることは出来ない。OSは64bit版のWindows 8.1 Proを採用している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4400。外部出力用にHDMIとMini DisplayPortを装備する。サイズを活かして2ポートあるのはうれしい。また、HDMIがMini HDMIではないのも利便性は高い。

 液晶ディスプレイは、10点タッチ対応のIGZO液晶パネルを搭載。IGZOが得意とする高精細化で3,200×1,800ドットの高解像度を実現。画素密度は235ppiとなり、一般的な印刷物の175線(350ppi)には一歩及ばないものの、それに近い表示が可能となる。またIGZOの特徴の1つでもある低消費電力と、Haswellプロセッサで長時間のバッテリ駆動が期待できそうだ。この点については後半に検証したい。

 インターフェイスは、IEEE 802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.0+HS、USB 3.0×3(内1ポートは電源オフ時給電対応)、SDカードスロット、音声入出力、前面200万画素、NFC、ステレオスピーカー/デュアルマイク。先の外部出力も含めタブレットとは思えない充実ぶりだ。センサーは、加速度センサー、地磁気センサー、ジャイロセンサー、照度センサーを搭載している。

 サイズは約382.8×244.5×12.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1,250g。タブレットとしてはかなり重いが、サイズがサイズなので仕方ないところか。筆圧検知256段階のデジタイザペンが付属して、実売価格は26万円前後(税別)。

前面。中央下にWindowsボタン。中央上に前面カメラ、その左右上に内蔵マイク、右に照度センサー、左少し離れたところにNFC。右上側面に電源ボタン
左側面。音声入出力、音量調整ボタン、USB 3.0×2、ファンクションボタン×2
右側面。ロックポート、SDカードスロット、Mini DisplayPort、HDMI、USB 3.0(電源オフ時給電対応)、電源入力
背面。下左右のスリット部にスピーカー内蔵。各隅に滑り止め用のゴム足がある
付属のACアダプタとのデジタイザペン。ACアダプタのサイズは、約105×43×29mm(同)/重量231g。デジタイザペンの電池は単6形(AAAA)タイプを使用している
A4用紙およびSurface 2との比較。A4用紙は4:3なので、幅は少し余っている。10.6型のSurface 2と比較すると、さすがに大きい

 筐体は、タブレットという言葉の感覚からするとかなり大きく重い。また表から見ると確かにタブレットなのだが、裏に滑り止め用のゴム足が4つあり、タブレット離れしているところもある。Surfaceのようなスタンドがないところは潔い。

 前面には、中央下にWindowsボタン。中央上に前面カメラ、その左右上に内蔵マイク、右に照度センサー、左少し離れたところにNFC。右上側面に電源ボタン。背面には先に書いたゴム足と、下左右のスリット部にスピーカーを内蔵している。

 左側面には、音声入出力、音量調整ボタン、USB 3.0×2、ファンクションボタン×2。右側面には、ロックポート、SDカードスロット、Mini DisplayPort、HDMI、USB 3.0、電源入力を配置。いずれも厚みに余裕があるため標準のコネクタが使われており、扱いやすい。

 冒頭に掲載した写真のようにスタンドを使い、Bluetoothのキーボードやマウスを接続、普段はデスクトップ的に運用するのもありだろう。付属のACアダプタは、サイズ約105×43×29mm(同)、重量231gと、ノートPC並の大きさだ。

 IGZOな15.6型WQHD+ディスプレイは、3,200×1,800ドット/235ppiと言うこともあり、ドットが見えず非常に美しい描画だ。発色やコントラストも良好。ただ最大輝度は若干暗め、また視野角もIPSほどは広くない。

 振動やノイズはないが、発熱に関しては、裏面の左上部分が若干暖かくなる。サウンドに関しては、このクラスのノートPC(タブレットがないので)と比較すると、頑張っている方だろう。最大出力はそれなりだが、ありがちなシャリシャリした音ではなく、中域を中心としたバランスの良い鳴り方だ。

 付属のデジタイザペンのバッテリは、日本では珍しいと思われる単6形(AAAA)電池が使われている。単4形電池(AAA)の10.5×44.5mm(直径×高さ)に対し、単6形電池は8×42mm(同)と細く、デジタイザペンにマッチするため採用したのだろう。

 デジタイザペンの書き心地や操作性は、特に気になる部分もなく、日頃スタイラスを使わない筆者も楽々扱えた。Windowsストアアプリは指でも大丈夫だが、デスクトップに関しては、この手のポインティングデバイスがないと少し大変かも知れない。いずれにしても本機にはなくてはならないアイテムだと言えよう。

15.6型でデジタイザペン対応の特性を活かしたアプリケーションを搭載

 OSは64bit版のWindows 8.1 Pro。メモリが4GBなので重い処理には向かないものの、付属のデジタイザペンを活かすソフトウェアやオフィス系であれば特に問題はないと思われる。スタート画面のシャープ製アプリ4つはデスクトップアプリだ。

 SSDは128GB/MLC(SLCキャッシュ搭載)のSanDisk「SD6SF1M128G」。C:ドライブのみの1パーティションで約110.21GBが割り当てられ、空きは77.4GB(ただし借用したのはデモ機でいろいろインストールされている。実際の空き容量はもう少し多いと思われる)。Wi-FiとBluetoothはIntel製、デバイスマネージャには、センサーやNFCも見える。

スタート画面。シャープ製アプリ4つはデスクトップアプリ
起動時のデスクトップ。3,200×1,800ドットで表示が細かいことが分かる
デバイスマネージャ/主要なデバイス。SSDは128GB/MLC(SLCキャッシュ搭載)のSanDisk「SD6SF1M128G」。Wi-FiとBluetoothはIntel製。センサーやNFCも見える
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約110.21GBが割り当てられている
アプリ画面1
アプリ画面2

 インストール済みのソフトウェアは、Windowsストアアプリは1本もない(デモ機なので出荷版とは異なる可能性がある)。デスクトップアプリで特徴的なのは、「SHARP QuickAgent」、「SHARP タッチディスプレイリンク」、「SHARP タッチディスプレイレイアウト」、「SHARP ファンクションボタン設定」、「SHARP ペンソフトモバイル」、「画面キャプチャ切り抜きツール」など、このタブレットに特化したアプリケーション群だ。

 15.6型3,200×1,800ドットの操作感は、Windowsストアアプリは問題ないものの、やはりデスクトップ環境は各パーツが細かく、(個人差もあるだろうが)ペンを使っても操作しにくい。インストール済みのソフトウェアに関しては、この辺りを考慮し、ボタンなどが大きくデザインされているのが画面キャプチャからも分かる。各アプリの機能は、画面キャプチャのキャプションに記述したので参考にして欲しい。

「SHARP QuickAgent」。デスク、モバイル、モバイル(オフイス)など、シーンに応じて、Wi-Fi/Bluetooth/NFCなどのオン/オフを自動的に切替えたり、写真の取り込みの設定、システム環境設定を変更できるツール
「SHARP タッチディスプレイリンク」。同一ネットワーク内にあるデバイスを接続して、ミーティングを支援するアプリケーション
「SHARP タッチディスプレイレイアウト」。ウィンドウ枠の右上にボタンが追加され、複数のアプリケーションを指定の並びに整列させるツール
「SHARP ファンクションボタン設定」。本体左サイドにある2つのボタンの機能を設定するツール
「SHARP ペンソフトモバイル」。いろいろなオブジェクトを自由に配置でき、ペンにも対応したアプリケーション
「SHARP 画面キャプチャ切り抜きツール」。ペン(もしくはマウス)で指定したエリアを切り取り、自動的にペンソフトモバイルへ貼り付けるツール

 ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2、BBenchの結果を見たい。CrystalMarkのスコアも掲載した(2コア/4スレッドで条件的には問題ない)。

 winsat formalの結果は、総合 5.2。プロセッサ 7.2、メモリ 5.9、グラフィックス 5.3、ゲーム用グラフィックス 5.2、プライマリハードディスク 8.15。PCMark 8 バージョン2は2102。CrystalMarkは、ALU 36789、FPU 36687、MEM 41093、HDD 36938、GDI 13017、D2D n/a、OGL 9514。この結果からも分かるように、プロセッサとストレージが十分速く、ストレスなく操作できる。

 BBenchは省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で23,106秒/6.4時間。仕様上の最大約9時間には届かなかったものの、このクラスの液晶パネルを搭載して6時間越えは、それなりに評価できる。

winsat formalコマンドの実行結果。総合 5.2。プロセッサ 7.2、メモリ 5.9、グラフィックス 5.3、ゲーム用グラフィックス 5.2、プライマリハードディスク 8.15
PCMark 8 バージョン2の結果。スコアは2102
BBench。省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で23,106秒/6.4時間
CrystalMarkの結果。ALU 36789、FPU 36687、MEM 41093、HDD 36938、GDI 13017、D2D n/a、OGL 9514

 以上のようにシャープ「RW-16G1」は、15.6型IGZO液晶を採用したWindowsタブレットだ。Core i5とSSDを搭載しているのでパフォーマンスも十分。6時間を超えるバッテリ駆動時間も魅力的だ。

 26万円前後という価格や、サイズ、重量を見ても、広く一般に適応するデバイスではなく、実際に法人向けに限定して販売されている製品となるが、A4がほぼ原寸に表示できるなど、正にこれを必要とする企業などにはお勧めしたい逸品と言えよう。

(西川 和久http://www.iwh12.jp/blog/